車輪の下 の商品レビュー
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【概要書き殴り】 聡明で幼気な少年を、豊かな自然の生活から引き離し、功名心に駆り立てることで神学校に送り込んだ大人達。規則まみれで高慢な神学校の教師達。 道半ばで心を病み郷里に帰った少年と親しく交渉する者もない。 年上の娘の気まぐれに恋心を翻弄され、御し難い青年への過渡期に苦しむ。 誰よりも優秀だった少年は、結局は同級生達の誰よりも遅く見習い工になった。 務め人の快い苦労と仲間との交流、酒やタバコの大人の街遊びにも参加した挙句、酔いだけが原因か、川に流され物言わぬ体に成り果てる。 【感想書き殴り】 ヘッセの自伝的小説であり、周囲の大人達へのルサンチマンや少年の傷つきやすい心の機微を描き出した物語は、あえてこの本を大人になって読むような若者である自分には共感を与えた。 いっそのこと自分も川に落ちたい気持ちすら湧く。 しかしヘッセは物語の主人公とは違い、自らに使うピストルを2度も買うような危機まで経験するも、持ち直して大人になっていく。(訳者解説より) ヘッセにとっての詩作、小説書きのように、自分にとっての人生の取り組みは何であろうか。日々をブルシットな仕事に費やし、酒とタバコに気を紛らわせる人生だが、気が向いた時に本を読み自分と向き合う作業はせめて続けていきたい。 教育の車輪に強く轢かれはしたが、通り過ぎた車は振り返ることはない。傷と知識とを残された自分は足で進むしかない。
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「ノルウェイの森」の作中、ワタナベくんがミドリの家で読んでいた印象。 中1の教科書にとりあげられているらしいと知って、読もう読もうと思っていたいわずと知れた作品。 前半は自然豊かな描写が綺麗だけど、なかなか読み進まず、(産後で読解力も産み落としたんかってくらい文字に目が滑る…)、後半にいくにつれてぐんぐん惹き込まれるのと同時にどんどん切ない気持ちに。 「車輪」のワードに辿り着いた時には、 そういうテーマなのか じゃあ下ってことはこの先は…と 胸が詰まるような感覚で読了。 調べてみたら、 ドイツで落ちこぼれになることの例えとして「車輪の下敷きになる」と言われることがあるそう。 『こういうふうに陽気な日曜日を持ち、当然その資格のある人間のように、人生を心得、愉快にやることを心得ている人たちと一緒に、料理店のテーブルに向かって腰掛けるのは、すてきだった。 ...力をこめてテーブルをとんとんたたき、屈 託なく「ねえさんもう一杯」と叫ぶのは、すてきで男らしかった。』 社会に圧迫された環境に翻弄されながらも、 序盤と中盤、終盤で主人公ハンスから見る世界が変わっていく描写が勇気づけられ、 その分、主人公の結末と周りの悪意のない、自分が与えた主人公への圧力に気付かずにただただ可哀想にと嘆く姿に、うわわわとなった。(語彙力…。笑) ほぼ作者ヘッセの自叙伝だというこの話。 解説まで読んで、この作品がさらに胸に落ちた。 教育者として、親として、 忘れたくないなあ、と思う感覚でした。
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多感で傷つきやすい少年、ハンスの短い青春。 ヘッセの自伝的小説らしいが、小説としてより自然の描写にそのすごさを感じた。これは川端康成の雪国にも感じたことで、現代人には内容はピンと来ない部分が多いが、逆に今はない自然豊かな空気により癒しを感じるのかもしれない。
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一文一文に詩的な表現が含まれるので理解と想像をフル活用させて読むと非常に疲れるが、その分少年を取り巻く環境を感覚的に読み取れる。 最後、こうした形でこの世を去るハンスを救われたと思ってしまうことに何とも言えない虚しさを感じた。
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少年時代特有の非常に敏感な感性と、その繊細さゆえに感じ取ることができる特別な美しさや、時には残酷さ。 そういったものがふんだんに描かれていて、読みながら不思議と懐かしさのような感情を想起させられた。 がらんとした秋の静かな昼下がりのような、少しの哀愁と心地の良い気持ちをもらたして...
