世界屠畜紀行 の商品レビュー
「かわいそう」と「おいしい」と「生きる」「屠る」、あと、「差別」。 自分の中の非常に弱い分野です。肉を食べたり皮革製品を使ったりすることと、命を奪うことのあいだに長くてふかーい溝がある。 筆者とはぜんぜん考えかたが違うけれど、それでもわたしの代わりに見てまわってもらっているような...
「かわいそう」と「おいしい」と「生きる」「屠る」、あと、「差別」。 自分の中の非常に弱い分野です。肉を食べたり皮革製品を使ったりすることと、命を奪うことのあいだに長くてふかーい溝がある。 筆者とはぜんぜん考えかたが違うけれど、それでもわたしの代わりに見てまわってもらっているような気持ちで読み進めた。 この本を読んで何かが変わったり強くなったりすることはなかったけれど、ひさしぶりに、読んでよかったなあと思える本でした。デザイン(by 寄藤文平と坂野達也)がとてもいい。
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世界の屠畜、食肉を作る過程と差別について。 ただし屠畜の面白さに気をとられて差別はわりとなおざり。 語ってはいても他者目線の他人事。 実際他人事だから自分のことのように語られても嫌だし(そこは筆者自身も意識して書いているようだ)屠畜の仕事を知ることは面白い。 へーこういうふうなん...
世界の屠畜、食肉を作る過程と差別について。 ただし屠畜の面白さに気をとられて差別はわりとなおざり。 語ってはいても他者目線の他人事。 実際他人事だから自分のことのように語られても嫌だし(そこは筆者自身も意識して書いているようだ)屠畜の仕事を知ることは面白い。 へーこういうふうなんだって面白がるには良い本。 これを読むだけで終わっちゃったら嫌だ。 中身はルポルタージュ、文体は興味がない人でも気軽に読めるエッセイ風。 一人称が「ウチザワ」だったりする文章のノリはあんまり好きじゃないけど無駄のない線のイラストは良い。地図はみづらい。 著者は徹頭徹尾「なにも知らない(利害のない・興味本位の・自分のアイデンティティや生活が脅かされることのない)部外者」の立場で屠畜を見る。 人に会って、現物を見て考える姿勢があるところは好ましい。 できあがった文章をポンと出すんじゃなくて、書きながら徐々に考えを深めていく、発見の過程をなぞっていくような印象。 でも言葉を定義しないままに使ってすれちがっているようなところも結構ある。 相手の考えを先取りして、「こうだろう」と思い込んだままストーリーを組み立てて勝手に反発しているようなところもある。 最初からリベラルな目線の部分(たとえば犬食について)と、斜に構えてみている部分(たとえば「動物愛護」的な感覚について)でだいぶ態度が違う。 「たくさんの肉を雑に食べるのではなく値段が高くなっても少ない肉を丁寧に食べるということをしたほうがいいんじゃないか」という言葉と「オーガニックビーフを買えない層がある」という言葉に矛盾は感じないのかとか、くりかえし描き出される「屠畜場面におびえない女子である私に驚く人たち」と、屠畜を特別視しないアメリカ女子への驚きをなんで同時に書けるんだろうとか、疑問に感じる。 「自称さばさばして男らしい性格の女」な匂いがやや鼻につく。 最後にちょこっと書いてある自分でやってみたってやつも獲ってもらった鳥をむしっただけで「つぶした」のとは違う。 差別にしても「動物を殺す→かわいそう→差別」「宗教的タブー→差別」という単純な形しか考えていないように見える。 殺すから差別されるんじゃなくて、差別したいから差別するための理由をつくるんだとか(だって殺すからダメなんだったら皮革加工で差別される説明がつかない)、殺したり血をみたりすることへの畏怖が直接差別につながるわけではないという視点はスッポリぬけている。 屠畜の是非や差別は抜きにして、屠畜の仕事だけを描いてくれればこんなにモヤモヤしなかったのに。 仕事だけを描いている部分は魅力的で、文句なく楽しめる。 この本を読む間、イライラする部分が多々あった。 それは自分になにがしか意見があるからで、この本の中に読み手が意見を掘り起こすためのとっかかりがたくさんあるということでもある。 納得する部分もいやそれは違うだろと思う部分も、自分が考える糧になる。
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日本を含め、世界各国の屠蓄事情を自ら取材し、感じたこと思ったこと、現実問題などなどイラストを交え書き綴られている。 いかに自分が無意識に、無自覚に肉を食べていたのか・・・と考えさせられる。もちろん牛や豚、鳥の命をいただいているのは頭の隅では分かっていても、現代日本に住んでいる限...
