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アメリカン・スクール の商品レビュー

3.9

43件のお客様レビュー

  1. 5つ

    12

  2. 4つ

    13

  3. 3つ

    8

  4. 2つ

    3

  5. 1つ

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2017/09/24

シリアスなのに滑稽さが絡まって、読んでいると体の一部がなんだかむず痒くなってくる、ひと味違った作品。

Posted byブクログ

2017/02/27

微笑が気に入った。外向きには良い父親を演じながら、誰も見ていないところで、何もわからぬ不具の息子への加虐欲求を満たす。根底にあるのは同族嫌悪であり、息子を痛めつけながら、自身の痛みを楽しむ。この気持ちがよくわかるのは自分もそうだから?

Posted byブクログ

2018/12/30
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

文章が独特できれいとはいえない。奇をてらっている文章ではないが、ごつごつした読みにくさがある。 そのへんで好みが分かれそうだが、僕は好まない。

Posted byブクログ

2016/08/30

表題の「アメリカン・スクール」のほか「汽車の中」「鬼」「微笑」「馬」「小銃」がいいです(てか、ほとんどじゃねぇか)。 作中の主人公達には閉鎖的な劣等感を宿しています。 その劣等感は何に対する物なのか? 敗戦後のあの時代の社会に蔓延した物なのか? 普遍的な物か、個人的な物か? ...

表題の「アメリカン・スクール」のほか「汽車の中」「鬼」「微笑」「馬」「小銃」がいいです(てか、ほとんどじゃねぇか)。 作中の主人公達には閉鎖的な劣等感を宿しています。 その劣等感は何に対する物なのか? 敗戦後のあの時代の社会に蔓延した物なのか? 普遍的な物か、個人的な物か? 価値観が根底からひっくり返ったあの時代、戦後の日本人が抱えていた不安がヒリヒリと伝わってきます。 自己の中で囲い込みくすぶり続けた劣等感の解放する術をしらない主人公達は、いったいどこに向かうのでしょうか。

Posted byブクログ

2016/05/04

8つの短編小説が収録。 個人的には、表題の「アメリカン・スクール」もよいが、戦時中の出来事を題材とした「小銃」もよかった。巧みな描写。 また、「汽車の中」や「馬」も、独特な物語の展開で、不思議と引き込まれる。

Posted byブクログ

2016/01/16

 小島信夫の短編集。芥川賞をとったアメリカン・スクール。秀逸な「馬」等全八編。  「馬」は不思議な作品だ。最初は家をローンで買って、ひたすらローン返済の為に働いている夫。そしてその行為さえ曖昧になってきた。しかし、妻を愛しているものの、顔をまともに見たことが無い。自虐的に妻への服...

 小島信夫の短編集。芥川賞をとったアメリカン・スクール。秀逸な「馬」等全八編。  「馬」は不思議な作品だ。最初は家をローンで買って、ひたすらローン返済の為に働いている夫。そしてその行為さえ曖昧になってきた。しかし、妻を愛しているものの、顔をまともに見たことが無い。自虐的に妻への服従を誓わされている。すると、いつの間にか、家が増築されるという。更には、増築した1階には馬の「五郎」が住むという。その行為に、憤慨する夫、しかしなかなか言えず、頭がおかしくなってくる。棟梁が家に来ているとか、馬が妻の部屋に入ってくるとか幻想だか現実だかさえもはっきりしないトランス状態に陥り、最後は、妻から「愛しているのはあなたよ」と今まで聞いたことがない愛の告白を受けるというストーリー。馬は夫の男としての尊厳のメタファーであり、そこに挑んで行くという風に感じられる。そこがリアリティに繋がりつつ、同時に不思議な世界に誘う。  なんじゃそれはという世界に、極々自然に入って行く感覚、どこからが現実でどこからが幻想なのか、ドラッグ的な、酩酊的な世界。短編の中でも、この夢のような世界に気持ち悪いくらい入って行ってしまうのは「馬」だろう。  その他、日米関係の滑稽さを入れたりと風刺が効いた短編が入っている。鬼才という表現がぴったりの作家だ。

Posted byブクログ

2014/11/12

表題作は、アメリカンスクールに見学に行く英語教師たちの滑稽譚。アメリカ人相手に、英語を話せば日本人でなくなってしまうが、英語を話さなければ、劣等民族のように扱われるという矛盾した立場に彼等は立っている。いくら英語がネイティブのように話せても、日本人は、立小便するし、箸で弁当を食べ...

表題作は、アメリカンスクールに見学に行く英語教師たちの滑稽譚。アメリカ人相手に、英語を話せば日本人でなくなってしまうが、英語を話さなければ、劣等民族のように扱われるという矛盾した立場に彼等は立っている。いくら英語がネイティブのように話せても、日本人は、立小便するし、箸で弁当を食べるし、ハイヒールより裸足が似合う。おそらく教養では、アメリカ人にまさるところもあるのだが、文化的な洗練や、豊かさでは、到底かなわない。英語だけ上手くなって、近代化したと勘違いすることの恥ずかしさが、容赦なくえぐり出されている。

Posted byブクログ

2013/10/27

そのキャラクターの持って生まれたおかしみや愛嬌を、落語の方では「フラ」といいます。たとえば、古今亭志ん生なんかその典型ですね。他の落語家の高座と聴き比べていただければ、私のような素人でも分かります。高座だけでなく、私生活でも「フラ」を発揮していたようで、たとえばジェット機がガクー...

