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悪霊(上) の商品レビュー

3.9

53件のお客様レビュー

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2021/06/18

上巻は謎が謎を呼ぶ一方で1章ごとに休憩入れながら。下巻の1/3読み進めたあたりからは展開がジェットコースター。いつもながらエピソード作りはめちゃ面白い。 けれど、やはりこの信用できる人間が誰もいないタイプの構造は苦手。人物が本音で話し出すまでが辛かった。 こんな小説が産みながら...

上巻は謎が謎を呼ぶ一方で1章ごとに休憩入れながら。下巻の1/3読み進めたあたりからは展開がジェットコースター。いつもながらエピソード作りはめちゃ面白い。 けれど、やはりこの信用できる人間が誰もいないタイプの構造は苦手。人物が本音で話し出すまでが辛かった。 こんな小説が産みながら密告と粛正の国になっていくこの時代、やはり興味が尽きない。

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2020/05/28

これまでに何冊か読んだドストエフスキーの小説の中で、最も難解な作品。 主人公はステパン・トロフィーモヴィチではなく、ニコライ・スタブローギンだとわかるまでに時間がかかった。 上巻のクライマックスは、ニコライとガガーノフの決闘であろうか。

Posted byブクログ

2020/01/12

ドストエフスキーの5大長編(『罪と罰』『白痴』『悪霊』『未成年』『カラマーゾフの兄弟』)を上梓順に読破するというドストエフスキー・チャレンジを実施中の僕ですが『罪と罰』『白痴』の2冊を読了し、3作目の本作『悪霊 上』に取りかかりました。 この『悪霊』も文庫本としては、岩波文庫(...

ドストエフスキーの5大長編(『罪と罰』『白痴』『悪霊』『未成年』『カラマーゾフの兄弟』)を上梓順に読破するというドストエフスキー・チャレンジを実施中の僕ですが『罪と罰』『白痴』の2冊を読了し、3作目の本作『悪霊 上』に取りかかりました。 この『悪霊』も文庫本としては、岩波文庫(米川正夫訳)、新潮文庫(江川卓訳)、光文社古典新訳文庫(亀山郁夫訳)の3出版社から出版されていますが、前回新潮文庫版(木村浩訳)の『白痴』を読んだので今回も2004年に改版されて文字の大きくなった新潮文庫版の『悪霊』を手に取りました。 読み始めた『悪霊』、いや、これは正直言って最初はきついですね。 まず最初の200ページくらいは何の話をしているのか全くわからない。 ストーリーの意味が解らないのですよ。多分、これから活躍していく主人公的な人々の人物紹介なのだろうけど・・・。 とりあえず主人公が誰だか分からないんですよね・・・。 ただ、これはドストエフスキーが悪いのでも、訳者江川卓氏が悪いのでもなく、僕の知識のなさが原因です。 まず、この『悪霊』という小説は、実際の事件をモデルに描かれた小説なのです。その実際の事件の背景を知らなければ、この『悪霊』は理解できないのです。 そのモデルとなった事件というは、1869年に起きた『ネチャーエフ事件』です。 この『ネチャーエフ事件』というのは、ロシアでの革命を目指し、秘密結社を作ったセルゲイ・ネチャーエフが、組織の仲間であった学生イワン・イワノフが組織を脱退するに際し、官憲に密告する恐れがあるということで、学生イワノフを殺害したという事件です。 ネチャーエフはイワノフを殺害した後、スイスに逃亡したのですが、1872年に逮捕され、投獄され、その後、獄死しています。 ドストエフスキーはこの『ネチャーエフ事件』をモデルにしてこの『悪霊』を1871年から1872年にかけて雑誌に連載し、1873年に単行本として出版しました。 つまり、ネチャーエフがスイスに逃亡している間に、ドストエフスキーはこのネチャーエフをモデルにして小説を書き始めたということなのです。 この『悪霊』のなかではネチャーエフに該当する人物は、ピョートル(ピョートル・ステパノヴィチ・ヴェルホーヴェンスキー)で、彼に大きな影響を与えるのが本書の主人公・スタヴローギン(ニコライ・フセヴォロドヴィチ・スタヴローギン)なのです。 ピョートルはスタヴローギンを秘密結社の中心に祭り上げようと画策するのです。殺害されるイワノフに当たる人物は、本作ではシャートフ(イワン・パーヴロヴィチ・シャートフ)で彼はスタヴローギン家の農奴の息子であるという設定です。 この上巻は、後半になってやっと盛り上がってきますが、上巻ではこの事件の核心部分にはあまり突入しません。 後半がどう盛り上がってくるのか、期待大ですね。

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2019/09/27

今年読んだ中でいちばんでかい読み物かも。なんとなく挑戦してみたけど読んでよかったな! 第一にドストエフスキーはとても面白い。とくにこれはめちゃくちゃおもしろい。登場人物が多いのにその全てが必然性をもってそこに存在しているし、魅力的。また中盤でそれらのキャラクターが一堂に会するシー...

