絵描きの植田さん の商品レビュー
静かなバックミュージックがかかる中、穏やかに読み進められる本。 登場人物は皆個性的でありながら、彼らがぶつからず調和していく。 そこに荘厳な自然とその中に生きている動物たちが、この世界の厳しさと美しさを教えてくれるように存在する。 優しい絵がストーリーを朗らかに包み込んでくれる。
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スピッツの「大好物」を聴いていたら思い出したので再読。閉じた心を柔らかくするとか、小鳥たちのイメージから喚起したかと。 すいぶん久しぶりに読みましたが、ほんとうに美しい物語です。いまだ閉塞感の漂う日々の中、植田さんやメリに再会できてよかった。
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文体が詩的で絵画的でもあり、柔らかく優しい。 心が疲れて、文章を読むのを頭が拒否してても、スッと入ってくる。
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事故で聴力のほとんどを失った画家の植田さんの物語。 高原の土地に移り住み、ひげもじゃの農夫、オシダさんや定食屋の夫婦、そして隣に移り住んできた林イルマとメリ母子とかかわる中で、自分の新しい世界とのかかわり方を見つけ出していく。 物語の時間は、ある年の冬から春の直前まで。 雪で真...
事故で聴力のほとんどを失った画家の植田さんの物語。 高原の土地に移り住み、ひげもじゃの農夫、オシダさんや定食屋の夫婦、そして隣に移り住んできた林イルマとメリ母子とかかわる中で、自分の新しい世界とのかかわり方を見つけ出していく。 物語の時間は、ある年の冬から春の直前まで。 雪で真っ白の世界、のはずなんだけど、不思議に緑の沃野の色が感じられ、囀る鳥の声が聞こえてくるかのような作品。 無色なのにカラフル。 静謐なのに音が聞こえる。 静かなのに、力がみなぎっている。 そんな不思議な魅力を持った作品だった。 ところで、この本の挿絵を書いている植田真さんは、物語の植田さんと関わりがあるのだろうか?
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いしいしんじと村上春樹は人気のある作家であるが、私にとってはいつも「よっこらせ」と勢いをつけなければ読めない作家なのである。 嫌いなのではない。苦手なのだ。 けれど最近いしいしんじを素直に楽しめるようになってきたと思う。 多くを語らない。 ただ、温かく見守ることで、見守っている側の方が救われていくような。 動物、植物、自然の中で生きること。 メリは小学生にしてはびっくりするほどよく知っている。 お父さんと図鑑で見たから。お父さんに教えてもらったから。 メリはおとうさんについて何も言わないけれど、どんなにお父さんのことが好きなのかがそれでわかる。 素直にあるがままを受け入れていくメリを見て、植田さんもあるがままを受け入れていく。 この本には植田真の絵が収録されているが、それは文章の挿絵ではなくて、いしいしんじの文章と同じだけの重みをもったイラストとして、物語の終盤にまとめてページが割かれる。 最初にパラパラと眺めただけではわからないイラストが、きちんと絵描きの植田さんの絵として差し出されるのは、物語を読んだ後で。
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事故で聴覚と彼女を失くした植田とメリという少女の交流を描く。交流を通し次第に植田さんの傷ついた心を溶かしていく。雪山と凍った湖が舞台で植田さんの変化と雪解けに至る情景が互いにシンクロしてる描写が美しかった。 2015.5.22(1回目)
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生と死。 出会いと別れ。 まっすぐに進むこととはみ出すこと。 色。 真っ白の中の、たくさんの色。 そんなことがらが、きゅっとおさまっている。 あっというまに読み終えた。
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いしい先生の描く人々には、どこか影を感じます。だけど、作品中でその影に焦点が当たることはないんだよなあ。何だか不思議な読み心地。 悲惨な過去の記憶や、現在の闘争がクローズアップされることはなく、ただただ丁寧に紡がれて行くのは、静寂に包まれた時間、心優しい人々の関係性です。 それなのに、作品中から滲み出る、この寂とした哀しみは何なのでしょう。 植田さんの視界に映る世界を変えたメリちゃんの素直さや、彼女の目に映る世界の美しさを知らない(忘れてしまった?)自分自身が悲しいのかな。うーん、それはちょっと懐古趣味が過ぎるかしら…。 Amazon先生お世話になります( ^ω^ )φ Quote! ツノジカ、白テン、ナキウサギ、マヒワ、ツグミ、キレンジャク……高原の小さな村に、絵描きの植田さんは住んでいる。かつて、恋人と聴覚をいっぺんに失った植田さんの心は、いつもしんと静かだ。ある日、凍りついた湖を渡って、母と娘が越してくる。娘メリのすなおさは、植田さんの心を溶かしてゆくが、そのメリが雪の森で遭難して……。植田真の絵が扉をひらく奇跡のような物語。
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事故で耳の遠い植田さん。女の子との出会いで世界がきらきらと開いていく物語。 植田さんが山の中で周りの音と、音を聞いたり楽しんだりすることとまた出会うシーン、普段の自分が重なって涙がでました。 周りの人や自然や街の中で、わたし自分以外の音や存在に心を開けているかな? 自分だけの...
事故で耳の遠い植田さん。女の子との出会いで世界がきらきらと開いていく物語。 植田さんが山の中で周りの音と、音を聞いたり楽しんだりすることとまた出会うシーン、普段の自分が重なって涙がでました。 周りの人や自然や街の中で、わたし自分以外の音や存在に心を開けているかな? 自分だけの言葉とか考えに縛られて聞こえなくなっているな、と。 短くて、いしいしんじさんならではのあたたかい言葉とリズムであっという間に読めてしまいます。 でも、読むたびに自分自身を振り返させてくれる、最後にはあったかくなる一冊だと思います。
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音のない世界を、想像すると美しかった。それはいしいさんの作品が美しくさせたのかな。いしいさんの挿絵も素敵。
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