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紀ノ川 の商品レビュー

4.1

67件のお客様レビュー

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    21

  2. 4つ

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2022/08/16
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

花の一生、理想の女の生き様かと思えばもっと濃いもの。教養はあれどしとやかであれ、というだけに止まらず家に対する執念など。 花の死際、家の縛りから放たれ、抑圧していたものが全て解放している様は読んでいて辛い。呆けだけではなくヤケのような、 白蛇が出たのだからじきに花も死ぬのだろうが、その場面まで書かれてなくてよかった、きっと耐えられない 美っつい川。

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2022/08/03

花(明治)・文緒(大正)・華子(昭和)の三代記と、少し前の朝ドラを彷彿とさせる構成。事前に著者の生い立ちを確認していると、自伝的小説だと言うことに途中気づく。 開始早々泣きそうになった。 嫁入り前の花が祖母の豊乃と寺の石段を上るシーンから入るのだが、孫へのはなむけの言葉がもう優...

花(明治)・文緒(大正)・華子(昭和)の三代記と、少し前の朝ドラを彷彿とさせる構成。事前に著者の生い立ちを確認していると、自伝的小説だと言うことに途中気づく。 開始早々泣きそうになった。 嫁入り前の花が祖母の豊乃と寺の石段を上るシーンから入るのだが、孫へのはなむけの言葉がもう優しくて、優しくて…。 明治初期に身内が嫁入り前の女子に説くことなんざせいぜい嫁の心得だろうに、「身体を大切にしなさい」等今と変わりないしどれも愛情深い。早逝した実母に代わってどれだけ彼女が手塩にかけてきたのかがよく分かる。 作家の桂芳久氏は解説にて、著者は紀ノ川に「いのちの流れ」を象徴させたと書いている。出来た嫁の花は作中で紀ノ川に例えられているが、桂氏曰く「(自分より早逝した)夫や義弟のいのちを吸収して逞しい生命力に溢れている」という。正しい解釈かもしれないが、まるで花が悪霊のような書き様に思えて自分はこれに賛同しかねた。 和歌山市の有吉佐和子記念館を訪れた際紀ノ川も見えたが、水流は穏やかなれど水の色は凛々しい青だった。芯の強い花に屈強な文緒、これからの時代を逞しく生きていくであろう華子を想起させる、揺らぎのない青。性格や得手不得手は違っても、彼女らに共通する強さは脈々と受け継がれる。これが読後に見出した、自分なりの川の解釈。だいぶ単純なものになってしまったが~_~; 男性陣が儚い印象だが、花の小舅にあたる浩策だけは異色だった。小気味の良いツンデレっぷり(あの重度の皮肉屋を容易にツンデレと呼んで良いものか、書いてから悩んでいる…)で、基本的には長兄や花にジェラシーを燃やすひねくれ者。しかし彼もどこかで花たちと繋がっていたかったのか…?と思っちゃうほど、交流を続けていた。 子供たちとの交流や、年老いて一人になった花の元に書籍を届けたりして、何だかんだで花も彼への警戒を解くようになっている。 だが「家」には決して染まらず、登場人物の中で一番思い通りの人生を送れている。桂氏風に言えば、花にも吸収できない川があったってこと。 毎朝読んでいたから、こちらも自分にとっては「朝ドラ」にあたる笑 先のリアル朝ドラとはまた違った瑞々しさ。バトンをつないだ華子の未来が前途洋々であれと、紀ノ川を眺めた時のように流れを見守っていた。 『恍惚の人』に続き、こちらも知人から紹介して貰った一冊!有吉氏の代表作にようやく辿り着くことができて達成感でいっぱいです^ ^ この先(一生かけてでも⁉︎)︎他の作品も制覇していきたいです。

Posted byブクログ

2022/05/10

女三代期。戦後財閥解体を経て没落した一家を描く。紀の川上流の紀本家から嫁いだ花。花を旧世代だと批判する娘文緒。幼少期を外国で過ごした病弱な孫華子。それぞれの女の力強さを感じる。

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2022/03/15

女性3代にわたる物語、紀ノ川のゆったりとした流れのように時代と共に、変わっていく聡明な女の物語、和歌山に行ってみたいなー

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2021/12/20

紀伊半島一周の旅、終着の和歌山市にて。 和歌山の言葉は初めて知ったなあ。 豊乃〜花〜(文緒)〜華子と、紀ノ川が流れるように移ろっていくお話で、すらすらと読みました。 それぞれに大変な苦労が起きてるにも関わらず、心を重くせずにいられたは、4者4様に持つ強い芯としなやかさの為かな?...

