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峠 改版(上) の商品レビュー

4.2

136件のお客様レビュー

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2016/09/11

越後長岡、河井継之助、陽明学、おすが。吉原の小稲、京、織部。備中松山藩、方谷山田安五郎。長崎。前半は、何事もなかった。彫るように読む。

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2017/01/17

司馬遼太郎の長編作品は、2012年の1月に読んだ「項羽と劉邦」以来。おおよそ4年ぶりの長編作品として手に取った本書は、期待以上の素晴らしい作品でした。上中下の全3巻。 本書の主人公は、越後長岡藩牧野家の家臣である河合継之助。「北国は、損だ」としみじみ思う継之助は、類い稀な先見性...

司馬遼太郎の長編作品は、2012年の1月に読んだ「項羽と劉邦」以来。おおよそ4年ぶりの長編作品として手に取った本書は、期待以上の素晴らしい作品でした。上中下の全3巻。 本書の主人公は、越後長岡藩牧野家の家臣である河合継之助。「北国は、損だ」としみじみ思う継之助は、類い稀な先見性と並外れた器量の持ち主であります。上巻では、人物としての継之助が描かれる場面がチラホラ。こういう人物描写は、司馬遼太郎作品の大きな魅力のひとつかと。気に留めた描写をいくつか抜粋。 「継之助は、色のあわい、鳶色の瞳を大きくひらいていった。人間はその現実から一歩離れてこそ物が考えられる。距離が必要である、刺激も必要である。愚人にも賢人にも会わねばならぬ」 「人間万事、いざ行動しようとすれば、この種の矛盾がむらがるように前後左右にとりかこんでくる。大は天下の事から、小は嫁姑の事にいたるまですべてこの矛盾にみちている。その矛盾に、即決対処できる人間になるのが、おれの学問の道だ」 「志の高さ低さによって、男子の価値がきまる」「男子の生涯の苦渋というものはその志の高さをいかにまもりぬくかというところにあり、それをまもりぬく工夫は格別なものではなく、日常茶飯の自己規律にある」 「武士とは、精神の美であるという。しかもその美は置物の美ではなく、骨っぷしのたしかな機能美でなければならない」 そんな継之助ですが、幕末の大きな奔流には勝る術がなく、ついに押し流されてしまいます。これは、彼が拠点とする越後の国が時代の主流である江戸や京から離れているからかもしれません。しかし、時代に飲まれたとはいえ、彼の魅力が落ちるわけではありません。下僕に自らの棺をつくらせ、庭に火を焚かせ、病床から顔をよじって終夜それを見つめ続けた孤高の精神は、物語の最後に至るまで読者を魅了し続けるのでした。 さて、本書を読み終えて改めて感じるのは、継之助という人物の捉え難さです。物語の前半では、継之助は既存の考えに縛られず自由闊達に思想をめぐらす人物として描かれています。開明論者であり、「士農工商はやがて崩壊する」、「武士の時代は滅びる」といった発言からも、非常な先見性を感じられます。ところが、越後長岡藩の主導者として藩政を任せられる立場になると、継之助の自由人らしい言動はどこか影を潜めます。そして、結果的に幕府側に立つことになった継之助は、官軍と北越戦争を繰り広げ、そして自藩もろとも滅んでしまう。どうも前半の自由人である継之助と、後半の主導者としての継之助は、同じ人物でありながら矛盾を感じてしまうのです。 本書解説を借りると、「この矛盾に対して、司馬氏が見出した解答は河井の武士道倫理であった」とのことで、「自由人である河井継之助はいろいろなことを思えても、長岡藩士としての彼は、藩士として振舞わなければならない、そういう立場絶対論といったふうの自己規律、または制約が、河井の場合には非常に強烈だったろうと思うんです」と司馬遼太郎の文章を引用しつつ、解説しています。たびたび、継之助は「立場がひとをつくる」といったような発言をしていましたが、継之助の志を保つ自己規律には、もしかしたら「立場」という要素が含まれていたのかもしれません。そして、藩の主導者という立場となった継之助は、武士道倫理、すなわち侍として生きることに決めたのかもしれません。 侍の終焉を予期した継之助が、侍として世を去る描写は、決して皮肉なものではなく、「私はこの『峠』において、侍とはなにかということを考えてみたかった」との著者あとがきのとおり、「いかに美しく生きるか」という武士道倫理のあらわれなのでしょう。

