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火宅の人(下巻) の商品レビュー

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28件のお客様レビュー

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2024/03/13

上巻の続きの欧米旅行編から始まる。 舞台はヨーロッパへ。 アパートの大家であるマダムに「私」とのふしだらを咎められて叩き出された菅野もと子を伴い、さながら、愛の逃避行。ロンドンから、パリへ。 もと子は事情があってローマへ行くこととなり、あとで落ち合う約束をしたが、結局それから会え...

上巻の続きの欧米旅行編から始まる。 舞台はヨーロッパへ。 アパートの大家であるマダムに「私」とのふしだらを咎められて叩き出された菅野もと子を伴い、さながら、愛の逃避行。ロンドンから、パリへ。 もと子は事情があってローマへ行くこととなり、あとで落ち合う約束をしたが、結局それから会えることはなかった。 パリでの一人の生活、買い出しの様子などが生き生きと描かれる。 その後のスペイン、イタリア、ドイツをめぐる紀行も秀逸。 夢から醒めたように日本に降り立つ。 この小説の主人公、作者・檀一雄の分身である桂一雄は、行く場所の定まらない漂泊の人である。 (家は四軒もあるのだけれど) いつも何かから逃れている気がする。 そして、旅のお供には、女が必要だった。 妻は家に居て動かざるもの。同棲中の愛人・恵子は新劇女優だったから旅公演もあり、桂の気まぐれの旅には同行できない。 それゆえ、旅には桂の気まぐれに付き合える、行くあてのない女たちが選ばれたようだ。 選ぶというより、行き当たりばったり、手当たり次第 そんな女たちも居どころを見つけて次々と桂の前を去って行く。 桂は病を得て、女たちとの別れを語る。病床で見た夢なのか、回想なのか・・・ 本作は20年をかけて書き続けられ、完成したのは檀一雄、死の三ヶ月前だったという。 主人公の心と肉体の遍歴を描き、最後にやっと孤独の境地に達する、それを描ききるにはそれだけの年月と、作者自身の円熟が必要だったのだろう。

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2024/01/18

えっなにこれ下巻すごいよかったんだけどなんなんだろ。著者の異常性に読者の俺が慣れてしまったのか? 最後の数章は死の淵で口述筆記されたんだよね。ほんとにそんな感じで、急ぎ足で書かれているのが切ない。と同時に、壮大な物語の終幕を予感させる。演劇っぽいよねそのへん。 そして次郎の話は落...

えっなにこれ下巻すごいよかったんだけどなんなんだろ。著者の異常性に読者の俺が慣れてしまったのか? 最後の数章は死の淵で口述筆記されたんだよね。ほんとにそんな感じで、急ぎ足で書かれているのが切ない。と同時に、壮大な物語の終幕を予感させる。演劇っぽいよねそのへん。 そして次郎の話は落涙必至だわ。俺も子どもいるというのもあるし。幸せってなんだろね?と考えてしまうよ。第一のコース!次郎くん!第二のコース!チチくん!ってやると騒ぎ回るのは、すごく幸せだったんじゃないかな?そして人生で大切なことってほぼそれだけなんじゃないかな?と考え込んじゃう。なんつーかさ、瞬間的でもそういう最大風速的な楽しい時間があれば、あとはその事を思い出しながら生きれたりするじゃん。 まあ死んじゃうんだけどさ。悲痛だよね。 愛人にも愛人2にも捨てられるエンドは潔し。

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2023/07/07

自らの欲望に生きた作家の半生記の後半。 今の時世なら日本脳炎にかかった息子がメインになりそうなものだがそうはならずにあくまでも女、酒、海外旅行と後半でも余念がない。どうせならもっと破滅的に生きてくれた方が面白いが無駄にこども好きだったりとリアル路線なのか中途半端な印象。 女と好き...

