天人五衰 の商品レビュー
絹江といい、透の結末…
絹江といい、透の結末といい、今さらながら三島はとても巧みだ。清水港で見た少年・透に清顕、勲、月光姫の転生を見出す本多繁邦。結局、透は転生ではなく自分が鼠の姿をした猫である証を立てるために服毒自殺を図る。しかし、美しい死は果たせず、二十歳を過ぎて醜い生を生きることとなる。一方、本多...
絹江といい、透の結末といい、今さらながら三島はとても巧みだ。清水港で見た少年・透に清顕、勲、月光姫の転生を見出す本多繁邦。結局、透は転生ではなく自分が鼠の姿をした猫である証を立てるために服毒自殺を図る。しかし、美しい死は果たせず、二十歳を過ぎて醜い生を生きることとなる。一方、本多は自分の人生も、転生を見守る認識者としての役割も終わりに来たことを悟り月修寺を六十年ぶりに訪れる。そして、そこには何も無かった。「―何もないところへ、自分は来てしまったと本多は思った
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「豊饒の海」四部作の…
「豊饒の海」四部作の第四部。第一部から登場する本多も老境を迎えて、だんだん醜悪さがあらわれてきます。「春の雪」や「奔馬」のような若いさわやかさはありませんが、そのかわり、通して読むと人生について考えさせられておすすめです。
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「豊饒の海」シリーズ…
「豊饒の海」シリーズ完結編。長い話だっただけに、ラストでは呆然とする人もいるかもしれません。まるで夢を見たようだと……。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
豊饒の海、最終巻。 ずっと松枝清顕の生まれ変わりを追いかけてきた本多が最後に出会うのは、やはり3つの黒子を持つ美貌の青年だった。 透と慶子の対話、本多と綾倉聡子との対話、畳みかけるような展開があって、静かに物語は幕を閉じる。 聡子はどんな意図で清顕のことを知らないと言ったのか。「それも心々ですさかい」という言葉の意味とは。唯識論をもっと深く知りたくなる。
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三島由紀夫の遺作「豊饒の海」が際立って素晴らしいのは、輪廻転生と云う壮大なテーマを描きながら、一方でそれが本多繁邦の生涯を綴る大河小説にもなっている点だろう。この「天人五衰」からはその彼の晩年の姿に著者の老いに対する意識なども窺える。個人的に待ち望んでいた聡子と本多の再会が最後に...
三島由紀夫の遺作「豊饒の海」が際立って素晴らしいのは、輪廻転生と云う壮大なテーマを描きながら、一方でそれが本多繁邦の生涯を綴る大河小説にもなっている点だろう。この「天人五衰」からはその彼の晩年の姿に著者の老いに対する意識なども窺える。個人的に待ち望んでいた聡子と本多の再会が最後に実現。感動のフィナーレになるのかと思いきや、何とも意外な聡子の反応。これをどう解釈すべきか、改めて読み返す必要が有りそうだ
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輪廻転生を見届けたもの、いや、見届けようとその転生の証拠探しに躍起になり自らを見失うもの。それに対して、輪廻転生の起点から訣別したもの。その二人の対比が人生観を問う。同時に三島由紀夫の本心がどちらにあったかを迷わせる。死を覚悟した三島が輪廻転生を信じたというのは、あからさまに楽天...
輪廻転生を見届けたもの、いや、見届けようとその転生の証拠探しに躍起になり自らを見失うもの。それに対して、輪廻転生の起点から訣別したもの。その二人の対比が人生観を問う。同時に三島由紀夫の本心がどちらにあったかを迷わせる。死を覚悟した三島が輪廻転生を信じたというのは、あからさまに楽天的な解釈であり、一世一代の死を賭すから革命は成り立つのだ。生まれ変わりを信じて命を絶つのはあまりに軟弱。ならば、三島は前者ではあり得ない。 もう一つの見方は、輪廻転生の本体と三島由紀夫の同質性だ。これも輪廻の途中に革命分子を混ぜたりと、随分と自身と類似させたようにも見えたが、結局は、タイの王女の身体に生まれ変わらせ、魂に残る前世の感覚に無様にもがき苦しむ様を描いたり、挙句に転生の繋がりを不確かな顛末とし、物語から敢えて魂の所在を消すようなやり方は、三島自身の女々しさを断ち切る、ある意味での膿出しのような小説だったのではないかと思わせる。 ラストが奇妙なのは、物語の自然さよりも、三島の主張や決意を混ぜた構成のためか。ご都合主義的な話の流れも、そうならば納得できると、一人解釈に耽るのである。壮絶な小説であった。後付けで、三島の自決に結びつけて考え過ぎたかも知れない。
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年老いた本多は、転生のしるしを持った安永透を養子に迎える。安永は本多と同質の人間に見える。自分を客観視できて、冷徹で、自分が一番大事な人間。本多は自分の本質を安永透を見ることで知る。自分はすっからかんで、人生に意味はなかった。清顕や勲のような運命や意志を持っては生まれてはこなかっ...
