破船 の商品レビュー
2022/6/20読了。 民俗学的関心を刺激する。前時代の閉塞的な漁村の中の常識と雰囲気が硬質な文体で有り有りと描き出されている。
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豊かな現代との違いに戸惑う一冊。こんなに過酷な生活なんだから、お船様に対する犯罪なんて、大したことじゃないような気もしてくる。なす術もなく運命に翻弄される不幸。
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最後の最後で畳み掛けてくる残酷な展開に、泣いてしまいました。 村ぐるみの犯罪の代償とはいえ、あまりにもむごくて涙が…。 作品の舞台となった村は、閉鎖的ですごく貧しくて。 今日の食べ物にも困るくらい貧しくて、慢性的な貧しさが続いてきた村の生きる術が「お船様」だったのだろうと思う。 許されるようなことではないけれど。 ずーっと暗くてずーっと不穏で、明るい場面も刹那的に感じられてなんだか悲しかった。 すごい本でした。
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生きるために罪を犯すことと、それに対する因果応報の話。 主人公が幼い少年なので、成長につれ読者と一緒に貧しい漁村の恐るべきしきたりを知ってゆく。夜にわざわざ塩を焼く仕事があること、それが近くを通った船を誘って破船させ、積荷を奪うためのものであること。この漁村にはわざわざ縁起を担い...
生きるために罪を犯すことと、それに対する因果応報の話。 主人公が幼い少年なので、成長につれ読者と一緒に貧しい漁村の恐るべきしきたりを知ってゆく。夜にわざわざ塩を焼く仕事があること、それが近くを通った船を誘って破船させ、積荷を奪うためのものであること。この漁村にはわざわざ縁起を担いで船の転覆を祈願する儀式(妊婦がお膳を足でひっくり返すというもの)まであった。 このあたり、どういう心持ちで読めばいいのか、多少困惑させられる。年単位の出稼ぎや身売りが少なくないほど貧しい村で、生きるためには仕方がないという気持ちと、船をうまく誘えずがっかりする村の様子に鼻白む気持ちと。これは暦とした村ぐるみの犯罪であるが、その善悪の価値観すらゆらぐ気がする。 そして、最後はこの生業が招いた恐ろしい災厄。主人公にとって悲劇的な結末となるが、遠からずそうなるべきだった、という妙な腑に落ち感がある。母親が終盤妙にいきいきとしていたのになぜか共感した。苦界を生きることからの解放、ということもあるのではないか。
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2022年本屋大賞発掘本 ところで『破船』あっちゅー間に読了 195ページくらいからの恐ろしさは筆舌に尽くしがたいが、お船様による疫病は今作において一つのヤマではあるがメインではないと感じた そして相当稀だろうが私ラストぼろぼろ泣いてしまったよ。なんかもう感情のやり場がなく。9...
2022年本屋大賞発掘本 ところで『破船』あっちゅー間に読了 195ページくらいからの恐ろしさは筆舌に尽くしがたいが、お船様による疫病は今作において一つのヤマではあるがメインではないと感じた そして相当稀だろうが私ラストぼろぼろ泣いてしまったよ。なんかもう感情のやり場がなく。9歳ですよ、伊作は。あと母の強さ。 9歳と書いたけど、それはスタート時点の話で、最後に伊作は11歳になってます。めぐりゆく四季と、過酷な労働。年端もいかぬ子が、一家の大黒柱として働かざるや得ない村の状況。私は村から出たいの!とか、学校に行きたいとか、言い出す子なんかいるわけない。だって知らないんだもの、他の生活を。 コミュニティとしてのありようと、それをそのまま受け入れ、粛々と暮らす人々の姿がすごかったです。言い方がとても悪いだろうけど、アリの巣のような、独自で厳格なルールと統制を感じました。すさまじい不測の事態に対する、恒常性のすさまじさ。すさまじさVSすさまじさ。 本屋大賞授賞式のスピーチが本当に素晴らしかったです。 おめでとうごございます!
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とても淡々と語られるのに、背中が薄ら寒くなるような感覚を覚えた。お船様にしろ、村の行く末にしろ。村が閉ざされているからこそできたこと、閉ざされているからこそ招いてしまったことに、胸がふさぐ気持ち。
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超発掘本の帯に惹かれて手に取った本。 秘境の地の貧しい生活の中、質素に逞しく生きる人々の生活に、儀式をしてまで到来を望む神様の恵の様なお船様の存在は果たして本当に恵みと呼べる物なのか。悪と分かっていても手を染めなければ生きて行けない村の人々の微妙な心情が切なく思える。最後のお船様...
超発掘本の帯に惹かれて手に取った本。 秘境の地の貧しい生活の中、質素に逞しく生きる人々の生活に、儀式をしてまで到来を望む神様の恵の様なお船様の存在は果たして本当に恵みと呼べる物なのか。悪と分かっていても手を染めなければ生きて行けない村の人々の微妙な心情が切なく思える。最後のお船様は、私には祟り神様の様に感じた。
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江戸時代、ある寒村で暮らす少年が主人公の物語。漁業を日々の糧として暮らす人々は、毎日食べていくだけでも精一杯なのだが、たまに神の恵みにあい、生活が潤う事がある。それが、岩礁で座礁する船がもたらす物資であり、その事は村の大きな秘密である。そしてある日。。。 地味だがかなり惹き込ま...
江戸時代、ある寒村で暮らす少年が主人公の物語。漁業を日々の糧として暮らす人々は、毎日食べていくだけでも精一杯なのだが、たまに神の恵みにあい、生活が潤う事がある。それが、岩礁で座礁する船がもたらす物資であり、その事は村の大きな秘密である。そしてある日。。。 地味だがかなり惹き込まれるストーリーと展開であり、ボリュームも適当で読みやすい。また、当時の情報から遮断された地方農村の暮らしぶりや庶民の生活、感情も生生しく伝わってくる。 運命に翻弄されながらも日々生き、老い、死ぬ。そういうどうしょうもない無力さを再認識する良作。
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本当に怖いと思った。 人間の冷酷さとそうしなければ生きて行けない無情を感じる。 お舟様を待ち侘びる心境、歓喜と絶望の振幅は読んでいて辛くなるほどリアルであった。 最後、主人公の父の凱旋帰還のシーンは涙もの。
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貧しさはこれほどまでに人を蝕むという 辛くて残酷な話だ 家族を飢えさせないために 誰かが数年期限で身を売らなければならない そんな村に訪れる御船様は 村民の祈りにもなる はたして船が船がもたらすのは 祝福なのか災いなのか
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