そのキャラクターの持って生まれたおかしみや愛嬌を、落語の方では「フラ」といいます。たとえば、古今亭志ん生なんかその典型ですね。他の落語家の高座と聴き比べていただければ、私のような素人でも分かります。高座だけでなく、私生活でも「フラ」を発揮していたようで、たとえばジェット機がガクーンと急降下すると「危ないよォ。つんのめったらどうすんだい」とか、「そこにある犬の糞、それェ片づけなよ」に志ん駒が紙で取ろうとしたら「手でやんなよォ―。いい百姓になれないよ」。おかしいですよね。 小島信夫さんの作品は今回初めて読みましたが、「フラ」を感じました。小島作品をそんなふうに評した人は恐らくいないと思いますが、そう感じたんだから仕方ない。 たとえば、「汽車の中」という作品で、警察官が網棚の青年に注意する場面で言ったセリフ。 「おい、君はそういう態度に出るのなら、こちらも民主的に出られないな。君の荷物はどれだ」 「民主的」という言葉の使い方にニヤリとします。警官が注意する場面ですから、そこには恫喝が含まれていますが、「こちらも黙ってられん」ではなく「民主的に出られない」。緊張が緩和しておかしみを誘うのですね。 恐らく、著者は笑わせようと思っているのではないと思います。いや、徳川夢声が志ん生を評して、「どっかで受けようとしているはずだ」と語っていますから、計算ずくかもしれません。だとしたら、その作為を徹底的に覆ってしまっているところがすごい。 「馬」という作品での「僕」と妻の「トキ子」の会話は表面上は真面目なやり取りですが、何とも言えない間があっておかしいです。 「僕」が帰宅すると、家の敷地に材木がうず高く積んであります。「誰かがこれで以て家を建てるに違いない」と見当をつけた「僕」が、材木を置かせてほしいと頼んだのは誰かとトキ子に訊ねます。 「誰におかせてやったの」 「さあ、何といっていいかしら、誰にもおかせてやらないわ」 「すると、これはどういうことになるの」 「私が置かせたのよ」 「そう、誰が建てるの」 「そりゃ、あなたよ」 自分の建てる家のことを自分が知らないことに、「僕」は「まったく闇夜に鼻の先をつままれたような、一方的なかんじを受けざるを得ない」と感想を語ります。 「感じ」を「感じ」ではなく、「かんじ」と漢字を開いているのに感じ入ります。 とにかく横溢するユーモア、諧謔を堪能しながら読み耽ったのでありました。

Posted byブクログ

2013/10/23

なんとも言い難い読後感。これは明らかに、巻末で作家の保坂が述べているように、その独特の文体によるところが大きい。もちろん、主題も特異だ。しかし、その主題の特異性を醸し出しているものが文体だと言える。そして、さらに言うならば、その文体を生んでいるのは、小島信夫の、世界を分節化する思...

なんとも言い難い読後感。これは明らかに、巻末で作家の保坂が述べているように、その独特の文体によるところが大きい。もちろん、主題も特異だ。しかし、その主題の特異性を醸し出しているものが文体だと言える。そして、さらに言うならば、その文体を生んでいるのは、小島信夫の、世界を分節化する思考法そのものの特異性なのだ。流麗な文章を書く作家はあまたいるが、彼のような語り口を持つ人は稀有だ。読みづらいので引っかかる。腑に落ちないので心に澱む。すごい作家だ。

Posted byブクログ

2013/09/06

どの作品も一貫して主人公は無様だ。 同情を誘う可愛らしい今風の無様、ではなく、きっと物心ついたときからすでにこういう扱いを受け続けてきたんだろうなと想像できるような無様。そこに戦後の、否が応でも自尊心を意識せざるを得ない流れがやってくるからさらに厄介。 「アメリカン・スクール」、...

どの作品も一貫して主人公は無様だ。 同情を誘う可愛らしい今風の無様、ではなく、きっと物心ついたときからすでにこういう扱いを受け続けてきたんだろうなと想像できるような無様。そこに戦後の、否が応でも自尊心を意識せざるを得ない流れがやってくるからさらに厄介。 「アメリカン・スクール」、「汽車の中」、「星」、「微笑」の感想は上記のような感じ。 どの作品も私好みの奇妙さと哀惜を湛えていて面白く読んだけど突出して良かったのは「馬」かな。 結局よく読者も主人公もよくわからないまま終わる。真相はおくさんだけが知ってるんだけど。こういう話が一人称で語られるとすごく怖いです。最近見つかった安部公房の未発表作品の「天使」的な感じ。あそこまでストレートなえぐみはないけど。シュールの一言で片づけられないものがありました。

Posted byブクログ