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2016/03/24

風変わりだが大胆かつ論理的な主人公、継之助の生き様は、自分の人生における判断に大いに役立ちそうです。 作者も文中で語っているが、前半の全国行脚の部分は特に波乱もなく淡々としているが、その後藩の役職に着いてから俄然面白くなります。 中巻が楽しみです。

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2016/04/30

幕末の越後長岡藩の藩士・河井継之助の生涯を描いた作品。初、司馬遼太郎! おもしろい!! 幕末の歴史がすごくよく分かる。 なぜ今まで読まなかったんだろう・・・ 八重の桜、花燃ゆ、篤姫(こちらは小説も)、あさが来たと、幕末〜明治が舞台の作品をいろいろ観て読んで、すっかり幕末ブームで、...

幕末の越後長岡藩の藩士・河井継之助の生涯を描いた作品。初、司馬遼太郎! おもしろい!! 幕末の歴史がすごくよく分かる。 なぜ今まで読まなかったんだろう・・・ 八重の桜、花燃ゆ、篤姫(こちらは小説も)、あさが来たと、幕末〜明治が舞台の作品をいろいろ観て読んで、すっかり幕末ブームで、河井継之助記念館にも行ったのに、なぜ峠を読んでいなかったんだろう!! 徳川幕府の終焉と明治維新って、日本にとって大きな大きな転機だったということが、今のわたしたちにはよく分かるし、きっと当時の人たちも、渦中にいるときはただただ驚いていたけど数年たって、ああすごいことが起こったんだな・・・と気付いたのだろうけど、事が大きくなる前に、どれだけの人が「こりゃ国の一大事だ」と気付けたのだろうか。自分がどういう立場で何をするべきか。それに気付くことってすごく大切なのだけど・・・それは、勤勉である、正直である、信頼がある、とは全く別の話。 震災があって、テロがあって、紛争、ミサイル、貧困、さまざまな問題があるいまの日本は、世界は、「渦中」なのかどうか。 数年後、数十年後、「いま」がどう語られるのか。 それに気付けているのだろうか。 私はどうすればいいのだろうか・・・ とまあ、そこまで大きな問題じゃなくても、 社会での立場 とか 家庭での立場 とか 置き換えて考えることは様々できるなあと思った。 ビジネスや暮らしのハウツー本を読むより歴史の本読んだほうがよっぽど腑に落ちるわー。 まだ、上ですけど(笑) まだ、何も起こってませんけど(笑) 中も下も楽しみだ・・・

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2018/11/25

視覚の驚愕は、思想さえも変化させる 世の中は万事、味のわかった大人と、食い気だけの若衆の戦いだ 大老は非常の職で、井伊家か酒井家に基本的には限られている

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2015/02/05

 越後長岡藩の藩士、河井継之助は幕末の時勢をいち早く察知し、幕藩体制崩壊と予言するのだった。もちろん譜代大名である長岡藩家老一同、継之助の戯言などには耳もかさないのだが、いよいよ歴史が動きだそうとしている、そんなとき継之助が藩主の相談役に抜擢される。同じ上士でありながら方や、外様...

 越後長岡藩の藩士、河井継之助は幕末の時勢をいち早く察知し、幕藩体制崩壊と予言するのだった。もちろん譜代大名である長岡藩家老一同、継之助の戯言などには耳もかさないのだが、いよいよ歴史が動きだそうとしている、そんなとき継之助が藩主の相談役に抜擢される。同じ上士でありながら方や、外様大名藩士、長州の高杉晋作と行動、理念がかさなる。中巻では京都を去り、幕府の家老職を辞した長岡藩主と継之助はいよいよ自藩の生き残りにかける策にでる。

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2014/11/03

江戸時代後期、大政奉還後の権力争いに巻き込まれた小藩、長岡藩を時代の濁流から守ろうとした老中、河合継之助の生涯を描いた小説です。 恥ずかしながら、この小説を読むまで、長岡という土地にもなじみが無く、河合継之助という人物がいたことも知りませんでした。 彼が目指したものは、長岡藩、西...