少年時代特有の非常に敏感な感性と、その繊細さゆえに感じ取ることができる特別な美しさや、時には残酷さ。 そういったものがふんだんに描かれていて、読みながら不思議と懐かしさのような感情を想起させられた。 がらんとした秋の静かな昼下がりのような、少しの哀愁と心地の良い気持ちをもらたしてくれる素敵な作品でした。
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解説によると、ドイツでは8位だが日本では1番読まれているヘッセ作品らしい。親の「手ぬかり」が招く惨事、教育システムを車輪に見立てたヘッセの警句。衝撃のラスト。
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親や周囲の期待の重圧があるとは言え、ハンスが甘ったれに思えてしかたない。病んでしまったことは哀れとは思うし同情はするけど、何で人気があるのか理解できない。それに子どもには読ませたくないな。
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前半はハンスが神学校に入学するまでの過程や入ってからの先生や仲間たちの交流や勉強が中心で 少し重苦しく気晴れしない内容に感じた。 エンマとの出会いから物語が人間味が出てき出してそこからの機械工見習いや職人との交流が面白かったがクライマックスが予想外で悲しく思ったがハンスにとってはどうだったんだろうという 疑問が残りました。 人間、学問も大事だと思うが、子供の頃などの感性が敏感な時期は特に色んな形で自然に触れたり 友情や恋愛を経験するのが大切なんだと感じました。
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あまりにも学校生活ががんじがらめで窮屈そうな息子を見ていて、少しでも彼を理解したいと思い、読んでみました。 率直に言うと、すんなり読める本ではなかったです。 感情を読み解くだけで理解できるものではなかった。 読んでる途中も、読み終わった後も、「うーーむ。これはどうやって読んでいけ...
あまりにも学校生活ががんじがらめで窮屈そうな息子を見ていて、少しでも彼を理解したいと思い、読んでみました。 率直に言うと、すんなり読める本ではなかったです。 感情を読み解くだけで理解できるものではなかった。 読んでる途中も、読み終わった後も、「うーーむ。これはどうやって読んでいけばいいのかわからない」というのが感想でした。(途中で挫折しそうになった) しかし、巻末の解説を読み、一晩考えたら理解できました。 読む順番として正しいのかわからないけど、「解説→車輪の下」の順に読むと背景描写が理解できて、この小説の面白さがわかると思います。(ヘッセの人生をある程度理解している人はいきなり作品を読んでもいいと思う) 車輪の下はヘッセの幼少期を自伝的な小説に仕立て上げたという事で、ヘッセの幼少期を知っているか、が肝になります。 作中にはハンス(主人公)とハイルナー(神学校で出会う友達)が登場するのですが、この二人を合わせたものが幼少期のヘッセとなります。 (これが分からないと、本当につまらない小説なのです) ハンスは勉学に励む人格、ハイルナーは詩をこよなく愛する人格であると。 これを解説で知って、実はこの小説はすごいのでは?と思いなおしました。(名作というだけある) 分身を別の人間で表現するってすごくないですか? ハンスとハイルナーは別々の道を歩んでいきますが、それぞれの人生はヘッセの人生でもあるのです。 これ、表現の発明だと思うのですが、私だけでしょうか?? 個人的には「車輪の下」よりもヘッセ自身の人生の方がぶっ飛んでて面白いと思いました。現実は小説より奇なり、とはこういうことを言うのでしょう。 ヘッセの他の作品も読んでみたくなりました。
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ノーベル文学賞受賞作家ヘルマン・ヘッセの代表作。日本では一番読まれている印象だが、解説に拠ると本国独逸ではヘッセ作品の中では第八位らしい。 神童ハンス・ギーベンラートが幼少期のスパルタ的教育を経て晴れて入学した神学校での生活とそこでの挫折及びその後。 ハンスが神学校に入...
ノーベル文学賞受賞作家ヘルマン・ヘッセの代表作。日本では一番読まれている印象だが、解説に拠ると本国独逸ではヘッセ作品の中では第八位らしい。 神童ハンス・ギーベンラートが幼少期のスパルタ的教育を経て晴れて入学した神学校での生活とそこでの挫折及びその後。 ハンスが神学校に入学するまでは何て退屈な小説だろうと思った。叢で飛蝗を捕まえて釣りに興じるシーンなど、何の必要があるのかと首を傾げたものだが、読み進めるにつれて作中で殆ど唯一ハンス少年が心から主体的な生を楽しんでいる場面だったと解る。 確かにハンスには天稟があった。然しそれゆえに施された教育の数々は必ずしもハンスの望んだものでは無かった。彼は常に頭痛に悩まされながら血の滲むような努力をしていた。それは彼にとって苦役以外の何物でも無かっただろう。 子供の才能を伸ばすのは、大人たちにとって喜ばしいことかも知れない。だがそれは本来自由である筈の子供を抑圧することに他ならない。『荘子』にある断鶴続鳧とは正にこのことを謂うのであろう。 ヘッセ自身も同じような少年時代を経験したことから、本作は作者の自伝的小説とも言われる。先の『荘子』ではないが、後に仏教に出会い東洋思想に傾倒したのも頷ける。
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