自らの欲望に生きた作家の半生記の後半。 今の時世なら日本脳炎にかかった息子がメインになりそうなものだがそうはならずにあくまでも女、酒、海外旅行と後半でも余念がない。どうせならもっと破滅的に生きてくれた方が面白いが無駄にこども好きだったりとリアル路線なのか中途半端な印象。 女と好き放題やれるのもカネということで裏に自尊心のようなものまで感じる。それでも逝去前に作品を完成させたことはやはり凄い。

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2023/04/09

両手に抱えきれないほどたくさんの人間との関係を増やし続けた先の孤独の需要と喜び。元は自分ひとりのためだけに料理をしていたところに回帰していく主人公。

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2022/09/29

「檀一雄」の長篇小説『火宅の人』を読みました。 「沢木耕太郎」の『檀』を読み「檀一雄」のことを妻「ヨソ子」の立場から知り、「檀ふみ」の『父の縁側、私の書斎』を読み「檀一雄」のことを娘「ふみ」の立場から知り、満を期して、「檀一雄」当人が、自らの生活を描いた作品を読んでみることにし...

「檀一雄」の長篇小説『火宅の人』を読みました。 「沢木耕太郎」の『檀』を読み「檀一雄」のことを妻「ヨソ子」の立場から知り、「檀ふみ」の『父の縁側、私の書斎』を読み「檀一雄」のことを娘「ふみ」の立場から知り、満を期して、「檀一雄」当人が、自らの生活を描いた作品を読んでみることにしました。 -----story------------- 〈上〉 妻子を放り、愛欲に溺れ、世界を彷徨し、すべてを失った男が独りで作る、タンシチューのなんと侘しいことか! 出版部 金寿煥 「一郎」は窃盗をやらかす。 「次郎」は全身麻痺で寝たきり。 「弥太」はまだヨチヨチ歩き。 「フミ子」は鶏の餌を喰ってひよ子のように泣きわめく。 「サト子」は生れたばかり。 妻は主人の放蕩・濫費・狂躁を見かねて家出騒ぎ……。 よしたとえ、わが身は火宅にあろうとも、人々の賑わいのなか、天然の旅情に従って己れをどえらく解放してみたい――。 壮絶な逸脱を通して謳い上げる、豪放な魂の記録。 〈下〉 女、酒、放浪。 無頼を地で行く小説家の、壮絶な魂の記録。 「チチ帰った?」「うん帰ったよ」「もう、ドッコも行かん?」「うん、ドッコも行かん」「もう、ドッコも行く?」「うん、ドッコも行く」女たち、酒、とめどない放浪。 崩壊寸前のわが家をよそに、小説家「桂一雄」のアテドない放埒は、一層激しさを加えた。 けれども、次郎の死を迎えて、身辺にわかに寂寞が……。 二十年を費し、死の床に完成した執念の遺作長編。 〈読売文学賞・日本文学大賞受賞〉 ----------------------- 「檀一雄」が、自らの生活や体験を描いた私小説、、、 名前も一部変更されていてフィクションが含まれているものの、ほぼ実生活が忠実に描かれているようです… 行きあたりばったりで気紛れな生き方、そして出鱈目な生活なんだけど、或る意味、本能に忠実に生きた男の捨てがたい魅力が描かれている作品でしたね。 主人公で売れっ子小説家の「桂一雄(檀一雄)」は、日本脳炎の後遺症により障害を持つ子どもを含む、5人の子どもを妻に押し付け、18歳も歳の離れた若い女優「矢島恵子(入江杏子)」と同棲… 他の愛人も抱え、自ら保有する4軒の家やホテル、知人宅を渡り歩き、そして、取材と称して国内だけでなく、世界各地を放浪、、、 毎日のように酒場やバーを飲み歩き、自宅やホテルでもビールやウィスキーを中心とする酒類が手放せず、料理が大好きで日ごろから良質の食材探しに余念がなく、その合間で溜まった連載小説を執筆という生活を続けている模様が生々しく描かれています… 女と放浪と料理、そして家族の逸話で構成されている物語でしたね。 実際は愛憎にまみれたドロドロの生活だったのかもしれませんが… 「檀一雄」の性格や筆致の影響で、意外と重苦しくない表現になっていましたね、、、 それにしても… 多くの家を持ち(借家含む)、ホテル住まいが多く、機会があれば銀座で豪遊するという生活が、あまりにも庶民生活とかけ離れていて、想像し難かったですね。 最大で10本の連載を抱え、当時(昭和30年代?)の月収が50万円から多い時は130万円だったようなので、経済的に恵まれていたからこそ、実現できた生活なんでしょうねぇ、、、 でも、これの作品が文学賞(第27回読売文学賞(小説部門)、第8回日本文学大賞)を受賞しているというのは、ちょっと理解できないなぁ… うーん、ブンガクの評価って、難しいなぁ。 有り余る程のエネルギーには驚かされるし、不思議な魅力を感じるのも事実ですが… やっぱり、自分には理解できない行動や判断ばかりで戸惑いが残る作品です。

