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疫病と世界史(上) の商品レビュー

3.9

36件のお客様レビュー

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2015/11/17

マラリア、ペスト、天然痘、結核、コレラ、梅毒。古来「神の怒り」と怖れられてきた疫病は、個人と共同体の運命を翻弄し、時に歴史を大きく塗り替えてきた。遊牧帝国の繁栄とペスト、インディオを絶滅寸前に追いやった旧大陸の感染症。ハンセン病に割かれた頁は多くはないが、重度の皮膚病がすべてこの...

マラリア、ペスト、天然痘、結核、コレラ、梅毒。古来「神の怒り」と怖れられてきた疫病は、個人と共同体の運命を翻弄し、時に歴史を大きく塗り替えてきた。遊牧帝国の繁栄とペスト、インディオを絶滅寸前に追いやった旧大陸の感染症。ハンセン病に割かれた頁は多くはないが、重度の皮膚病がすべてこの名で呼ばれ一様に隔離されていた時代や、近代戦の開始に伴う疫病学の発達など、本書は社会の変容と疫病の関係を多元的に描き出している。

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2015/11/03

ときどき日本語が変なんだけど、そこは仕方ない。 歴史を学んでいると、よほどでないと病気の話ってでてこなくて、この本を読んで震えた。 地政学を読んだ時、自然の境界を越えたとき、国は滅亡するってあったんだけど…これ、病気もあるんだろうなぁ。

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2015/10/06

天然痘等の人類にとっては突発的に表れたミクロの病魔との戦いの歴史。 文明の興亡に深く、絡んでいることに驚いた。

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2015/09/20

異文化の邂逅は病原菌の交換でもある。人々が新しい病を克服するまでの抵抗がそのまま中世の停滞だとする。図版を使った解説本があればもっとすんなり頭に入るのだが。

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2021/11/09

アフリカでは、焼畑農耕が熱帯雨林に広がり始めると、雑草を好む蚊の繁殖場所となり、マラリアが猛威をふるうようになった(p.94)。中央アフリカと東アフリカで、19〜20世紀にヨーロッパ人が農地を広げた際も、ツェツェ蝿が増加して睡眠病を流行させた(p.96)。 インドのカースト制度...

アフリカでは、焼畑農耕が熱帯雨林に広がり始めると、雑草を好む蚊の繁殖場所となり、マラリアが猛威をふるうようになった(p.94)。中央アフリカと東アフリカで、19〜20世紀にヨーロッパ人が農地を広げた際も、ツェツェ蝿が増加して睡眠病を流行させた(p.96)。 インドのカースト制度は、侵入者のアーリア人は南部と東部の高温多湿の風土病を避けるために、土着の人々はアーリア人が持ち込んだ天然痘などの文明に伴う病気を避けるために、互いの疎隔意識から発生したのかもしれない(p.161)。 BC30年までの地中海では、油や葡萄酒などの輸出向きの余剰生産物が生産できる場所であれば、どこでも都市的中心地が形成されたため、その結果として農民は土着の権力者と国家の二重の支配を免れたが、長期的な政治的不安定と戦争が繰り返されることになった(p.167)。 ヨーロッパも中国も紀元後数世紀までは新しい病気によって社会体制が破壊されるほどの打撃を受けかねない状態だった。ローマでは、165〜180年、251〜266年、542〜543年に疫病が流行し、750年まで間歇的に繰り返した(p.192,202)。 モンゴルが勢力を拡大すると、アジア北部の草原地帯の交通が発展した。草原地帯に生息するげっ歯類の小動物は腺ペストを保菌していたと考えられる(p.12)。中国の人口は、モンゴルの侵略が始まる前の1億2300万人から、モンゴルを追い払った1世紀後の6500万人へ激減した(p.28)。北西ヨーロッパでは、14世紀までに人口が飽和状態に達し、気候が次第に悪化して不作が増えたため、黒死病が襲う1世紀前から人口減少が始まっていた(p.32)。1340年代にペストが流行してから、イギリスでは1世紀以上も人口が減り続けた(p.37)。14世紀以降に西ヨーロッパで毛織物生産が発展し、人口が減ったため厚い衣類が出回るようになったことによって、皮膚感染によるハンセン病の患者が減少した(p.50)。悪疫に対して教会は硬直した対応しかできなかった一方で、行政官は素早く対処したため、ドイツやイタリアをはじめとした都市国家で世俗的な生活と思想が広がっていった(p.61)。バルカン半島では、町に住んでいたイスラム教徒が人口を減らし、田舎の農民は昔ながらの信仰を守っていたために、19世紀のキリスト教民族解放運動につながった(p.66)。ペストの流行によってモンゴルの隊商交通路も破壊され、16世紀には農耕民が西部草原地帯に入り込み始めた(p.70,71)。 16〜17世紀の間に世界の交通が密になると、すでに確立しているヒトの病気は破壊的に流行することがなくなり、小児病となっていった(p.115)。1850年以降になると、医学的治療が人類の平均寿命と人口増に大幅な変化をもたらした(p.139)。

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2019/05/27

(途中 2014年11月6日) 疑問1「中南米大陸特有の病原菌がピサロやコルテス等ヨーロッパ人に感染しなかったのか」→病原菌の数や歴史の長さ、多様性が違う? 疑問2「なぜアメリカ大陸の熱帯地方はアフリカと違い、人類の居住を妨げる程ではなかったのか」 2019/5/27 #感染症...

