胎児の世界 の商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
[ 内容 ] 赤ん坊が、突然、何かに怯えて泣き出したり、何かを思い出したようににっこり笑ったりする。 母の胎内で見残した夢の名残りを見ているのだという。 私たちは、かつて胎児であった「十月十日」のあいだ羊水にどっぷり漬かり、子宮壁に響く母の血潮のざわめき、心臓の鼓動のなかで、劇的な変身をとげたが、この変身劇は、太古の海に誕生した生命の進化の悠久の流れを再演する。 それは劫初いらいの生命記憶の再現といえるものであろう。 [ 目次 ] Ⅰ 故郷への回帰――生命記憶と回想(民族と里帰り 母乳の味 羊水と古代海水) Ⅱ 胎児の世界――生命記憶の再現(ニワトリの四日目 胎児の発生 再現について) Ⅲ いのちの波――生命記憶の根原(食と性について 内臓波動 永遠周行) [ POP ] [ おすすめ度 ] ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度 ☆☆☆☆☆☆☆ 文章 ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性 ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性 ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度 共感度(空振り三振・一部・参った!) 読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ) [ 関連図書 ] [ 参考となる書評 ]
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論文で在るにも拘らず、文章ひとつひとつが繊細で美しい。体験記も小説世界として、ノンフィクションとしての虚構の表現が巧みに使われている。 論文としては文章が肌理細やか過ぎて読み難さを少し覚えるが、興味深い本。ドグラ・マグラの影響を受けて居る様なので購入した一冊。 第一章読了。
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これを読むいきさつはちょいと複雑で。 まず、「ザ・キャラクター」を観て、改めて野田秀樹に心酔し、 それで「彗星の使者」を読んでみようと思い立ち、 それで野田秀樹が「彗星の使者」をこの本からインスピレーションを得た、 ということを知り、彼の頭の中を少しでも覗いてみたくて、 「胎児の...
これを読むいきさつはちょいと複雑で。 まず、「ザ・キャラクター」を観て、改めて野田秀樹に心酔し、 それで「彗星の使者」を読んでみようと思い立ち、 それで野田秀樹が「彗星の使者」をこの本からインスピレーションを得た、 ということを知り、彼の頭の中を少しでも覗いてみたくて、 「胎児の世界」へたどり着く…と、こういう感じです。 それで読んでみたら。 やー、この作者の三木さんのぶっとび加減が素敵すぎて参った笑。 なんていうか、素敵です、ここまでロマンを語れるのが。 いや、決して冷めた目で見ているわけではなくて、 私自身も「ひゃーすごい!」と思う事実がたくさん書いてあるわけですが、 これを力説する三木さんの勢いを私は愛します笑。 ラブリーな解剖学者に出会いたい方へ。 では、予習が終りましたので、「彗星の使者」を読みます!
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正直に言うと、読むに耐えなくほとんど読んでません。学者なので本物の中絶胎児を研究に使うなど、ワタシには読むに耐えられなかった。いくら母親が胎児を放棄したからと言って、胎児は与り知らぬ事。普段日頃、赤ちゃんの研究が進んだ事に感心してる自分が居るが、何かの命が犠牲になった事で解る結果...
正直に言うと、読むに耐えなくほとんど読んでません。学者なので本物の中絶胎児を研究に使うなど、ワタシには読むに耐えられなかった。いくら母親が胎児を放棄したからと言って、胎児は与り知らぬ事。普段日頃、赤ちゃんの研究が進んだ事に感心してる自分が居るが、何かの命が犠牲になった事で解る結果もあるのだろう。マジ動物実験とか、人間の倫理に外れない研究をしてもらいたいものだ。こういう学者物の著書は要注意だな。
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これは本当に生物学の本?と問いたくなるほど読みやすい。 発生学・古生物学・進化論・医学・人文科学・宗教・心理、等々、多岐に渡る分野の議論が“生命”の名の元に、ある一点を目指して集約してくるさまに感動。 こういう分野横断的な議論を、たった一冊の新書で実現してしまうなんて!驚きを隠...
これは本当に生物学の本?と問いたくなるほど読みやすい。 発生学・古生物学・進化論・医学・人文科学・宗教・心理、等々、多岐に渡る分野の議論が“生命”の名の元に、ある一点を目指して集約してくるさまに感動。 こういう分野横断的な議論を、たった一冊の新書で実現してしまうなんて!驚きを隠せない。 語り口はドラマチックに、内容は純然たる自然科学の知識・見識を悉く、奥深く用いて記されていて 生物学の入門書としても、単に読み物としても大変面白い。 大正生まれの著者による三十年以上前の書物とは思えないほど内容に新鮮な輝きがあって、筆者の先見の命に脱帽。
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ともすればトンデモ系の内容だけれど、読み物としては面白いのではないかと。 生物の誕生までに見られる、上陸過程の再現のくだりは特に。 何の講義で文献として上がっていたのかは結局思い出せず。 2009.06.02読了。
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最初、タイトルを見た時は、「胎児から、外界の音や光などの環境はどう感じられるのか」ということについて説明をした本だと思っていたのだけれど、全然違った。 もっと神秘的で、不可侵の領域に入っていく、胎児という存在そのものの不思議に分け入る本だったことを、読んで初めて知った。 人間の...
