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墨東綺譚 の商品レビュー

3.6

52件のお客様レビュー

  1. 5つ

    8

  2. 4つ

    17

  3. 3つ

    15

  4. 2つ

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  5. 1つ

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2021/11/05

小説「失踪」の構想をねりつつ、私娼街・玉の井へ調査を兼ねて通っていた大江匡は娼婦であるお雪と馴染みになる。物語の筋らしい筋はなく、今では失われてしまった風景が趣のある文章で描写され、幻燈映写機で臨むよう。昭和初期の浅草界隈は特に心惹かれる。

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2021/07/18

狭い路地の向こうには大量の蚊が涌く溝際に佇む私娼窟。なんだかきな臭い情景にも思えるけど、匂い立つような夏の爽やかさを感じられたのは、荷風の流麗な文体によるものなのでしょう。また、昭和初期の下町の風俗が目に浮かぶようでタイムトリップしているようなウキウキした気持ちになりました。 馴...

狭い路地の向こうには大量の蚊が涌く溝際に佇む私娼窟。なんだかきな臭い情景にも思えるけど、匂い立つような夏の爽やかさを感じられたのは、荷風の流麗な文体によるものなのでしょう。また、昭和初期の下町の風俗が目に浮かぶようでタイムトリップしているようなウキウキした気持ちになりました。 馴染み深い土地が舞台とのことで手にとった本だったけど、思いがけないヒットでした。

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2021/05/17
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日本の過去の日常風景に触れたくなり読む。今よりも時間がゆったりと流れている感じがする。蒸し暑いし治安も悪い世の中でありながら、なんとなく明るい雰囲気がいいなぁ。永井荷風は戦争時代を生き抜きながらも戦争がなかったかのような作品を残す。我が道に実直な生き様はカッコいい。ただ家族は大変だったろうし、天才が故、特に身近な人との関係から孤独をかみしめた人生だったのかなと思った。また間をおいて読み返したい。

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2021/05/01
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

文章を形作る単語選びがとても好みで、文体が似てるかもと言われた本だったので嬉しかった。とくに風が吹くタイミングがいい。たぶんだが描写しようとする場所や作家の視線がいいんだと思う。この話の舞台は昭和初期であるが、その当時に作者が抱いていた江戸・明治への郷愁が作品の奥底に流れている。今の時代に昭和を思うように、この時代も目まぐるしく街が変化する中で許せるものと許せないものが荷風にははっきりとあって、昔を愛するという揺るがない志に触れることができてよかった。思えばお雪と出会うきっかけになったのも、家の近隣から聞こえるようになったラジオの音である。作者の大事に思っていることをきっかけに話が動いていくと自然で、不思議と先に先にと読める。これは大事なことだと思う

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2018/08/25

隅田川の東岸、玉の井の私娼街を舞台に、去りゆく明治の時代への詠嘆をこめた随想的小説。抑制され落ち着いた筆致は単なる懐古主義にとどまらず、現代を生きる我々にも大きな共感を誘う。

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2017/11/10

昭和の風俗を描きつつ、江戸の名残りを漂わせた随筆風の小説です。 娼婦のお雪となじみ、出会いと別離を描き、滅び荒んでいく東京の風俗への愛着を、風刺も含めて描いていきます。 樋口一葉を意識して書かれているとか、いないとか。 昭和の風俗、良き時代がそこにはあります。

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2017/01/28

古く良き時代の東京の移ろいが描かれいる。 半藤一利さんらの『世界史としての日本史』に著者がしばしば登場して、その風刺に興味を持ち読んでみました。 昔のひとの教養には感服しますね。

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2016/08/21

ふしぎな味わいだった。濹東といういわゆる青線地帯(私娼街)を舞台に、私娼のお雪と作家の淡い恋に似た感情の行き違いが淡々とした筆致で綴られている。昭和初期とは思えぬ乾いた風情のある風景描写を読むにつけ、つくづくと日本は戦前と戦後でハッキリ二分された国になったのだなあとしんみりした。...

