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野火 の商品レビュー

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230件のお客様レビュー

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ぞくっとする戦争の話…

ぞくっとする戦争の話。極限状態におけるカニヴァリズムが題材ということだったのだけれども、私は極限状態になれば人間はどんなことでもするのであるということに恐怖した。戦争といえば激しい銃撃戦、などステレオタイプなイメージが最初にうかんでくるが、この本では、もっとリアルなそういうものだ...

ぞくっとする戦争の話。極限状態におけるカニヴァリズムが題材ということだったのだけれども、私は極限状態になれば人間はどんなことでもするのであるということに恐怖した。戦争といえば激しい銃撃戦、などステレオタイプなイメージが最初にうかんでくるが、この本では、もっとリアルなそういうものだけではない戦争が感じられる。本当に、人と言うのは怖い生き物です。

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極限状況に置かれた人…

極限状況に置かれた人間の精神、心理を描いた戦後文学の白眉です。

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極限状態における兵士の、聖と俗の入り混じった心理を克明に描いた戦後小説の金字塔。

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無謀な戦争によって日本兵が極限状態に追い込まれ、食料不足による飢餓感に苛まれた兵士は、遂にはタブーである人肉にまで手を出す事になる。

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戦時のフィリピンで結…

戦時のフィリピンで結核のため隊を追われ、一人でさまよい歩く一等兵。食物が無くなり、とうとう人肉を食する同朋に会う。戦争という過酷な状況で極度に追い詰められた人間の狂気に身震いした。

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2024/09/24

塚本晋也による同名映画がとても良かったので、その流れで原作も読んでみた。戦争文学の代表的な作品で、筆者・大岡昇平の実体験が基になっている。太平洋戦争末期、敗戦色の濃いフィリピン戦線で結核を患った男が、必死に生きようともがく様が描かれる。男は極限状態の戦場で精神が疲弊し、飢えに苦し...

塚本晋也による同名映画がとても良かったので、その流れで原作も読んでみた。戦争文学の代表的な作品で、筆者・大岡昇平の実体験が基になっている。太平洋戦争末期、敗戦色の濃いフィリピン戦線で結核を患った男が、必死に生きようともがく様が描かれる。男は極限状態の戦場で精神が疲弊し、飢えに苦しみ、「食人」という禁忌を犯すかどうかに揺れ始める。 何が罪で、何が罪ではないのか。戦場に正解などはない。たとえそれが生きるための仕方のない行為だったとしても、二度と取り返しのつかない不可逆的なものであることには変わりないし、それが絶対にいけないことだとも言いきれない。そもそも本当に悪いのは食人を行った人間なのだろうか。少なくとも自分は違うと思った。強烈な力で倫理観に訴えかけてくる作品だった。

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2024/09/23
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※このレビューにはネタバレを含みます

我深き淵より汝を呼べり。 社会から切り離された孤独と近代合理性の失敗である異常な戦時下での人間性の崩壊。絶対的な神の崩壊。 フィリピンで肺を病み隊から追放され、野戦病院からも追い出された主人公は行く当てもなく彷徨する。あるのは死へ向かう乾いた身勝手な自由。 山間の芋畑を見つけ飢えを満たすが、遠くに見える教会に心を惹かれ街に降りる決意をする。街は廃墟となっており野犬と死体の山だけだった。 教会に入り休んでいるとフィリピン人の男女と遭遇してしまい女を銃殺してしまう。街を離れ日本兵と行き合い仲間に加えてもらう。敵の銃撃を越えた先には死屍累々の敗残兵が道のそこここに倒れているという地獄だった。主人公は猛烈な空腹と理性の葛藤の末に人の肉を口にしてしまう。神に世界に怒り、自らの存在と過酷すぎる現実を受け止められない主人公は狂ってしまう。

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2024/09/18

参加している読書会の課題図書として読んだ小説。 大岡昇平の小説を読むのは初めて。 戦場でのできごとの描写は、簡潔でリズムが良いのに、主人公が、戦場で殴られて気を失った後、なぜか助かって復員してからの生活やその後の独白の部分は、ダラダラして、言い訳っぽくって、全体の読後感を悪くして...

参加している読書会の課題図書として読んだ小説。 大岡昇平の小説を読むのは初めて。 戦場でのできごとの描写は、簡潔でリズムが良いのに、主人公が、戦場で殴られて気を失った後、なぜか助かって復員してからの生活やその後の独白の部分は、ダラダラして、言い訳っぽくって、全体の読後感を悪くしているように思う。 主人公が、民間人のフィリピン人を殺したことや、戦友を殺したことの罪悪感を隠す言い訳として、自分は死人の肉を、それと知っては、食べなかったと言うことを心の拠り所としているが、それを自分でも公平な判断だと信じることができないために、外の世界に対して攻撃的になったり、食事の前に変な儀式をしたりしなかったり、(軍医と違って患者を攻撃しない)医者を馬鹿にすると言う反応をしている、と言うのが、作者が最後の部分において言いたいことだと思われる。 しかし、そこの判断は読者に委ねる方が、小説としての出来は良かったのではないだろうか。 まぁ、当時の読者は、このような手法が良いと感じた人が多かったのだろうし、現代の価値観に基づいて、70年も前の小説にケチをつけるのが、公平でない事は認めざるをえない。

Posted byブクログ

2024/09/11
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

先に塚本晋也監督の映画を見たので戦争描写のイメージが強かったが、小説を読んでより本来的な内容を味わうことができた。恐らく、この作品のテーマは12章「象徴」で語られている。 > あの快感を罪と感じた私の感情が正しいか、その感情を否定して、現世的感情の斜面に身を任せた成人の知恵が正しいか、そのいずれかである。(p59より引用) 飢えて人肉を食べようとする右手は後者で、それを制止する左手は前者になる。殺人は犯しながらも人肉食への衝動には極限まで抵抗するのも、少年時の性的習慣と同じく、それを罪と感じる快感があるからだろう。 戦争での人肉食という極端な場面で表現されているが、この葛藤は全ての人間が大なり小なり直面する普遍的なものだと思う。現代の大きな社会課題も、突き詰めればあの快感を罪とする感情を個々の人間が日常生活において否定し続けるために生じていると言えなくもない。

Posted byブクログ

2024/08/31

フィリピンに行く予定があるので、前々から気になっていた本作を読んでみようと手に取る。 フィリピン戦線で病気のため兵隊としてはいられないが、物資が乏しい救護班からもケアを受けられない主人公、死を意識してフィリピンを彷徨い歩く。 戦争の悲惨さも有るが、それよりも主人公の死生観等内...

フィリピンに行く予定があるので、前々から気になっていた本作を読んでみようと手に取る。 フィリピン戦線で病気のため兵隊としてはいられないが、物資が乏しい救護班からもケアを受けられない主人公、死を意識してフィリピンを彷徨い歩く。 戦争の悲惨さも有るが、それよりも主人公の死生観等内面にフォーカスされていて、私的には普通の戦争モノより興味深く読む。本当には分かっていないのだろうが、どんどん主人公の気持ち同化できる自分がいて不思議で面白い。 久しぶりに時間をおいてまた読みたいと思った本。

Posted byブクログ