1,800円以上の注文で送料無料

体の贈り物 の商品レビュー

4.4

30件のお客様レビュー

  1. 5つ

    13

  2. 4つ

    13

  3. 3つ

    1

  4. 2つ

    1

  5. 1つ

    0

レビューを投稿

2024/05/06

職業的には冷静さと温かさが必要で、ただそれだけでは語り得ない想いの発露がここにはある。 例えば、受け持ちの患者であるリックの具合が急変して慌ただしく病院へと移送されていった朝。部屋に残された私は、当面は帰ってくる見込みもない彼の部屋で、いつも通りに掃除や洗濯をしてキッチンへ向か...

職業的には冷静さと温かさが必要で、ただそれだけでは語り得ない想いの発露がここにはある。 例えば、受け持ちの患者であるリックの具合が急変して慌ただしく病院へと移送されていった朝。部屋に残された私は、当面は帰ってくる見込みもない彼の部屋で、いつも通りに掃除や洗濯をしてキッチンへ向かう。 そこには食事が用意されている ー 彼が二人で食べようと用意した食事だ ー 。 それを目にしたときに彼女のとる行動に、ハッと胸が締め付けられる。 誰にも見届けられることのないこんな瞬間に人を動かすのは、職業的倫理感ではない。 自然とあふれでる人としての想いだ。 『汗の贈り物』この10ページ足らずの短編の中で、静かにそれでも大きく、彼女の中で被介護者であるリックに向けられる視点は変わってゆく。 ことさらにドラマチックな訳ではない。生と死というテーマにしては、いっそ抑制が効いた語り口ともいえる。 なのに主人公である私の心の揺れ動く様に共振して揺さぶられるような印象を受けた。 どの短編にも熟練したケアワーカーとしての配慮に満ちた気配りとテキパキとした対応が描かれている。なんだか清潔で頼れる感じに安心してしまいそうな錯覚すら覚える。しかし、当然ながらそれは錯覚に過ぎない。 本短編集は連作となっている。 担当として通った先で出会った見舞客が、次の編では病に伏せて患者となっている。 自宅で過ごせていた人が、後にはホスピスに移って登場する。 みんな不治の病で死んでゆく。 読み進めるにつれて、主人公である私の心が擦り切れてゆくのがわかる。 それでも、 希望がないところに尊厳を持つこと。 死や病に際して抗うことの是非を問うのではなく、それぞれの思いを尊重すること。 日常生活が送れなくなってゆく中で、まるでいつもと同じ明日がくるかのように振る舞うこと。 辛いテーマなのに、読後には、手にとってよかったという読んだことの幸せを噛み締めた。 きっともう一度読むときがくるだろう。 後書きで翻訳者の柴田元幸さんが述べている。 “訳した本はどれも、届くべき読者に届くことを祈りつつ世に送り出すものだが、この本はいつにも増して熱く祈りたいと思う。 この本をいいなと思ってくださるであろう方々の、できるだけ多くにこの本が届きますように。”

Posted byブクログ

2023/10/26

エイズ患者を世話するワーカーの患者との交流の物語。死ぬことがわかっていて死にむかって時間が過ぎていく中で自分を強く持って過ごす、その尊厳を守り手助けする私の彼彼女との距離感、信頼関係が素晴らしい。

Posted byブクログ

2022/12/11

エイズ患者のケアワーカー目線で書かれる小説。 翻訳に無理がなく、読みやすい。 訳者あとがきによれば、著者のレベッカ・ブラウン氏は、「中学英語の範囲に収まるような文章と単語を使‥」う作家だそうなので、次回読む機会が訪れた時には、原文で読んでみたい。

Posted byブクログ

2022/10/31

訳者もあとがきで書かれているが、無理やり感動的にしたり、心温まる交流にしたり、そういった物語的な作品ではない。もっと現実的に感じる。 実際に家族を介護していた時にお世話になった方々を思い出す。

Posted byブクログ

2019/02/03

エイズが猛威を振るった時代の、患者の生活の面倒を見るケアワーカーが主人公。患者たちとのやり取りの中で、何気ないけれど心を静かに震わせるひとつの場面をぽんと投げてすっと幕を閉じる短い話が積み重なります。まるで、見たことがない切り取り方で息を飲ませる静謐な写真のよう。文庫版が流通して...

