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コインロッカー・ベイビーズ(下) の商品レビュー

3.8

147件のお客様レビュー

  1. 5つ

    42

  2. 4つ

    45

  3. 3つ

    32

  4. 2つ

    14

  5. 1つ

    1

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2018/03/30

コインロッカーから生まれ落ちた兄弟に 人々は、よってたかって物語を押しつけた イエスの教えに始まって 精神安定を促進する胎内の心臓音を聴かせたり 見ず知らずの大人のもとに里子にやったり 母親の居所をほのめかしたり レイプしたり サプライズを装って、いきなり母親との再会を強要するな...

コインロッカーから生まれ落ちた兄弟に 人々は、よってたかって物語を押しつけた イエスの教えに始まって 精神安定を促進する胎内の心臓音を聴かせたり 見ず知らずの大人のもとに里子にやったり 母親の居所をほのめかしたり レイプしたり サプライズを装って、いきなり母親との再会を強要するなどした そのなりゆきで兄のキクは実母を殺し 弟のハシは精神を病んだ しかしキクは、母殺しにむかう一瞬の高揚を永遠とするために 「ダチュラ」への執着をより強めていく 一方ハシは、新しい声を手に入れるために舌を切断し また疑似母相手に本物の胎内回帰をはかった これらの、わけのわからない情熱こそが 彼らには生きるテーマとなった 欠損した時間、欠損したモノへのこだわりがエゴの芽生えであり 闘争の根拠を生み出すもので それなくしては個人と世界が本当に和解する瞬間も訪れないだろう 純文・エンタメ問わず日本文学において 良くも悪くもドメスティックな影響力を、今なお持ち続ける作品だ

Posted byブクログ

2018/02/10

表現力の重厚さに感服。 積極的で感情的、直線的なキク、内向的で精神的、曲線的なハル。そんな2人の物語。 後半は2人それぞれの物語に分かれて、ハルの物語は幻惑的でクラクラする内容で、救いが見えなく落ちていく。一方キクは肉体的に前進していく前向きさが感じられて読みやすい。 個人的な感...

表現力の重厚さに感服。 積極的で感情的、直線的なキク、内向的で精神的、曲線的なハル。そんな2人の物語。 後半は2人それぞれの物語に分かれて、ハルの物語は幻惑的でクラクラする内容で、救いが見えなく落ちていく。一方キクは肉体的に前進していく前向きさが感じられて読みやすい。 個人的な感想としては、心臓の鼓動が示唆するものはなんだろうか?と考えて、先天的な絶望感の中でも人、特に血縁関係のある家族との繋がりが必然的に埋め込まれていて、そこには救いがある。つまり、破壊がテーマの小説ではあるけど、光射す道はあると言ってるんじゃないかなって思った。クライマックスはどこか心が安堵する感じを受けたのはそういうところからだと、思った。

Posted byブクログ

2018/01/02
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

 捨て子なのに、あまり被害者意識を感じさせないところがとてもよかった。むしろ加害者であることを当然としている感じがする。  先日佐世保に行った際、駅の裏の港を散歩してみたらすぐに米軍の施設があって、金網で仕切られていた。この小説にある薬島は東京で、福生も米軍基地があってそっちかもしれないが原型はやっぱり佐世保なのかなと思った。  とにかくページに文字がぎゅうぎゅうに詰まっていて読むのが大変だった。場面がどんどん進む割にページは進まない。もっとじっくり読みたい場面もあったがこれ以上長くなるのもつらい。30年近く前に読んだきりだったのだが、おじさんにはいろいろな意味できつい。  ムショから脱走した若者がモデルの女性と接していて、どうなるのかと思ったら性的に何もなかったので驚いた。とても大人しい若者たちだった。  巻末に年譜がありこの小説の発表までに、長谷川和彦との交流があり彼のために4本シナリオを書いていたという。この小説はそのシナリオが元になっているのではないだろうか。映像的で、もしかしたら2〜3本のシナリオを組み合わせているかもしれない。  

Posted byブクログ

2016/10/23
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

めちゃくちゃに面白い。 下巻では、生まれ変わったはずのハシが苦悩しどんどんイカレていくシーンと、キクたちが脱走しアネモネと共にダチュラを求めカラギ島へと向かうシーンがメインになっている。 一番カッコ良かったのは、バイク屋の店員が「日焼けした肌に白いスーツでキメてるとこを見るとサーフシティ・ベイビーズだね?」 そこでキクは「俺たちはコインロッカー・ベイビーズだ」 !!!! そうなんだ! アネモネもコインロッカー・ベイビーズなんだ! そしてそれは、現代人のメタになるから僕たちもそうなるんだ! 間違いなく面白い小説だと思う。

Posted byブクログ

2016/10/06
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

キクは母親を殺害してしまうことで、逮捕されてしまう。 服役中の中、逃亡する機会を探り、実行に移す。 ハシは葛藤しながら、歌えなくなる。

Posted byブクログ

2016/09/22

物語は気づけばずっと海に囲まれている。 ふたりは母親の胎内ではなくコインロッカーで産声をあげたから 無意識のうちに海を求めているのかなあと、そんなことを思いながら読んだ。 濃密で独特の文体のあいだからは、いろんな臭い(匂いではなく臭い)が 立ち上ってくるようで、台風のなか船に揺ら...