年老いた本多は、転生のしるしを持った安永透を養子に迎える。安永は本多と同質の人間に見える。自分を客観視できて、冷徹で、自分が一番大事な人間。本多は自分の本質を安永透を見ることで知る。自分はすっからかんで、人生に意味はなかった。清顕や勲のような運命や意志を持っては生まれてはこなかった。 門跡の最後の言葉は悟りを得たからこその言葉で、忘れてなんかいない、本当にあったことだと感じた。そして透は転生者だと思って読んだ。20歳で魂は死んだから。 生きることには何も意味はないということ。ただ真剣に何かをしようとするときその瞬間に意味が生まれる、というのを全体で感じて読了。
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80歳を過ぎ老齢となった本多が門前院の聡子を訪ね清顕について語った時の門前院(聡子)の反応に唖然とした。
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豊饒の海・全4巻を通じての感想。分裂した三島の内面がそれぞれ違う登場人物として描かれ、そこに当時まだ貴重だった外遊体験から得たものがちりばめられ物語を膨らませている。毎晩必ず決まった時間に書斎に入って執筆していた几帳面な三島は本多、盾の会のお山の大将である三島は飯島親子、若き日の...
豊饒の海・全4巻を通じての感想。分裂した三島の内面がそれぞれ違う登場人物として描かれ、そこに当時まだ貴重だった外遊体験から得たものがちりばめられ物語を膨らませている。毎晩必ず決まった時間に書斎に入って執筆していた几帳面な三島は本多、盾の会のお山の大将である三島は飯島親子、若き日のロマンチストな三島は清顕であろう。最後まで生き残ったのは現実を覗き見るだけの本多であり、その本多としての三島が境界線を踏みこえて行動の人となるために起こしたのが三島事件なのだと思った。そのほか、三島の幼少期を縛り付けた祖母の公家趣味など、三島の人生を規定したさまざまなエピソードが盛り込まれていて、三島の一生を総括する作品になっていると思う。
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豊饒の海 4 天人五衰 著:三島 由紀夫 新潮文庫 み-3-24 人のさだめとは、生まれながらに決まっているものなのでしょうか。 もがき苦しむ、本多老人の旅がついに終わる。 題の天人五衰は、仏教用語で、天上界にいる天人がなくなるときの5つの兆しである 時に昭和45年、三島由紀...
豊饒の海 4 天人五衰 著:三島 由紀夫 新潮文庫 み-3-24 人のさだめとは、生まれながらに決まっているものなのでしょうか。 もがき苦しむ、本多老人の旅がついに終わる。 題の天人五衰は、仏教用語で、天上界にいる天人がなくなるときの5つの兆しである 時に昭和45年、三島由紀夫が本書を執筆している現代へと時代は追いつく 第4巻「天人五衰」はまさに、清顕の転生を追ってきた本多老人の最後に行き着いたところである 天女の羽衣、謡の「羽衣」、風早の、三保の浦わを漕ぐ舟の、浦人騒ぐ、波路かな 妻を失っていた本多は、静岡の帝国信号通信所で、船舶の航行監視をおこなっていた、天才児、安永透を、養子に迎える 透とそのまわりの少女たちの日記、いかに、知恵があっても、人間とはなんと身勝手な生き物なのであろうという、あきらめにも似た感情が沸き起こって来る 死病を得て、その最後の想いを秘めて、本多老人は、月修寺の門跡、聡子へと向かう。 門跡の口からでた、仏縁という言葉、門跡から語られた言は、題である、豊饒の海とはあまりにも、隔絶した世界であると感じました。 ISBN:9784101050249 出版社:新潮社 判型:文庫 ページ数:352ページ 定価:710円(本体) 1977年12月02日発行 2003年04月25日36刷改版 2022年02月25日60刷 1 春の雪 1~55 又、会うぜきっと会う 夢と転生の一大物語絵巻 自らの死を意識しつつ書かれた 三島最後の作品、全四巻 2 奔馬 1~40 刀を腹へ突き立てたその時、 右翼青年が見たものとは 「これを読めば本当の僕がわかって もらえるだろう」と語った 3 暁の寺 1~45(第1部:1~22,第2部:23~45) 世界は、一瞬一瞬ごとの「滝」ー おそるべき認識が物語を貫く 本作の完成は「実に不快だった」 と謎めいた言葉を残した 4 天人五衰 1~30 劇的かつ稀有なる物語 三島文学、究極の到達点 1970年11月25日、本作を脱稿し 三島は市ヶ谷に向かった享年45
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