蟹工船・党生活者 の商品レビュー
軍国主義的国策への憤りとブルジョワジーに対する反骨心に満ちた一冊。 大衆のルサンチマンを煽る意図が強く感じられ、当時「蟹工船」が発禁になったのも納得。 ただ、現代の日本にも通ずる内容なので、読んで損はない。
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蟹工船・党生活者 著者:小林多喜二 発行:昭和28(1953)年6月28日 改版:平成15(2003)年6月25日 新潮文庫 『世界は五反田から始まった』(星野博美著)を読んだら、『党生活者』は小林多喜二が五反田の藤倉工業という会社で行った活動をベースに書かれた小説だと書かれていたので、手許にあった新潮文庫で読んだ。何年か前に若い人の間で蟹工船がブームになった時に購入した新潮文庫。党生活者の方は読んだことがなかった。 確かに、藤田工業ならぬ「倉田工業」でパラシュートを作っている人たちの物語だった。藤倉工業は分社し、現在は藤倉航業という会社がパラシュートを作っている(パラシュートの老舗)と『五反田』に書いてあった。妙にリアルな感覚になってくる。 「倉田工業」の工場には、本工は少なく、多くが臨時雇いの工員。まもなく、600人の臨時工は馘首を斬られることになっている。このあたりも、今日的な状況をちょっと彷彿とする。主人公は完全にマークされた党員だけど、偽名で臨時工になって、他の党員からの情報をあつめて毎晩ビラをつくり、工場で配る手配をしたりしている。シンパたちがそれを配る。しかし、一人逮捕され、口を割ってしまう。即座に逃げる主人公。地下に潜り、活動を続ける。 「倉田工業」は臨時工を辞めさせるにあたって一人10円ずつ渡すという噂を流すが、それは嘘だろうと活動家たちは考える。そして、ついに大量解雇の日程をつかむ。その直前に全貌を暴露するビラを配ろうと計画、ある男が実行することになるが、彼は前科もあり、ビラを配れば当然捕まるし、今度は4,5年入ること確実となる。主人公は葛藤しながらも彼にそれをさせる。 運良く、屋上からまいたビラは工員たちに広く届き、しかも誰がまいたかバレなかった。ストライキで対抗できるか? しかし、会社は先手をうち、突然、ある朝、門のところで臨時工400人に対して解雇を通知し、2日分の日当を渡すという対抗策を決行した。200人は本工にするという約束も。小説の最後には(前編おわり)と記されている。後編があるはずだったが、作者小林多喜二が特高に逮捕され、その日の内に凄絶なる拷問を受けて死亡したため、僕たちは読むことができない。 ****** 解説を読むと、『党生活者』はプロレタリア文学の最高水準の作品だとある。また、『蟹工船』は小林多喜二の2作目の小説だとのこと。僕はとくにプロレタリア文学に興味があるわけではないし、10代のころにもほとんど読んだ記憶がない。いま読んでも特にどうということもないが、蟹工船は文体としてはイマイチだなあと思う。もう少しいうと、下手くそだなあと感じる部分もある。文学の世界の中では高く評価されているのだろうけど。10年ちょっと前ぐらいにつくられた映画も観たけど、つまらなくて途中で寝てしまった。TKOの木下が出ていたことはよく覚えている。 党生活者の方は、後編、読みたかったなあと強く思った。
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日本史で小林多喜二の名前をした時からずーっと読みたくて、でもいつも本屋さんに行くと違う本を買っていて…ようやく読めた蟹工船!!! シンプルに、両作品ともめっちゃめちゃ興味深いし奥深い。プロレタリア文学にハマりそう
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古典なのに読みやすい文章。内容もその時代の暗部をうまく描いているが、特に党生活者の主人公には共感できない。
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難しかった…。 こうして自分たちの環境を変えようと戦ってきた人たちがいるから、いまの時代があるんだろうな。
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「航船」でなく「工船」としている点でこの航海は「航海法」のグレーゾーンと認識され、出稼ぎ労働者(船員)たちが人権なしの奴隷のような扱いを受けていたという。そんな悪しき閉じた世界が世界人権宣言が出されて20年近くも経った昭和40年代まであったというのも驚きだ(作品設定では昭和初期と...
「航船」でなく「工船」としている点でこの航海は「航海法」のグレーゾーンと認識され、出稼ぎ労働者(船員)たちが人権なしの奴隷のような扱いを受けていたという。そんな悪しき閉じた世界が世界人権宣言が出されて20年近くも経った昭和40年代まであったというのも驚きだ(作品設定では昭和初期となっている)。 人権宣言のような秩序が生まれても、こういう「閉じた世界(権力に一般人が抗えない特別な空間)」にまでルールが浸透するには何十年もの歳月を必要とするのがわかる。でもこのような「秩序の枠組み」は時間はかかれど、ひとりひとりが望む限り着実に浸透していく。そして現代はインターネットも存在する。浸透速度は上がると信じたい。この2点は今後も持ち続けたい希望だ。
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「偉大」という言葉を聞くと荘厳で煌びやかな感覚を受けてしまうが その実、泥臭く垢にまみれた血と汗と涙の結晶、あるいはそれそのものを言うのかもしれない 初めてのプロレタリア文学 読了後は1本の名作映画を見終わった後のような満足感があった
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現代にも通じる一節を「党生活者」の文中に見つけてハッとした。 「…ドシドシ臨時工を使うことは、結局は労働者全体の賃金を引き下げるのに役立つのである。」
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夏に函館旅行行ったときに買ってから、しばらく積読だった本。簡単な内容ではなかったが、いまの我々の暮らしは、先人の犠牲や苦しみのうえに成り立っているのだなあと感じた。多喜二の伝えようとしている感じが痛いほどわかった。
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蟹工船読了 元々「共産主義が良いとは思わないが資本主義もだいぶクソだろ」って思ってたので読み終わった後やはり資本主義はクソでは?になった。 読んでる時の感覚としては永遠のゼロとかの戦争系映画見てる時とおんなじ感じだった。 過酷な労働環境とクソ監督でめっちゃモヤモヤさせてからスカッと!なのかと思ったら全然そんなことなくてストライキ成功がめっちゃあっさり描かれてたからエッ!?って声出た そういう作品じゃないのはわかるけどもうちょっとスカッとしても良くない??と思った。浅川が死ぬとかすれば……でもそうなってないあたり妙にリアルというかなんというか。 面白い面白くないとかそういう評価をするタイプの作品では無かった。読んで良かったとは思った。
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