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天人五衰 の商品レビュー

4.3

148件のお客様レビュー

  1. 5つ

    66

  2. 4つ

    44

  3. 3つ

    26

  4. 2つ

    1

  5. 1つ

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2013/03/23

歳をとればとるほど顔だけでなく中身も腐敗していくのが見えるよう。なりたくない姿だけど逃れるのは難しそう。

Posted byブクログ

2013/03/02

『この世には幸福の特権がないように、不幸の特権もないの。悲劇もなければ、天才もいません。 あなたの確信と夢の根拠は全部不合理なんです』 76歳になった本多は転生の神秘にとりつかれ ジン・ジャンの生まれ変わりを賭け、安永透を養子に迎える。彼は美しい容姿と並外れた知能を持っていた...

『この世には幸福の特権がないように、不幸の特権もないの。悲劇もなければ、天才もいません。 あなたの確信と夢の根拠は全部不合理なんです』 76歳になった本多は転生の神秘にとりつかれ ジン・ジャンの生まれ変わりを賭け、安永透を養子に迎える。彼は美しい容姿と並外れた知能を持っていたが… 最初からテンポよく非常に面白いと思って読んでいたが、 透の冷酷さが過激化してくるにつれて不快な気持ちになった。清顕や勲の冷静さ冷酷さとは違い、 自分は選ばれた者と信じ、 自分以外の全てを愛することのない透。 本多は信じていた運命から 大きなしっぺがえしをくらうことになってしまった。 三島由紀夫の当初の『天人五衰』の構想メモとは まったくかけ離れた結末になった。 この本を三島由紀夫の遺書として読むならば、 本多の老いの苦悩、 透の自尊と絶望、 『あなたは最初から偽物だったのよ』と言い放つ慶子の言葉… 全てが彼自身の彼に向けた言葉にも思えてくる。 考えさせられるシリーズだった。 いまもまだ考えている。 いつかまとめることができたらまたレビューを書き直そう、 とか思っているくらいです。

Posted byブクログ

2013/01/31
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

四代に渡る転生の物語の最後。 ジン・ジャンの生まれ変わり?と思える、少年に本多は出会い、彼を自身の養子に迎えるが・・・ 結局、彼は清顕の転生であったのか、偽者であったのか。 本多が、そうであって欲しいと願い続けたゆえの願望の現われであったのか。 その証を見出すために、60年を経て、かつての聡子に会いに奈良の古寺に赴くも、当の聡子(御門跡)は、60年前の自身の事は忘れ、「その人は、本当にあらっしゃった人ですか?」と本多に問う。 なんだか、ここまで来て。 というか、前巻で本多が老境に差し掛かってきて以降、仏教の解釈が多々あり(これがおそらく三島が書きたかったことなのだろうと思いつつ)、分からなくなってきた。 輪廻転生を説いているのは、(広い意味で)仏教ではあるわけだけれども・・・? ただ、一巻を読んでいて、清顕はめんどくせーと思ったけれども、それ以上に、本多繁邦という人物が、難解であるということは分かった。 今巻の主人公、徹は、彼の手記を読む以上は、清顕並の難解さというか自負というか矜りの持ち主のように見えたけれども、その実清顕ほどの矜持は、結果持ち合わせていなかった。 その点から考えても、彼は本多の生み出した「偽者」であったのかな?と思う。

Posted byブクログ

2013/01/23

五人五衰とは 天人五衰(てんにんのごすい)とは、仏教用語で、六道最高位の天界にいる天人が、長寿の末に迎える死の直前に現れる5つの兆しのこと。 大般涅槃経19においては、以下のものが「天人五衰」とされる。これは仏典によって異なる。 衣裳垢膩(えしょうこうじ):衣服が垢で油染みる 頭...