今年読んだ中でいちばんでかい読み物かも。なんとなく挑戦してみたけど読んでよかったな! 第一にドストエフスキーはとても面白い。とくにこれはめちゃくちゃおもしろい。登場人物が多いのにその全てが必然性をもってそこに存在しているし、魅力的。また中盤でそれらのキャラクターが一堂に会するシーンがあり胸が高まった!事実をすこしずつ小出しにしてパズルのピースをすこしずつはめていく感じがたまらない、推理小説でもないのになにかしらサスペンス的な読ませる語り方をしている。ほとんどの人が死んだり破滅したりしているのに滑稽に描いているのに暗かったりじめじめしていない。あくまで人を描くのがうますぎる。キリーロフがいいですね

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2018/09/17

20180507 ドストエフスキーで残る作品を読む。 人間が持つ暗い部分、葛藤、矛盾、絶望の深淵を覗ける作家。人間ではどうしようとならない状況において、神にすがるのか、何を解決の縁とするか、を意識して読みたい。 自殺しない理由 ①恐怖 ②神 神からの恐怖を乗り越えた人間は神...

20180507 ドストエフスキーで残る作品を読む。 人間が持つ暗い部分、葛藤、矛盾、絶望の深淵を覗ける作家。人間ではどうしようとならない状況において、神にすがるのか、何を解決の縁とするか、を意識して読みたい。 自殺しない理由 ①恐怖 ②神 神からの恐怖を乗り越えた人間は神となる →悪霊

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2017/12/05

村上春樹「騎士団長殺し」にドストエフスキーの悪霊の〇〇のような、との比喩があった。単身住まいで手元に本がないが、スタヴローギンのような、という文だったんだろう。 兎も角、そんな切っ掛けで悪霊を読んでみる気になった。 悪霊がどんな小説であるかは裏表紙にある。無神論革命思想に憑かれ...

村上春樹「騎士団長殺し」にドストエフスキーの悪霊の〇〇のような、との比喩があった。単身住まいで手元に本がないが、スタヴローギンのような、という文だったんだろう。 兎も角、そんな切っ掛けで悪霊を読んでみる気になった。 悪霊がどんな小説であるかは裏表紙にある。無神論革命思想に憑かれ破滅した青年たちを実在の事件を元に描いたと。冒頭には、プーシキンの悪霊に憑かれた姿を描く詩とルカの福音に描かれる悪霊に憑りつかれて湖に飛び込んでいく豚達の文が引用されている。 最初の登場人物はステバン氏。歴史学者で活動家と紹介されるが、卑小な存在だったとあけすけなく綴られる。そして、彼のパトロン、ワルワーラ夫人。登場人物は多数あるが、第1部は殆どこの二人の物語。ドストエフスキーの悪い癖で意味なく唯々、長い。物語が何処に向かうのかまったく見当つかない。 ワルワーラ夫人の子、ニコライ・スタヴローギンとステバン氏の子、ピョートル・ヴェルホーヴェンスキーの登場でやっと物語が前に進む。しかし、40年前の高校生の時分だったら「スイスでの他人の不始末」なんて持って回った云い方はピンと来なかったかも知れない。 一旦、決着着いたと思った話が、次のシーンでどんでん返し。あれ、ミステリーだった?ネタバレに注意しよう。 無政府主義の青年たちの心情の吐露が神についての問答となるのが日本人の自分には判りづらい。カソリックについての批判には納得するが、ロシア正教について無知だし、難しいなあと首を捻るばかり。 最初、伝聞として語られていたニコライが小説の中で動き出すと、どう説明して良いか判らない。婚約や決闘。彼はまともに行動しているつもりなんだろうけれど、正直、理解しがたい人物として存在が重くなってくる。 やっとの思いで、上巻を読み終えた。暫くしたら、ステバン氏のエピソードは何も頭に残っていないだろう。何のための長編だったかと云えば、疑問だらけ。ストリーテラーとしてドストエフスキーには根本的な問題があると思う。

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2017/02/17

『白痴』が俗世に現れた天使が主人公ならこれは俗世に現れた悪魔が主人公なんだけど、その対極を本心から心理描写できるのが凄い著者だなぁと思う。神あるいはそれに近い、人間よりも偉大な概念が無くなった時代には善も悪の概念もない、そうだろうなぁと漠然と思った。

Posted byブクログ

2016/02/13

相変わらずのドフトエスキー調。ロシア節。ニコライが魅力なのに出てくるのが遅すぎやしないか?前半の長々とした退屈な場面であやうく本を置きそうになってしまった。

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2015/08/14

再読である。まるで初めて読むように味わうことができた。日本の近現代文学にも影響を与え続ける名作をたっぷりと味わえ、普段の読書より濃密な時間を過ごすことができた。スタヴローギンがやはり気になる。彼の最後が暗示する「未来」とは予想してみたくなる。ステパンもカルマジーノフも滑稽でもある...