Posted byブクログ

2022/10/08

上下巻を通し、作者の好き勝手した一生をなぞる事が出来る。上巻のハイテンション(人生の謳歌)が、下巻に入ると人生に対する虚無や悲しみに置き換わり、老境に差し掛かる作者の内面の移り変わりが非常に興味深い。 筆力も凄まじく、基本自分勝手な事を言っているのに大体納得させられてしまう。

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2022/05/02

上巻の洋行の続きから日本に帰ってきてからの放浪を描く。とはいえこれまで一緒に暮らした恵子とも仲はこじれ、家にも帰れず、終盤には、ゴキブリの徘徊するホテルに一人ぼっちになる。解説にもあるけれども、人間様々に繋がっているけど、究極一人滅んでいく、その哀れを引き受け、自分をどえらく解放...

上巻の洋行の続きから日本に帰ってきてからの放浪を描く。とはいえこれまで一緒に暮らした恵子とも仲はこじれ、家にも帰れず、終盤には、ゴキブリの徘徊するホテルに一人ぼっちになる。解説にもあるけれども、人間様々に繋がっているけど、究極一人滅んでいく、その哀れを引き受け、自分をどえらく解放したい、という放浪記はなかなか感動的だった。ちょっと途中読んでいて、だれたけど…

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2022/03/21

私小説ながら、檀一雄氏の実体験がありありと読み取れた。 次郎くんの病床の描写から平行して檀一雄氏の憂いの情景が目に浮かんだ。 矢島恵子との旅の描写などからは恋する心や、寂しさが伺えた。 読み終わった時、人間の愛とは何なのか、究極の難題を考えさせられた。

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2021/12/19

著者本人とその家族、愛人を描いた私小説風の作品であるが、話の筋だけを見ればここまでクズな人間も珍しいと思ってしまう。主人公である著者は幼い3人の子供(しかも1人は日本脳炎で寝たきりになっている)を抱えながらも、家には全く寄り付かず、愛人のために複数の家を契約しながら、国内・海外を...

著者本人とその家族、愛人を描いた私小説風の作品であるが、話の筋だけを見ればここまでクズな人間も珍しいと思ってしまう。主人公である著者は幼い3人の子供(しかも1人は日本脳炎で寝たきりになっている)を抱えながらも、家には全く寄り付かず、愛人のために複数の家を契約しながら、国内・海外を放浪する。最も、作家としてとにかく常に作品を生むことだけは欠かさずしているため、毎月の月収も非常にリッチではあるため、家族が少なくとも困窮しているわけではないが。 しかし、ここまで人間のクズともいえる奔放さがあると、不思議とカラっと晴れやかな読み心地にさせられるのが本書の最大の魅力だろう。日本の近代文学史的に見れば、親しい交友関係を持っていた太宰治や坂口安吾などと並ぶ無頼派に位置づけられるが、日本文学特有のジメジメした感じはここにはない。そうした明るさも、恐らく著者を長寿たらしめた一つの理由だと思うし、ひたすらに奔放さを突き詰めた生涯というのは、これはこれで悪くない、と思わせてくれる。

Posted byブクログ

2021/09/14
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

お金の使いっぷりが見てて不安になる(笑) 海外であれだけ行動力があってすごいなあとも思うけど、やっぱりお金遣いが…(笑) 恵子関連での嫉妬心もあなたに言う資格があるのか、と思うくらいの自分のやりたいよう、本能のままにしている主人公だけど、 まあその部分もなんだかんだ主人公の魅力というか、つい読みすすめてしまう一因なんだろうなあ。 ツイストに夢中になるのもそうだけど、いい意味で年齢を感じさせない人で、こういう人がモテるのも理解できる気がした。 最終的にみんな離れていってしまい、彼の最期は寂しいものになるのかなあ、と感じ少し切なくなりました。

Posted byブクログ