紀伊半島一周の旅、終着の和歌山市にて。 和歌山の言葉は初めて知ったなあ。 豊乃〜花〜(文緒)〜華子と、紀ノ川が流れるように移ろっていくお話で、すらすらと読みました。 それぞれに大変な苦労が起きてるにも関わらず、心を重くせずにいられたは、4者4様に持つ強い芯としなやかさの為かな? 次に訪れた時は、紀ノ川をじっくりと味わおう。 関係ないけど、 居酒屋のお兄さん(同い年!)と、スーツさんやら鉄道の旅やらの話で盛り上がったのは良き思い出。 旅先でその土地を舞台にしたお話や、その土地出身の作家作品に触れるという恒例行事は、続けていこう。

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2021/11/27

三代に渡る女の人生。 描く人が違うとまた濃厚さが違う。 風景の描写も流れる時間もまた違って方言まで美しく感じる。 気丈な花が老いてワガママになるのも計算の内なのか、今まで抑えていた気持ちをボケたふりして孫に語っているような気がして、というよりそうあってほしいと思う。

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2021/08/20

朗読の時間 人の一生は川のようなものなのだとつくづく思う。 悠然と流れる川もいろいろある。 登場人物、必ずしも同意できないが 大河のような物語だった。

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2021/07/18

紀州の素封家を舞台に明治、大正、昭和の時代を紀ノ川のようにたくましく生きた女の物語。 九度山の名家・紀本家の娘・花は、早く亡くなった母親替わりである祖母・豊乃の愛情と教育を受けて、才色兼備の女性に成長する。 彼女は、紀ノ川の流れに沿って、六十谷の名家・真谷家に嫁ぐ。婿となる真谷敬...

紀州の素封家を舞台に明治、大正、昭和の時代を紀ノ川のようにたくましく生きた女の物語。 九度山の名家・紀本家の娘・花は、早く亡くなった母親替わりである祖母・豊乃の愛情と教育を受けて、才色兼備の女性に成長する。 彼女は、紀ノ川の流れに沿って、六十谷の名家・真谷家に嫁ぐ。婿となる真谷敬策は新進気鋭の村長であり、その後、県議会議員、衆院議員と政治の道を順調に進んでいく。花は敬策を支えながら真谷家にとけ込み家霊的な存在となっていく。娘・文緒は男のような侠気があり、新しい女性の姿を求め独立自尊の気持ちが強く、花とよく対立する。また、大学を卒業して出版社に就職した戦後世代の孫娘・華子は感受性豊かで賢く花と情緒を通わせる。 それぞれの女性が世代の落差はありながらもエネルギーを内包した生き方を見せる。 敬策の弟で分家した浩策、花の長男で覇気に欠ける政一郎、文緒の夫であり、青白い秀才のイメージのある晴海英二など男性の登場人物はいずれも弱い川として強い女性の象徴である紀ノ川に吸収されていく。  破滅的な戦争末期に「家」こそが女の砦だったこと、長男が嫁をもらうことで次男が分家として格下げされる宿命、農地改革により息のねを止められた地主など時代背景を物語の中で実感として味わうこともできた。 

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2021/07/11

読み応えのある作品。紀州弁が更にこの物語に彩りを与える。それぞれの世代における女性の価値観が見事に描写されている。今の時代に生きていてよかったと思うのと同時に、御っさんと呼ばれた花の生き方にも憧れを抱く。

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2021/07/04

おそらく、本で読んだだけならここまで強烈に印象に残ることはなかったことだろう。 毎朝のNHKの朗読で一回、それを録音で収録したものでもう一回。初夏のウォーキングのなかで聴いた。  柔らかな紀州訛りと、もう失われた少し遠い時代の生活や言葉を背景に、“真谷のごっさん”花の見つめた世界...

おそらく、本で読んだだけならここまで強烈に印象に残ることはなかったことだろう。 毎朝のNHKの朗読で一回、それを録音で収録したものでもう一回。初夏のウォーキングのなかで聴いた。  柔らかな紀州訛りと、もう失われた少し遠い時代の生活や言葉を背景に、“真谷のごっさん”花の見つめた世界に同化しながら浸った。  そして、もう一回この手にしている本で三度目の『紀の川』を渡った。  三度ともなれば、すべてがもう知り抜いた既知の世界。展開も、台詞も文字を目が追う前に既に知れている。 ただ味わった。もう一度この心地よさを。  何が心地よいかって? それは花の“美しさ”だ。小説のなかでも、その美貌を表現する箇所はあるが、それだけでは私の心は動く筈はない。  豊乃に英才教育されて身につけた教養と躾、身のこなし。それだけでもない。  それらと彼女の生きた運命が化学反応して発光する輝きが、孫娘華子(有吉佐和子)によって見事に描かれているのだ。  絵画に描かれた女性に恋する青年の気持ちと同じだ。 もう、現実には存在し得ない、失われた“美しさ”だ。

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