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暁の寺 の商品レビュー

3.8

126件のお客様レビュー

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豊穣の海第3部、これ…

豊穣の海第3部、これまでの生まれ変わりは男性でしたが、ここで女性への展開、そして極彩色で描かれるタイと一変する世界に最初は戸惑いますが、前作の男性的世界の対照的などろどろした世界を楽しみました。

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舞台は日本からいきな…

舞台は日本からいきなりタイへ。始めは慣れないかも知れませんが、読み進めていくと逆にはまってしまいます。

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本多は自分を清顕、勲…

本多は自分を清顕、勲、月光姫のような美の存在ではないとしているが、それでも若き日、清顕のために奈良に駆けつけ、勲のための弁護に起った時の本多は美しかった。今の老いた本多は醜さを感じさせる。どことなく『禁色』の老作家・檜俊輔も思わせる。老いとは残酷なものだ、と三島由紀夫も恐怖してい...

本多は自分を清顕、勲、月光姫のような美の存在ではないとしているが、それでも若き日、清顕のために奈良に駆けつけ、勲のための弁護に起った時の本多は美しかった。今の老いた本多は醜さを感じさせる。どことなく『禁色』の老作家・檜俊輔も思わせる。老いとは残酷なものだ、と三島由紀夫も恐怖していたのではないか。

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2024/11/06

夢と輪廻転生の壮大な物語『豊饒の海』の第三巻 第一巻の『春の雪』では 美しき青年 清顕が主人公であり 儚く美しい悲恋を経験し 若くしてこの世を去る… 直情的で勢いのある第二巻『奔馬』では 清顕から右翼のテロリストの 勲として生まれ変わる 輪廻転生を繰り返す清顕と ...

夢と輪廻転生の壮大な物語『豊饒の海』の第三巻 第一巻の『春の雪』では 美しき青年 清顕が主人公であり 儚く美しい悲恋を経験し 若くしてこの世を去る… 直情的で勢いのある第二巻『奔馬』では 清顕から右翼のテロリストの 勲として生まれ変わる 輪廻転生を繰り返す清顕と それを傍で見続ける親友(本多)との 織りなす壮大な人生ドラマが描かれている 第三巻では清顕の魂は タイの美しい姫に宿る 本多の年齢も50代を迎え 若かりし頃の内から放つエネルギーも どこか影を潜め 清顕の生まれ変わりの証をもとめて 本多の迷いの旅が続く… 嫉妬や我欲 人の世俗に背かぬ現実を受け止め 輪廻転生を繰り返す側も それを見届ける側も 阿頼耶識(あらやしき)に人生を刻んでいく… 第三巻は ただ無常と回生を追う物語だったが 挫折しかけた豊饒の海シリーズにも光が見えてきた! 第四巻『天人五衰』を読み終え シリーズを完読できたとき どんな感情を味わえるのか 非常に楽しみである!!!!

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2024/09/04

成功した本多はインドのベナレスを訪れた際、価値観が大転換する。これまでの道徳と理性に従う生き方が無意味だったのかと思える体験だった。理性的に生きるのも、衝動のおもむくまま怠惰に生きるのも、どちらも生きるということだと。ジン・ジャンの身体に清顕と勲の転生の証を見つけようとするなかで...

成功した本多はインドのベナレスを訪れた際、価値観が大転換する。これまでの道徳と理性に従う生き方が無意味だったのかと思える体験だった。理性的に生きるのも、衝動のおもむくまま怠惰に生きるのも、どちらも生きるということだと。ジン・ジャンの身体に清顕と勲の転生の証を見つけようとするなかで、自分の生きる意味と価値を、ベナレスでの体験を通して解明しようとする過程が描かれる。そしてそれは思いもかけない形で終わる。

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2024/09/01

因果を現出させるためにストーリーが制約されていき、三島には珍しくご都合主義的な不自然さを感じたが、巻が進むほど、この無理矢理な構築は強くなっていくのだろう。輪廻転生を現世で繋げる所作が、そもそも因果の後付けでしか表現できぬため、この小説に流れる変わらない一つの軸を見出すために、物...

因果を現出させるためにストーリーが制約されていき、三島には珍しくご都合主義的な不自然さを感じたが、巻が進むほど、この無理矢理な構築は強くなっていくのだろう。輪廻転生を現世で繋げる所作が、そもそも因果の後付けでしか表現できぬため、この小説に流れる変わらない一つの軸を見出すために、物語の自然さを削ぎ落としながら、最後には作者の主張に磨かれていくのだ。 その主張と自然さのトレードオフの中で、ストーリー設定がより世俗的な方向へ。輪廻の観察者は、その輪廻の証拠を見出すために力を振るうが、しかし、輪廻の本質を問うには至らず、先ずは現象を追うのみだ。 人の生に対し、その意味を問う。 しかし、意味などなく、物語の連鎖にすら影響せぬ、独りよがりがあるのみ。人の生は、結局、死を賭しても、流されて死んでも、同じ事ではないか。三島は、第一巻、第二巻の後を追わない。ただ黒子に示された輪廻の予感に全てを託し、こじ付けていく。 やがて魂はタイの王女に宿る。 嫉妬や我欲、人の世俗に背かぬ現実をただ受け止め、生まれ変わる方も観察する方も、阿頼耶識に人生を刻む。現世での到達点はどちらにもなく、ただ無常と回生があるのみ。