日本を含め、世界各国の屠蓄事情を自ら取材し、感じたこと思ったこと、現実問題などなどイラストを交え書き綴られている。 いかに自分が無意識に、無自覚に肉を食べていたのか・・・と考えさせられる。もちろん牛や豚、鳥の命をいただいているのは頭の隅では分かっていても、現代日本に住んでいる限りどういう過程で生肉されているのかを目にすることはほぼない。著者の言うように、人々の生活から隔絶されていることが余計に、忌避感や差別意識を助長しているような気もする。けれど、屠蓄されているから私たちはおいしいお肉を食べ、自らの血や肉となっているわけだし。 何も知らないで生きていることよりも、知った上でどう生きていくかがとても大切だと思った。この本に出会って、知らなかった世界を知ることができて本当に良かった。
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いやあ、もっと早く読むべきだった。評判になってるのは知ってたけれど、なんかもっとこうガチガチの本だと思って敬遠してたのだった。こんなに楽しい本だったなんて。 本の雑誌での連載が面白いので読んでみる気になった。あっけらかんと開かれた感じの文章で、この人が書いてるなら、べたーっと重...
いやあ、もっと早く読むべきだった。評判になってるのは知ってたけれど、なんかもっとこうガチガチの本だと思って敬遠してたのだった。こんなに楽しい本だったなんて。 本の雑誌での連載が面白いので読んでみる気になった。あっけらかんと開かれた感じの文章で、この人が書いてるなら、べたーっと重いものじゃなかろうと思ったのだ。 まさに予想通りというか予想を超えたフットワークの軽さに驚嘆。多くの日本人が考えようともしない屠畜の現場に、ホイホイといとも軽々と出かけていき「いいなあ、やりたーい」「うまそう」といいながらスケッチしてくる。そのスタンスが実に自然で肩肘張ったところがない。時におたおたしたり、うまくコミュニケーションがとれなくてもやもやしたり、まったく飾り気のないルポになっている。読みながらウチザワ(筆者の自称)と一緒に色々考えさせられる。 日本では「屠畜」と「差別」を切り離すことはできない。みんな肉を食べるのになぜ?という当たり前の疑問にウチザワは正面から当たっていく。自分が納得できないから、という姿勢にすごく共感する。まっとうな暮らしのあり方についてのイメージや、職人への敬意についても同様。混じりもののない好奇心とイラストが最大の武器だと思った。「社会派」ルポライターが書いたらこうはいかないだろう。
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世界の屠殺事情についての本。 日本の屠畜職人の方には、本当に敬意を抱かざるを得ない。 そしてこれからも肉を食い続けようと心に誓う。
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屠畜に興味があるならこの本は面白いのかもしれませんが、部落差別について読むならこの本はおススメ出来ません。 作者に屠畜に関わる忌諱や差別意識が全くないのは理解出来ますが。 「私は平気」「何故みんな嫌がるのか」など、自分の信念や価値観でしか屠畜を考えられないことに驚きました。 ま...
