罪と罰(上) の商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
主人公のラスコーリニコフは、自身の生活や経験から、頭脳と精神の強固な者だけが、人々の上に立つ支配者となり、多くのことを実行する勇気のある者が誰よりも正しいと悟った。そして、歴史が示しているように、人類の進歩のために新しい秩序を作るために現行秩序を踏みにじる権利は、物事を勇敢に実行する(善の大きな目的のためには、ちっぽけな悪には見向きもしないで踏み込む)者のみに与えられるという信念の下で、自分にその資格があるか試すために敢然と金貸しの老婆を殺害する計画を実行した。 最後まで逃げ続けよう、自分のことを疑っている奴らには決して屈服しないと考えていたラスコーリニコフであったが、その計画を実行する前後には、ラスコーリニコフは、犯行に対する不安や危惧、また、家族をはじめとする周辺で起こる出来事やそれに対する懸念などが相まって、何日も頭を痛めることになった。これは、ラスコーリニコフは、ナポレオンにはなれなかった、すなわち、権力を有するに相応の天才ではなく、ただの愚かな卑怯者に過ぎなかったことを示すものであり、彼もそのことを悟るに至る。また、知り合った退職官吏の娘であるソーニャの決して嘘をつかない真っすぐな生き方、自他を問わず不幸を受け入れようとする生き方に心を打たれ、最終的には自らが犯した犯罪のすべてを自白する。 本編は全7部からなっており、1000ページを超える長編となっていること、登場人物が多く、時には名前が略されて述べられることなどから、読み切るには相当の根気が必要である。ただ、読み継がれている世界的巨匠の作品というだけあって、秀逸かつ独特な点がいくつもあった。例えば(これは、『罪と罰』に限らず、ドストエフスキーの作品に共通するのかもしれないが)、登場人物たちがかなり雄弁であり、現場の緊張感や当時の風俗のリアルがひしひしと伝わってくる。また、多くの小説では排除されている主人公以外の者たちの事件には直接関係のない会話や心境等が細かく記述されていることで、特異な状況(殺人犯、偏執狂)にある主人公とそれ以外の人物のそれぞれの時の流れや緊張感をリアルに感じられたと同時に、犯人の犯行前後の行動には様々な出来事や出会いが複雑に絡み合っているということを実感させられた(この作品を読んだ後では、通常の小説は、事件以外の時間をあまりにはしょりすぎて、現実からやや乖離しているといえるのかもしれない)。 まとめると、本編は、罪を犯してしまったラスコーリニコフの罰ともいえる苦悩と戦いの物語である。ドストエフスキーは、理性による改革は失敗するということ、愛は人間の意思決定に介入し、行動を変えさせる力を有するということを示したものと考えられる。
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「青春時代に読んで、胸にじいんとした」という教授の言葉を聞いてからずっと早く読まなきゃと気にかかっていた本。 思っていた以上の読みやすさ。おもしろさ! 文章は会話文が続くからといって必ずしも陳腐になるわけではないのだと知る。おもしろさの中に思想や思考の深さが滲み出ている。 ラズミ...
「青春時代に読んで、胸にじいんとした」という教授の言葉を聞いてからずっと早く読まなきゃと気にかかっていた本。 思っていた以上の読みやすさ。おもしろさ! 文章は会話文が続くからといって必ずしも陳腐になるわけではないのだと知る。おもしろさの中に思想や思考の深さが滲み出ている。 ラズミーヒンがたいへんかわいい。
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10年以上前に「カラマーゾフの兄弟」で挫折して以来、なんとなく敬遠していたドストエフスキーの本をついに読んでみることに。 「カラマーゾフの兄弟」のときと同じく、登場人物の名前や愛称を覚えきれなくて挫けかけたけど、登場人物名や愛称でググると役職やら立ち位置が何だったのか思い出すこと...
10年以上前に「カラマーゾフの兄弟」で挫折して以来、なんとなく敬遠していたドストエフスキーの本をついに読んでみることに。 「カラマーゾフの兄弟」のときと同じく、登場人物の名前や愛称を覚えきれなくて挫けかけたけど、登場人物名や愛称でググると役職やら立ち位置が何だったのか思い出すことが出来て、なんとかストーリーについてけた。 最初の方はラスコーリニコフの葛藤と行動にイマイチ整合性が感じられなくてついていけていなかったけれど、次第に彼を応援したくなり始めてからは、もうページを繰る手が止まらなくなってしまった。 下巻でどう展開していくのか予想もつかない。 ところで裏表紙のあらすじ、本文を読み終えてから読んでみるとちょっと内容違うような……。そこを特に気に病んでる様子は無かったよね?
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出だしでちょっと自分が読み続けられそうか不安になるが、いよいよとなってくるとどんどんのめり込んでいく。情緒に振り回され論理を踏み抜きながら、自分も色んな感情に翻弄されていく。
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海外文学をあまり読まないわたしにとってハードルが高い作品でした。 他の方も書いていますが、登場人物の呼び方のパターンが多くて混乱します。 なので「罪と罰 登場人物一覧表」というサイトを参考にしながら読みました。 難しいなぁと思いながら読んでいましたが、次第に続きが気になるようにな...
海外文学をあまり読まないわたしにとってハードルが高い作品でした。 他の方も書いていますが、登場人物の呼び方のパターンが多くて混乱します。 なので「罪と罰 登場人物一覧表」というサイトを参考にしながら読みました。 難しいなぁと思いながら読んでいましたが、次第に続きが気になるようになり下巻も購入。 まだ下巻を最後まで読んでいないので最終的な感想は言えませんが、今回の初読では物語の細々としたところなどきちんと理解出来ていないと思うので、いつか読解力がもっと身についた時にまた再読したいです。
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再読、読後の感動は言い表せない…きっとまた何度でも読み返すだろう作品、ラスコーリニコフ…世界で一番有名な主人公、大好き…面白くなければ文学じゃない!そしてここまで残されている偉大な作品にはそれだけの価値がある
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非凡な人間は法を踏みこえることが許される、という思想のもと、主人公は殺人を犯すが… 様々な登場人物との交流を通して、主人公である殺人者の心理が描かれる。
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みな思い込みが激しくて、滑稽。ごちゃごちゃした感じが並外れている。下巻に続く見知らぬ男の登場がドラマチック。人の生の重みの違いなど倫理的な難問も論じられている。
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もっと難解で読みづらいかと想像してたけど思ったよりはさくさく進む。惹きこまれる。ラズミーヒンが好き。
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観念的な人間が、仮に殺人を犯したときにどのように振る舞うのか?これはその問いに対して、小説という形式を最大限に利用した思考実験であり、主人公ラスコーリニコフの豊富な内面描写を通じて、そのような局面に置かれた際の心理状況を読者はリアルタイムに追いかけていける面白さがある。 上巻は...
観念的な人間が、仮に殺人を犯したときにどのように振る舞うのか?これはその問いに対して、小説という形式を最大限に利用した思考実験であり、主人公ラスコーリニコフの豊富な内面描写を通じて、そのような局面に置かれた際の心理状況を読者はリアルタイムに追いかけていける面白さがある。 上巻は思いがけない2人の殺人にびくびくするラスコーリニコフが、過去に自身が執筆した論文をトリガとして、犯罪の嫌疑をかけ始められる部分まで。下巻こそ本書の白眉であり、そちらにさらに期待。
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