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2024/08/29
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

三島由紀夫は1967年秋に15日をかけてインドを旅しています。 オーランガバードではアジャンタ、エローラの遺跡を見学し、アグラではタージマハルを見ています。そしてその中でもバラナシには特に強い印象を受けたようで、本人も「ガートは非常に面白くて、二度も見に行きました」と述べるほどでした。 そしてその時の体験は三島由紀夫最期の長編『豊饒の海』のこの『暁の寺』に非常に強い影響を与えています。 焼けていく遺体の描写を描いた三島の観察眼は恐るべきものがあります。そしてそれを芸術的なまでに再構築する言語能力にはただただひれ伏すしかありません。

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2024/07/21

豊饒の海 3 暁の寺 著:三島 由紀夫 新潮文庫 み-3-23 舞台は、日本から、タイ、そして、印度へ、そして、再び日本へ。 本多と、タイの王族の娘ジン・ジャンとの不思議な物語である 清顕の、生まれかわりである証をもとめて、本多の迷いの旅が続く 第3巻「暁の寺」は2部に分かれ...

豊饒の海 3 暁の寺 著:三島 由紀夫 新潮文庫 み-3-23 舞台は、日本から、タイ、そして、印度へ、そして、再び日本へ。 本多と、タイの王族の娘ジン・ジャンとの不思議な物語である 清顕の、生まれかわりである証をもとめて、本多の迷いの旅が続く 第3巻「暁の寺」は2部に分かれている 暁の寺とは、タイの寺を意味していて、夕焼けの寺である  第1部は、昭和16年商社の訴訟事案で、タイを訪れていた、本多は、日本人の生まれ変わりの姫の話を聞く  しかし、本多の思いとはうらはらに、その印は見いだせなかった 次に本多が、むかったのは、印度のペナレス、そこはヒンズー教徒の聖地  輪廻とは、なにも東洋の専売特許ではない、ギリシア哲学にも輪廻という考えがあった  そして、仏教、唯識論、六識、末那識、阿頼耶識  きゅうりを輪切りにするように、世界を刹那において輪切りを調べるがごとくというのが、阿頼耶識といっている  時は、東京へ空襲が始まろうとした世相である 昭和20年、焼け落ちた侯爵家の庭で、娘の姥、蓼科との再会、彼女から授かったのは、大金色孔雀明王経であった  第2部は、昭和27年の占領下の日本、訴訟の報酬で、大金持ちになった本多が、成人したタイの姫を追跡する  本多が学生であったころに栄華をきわめた、宮家洞院宮家、侯爵家、飯沼家は、いずれも磊落しており、まさに時代の移り変わりを感じさせる  シャムの姫、月光姫のなくなったエメラルドの指輪がジン・ジャンへの道をひらいてくれる  老いの境地に入ろうとする本多は、みずからの心の中に、姫に揺れる思いを見出すのである ISBN:9784101050232 出版社:新潮社 判型:文庫 ページ数:448ページ 定価:750円(本体) 1977年10月30日発行 2002年11月15日42刷改版 2022年09月30日67刷 1 春の雪  1~55   又、会うぜきっと会う   夢と転生の一大物語絵巻   自らの死を意識しつつ書かれた   三島最後の作品、全四巻 2 奔馬   1~40   刀を腹へ突き立てたその時、   右翼青年が見たものとは   「これを読めば本当の僕がわかって   もらえるだろう」と語った 3 暁の寺  1~45(第1部:1~22,第2部:23~45)   世界は、一瞬一瞬ごとの「滝」ー   おそるべき認識が物語を貫く   本作の完成は「実に不快だった」   と謎めいた言葉を残した 4 天人五衰 1~30   劇的かつ稀有なる物語   三島文学、究極の到達点   1970年11月25日、本作を脱稿し   三島は市ヶ谷に向かった享年45

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2024/06/26

第二巻「奔馬」における「神風連の乱」についての記述と同様に、本作第一部のタイ王国やその宗教に関する史料的説明箇所はかなり退屈に思われたが、本多が御殿場に所有する別荘へ舞台を移す第二部からにわかに話が面白さを増す それにしても本多は随分と俗物的なオヤジに成り下がったものだ。しかし...

第二巻「奔馬」における「神風連の乱」についての記述と同様に、本作第一部のタイ王国やその宗教に関する史料的説明箇所はかなり退屈に思われたが、本多が御殿場に所有する別荘へ舞台を移す第二部からにわかに話が面白さを増す それにしても本多は随分と俗物的なオヤジに成り下がったものだ。しかしよく考えてみれば、歳を取るとは或る意味そういうことなのかもしれず、何となく本多のなかに、若くピュアな精神のまま命を散らした清顕や勲を羨む気持ちが透けて見えるような気がしなくもない 蓼科の再登場にはいささか驚いた。御年95歳の彼女はまるで妖怪の如き雰囲気だ。ただ、頭の働き自体にあまり衰えを感じさせぬところは流石と言うべきか 個人的には清顕亡き後の聡子がどう生きたのかを知りたい。第四巻「天人五衰」でそこら辺りが描かれていると良いが

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2024/05/31

こんなに感想を書くのが難しい作品もそうそうないよなあ…と思う。 上手くまとまらない。 ただ言えるのは、自分にとってはかなり印象深い。

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