袋小路の男 の商品レビュー
まがりなりにも恋愛小説なのにこのタイトル。 作者の性格の表れのようで好ましい。 “袋小路の男”とはつまり片思いの相手を指していて、その家の立地からそう呼んでいるのだ。日向子は高校の先輩である小田切に恋い焦がれたまま12年、曖昧な距離の交際を続けている。確実に何か特別な感情で結びつ...
まがりなりにも恋愛小説なのにこのタイトル。 作者の性格の表れのようで好ましい。 “袋小路の男”とはつまり片思いの相手を指していて、その家の立地からそう呼んでいるのだ。日向子は高校の先輩である小田切に恋い焦がれたまま12年、曖昧な距離の交際を続けている。確実に何か特別な感情で結びついているにも関わらず、決して恋人にはならない2人。こんな蛇の生殺しみたいなのは嫌だなぁと思いつつ、ちょっと「おっ?」という動きがある度、こういのもいいなぁとふらふらと揺れ動きながら読んだ。 ☆川端康成賞
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行き止まりにいた男にはまっちゃってニッチモサッチもいかなくなった女の子のハナシ。続編に救いがみえた。心情の文章が大変よい。
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袋小路の男・小田切孝の言い分 語り手があれ?いつから変わってた?ってくらいいつのまにか変わってて不思議な感じになった。 小田切孝の言い分があってよかった。 アーリオオーリオ 個人的にはこっちがすき! タイトルがこういうとこでまた出てくるとは!ロマン。星を見る目が変わりました。
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対になった短編。 こういうのを読むと、噛み合わないことというか、どれだけ願ってもダメなものはダメというか、そういうことが当たり前と感じられ、かえって爽快な気持ちになれる。
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表題作『袋小路の男』とこれを三人称視点で描く『小田切孝の言い分』、叔父とメイの手紙のやりとりを書く『アーリオ オーリオ』の三作品収録。 <袋小路・小田切> 小田切と大谷の絶妙な距離感が何とも言えない読み心地を与えてくれる小説。大谷が小田切を「友達」というワードで絶対に表現...
表題作『袋小路の男』とこれを三人称視点で描く『小田切孝の言い分』、叔父とメイの手紙のやりとりを書く『アーリオ オーリオ』の三作品収録。 <袋小路・小田切> 小田切と大谷の絶妙な距離感が何とも言えない読み心地を与えてくれる小説。大谷が小田切を「友達」というワードで絶対に表現しなかったり、性的関係を結ばなかったり、それでも精神面で、というか心のどこかで依存している。そんな感じ。 だからと言って、この距離感が良いというつもりは全くと言っていいほど無い。解説の言葉を借りるなら「狎れ合い・癒着・自他の融合」・・・。ネガティブな言葉ではあっても、それがもたらす影響は必ずしもネガティブではない。解説者はこの小説を”哀切”と表現しているが、それならばなおのことフィクションのままでいてほしいもの。以前読んだ某小説(越谷オサム『陽だまりの彼女』)のような胸糞悪くなるほどベタベタしたいちゃつきもそれはそれでオッケーだと思うし、寂しがり屋な自分としてはむしろ好みでもある。 とはいえ、何気にがんばって独特の距離を作り出している小田切はすごく好きだ。人同士の距離をうまく量れない粘着質な自分からすれば、彼に憧憬したりもする。 <アーリオ オーリオ> 下宿生活時代、毎日ペペロンチーノ(チーニ?)をつくって食べていた頃を思い出す。主人公のように300gも食べてはいないが。 主人公”哲”が最後の手紙を書ききらずに止めたのには、何故だかとても安心した。「簡単そうで、美味しく作るのは難しい」(p125)ペペロンチーノをつくるように、哲と姪の距離を仕上げるベストな選択肢だと思ったからなのかもしれない。 だが、週5以上のペースでロクに具も入ってないペペロンチーノを食ってた身として言わせてもらえば、たまにはありったけの具材を突っ込んでみたくなる。もう少し具材というか、彩りが欲しいなと思える哲の生活。 それでも、この小説に感動してしまうのは、基本となるベースの味をしっかりと思い出させてくれるからなのかも知れない。一旦初心に帰るというか・・・この感覚は、この後読んだ同著者の小説(『ニート』角川書店)で再確認することになった。
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*引用* 引っ越しが終わって少し落ち着いた頃、あなたは、私の家に来て、いきなり冷蔵庫を開けた。びっくりした。いきなりスカートをめくられるよりびっくりした。 「ちゃんと生活してるな」 冷蔵庫を閉めながらあなたは言った。それから居心地悪そうにコーヒーを一杯だけ飲んで帰った。あなたが帰った後、掃除したばかりの部屋で私は落ち着かなかった。 ――『袋小路の男』 p.47
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女性心理、男性心理が実に分かりやすい。そして、ちょっとした彼のしぐさや言葉で一喜一憂する日向子がせつない。でも彼らは一生関わっていくんだろうな。 アーリオオーリオも、すばらしかった。中学生の美由の瑞々しさ、哲のちょっとした諦めた感じなど、リアルだな~(笑) 絲山さんはすばらしい。
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短編が三つ. 絲山さんの流れるような文章は,言葉の一つ一つが丁寧で,読みやすくさくさくと,しかし心情描写は不可解なほど噛み千切れない気持ちになります. 分からないというよりは,いや,人間の心情ってそうすっぱりいかないよね,っていう共感. 表題作ではなく三番目に収録されている「アー...
短編が三つ. 絲山さんの流れるような文章は,言葉の一つ一つが丁寧で,読みやすくさくさくと,しかし心情描写は不可解なほど噛み千切れない気持ちになります. 分からないというよりは,いや,人間の心情ってそうすっぱりいかないよね,っていう共感. 表題作ではなく三番目に収録されている「アーリオ・オーリオ」は傑作です. 高校時代,受験の国語の問題に出されて思わず読みふけり,その後単行本を探しに本屋に走ったのも良い思い出です. 読むと,きっと噛み切れないと思います.
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追っかける恋愛が好きな人には 気持ちわかるよ 「袋小路の男」「小田切孝の言い分」「アーリオ オーリオ」3つの短編のバランスが丁度いいな 30回川端康成文学賞受賞
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スラスラ読めたけど、やっぱり私は文章にもう少しクセのある人が好きだなあ。表題の袋小路の男、小田切孝の言い分は連作。自分から見る他人ってのは、本当に一面的でしかないのだよな。これは別に恋愛だけに限らなくて。だからこそ、決めつけずに常にフラットな気持ちで人と接したいものだ。
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