五人五衰とは 天人五衰(てんにんのごすい)とは、仏教用語で、六道最高位の天界にいる天人が、長寿の末に迎える死の直前に現れる5つの兆しのこと。 大般涅槃経19においては、以下のものが「天人五衰」とされる。これは仏典によって異なる。 衣裳垢膩(えしょうこうじ):衣服が垢で油染みる 頭上華萎(ずじょうかい):頭上の華鬘が萎える 身体臭穢(しんたいしゅうわい):身体が汚れて臭い出す 腋下汗出(えきげかんしゅつ):腋の下から汗が流れ出る 不楽本座(ふらくほんざ):自分の席に戻るのを嫌がる Wikipedia 傍観者だった本多が主人公の二冊目で完結編だ。 これを書き終えて三島由紀夫は市ヶ谷に向かったとか? 享年45歳だが、本多は81歳でガンを患い、歩行も困難な老人。 三島が描いた、自分が死と対峙するであろう姿ではないかと思った。 「全ては幻だった、のか」というラストをどんでんだと言う人もいるし、市ヶ谷へ急ぐあまり書き急いだのだという説もある。 読み手の受け取り方によって深くも浅くも考えられるのだろう。 老い支度をしっかりしなければとの忠告を聞いたような気がする。 それにしても本多さんの行き着いた先が気の毒過ぎる。 自業自得ではあっても、それが人間なんだよと作者は言いたかったのかな? 結論は読者に委ねられている。ずるいよ。

Posted byブクログ

2013/01/20

見事な結末。門跡(聡子)の「それも心々ですから」に、今まで読んできた全てがふっと消失するような錯覚を覚え、人間の認識とは何かということを考えさせられる。 聡子としては、本多に自分と清顕の二人の世界を覗き見られてた上に、勝手に話を付け足されたのが嫌で、二人の世界から本多を追い出した...

見事な結末。門跡(聡子)の「それも心々ですから」に、今まで読んできた全てがふっと消失するような錯覚を覚え、人間の認識とは何かということを考えさせられる。 聡子としては、本多に自分と清顕の二人の世界を覗き見られてた上に、勝手に話を付け足されたのが嫌で、二人の世界から本多を追い出しただけかもしれないが。。。

Posted byブクログ

2013/01/10

2012年の読み納めとして、夏頃からのろのろ読み進めていた「豊饒の海」を最後まで読み終えた(文庫版で登録したが、実際には新潮社の三島全集13・14巻にて読了)。いつもなら第一巻のみ登録してレビューを書くところだが、この作品についてはレビューを書くなら最終巻にしておかないと…それく...

2012年の読み納めとして、夏頃からのろのろ読み進めていた「豊饒の海」を最後まで読み終えた(文庫版で登録したが、実際には新潮社の三島全集13・14巻にて読了)。いつもなら第一巻のみ登録してレビューを書くところだが、この作品についてはレビューを書くなら最終巻にしておかないと…それくらい、第一部の読後感と第四部まで読み終えての印象とに大きな差がある作品。 タイトル通り春先の雪のような清さと儚さが美しい第一部「春の雪」、盛夏のような生命の炎の熱さを感じる第二部「奔馬」、実りの秋のような熟れた肉体を持つ“転生の清顕”、その官能の陰に忍び寄る腐敗をも感じる第三部「暁の寺」、そしてこれら若さを散らしていく美しい命たちを見守り続けた男が老いという人生の冬を迎える第四部「天人五衰」。織り込まれた四季のモチーフのほか、明治末から昭和の戦後までをカバーする物語の時代背景が、移り変わる日本の姿と共に「全ては須臾の間」という何とも言えない無常感を与える。 ドラマチックな転生のモチーフが前面に立つのは第二部まで。第三部・第四部はむしろ、若さの盛りで命を散らし再び青春を輝かせるために“転生”してくる存在に固執する男――若さを謳歌することなく通り過ぎた男・本多の、息詰まるような執着(憧れと欲望がないまぜになったような)が前に押し出されている。ドラマチックな若い生の傍観者であり続けた本多、彼がその執着の対象である“転生の清顕”と見込んだ少年を手元に置くと、少年は課せられているはずの運命を免れ、本多は解脱にたどり着くことなく、月修院門跡の一言に茫然自失して物語の終わりを迎えることとなる。 転生の天人であるはずの透は、本多によって救われたのか、汚されたのか。それともそもそも、天人ではなかったのか。清顕というまばゆい存在を体当たりで「愛した」聡子が積み重ねた生の果ての老いと、そのまばゆさを「覗く」エクスタシーに囚われた本多が駆け続けた生の果ての老い、その隔たり。三島にとっての“美しさ”や“卑しさ”、世の無常と純粋な思いが持つ永遠性――この長編小説のラストに置かれた「刹那に生滅する」阿頼耶識が本多を無の世界へ突き落す結末、門跡が聡子として愛した対象と本多の執着の対象に何の重なりも見出されないラストが何を意味するのか、そこにはこの「天人五衰」最終稿を入稿したその日に自決事件を起こした三島自身の思いというものも深くかかわっている気がしてならない。 それにしても、全編に渡って美しい日本語が堪能できる作品であった。全四巻。

