天人五衰 の商品レビュー
これで豊饒の海シリーズの2回目は全て読了。 確かに前回読んだ時とは感想が違うが… ラストはやはりまた納得出来ない。 解説を読んだら多少分かった気にはなったが、まだまだ自分の中で消化が出来ていない感じ。 3周目したらまた変わるだろうか。
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遂に読了。 今まで想像してしたもの全てがラストで透明になり、消滅してしまった。 本多が生涯を懸けて追い求めた「転生」と「美」や、それらを顕在化させていた清顕、勲、ジンジャンらが、透の登場によって崩れ去った。 しかし、そもそもそれらは本多(もしくは本多の阿頼耶識?)が生み出した幻影に過ぎない。そのため消えたというよりかは見なくなったという方が正しいかもしれない。では何故本多は見なくなったのか、、、。 正直全然理解が追いついていないが、衝撃の読書体験だった。特にラストは息が詰まると同時に世界がパッと明るくなるような感覚だった。 またいつか読み返して、難解な言葉や哲学的な議論を理解した上で、この美しい物語に浸りたい。
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どんでん返し。輪廻転生を追う1〜3巻の展開のまま終着点へ向かうのかと思いきや、生まれ変わりと思って養子にした透は生まれ変わりでもないただの少年だった。過去を共有できる最後の相手として縋った聡子にも、松枝清顕なんて知らない、本当にいたのか?と言われ、過去の記憶、現在、生きてきた人生すべてが透明になっていくような結末。 慶子が通るに全てを打ち明け透の矮小さを思い知らせるシーンは突き刺さった。今だからこういう人いるよねーと思いながら読めたけど、たぶん思春期に読んでたら正面からくらってたと思う。
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なるほど。 本多が固執する「転生の人」は、本多のために存在していたのか。今回は「それらしい」若者は出てくるが、「しるし」があるものの彼は転生者ではなかったらしい(この辺はいろいろ解釈できそうだが、もはやそれはどうでもいい)。 「豊穣の海」の主人公は本多なのであって、結局彼は「永劫...
なるほど。 本多が固執する「転生の人」は、本多のために存在していたのか。今回は「それらしい」若者は出てくるが、「しるし」があるものの彼は転生者ではなかったらしい(この辺はいろいろ解釈できそうだが、もはやそれはどうでもいい)。 「豊穣の海」の主人公は本多なのであって、結局彼は「永劫」に溶けていったのか、あるいはそもそも彼は「永劫」の住人だったのか…… 三島の遺作、というのがまた、読後に別の感慨を起こさせる。 遺作が未完の作家(漱石、太宰、安部公房、隆慶一郎、松本清張などなど)が多いなか、三島はあえて「遺作」を完成させてから、この世からおさらばした。彼の遺作である「豊穣の海」は彼の死によって完成したようにも感じる(個人の意見です)。 そしてこの作品こそ彼の遺作にふさわしい気もする。 しかし、盲者と遺伝性の狂人との間の懐妊というモチーフはエグイ。江戸川乱歩みたいだ。莫大な遺産を相続するであろうこの「歪んだ」2人が構築する世界は『夜のみだらな鳥』のような世界ではないだろうか。 というわけで余力があったら(前に途中で挫折した)『夜のみだらな鳥』を読もうかな。
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最初読んだ時は結末に納得がいかなかった。だが、阿頼耶識を知りそういうことなのかと腑に落ちた。読んでいて世界が広がる本。
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人によっては「で?」で終わってしまう作品。 最後は衝撃だろうねぇ… だけれども違う見方もできそうな気がするのよ。 その人はもはやその記憶を 完全に消してしまったのではないかと。 もしかしたら門跡自体も…? という風にも考えられましょう。 私は3巻の主役の時点で 恐らくもはや輪廻は成立していない説を とりますけどもね。 何だろう、感想書けないんだが…
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「天人五衰」の副題のとおり本作品の根底に流れるものは老いに対する徹底的な敵視である。老衰著しい本多と昂然たる透とを対比し、老いることへの恐怖や無力さを嘆く。本作品の凄さは齢45歳の三島由紀夫が80歳の本多の心情を推察し悪や負の側面を極めて仔細に描写し代弁している点であろう。本書の...