最初、タイトルを見た時は、「胎児から、外界の音や光などの環境はどう感じられるのか」ということについて説明をした本だと思っていたのだけれど、全然違った。 もっと神秘的で、不可侵の領域に入っていく、胎児という存在そのものの不思議に分け入る本だったことを、読んで初めて知った。 人間の胎児も含めて、あらゆる生物は、発生の段階で、その種がそれまでの歴史の中でたどった「魚類→両生類→爬虫類」といった進化の歴史をひととおり繰り返すということをした後に、さらに種固有の成長をしていくらしい。 それは、ものすごく短時間の間におこなわれる出来事で、鳥の場合は、数時間のうちに気が遠くなるほど長い年月分の進化の歴史を再現していることになる。人間の場合でも、着床から30日程度経過した時点から数日の間に、進化の反復はおこなわれる。 鳥やトカゲとは異なり、人間の胎児となると、発生の過程での解剖はそう簡単ではない。そこには、神域を侵すような、畏れの感情がつきまとう。 この筆者の文章は、とても文学的で、いたるところ繊細な感傷に満ちている。特に、伊勢神宮で20年ごとにおこなわれる遷宮を生物の代謝になぞらえて語っているところは、とても面白い。その表現からは、科学者というよりも、よほど宗教家に近いような印象を受ける。 しかし、この本は、そういう筆者だからこそ書けたのだと思う。単なる実証科学的見地からは、胎児の世界というのは描写不可能なものである気がする。 やはりヒトの胎児を見ないことには・・。これは、最初の脾臓のときからの課題であった。この課題は、当然、その胎児への墨の注入という問題にまで発展してくる。この情景はよく夢に見た。ヒトの胎児の心臓に針を差しているのだ。見物人がいて、「むごいことをする」という。この問題については、意識の片すみでつねに自問自答が繰り返されていた。できる、できない、ではない。やらなければならないのだ。いつの間にか、ヒトの胎児への注入は、このわたくしにとって宿命的な一つの義務と化していた。(p.100) さらに二日後の36日。ここには、まさにひとつの表情をもった顔が黙ってこちらを向いている。あの夏の終わりの一日、木立の窓辺で、「ハッテリア!」と心中で叫んだあの顔だ。こうして見ると、さきの34日は、魚類から両生類にかけてのものか・・。それは、この36日のまさに未然形といえるものだ。わたくしは、この二日間に起こる顔かたちの変化に、そして、ここに現れるほとんど名状し難いほどの表情のなかに、胎児の顔のひとつのクライマックスといったものを見ずにはいられない。なんというすごい表情だろう。(p.112) 羊水を満たした、暗黒の空間のなかで繰りひろげられる胎児の世界、それは人類永遠の謎として神秘のヴェールのかなたにそっとしまっておく、そんな世界なのかもしれない。この世には見てはならぬものがある。近代の生物学は、しかし、この一線をいつもやすやすと乗り越える。自然科学の実証の精神、というより人間のもつ抑え難い好奇心が、その不文律を破ったのだ。(p.151)
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「人間の胎児」になるまでを三木氏はある日、見つけることになる。 偶然手に入れた各日数を経た標本たちの首を、ある日切り落とす決意をし、正面を向いた姿と向き合うことになる。 受胎32日目、33日目へと経るにつれて、魚の顔、爬虫類の顔、哺乳類の顔へと移って行く。 進化の上陸劇の間に羊...
「人間の胎児」になるまでを三木氏はある日、見つけることになる。 偶然手に入れた各日数を経た標本たちの首を、ある日切り落とす決意をし、正面を向いた姿と向き合うことになる。 受胎32日目、33日目へと経るにつれて、魚の顔、爬虫類の顔、哺乳類の顔へと移って行く。 進化の上陸劇の間に羊水の海のなかからずぼーっ!と抜け出た私たちの中に宿るおもかげに、自然との攻防戦の痕をみた。 ロマンチストな解剖学者、三木さんの宇宙交響曲。
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吉本隆明の「家族のゆくえ」で紹介されていたので読んでみた。 胎児が成長していく過程(魚類から哺乳類へ)の紹介など興味深く感じた。 個人的には、内容が文学的っぽくてこれは科学の本なのかなという印象はアリ。
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ものすごくわかりやすくかかれていた。 胎児が育つ過程と人類(生物)の進化の過程を比較し理論的に、胎児の成長は生命起源を見ることと同じとしている。 神秘的であって理論的。 相反する世界が共存しているようですごくよかった。命は奥深い。
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