物語は気づけばずっと海に囲まれている。 ふたりは母親の胎内ではなくコインロッカーで産声をあげたから 無意識のうちに海を求めているのかなあと、そんなことを思いながら読んだ。 濃密で独特の文体のあいだからは、いろんな臭い(匂いではなく臭い)が 立ち上ってくるようで、台風のなか船に揺られるシーンでは読んでるこちらまで 船酔いしそうだった。 突き放されるようなラストに、えっ??とびっくりするけれども そもそもどこからどこまでが現実だったのか。 現代に生まれたロムルスとレムス。 そんな素敵に悪い夢をみた気分。 ラストはいろいろとあるだろうけれど、とにかく圧巻の一言でした。

Posted byブクログ

2016/06/03
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

 上巻を読んだときにはなかなかペースが掴めず、読了まで時間がかかったが、村上龍の文章に読み慣れたのか、上巻のときよりいいペースで読めた。しかしそれには物語へ次第にのめりこんでいたせいもあると思う。キクが母親を殺害したシーン続きから始まるこの下巻。刑務所でのリレーでキクが走破する場面、「コインロッカーベイビーズだ」とキク言う場面、ハシの最期のセリフなど至る場面で鳥肌が立った。一方で、他の読者のレビューをのぞくと、グロさや登場人物の言動が狂気的であるがゆえに、この本が、村上龍の文章が苦手な人が一定数いるのは事実である。私も読んでいて目をそらしたくなる頁もあった。しかし嫌悪感を抱くよりそこまで想像をかきたてる文章に圧倒され、私自身としてはとても面白かった。物語は最後、端的にいうと「破壊」であるが、ハシ自身は心臓の音に気付き、生を感じて満足している結果となり(キクはリレーを走り切ったときに気付く)、なんとなく矛盾を感じるような、ハッピーエンドなのかバットエンドなのか、読み終えて自然と「うわーーー。」とため息漏れてくるような結末だった。そこに三浦雅士の解説「生きることと破壊は表裏一体、コインロッカーとはこの世のメタファである」を付け加えてやっとそういうことなのか、、、と改めてこの本の深さを感じた。ぜひまた読み直したい一冊。

Posted byブクログ

2016/04/03

圧倒的スピードでガンガンに突き進んでいくストーリーに魅了されて読了。最近読んでいたほのぼの系小さな幸せとは一線をがした書き方で面白かった。それにしても油の描写が多い。腐った油の匂いとか、熟女の腋臭、不快感のする腐臭なんてそうそう嗅ぐもんじゃないけど、村上さんは日頃嗅いでるんだろう...

圧倒的スピードでガンガンに突き進んでいくストーリーに魅了されて読了。最近読んでいたほのぼの系小さな幸せとは一線をがした書き方で面白かった。それにしても油の描写が多い。腐った油の匂いとか、熟女の腋臭、不快感のする腐臭なんてそうそう嗅ぐもんじゃないけど、村上さんは日頃嗅いでるんだろうか。どんだけ腐臭が好きなんだ笑。ハシが、ミックジャガーを模して舌の先っちょを焼き潰すところが好きだった。ハシはどうしてあんなにも自虐的なんだろう。それと、キクが溺れて水を飲むシーン、諦めて死を覚悟したら死が怖くなくなったって書いてあった。その諦める感じがなんともうちの母に似ている。それにしても、最後の解説がうまくまとめてあった。これはこの解説文だけで文庫本を買う意味がある(100円で買ったあたしはもっと得してる気がする!)

Posted byブクログ

2015/09/05

みんな狂ってる。キクは棒高跳び、ハシは歌手として成功できたのに、なぜ幸せになれない。先の展開がよめずハラハラした。はぁー。後味は良くないけど、なんかもやもや残る一冊。

Posted byブクログ

2016/04/03

村上春樹が合わないならこっちの村上はどうだろう?という理由で読んだ。 どっちの村上も合わないなあという結果が出たが、あれから20年以上経っているので再読して確かめてみるのもいいかもしれない。

Posted byブクログ