屠畜に興味があるならこの本は面白いのかもしれませんが、部落差別について読むならこの本はおススメ出来ません。 作者に屠畜に関わる忌諱や差別意識が全くないのは理解出来ますが。 「私は平気」「何故みんな嫌がるのか」など、自分の信念や価値観でしか屠畜を考えられないことに驚きました。 まして屠畜に関わる方に、「何故差別されるのか?」など尋ねるのは少々配慮が足りないのでは? 何よりも先に作者の『好奇心』が勝っていて、あまり取材対象の方や読む方のことは考えていないように感じました。 そして内容以前に文章を読むのが非常に辛かったです。 本というより、変わった趣味の友人の日記でも読んでいるような気分でした。
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芝浦を取材してきたってのが気になって読んだ。以下、日本のハナシについて思ったこと。 細かいところで、これ違うよ、ってところは何カ所かありましたが、作者の体当たりっぷりには感嘆する。 地方公務員獣医の仕事はこれに出てくるものの他にもいろいろあるし、「腔」は「くう」と読む。口腔外...
芝浦を取材してきたってのが気になって読んだ。以下、日本のハナシについて思ったこと。 細かいところで、これ違うよ、ってところは何カ所かありましたが、作者の体当たりっぷりには感嘆する。 地方公務員獣医の仕事はこれに出てくるものの他にもいろいろあるし、「腔」は「くう」と読む。口腔外科って言うでしょ。あと、バクヨウってのが気になったんだが、本州での馬喰のことなんだろうな。その他、取材時からの年月の流れもあって、現在からは情報がやや古い。 最後に、差別のことについては表面的なとこを行ったり来たりしとるだけで消化不良。
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「屠畜」と「差別との関係を始まりとして書かれたドキュメンタリー。 国によって、屠畜に対するイメージや、関わる人の地位が違ったり するのが面白い。 因みに東アジアはあまり高くない(むしろ低い) 東南アジア、南アジア、中東、北アフリカは国による 東ヨーロッパは高い この違いは宗教...
「屠畜」と「差別との関係を始まりとして書かれたドキュメンタリー。 国によって、屠畜に対するイメージや、関わる人の地位が違ったり するのが面白い。 因みに東アジアはあまり高くない(むしろ低い) 東南アジア、南アジア、中東、北アフリカは国による 東ヨーロッパは高い この違いは宗教的なものによる、ともいわれてるみたいだけど 仏教を例にとると東アジアは「殺生戒」が突出してしまったが故に 屠畜が忌まわれ、東南アジアのものは 「人はほかの命なしには生きられないのだから ありがたくいただく」という考え方が普及しているようで、 宗教というものの不安定さを感じることにもなった。 あと、世界各地で行われる犠牲祭が、 欧米の進歩的なひとたち(!)による動物愛護の視点から だんだん廃れてきているそうなのだが、 それもなんだかなぁ。 すごく偽善的なにおいがする。 その国の人たちが自ら望んでその風習を止めていくのは 自然だと思うけど、関係ない国の人が 殺される家畜がかわいそうだから止めろって 余計なお世話だ。 日本では屠畜に従事する人たちは長らく差別対象になってきたけど (多分江戸時代まで肉食がされていなかったせいだろう) 肉を食べ、革製品を使っているのだから むしろ「ありがとうございます」という気持で向き合わないと いけないと思う。 因みに日本人で屠畜を見ても平気な人は20人に1人の割合だそう。 「屠畜」に対して特に忌避感も嫌悪感も感じていないので 根拠は無いけどなんとなく自分も平気なんじゃないかと思った。
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たいせつな事。 わかっているようでわかっていない いただきますの言葉の重さ 食べられる生き物へ 生き物をお肉にしてくれる人たちへ 責任を持って食べなくてはいけない そしてそれを食べたのなら きちんと生きなければいけないとおもう
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興味深い内容ですが、やや作者の「あたしってこんなのことも出来ちゃうのよ!」みたいな主張の強さに辟易。まあ確かに凄いんですけどね。
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