エイズが猛威を振るった時代の、患者の生活の面倒を見るケアワーカーが主人公。患者たちとのやり取りの中で、何気ないけれど心を静かに震わせるひとつの場面をぽんと投げてすっと幕を閉じる短い話が積み重なります。まるで、見たことがない切り取り方で息を飲ませる静謐な写真のよう。文庫版が流通しています。心からおすすめしたい一冊です。

Posted byブクログ

2018/05/11
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

 エイズを発病した人々の身の回りの世話をするホームケアワーカーの女性の視点で描かれる11の物語。と書くと死を迎える末期患者との心温まる交流とか、主人公が患者たちから力をもらい成長していく的なお話を想像するが、訳者のおっしゃるように、ドラマチックさを排除し、体験を淡々とストレートに描いた筆致がすばらしい。  人は生まれながらにして死に向かっていく、生まれたての赤ん坊も、大病を患う人も、私も、例外はないんだと思い知らされる。だからと言って何時も絶望しているわけにはいかない。人は人とのつながりの中で小さな贈り物を交換して、生を実感できるのだ。

Posted byブクログ

2017/09/13

2017.09.13読了。 今年14冊目。 訳者あとがきにもあるようにあらすじを知ったらきっと読まなかったであろう本。 江國さんがオススメしていて読みたいと思ったわけだけど、なるほど!読んで良かったと思える一冊。 こういう話ってなんとなく小説としてありがちな話で私は少ししらけ...

2017.09.13読了。 今年14冊目。 訳者あとがきにもあるようにあらすじを知ったらきっと読まなかったであろう本。 江國さんがオススメしていて読みたいと思ったわけだけど、なるほど!読んで良かったと思える一冊。 こういう話ってなんとなく小説としてありがちな話で私は少ししらけた気持ちになってしまうことが多い...死というとてつもなく重いものを扱っているのに中身がないような...お涙頂戴的な...とにかく響いてこないことが多かった。 この体の贈り物はすごくシンプルに生きること、死ぬこと、希望、絶望が描かれていると思う。 とても重く悲しいのにすっと読めて読後感も悪くなく、不思議。 レベッカ・ブラウンの他の作品も読んでみたいと思った。

Posted byブクログ

2015/12/08

初めて読んだときは衝撃だった。とてもシンプルで淡々とした筆致で、テーマの重さを感じさせない。徐々に明かされる語り手の職業と、その周囲に漂う生と死の気配。終始、白いイメージがある。

Posted byブクログ

2014/02/06

エイズ患者という難病を扱っており、全体的に話は重く静かに進みます。 内容に起伏が乏しく、明るいわけではないのであまり好きになれなかったです。 個人的には「動きの贈り物」の話には希望があって好きでした

Posted byブクログ

2013/08/18

(2001.06.03読了)(拝借) (「BOOK」データベースより)amazon 食べること、歩くこと、泣けること…重い病に侵され、日常生活のささやかながら、大切なことさえ困難になってゆくリック、エド、コニー、カーロスら。私はホームケア・ワーカーとして、彼らの身のまわりを世話し...

(2001.06.03読了)(拝借) (「BOOK」データベースより)amazon 食べること、歩くこと、泣けること…重い病に侵され、日常生活のささやかながら、大切なことさえ困難になってゆくリック、エド、コニー、カーロスら。私はホームケア・ワーカーとして、彼らの身のまわりを世話している。死は逃れようもなく、目前に迫る。失われるものと、それと引き換えのようにして残される、かけがえのない十一の贈り物。熱い共感と静謐な感動を呼ぶ連作小説。

Posted byブクログ