再読である。まるで初めて読むように味わうことができた。日本の近現代文学にも影響を与え続ける名作をたっぷりと味わえ、普段の読書より濃密な時間を過ごすことができた。スタヴローギンがやはり気になる。彼の最後が暗示する「未来」とは予想してみたくなる。ステパンもカルマジーノフも滑稽でもあるが、生きることに真摯で好感持つことができた。「スタヴローギンの告白」にもある通り、作者のこの作品にかける情熱は熱く沸き立っている。

Posted byブクログ

2014/12/30
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

この作品の中で語られる思想的な側面についての批評は、多くの方々の先行するそれをご覧ください。他のレビュアーの方々の批評はもちろん、これに関する論文等、読み込めば読み込む程の面白さがあると思います。  私はむしろ、ドストエフスキーという名前、作品の分量、そして「思想的な」難解さという、この作品についてまわるイメージ・評価が先行しているようにな印象を受けます。  本作の思想的な対立軸や、対決の内容自体を追いかけて読むことも面白いと思います。しかしそもそも、それ以前に、この作品は物語として、読者をこれでもか、これでもかと引き込んでくれる面白さ、楽しい(というとやや語弊があるか?)仕掛けに満ちています。  次の展開がついつい気になってしまうワクワク感、クスクスと笑いが漏れてしまう強烈な皮肉、ゾクゾクと背筋を凍らせる背徳、思わずうめきを漏らしたくなる鈍痛のような衝撃、等々・・・  思想的・哲学的な側面に深く踏み込まなくても、純粋に物語として楽しめます。そして、そのような読み方は決して間違っていないと思いますし、むしろ間違っていると斥けてはならないと思います。物語として楽しめた時点で、十分に小説の楽しみを享受できているといえるのではないしょうか。  登場人物別に言えば、まずステパン氏が面白い。この作品の笑い担当といってもよいかもしれません。彼は生活力のない、浮世離れした感のある、貴族をパトロンに持つ学者先生です(『学者先生(爆)』としたいところです)。やや社会不適合なタチの、今風に言えば「自宅警備員」風の人物です(中年のいい年なんですが)。そんな彼に向けられる、語り手の少し遠回しで辛辣な物言いは、上巻冒頭部から冴えわたっています。学者先生を向こうに回して、鋭いジャブを繰り出します。パトロンのワルワーラ婦人の彼に対する理不尽なまでの罵詈雑言とともに、彼の登場する場面は笑い通しになること請け合いです。  次に、ピョートル。彼はステパンの息子で、混乱・騒擾を引き起こしてロシア社会を転覆させてしまおうという陰謀を抱いて、小説の舞台である街にやってくるのです。今風に言えば「中二病」をこじらせている点では、あの親にしてこの子と言った感があります。しかし、彼はとにかくよくしゃべる。16ビートのドラムス、速弾きのギターの様な、究極のマシンガントーク。彼の言葉の身も蓋もないあけすけな内容、異常な熱のこもったアブナイ独演会。これが夜な夜な、「同志」達の秘密の集会等の場の、ろうそくが照らす薄暗がりの中で展開されます。時に笑いあり、時に迫力あり、醜悪なのについつい聴き入ってしまう―一級のペテン師の弁舌に身を委ねる、危険な愉悦があります。彼のハイテンション・ハイテンポな語り(というか騙り)が読者の脳内で再生されたとき、その強烈な魅力に引きずり込まれることでしょう。  最後にスタヴローギン。下巻の「スタヴローギンの告白」に全てが詰め込まれています。人を誘惑し、陥れ、破滅させてしまう彼の悪魔的所行-身の毛もよだつ、同時になぜかその背徳に強く胸を打たれてしまう、高鳴る鼓動を禁じ得ない感覚。これは他のどんな物語でも、そうそうは得られません。これこそがこの作品の真骨頂でしょう。 長々と恥かしげもなく述べ立ててしまいました。私の低劣な作文力では、もはや(当然のことながら)この作品の魅力を語り伝えることは出来ません。とにかく、だまされたと思って読んでみて下さい。難しく考えずに、書かれたことを享受してみてはいかがでしょうか。心を根底から揺さぶる仕掛けが満載です。この巨大な熱量を持った物語を満喫してください。こんなに強烈な、こんなに迫力のある物語、そう簡単には出会えないのですから。

Posted byブクログ