ふしぎな味わいだった。濹東といういわゆる青線地帯(私娼街)を舞台に、私娼のお雪と作家の淡い恋に似た感情の行き違いが淡々とした筆致で綴られている。昭和初期とは思えぬ乾いた風情のある風景描写を読むにつけ、つくづくと日本は戦前と戦後でハッキリ二分された国になったのだなあとしんみりした。私の母方の曽祖父は地主のひとり息子の遊び人で芸者だった曽祖母を落籍して妻としたのだが私には面識のない今は亡き二人に、過ぎ去りし時代の面影を聞かせてもらいたくなった。曽祖父は冬場も素足に下駄で細身の着流しだったそうな。

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2016/08/06

こういう名作をたまには読んでいきたい。日本人として読まねばならない作品が、私を待っている! そんなことを思う周期が久しぶりにやって参りました。 多分この一冊で終わります← 本作の感想を一言で言うと、 面白くなかった。゚(゚^ω^゚)゚。ひー 東京を知らない私だからなの...

こういう名作をたまには読んでいきたい。日本人として読まねばならない作品が、私を待っている! そんなことを思う周期が久しぶりにやって参りました。 多分この一冊で終わります← 本作の感想を一言で言うと、 面白くなかった。゚(゚^ω^゚)゚。ひー 東京を知らない私だからなのでしょうか。 描かれる下町の風景のつぶさな描写は、残念ながら私の心に何も訴えず、何も残してくれませんでした。 毎回思うけど、そう思ってしまうのは、私の行間読む能力とか感受性の鈍さ故なんでしょう、多分。 年を経れば少しは改善すると思ってます←← でも、東京で暮らす人の心には何か引っかかるものがあるだろうし、こういう作品はあまねく人々に読まれるべきものというより、地元の人々に愛され続けるものという表現があたっているのでは、ないかなァ、と…思うんですけど…(小声) 感情の移り変わりで物語を進めるのではなく、街を見つめる彼の視点の動きが、彼の感情を情感たっぷりに伝え、物語を推し進める原動力になっているように感じました。 大震災後、変わりゆく世に置いていかれているように感ずる男の見つめる東京の風俗、生活の拠点となる場所を、克明に言葉に止めようとする作者の執念も感じます。 いつの世も、人は己の生きた時代を恋うものなのだなァ。 きっと私も、「あの頃は良かった」と、いつか昔を懐かしく思い出すことが増えていくんだろうな。 多分それって、寂しくもあるだろうけど、幸せなことでもあるんだろうなァ。

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2016/07/29

初老の小説家が、新作の構想を練りながら散歩している すると急に雨が降ってくる 準備のいい彼は、傘をとりだす それをさして歩いていたら、またまた急なことであるが ちょっといい感じの姉さんが傘に飛び込んでくる 髪結いの帰り、雨に降られて たまらず飛び込んだ礼とばかりに二人は関係してし...

初老の小説家が、新作の構想を練りながら散歩している すると急に雨が降ってくる 準備のいい彼は、傘をとりだす それをさして歩いていたら、またまた急なことであるが ちょっといい感じの姉さんが傘に飛び込んでくる 髪結いの帰り、雨に降られて たまらず飛び込んだ礼とばかりに二人は関係してしまう 今でいうならラッキースケベ 今でいうなら村上春樹、か 事実は小説より奇なり、なんて、使い古された言い回しだけど 小説家は、自分の構想している新作において書かれるべき男女の仲が どうしてもわざとらしくなってしまうのに対し 現実にある、このリアリティの欠落はなんなのか 悩んでしまうのだ そう、これはリアリズムをめぐる物語 しかし本当のところ 現実すら道化芝居でありうることをちゃんと知っている彼は 深入りを避け、やがて女から遠ざかっていく

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