墨東綺譚 の商品レビュー
きっかけは映画だった…
きっかけは映画だったが、荷風入門には最適の1冊だろう。荷風という生き方の根っこの部分の拘りが伝わってくる。そして装置によって見過ごしがちだが、究極の恋愛物語でもあったりする。
文庫OFF
知ることのなかった時代の東京やその季節の移ろい、人の動きが見えてノスタルジックな気持ちになる。その当時も明治と大正の人間を比較している通り、どの時代も背景は違えど感じることや悩みにさほど違いはないのだと思った。 男性社会全盛で、おじさんの勘違い全開の文章ではあるが文才で純文学。な...
知ることのなかった時代の東京やその季節の移ろい、人の動きが見えてノスタルジックな気持ちになる。その当時も明治と大正の人間を比較している通り、どの時代も背景は違えど感じることや悩みにさほど違いはないのだと思った。 男性社会全盛で、おじさんの勘違い全開の文章ではあるが文才で純文学。なにをみせてなにを描くかなのだなと感じた。
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再読。 昭和初期。私娼窟という迷宮に忍び込んだ老作家が、一人の娼婦と出会い、ただ別離する。 老作家の明治、大正の滅びゆく市井の文化や人の移り変わりを嘆きつつも、一人の娼婦の中に懐かしいものを感じていく。 私は土地勘も乏しく、当然、当時を生きてはいないが、どこかその滅びへの哀愁を...
再読。 昭和初期。私娼窟という迷宮に忍び込んだ老作家が、一人の娼婦と出会い、ただ別離する。 老作家の明治、大正の滅びゆく市井の文化や人の移り変わりを嘆きつつも、一人の娼婦の中に懐かしいものを感じていく。 私は土地勘も乏しく、当然、当時を生きてはいないが、どこかその滅びへの哀愁を感じながら、全く知らない迷宮の中に引き摺り込まれる。 今で言えばただの老作家がトー横通いして、などと味気ない話になるだろうが、街や自然描写の精緻さや、滅びゆく美しさに興を覚える。
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随筆風の展開や、主人公の名前が「大江匡」ということもあってか、小説なのだけれどもドキュメンタリーを見ているような、映像を呼び起こさせる臨場感のある文章が独特で、それは関東大震災の頃までは逢うことができた、『東京の下町の風俗をそのまま崩さずに残している』世界が、次第と消えていくことへの虚しさを感じながらも探し続けたい、そんな自己確立への拘りの思いが、変わりゆく時代の流れに抗う様と共に印象に残る。 大江が構想中の小説の内容と、本書の物語が相互に関わり合うような展開も新鮮な中、メインストーリーとなる娼婦「お雪」との出会いの場面は、雷も閃く突然の夕立の中、常に準備万端で傘を備えていた大江の元にお雪が「檀那、入れてってよ」と声をかける、そんな狙ったかのような劇的さに、やはり小説かと一瞬思いが過りながらも、この後の展開を知ると、どうにもこうにも煮え切らない様子で、これが如何にも現実とはこういうものだという諦観ぶりを思い知らせてくれるようで切ない。 そこには大江自身の正直な思いをひた隠しにしてきたことによる、お雪への申し訳なさがありながらも、それならば正直に言えばいいのではと思うところを、それができないことには、どうも前者と矛盾しているかのような心中である点にリアルな人間らしさを感じられて、しかも自分で決め付けているかのようなネガティブな観点によることから、その出来事を『綺譚』としている点にも、そこから先は作中で構想中の小説のようには行かないんだなと、この自ら線引きしている感じがまた何とも煮え切らないというか、ただ、このような相手を交えずに自分の心の中だけで全てを決め付けてしまう哀しき葛藤には、人間の奥ゆかしさといった美点もあるだけに、日本文学としてはこの煮え切らなさにこそ、しみじみとした情趣を感じられるのかもしれない。
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登場人物が割り切らないところがちょっと微妙だった。ただ文章表現は綺麗でかなり好きだった。ちょっとまどろっこしい。ザ純文学という感じ。 お雪が痴人の愛のナオミのような悪女だったら多分主人公も完全降伏してただろうなと思う。かなり痴人の愛に似た構成に感じた。物語の起伏が少ないので自分は微妙に感じてしまった。 ただ後書きがめちゃくちゃ面白い。当時の東京の風俗を詳しく描写しており、興味深い。現代人はたしかに他者に優越感を感じたいという欲望を持って他の人より先に行こうとしている。これは現代に通じる。その根底にあるのは交通の便の便利さなのか。
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今の時代なら到底受け入れられない内容とは思う。でもこんな言葉遣いできる老人はただひたすらにかっこいい。
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島田正彦さんの最近出た新書にこの本の事が書かれていた。 古本屋で目についたので読んでみた。確かに永井は放浪者だ。うらやましいが家庭があるものにはなかなか真似はできない。 放浪しながらも行くべき場所をいくつか抑えている。 最後の一文が素晴らしかった。
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描写は細かく美しい。ただ、現代の価値観だと、このおじさんなにやってんだろう…としかならないストーリーでした。当時の様子を知るための小説としては良いかもしれません。
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小説家、大江匡は6月末のある夕方、玉の井付近を散歩していた。 大粒の雨が降り出し、大江が傘を広げると、浴衣姿の女が傘に入ってきた。女は娼婦のお雪であった。 大江は雪に誘われるまま、部屋に上がり、なじみを重ねることになる。ある日雪は、借金がなくなったら妻にしてほしい、と言い出す。雪...
小説家、大江匡は6月末のある夕方、玉の井付近を散歩していた。 大粒の雨が降り出し、大江が傘を広げると、浴衣姿の女が傘に入ってきた。女は娼婦のお雪であった。 大江は雪に誘われるまま、部屋に上がり、なじみを重ねることになる。ある日雪は、借金がなくなったら妻にしてほしい、と言い出す。雪は大江に本気で惚れてしまった。 雪を本当に家庭の幸福な女にするのは自分ではない、と大江は考え、身を引く。 -お雪は倦み疲れた私の心に、偶然過去の世の懐かしい現役を彷彿たらしめたミューズである- 9月の末、お雪が入院したことを聞く。 そこで哀しみの中で話は終わる… 第二次大戦前の東京の情景、悲しい恋の行方、永井荷風の文章、すべて味わい深い佳作です。 -わたくしとお雪とは、互いに其本名も其住所を知らずにしまった。ただ墨東の裏町、蚊のわめく溝際の家で狎れ親しんだばかり。一たび別れてしまえば生涯相逢うべき機会も手段もない間柄である…-
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情景描写が綺麗で読みやすく、風情を感じられる文章だった 朝読の時間に読んでたので、あの10分間だけ江戸の気風が残る昭和前期の下町に迷い込めて楽しかった
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