(途中 2014年11月6日) 疑問1「中南米大陸特有の病原菌がピサロやコルテス等ヨーロッパ人に感染しなかったのか」→病原菌の数や歴史の長さ、多様性が違う? 疑問2「なぜアメリカ大陸の熱帯地方はアフリカと違い、人類の居住を妨げる程ではなかったのか」 2019/5/27 #感染症は食物連鎖に組み込まれた一部であり、バランサー #技術の発展がバランスを一時的に破壊したが、近年感染症の逆襲が始まった #感染症の根絶は難しいし、被害をコントロールするのも難しい。被害を最小限に抑えるには過大なコストが必要。 #感染症と宿主は持ちつ持たれつで、絶滅させると感染症側も絶滅してしまう可能性がある。だがそれを考えてやるのではなく、失敗を繰り返しトライエラーで結果的にバランス状態となる。

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2018/02/08

経済雑誌のおすすめ。 決して難解な文章ではない。 ただ、あまりに膨大な情報量、 反語表現の多さ、 時空を超えた例示にキャパオーバーになってしまう。 自分がどこにいるのか、いつの何の話を読んでいるかを 見失いがち、とでも言うか。 そしてついつい、本筋を離れて、枝葉末節の話を拾っ...

経済雑誌のおすすめ。 決して難解な文章ではない。 ただ、あまりに膨大な情報量、 反語表現の多さ、 時空を超えた例示にキャパオーバーになってしまう。 自分がどこにいるのか、いつの何の話を読んでいるかを 見失いがち、とでも言うか。 そしてついつい、本筋を離れて、枝葉末節の話を拾ってしまう。 英国海軍が壊血病に効果のないライムジュースを飲んでいて、ライミィと呼ばれてたとか、 農業が始まってからよりも、狩猟時代の人類の方が、 健康的で余暇があったとか。 (下巻に続く)

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2013/09/02

疫病が世界史に与えた影響について壮大なスケールで書かれていて、世界史の見方としておもしろい。本当かどうかわからないあやしい説明も含めて楽しめた。  18世紀以降を描いた6章は具体的で、瘴気説・細菌説の論争や、軍事医学の進歩や、ハンブルク市・アルトナ市の上水道の例など、科学で感染症...

疫病が世界史に与えた影響について壮大なスケールで書かれていて、世界史の見方としておもしろい。本当かどうかわからないあやしい説明も含めて楽しめた。  18世紀以降を描いた6章は具体的で、瘴気説・細菌説の論争や、軍事医学の進歩や、ハンブルク市・アルトナ市の上水道の例など、科学で感染症を克服していくさまがよくわかった。著者は病原菌と人類の戦いはずっと続くとしているが、科学という武器を手に入れたらやはり人類の勝ちになるのではないか。

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2013/08/09

歴史を理解する上で、気候変動と人口動態は考慮しなきゃならんと思っていたが、そこに疫病も追加せねば。。。 疫病は身体的にだけでなく、精神的にも人、社会を打ちのめす。(だから、南米の古代帝国はスペイン人に屈した) 日本では、人口が十分になり、疫病が風土病として固定されるまでは、社...

歴史を理解する上で、気候変動と人口動態は考慮しなきゃならんと思っていたが、そこに疫病も追加せねば。。。 疫病は身体的にだけでなく、精神的にも人、社会を打ちのめす。(だから、南米の古代帝国はスペイン人に屈した) 日本では、人口が十分になり、疫病が風土病として固定されるまでは、社会に免疫がつかず、1世代ごとに疫病が流行した(平安頃)が、これを乗り越えると、人口が倍増した(平安末期~鎌倉)

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2012/09/24
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

疫病の発生過程の説明にまず驚かされた。初期の人間は、生態系の中に組み込まれており、自然な疫病による人口統制がなされていた。しかし、狩猟や農耕を始めることによって生態系を壊し、ミクロな病原菌の生態系をも壊すことによって細菌の繁殖力を増強することによって都市病等の病気にかかるようになっていった。このように自業自得的な過程があったということに非常に驚いた。 そして、このように周期的に訪れる疫病からの死の恐怖が、キリスト教を発展させていった。というのが面白かった。キリスト教では死は幸福であり、ほかの宗教では不幸であるというはっきりとした違いを再確認させられた。 また、このような疫病が数々の戦争の原因となったり、勝敗を決する要因となったりしていることに驚かされた。さらに、戦争の原因となっているにもかかわらず、その戦争の衛生部隊によって衛生観念が広まっていったという逆説的なことにも驚かされた。 最後に筆者が述べていた、「過去に何があったかだけでなく、未来には何があるのかを考えようとするときには常に、感染症の果たす役割を無視することは決してできない。創意と知識と組織がいかに進歩しようとも、規制する形の生物の侵入に対して人類がきわめて脆弱な存在であるという事実は覆い隠せるものではない。人類の出現以前から存在した感染症は人類と同じだけ生き続けるに違いない。」という文章は、この先も真実であり続けるだろうと思った。技術が発展するにつれて菌の繁殖力が強まっているという背景にはこのようなものがあるのだろうと考えさせられ、技術の発展も一概に良いことといえないのではないかと思った。

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