江戸時代後期、大政奉還後の権力争いに巻き込まれた小藩、長岡藩を時代の濁流から守ろうとした老中、河合継之助の生涯を描いた小説です。 恥ずかしながら、この小説を読むまで、長岡という土地にもなじみが無く、河合継之助という人物がいたことも知りませんでした。 彼が目指したものは、長岡藩、西軍(薩長による官軍)にも旧幕府軍にも依らない独立した藩を作ることでした。その志の為に彼は命を尽くしました。理想の藩を作るために洋式武装をし、独自にシステムを変えようとしますが、否が応でも時代の流れに巻き込まれてしまいます。 上巻はゆったりとした流れで、河合が日本各地を遊学した様子が描かれ、笑いを誘う箇所もあります。後半から切迫感が出て、継之助が追い詰められ苦しいです。秀でた能力がありながら、視点がきわめてローカルで、他の優秀な人たちは「国」に目が向いているのに、彼は長岡藩づくりにこだわりました。長岡藩にとっても、継之助にとっても不幸だったと筆者は言います。 歴史上の有名人ではないですし、他の司馬の小説に比べて派手さはないですが、継之助の無念が心に迫ります。オススメの1冊です。

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2014/10/14

またひとり尊敬する人物を見た。河井継之助。 学ぶことにより自分の中の原理を磨く、見つけるという。迷わず、原理に従って行動する。 生きていく上で参考にしたい行動指針が詰まっていると感じた。 真似できるかどうかは分からないが、こうありたいと感じた。

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2014/06/30

どこからが脚色であるかはともかく、突き抜けてる人シリーズでなかなかの中身。 花神の逆側のようにも見えて、そういう部分は実際にもあったんだろうけど、結末と熱さの印象は大違い。 やや記憶の薄れた花神を思い出して並べると、 世界を見る目がよくて、 独自の世界を持っていて、 熱い/常温...

どこからが脚色であるかはともかく、突き抜けてる人シリーズでなかなかの中身。 花神の逆側のようにも見えて、そういう部分は実際にもあったんだろうけど、結末と熱さの印象は大違い。 やや記憶の薄れた花神を思い出して並べると、 世界を見る目がよくて、 独自の世界を持っていて、 熱い/常温 活動家/技術者 割と恵まれた立場/当分不遇 負けても立場上の信念を貫く人/信念を貫くというより、そこにあるパズルを常に上手に解いた人 結果的に幕軍/官軍 退路で戦死/跳ねっ返りに斬られてゆっくり看取られる 花神は、科学、自然(法則)、牧歌 峠は、革新、意志、情熱 てな感じ。 陽明学おそるべし。 今の日本は平和です。 「侍」がテーマとあとがきにあったけど、結局、実質的には巧妙でタチの悪い暴力装置と化していた官軍に対し、予測可能な結果を度外視して、降伏して仲間(会津)やかつての主人(慶喜)を滅ぼす先鋒になるのは嫌だと明確に回答した、芯のある人の話。という意味で、侍がどうこうという以前に、シンプルに、人間として取りたい行動を貫いた人の話。 もし明治後に生きて、武士と藩の枠が外れたら、どこまでやってくれただろう?? 歴史を読むと、中でも司馬さんを読むと、ヒトに期待したくなる。 そりゃあ事実はもっとラフでザラザラしたものだろうけど、それを包んで、説得力があって暖かいインパクトを産み出す、物語の力。語ることの力。

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2014/11/08

越後長岡藩士河合継之助の生涯を描いた司馬遼太郎の著作。幕末から明治維新に至る激動期に、サムライとしてどうあるべきかを突き詰め、藩の存亡をかけた戦いに身を投じてゆく姿を描いている。早くから封建制度の崩壊を予見し新たな社会制度の建設に向かっていきながら、最終的に倒幕側である西軍を敵に...

越後長岡藩士河合継之助の生涯を描いた司馬遼太郎の著作。幕末から明治維新に至る激動期に、サムライとしてどうあるべきかを突き詰め、藩の存亡をかけた戦いに身を投じてゆく姿を描いている。早くから封建制度の崩壊を予見し新たな社会制度の建設に向かっていきながら、最終的に倒幕側である西軍を敵に回して戦う。歴史的には長岡藩は会津や桑名と同じ命運をたどっており、その責任の一端は河合にあるという説もある。ただ、日和見的に態度を変えた藩が後々それで良かったのかを考えると、やはり決断と言うのはとてもとても重い。河合に関しては、ここまで純粋かつ強烈な自己を律する姿勢こそがサムライと言うに相応しいものだと感じる。サムライの矜持をまざまざと見せつけられた。現代、サムライを標榜する方々は本書を一度読んでから考え直したほうが良い。司馬遼太郎の著書は調査が念入りに行われていて説得力がある一方、本書でいえば河合と福澤が酒席で大議論するところなどは一種のファンタジーを感じて、重たいテーマを読みやすくしている。

Posted byブクログ