Posted byブクログ

2012/12/18

読み終わって率直に素直に思ったことは、まず、三島由紀夫というのはものすごい、怪物のような作家だな、ということ。 4巻にわたる壮大で深淵な話の最後に、まさかこんなシーンが待っていようとは、思いもよらなかった。 いよいよ老いた本多が、綾倉聡子と遂に再会するクライマックス。聡子の言葉で...

読み終わって率直に素直に思ったことは、まず、三島由紀夫というのはものすごい、怪物のような作家だな、ということ。 4巻にわたる壮大で深淵な話の最後に、まさかこんなシーンが待っていようとは、思いもよらなかった。 いよいよ老いた本多が、綾倉聡子と遂に再会するクライマックス。聡子の言葉で、それまで自分が見てきた(読んできた)ことが突如あやふやで不確かなものになる。自分を取り囲んでいた世界の壁…床がガラガラと崩壊し、その外…下に別の世界が広がっていることに気付いたような感覚。話が一気に宇宙規模に拡がったように感じた。明るい日差しに溢れた月修寺の庭が、神の庭のように感じられた。 実は先日観劇した、宝塚月組公演『春の雪』で、髪を下ろした聡子の台詞にこの最後のシーンの台詞が引用されていた。でも、同じ台詞でもあの時点で言われるのと、何十年もの時を経て言われるのとは全く感じ方が違った。 色々なことを感じて、頭の整理がつかない。この先も折あるごとにこの小説のことを思い返し、考えるだろうと思う。それくらい引っ張る力の強い、捉える力の強い小説だと思った。

Posted byブクログ

2012/11/01

三島由紀夫の遺作となった「豊饒の海」完結編。 本多が透を養子にしてからがとても面白く一気に読めた。透の手記はワクワクしながら読んだが、凄かったのは慶子が透に全てを語る場面。何より衝撃的だったのはラストの聡子の言葉。全てを「無」に返してしまう衝撃のラストでした。 諸行無常。 三島由...

三島由紀夫の遺作となった「豊饒の海」完結編。 本多が透を養子にしてからがとても面白く一気に読めた。透の手記はワクワクしながら読んだが、凄かったのは慶子が透に全てを語る場面。何より衝撃的だったのはラストの聡子の言葉。全てを「無」に返してしまう衝撃のラストでした。 諸行無常。 三島由紀夫の描く世界をまだまだ読んでみたくなった。まだ未読の小説読んでまた一巻から読み返してみたい作品です。

Posted byブクログ

2012/06/19

転生の物語。遠藤周作の『深い河』が本作を読むきっかけです。 目に鮮やかな情景が浮かぶようで、言葉をつくして描かれる心情は 美しいものはより美しく、醜いものはより醜く伝わってくる。 結末では突然物語に置いて行かれたような心持ちで しばらく茫然としました。 また体力をつけて読み返し...

転生の物語。遠藤周作の『深い河』が本作を読むきっかけです。 目に鮮やかな情景が浮かぶようで、言葉をつくして描かれる心情は 美しいものはより美しく、醜いものはより醜く伝わってくる。 結末では突然物語に置いて行かれたような心持ちで しばらく茫然としました。 また体力をつけて読み返したい一冊?四冊です。

Posted byブクログ

2012/05/10

『豊饒の海』シリーズの「結」。「透」を中心に、輪廻転生にまつわる物語の結末を描いた傑作。本作を書き終えたあと、三島氏は自ら命を絶つ。

Posted byブクログ