「天人五衰」の副題のとおり本作品の根底に流れるものは老いに対する徹底的な敵視である。老衰著しい本多と昂然たる透とを対比し、老いることへの恐怖や無力さを嘆く。本作品の凄さは齢45歳の三島由紀夫が80歳の本多の心情を推察し悪や負の側面を極めて仔細に描写し代弁している点であろう。本書の終盤で「老いは衰えではなく浄化」という心境変化、聡子の清顕に対する意外な反応は人生における純粋な無為さを示しているように感じる。本作品を書き上げて三島氏は陸上自衛隊市ヶ谷駐屯地での自害に至るわけだが、その心中は如何様であったのだろうか。
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30年ぶりに 豊饒の海1-3を 通して読了 (1だけは2-3回再読) 本多と透の心理戦に ひやひやし 慶子のド迫力に 圧倒され 聡子の虚空感に 感情が追いつかず この後 割腹自殺してると思うと この物語を もう少し丁寧に書くつもりだったのか もうここが限界 (満足?ピーク?)...
30年ぶりに 豊饒の海1-3を 通して読了 (1だけは2-3回再読) 本多と透の心理戦に ひやひやし 慶子のド迫力に 圧倒され 聡子の虚空感に 感情が追いつかず この後 割腹自殺してると思うと この物語を もう少し丁寧に書くつもりだったのか もうここが限界 (満足?ピーク?)と思ったのか... 三島の求めた美しさと 現実との葛藤?辻褄あわせ? あらゆるものが凝縮されている ような気がする
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松枝清顕の親友だった本田繁邦は七十六歳の男やもめになっています。 本田は安永透という十六歳の孤児で船舶の信号員をしている非常にIQの高い少年と出会います。 そして透少年の脇に清顕や勲、ジン・ジャンと同じ三つの黒子があるのを知り、透を清顕の生まれ変わりと思い、養子に迎え入れます。 しかし、透の内面は壊れていたのです。 まず、本田が東大に透を入学させる為につけた家庭教師の思想を暴き首にします。次に許嫁として与えられた娘、浜中百子を自ら傷つけ「金目当ての結婚だった」という偽の手紙を書かせて父の本田に縁を切らせてしまいます。 透は本田の与えたものを傷つけることに生きがいを見出していたのです。 東大入学後は年老いた本田に対して暴力をふるうようになり、本田も透の悪を見抜きます。 そして本田はあと半年辛抱して、二十歳になっても透が死ななければ彼は生まれ変わりではなくただの偽物だったのだと言います。 本田の旧くからの友人の久松慶子は透をクリスマスに家に独りだけ招いた上で、本田が何故透を養子に取ったのかという、脇の三つの黒子と、清顕の夢日記のことを告げます。 慶子は言います。 「あなたには、半年の内に死ぬ必然性も誰かに喪ったら惜しいと思われるようなものは何ひとつないんですもの」 その後透は服毒して自殺未遂をして失明してしまいます。 本田は八十一歳になり初めて、奈良の月修寺の聡子を訪ねます。 八十三歳の御門跡聡子は、 「松枝清顕さんという方は、どういうお人やした?」 と清顕のことなど全く知らないというのです。 この巻は、非常に言っていることが難しく、真の意味はわかりませんが、二十歳でなくなった清顕のことのみ考えて生きてきた本田の生涯はなんと寂しい終わりなのだろうかと思ったし、透も、二十歳で心を闇の中に落として未来がなくなってしまいました。 この四部作を書き上げた後、三島は自決しますが、これが三島の遺書だったのでしょうか。
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特に三島由紀夫の熱烈な読者という訳でもないが、この長大なシリーズを締めくくる最後の展開に、放心を禁じ得ない。作者が人生に筆を置いて表現したかった事がぼんやり掴めた(気がした)が、ラストの無情感とカタルシスはかつて経験した事の無いものだった。
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