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黒い雨 の商品レビュー

3.9

210件のお客様レビュー

  1. 5つ

    52

  2. 4つ

    76

  3. 3つ

    54

  4. 2つ

    6

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2021/06/03

原爆の悲惨さを目に見えて分かりやすく表現していて、井伏鱒二様の、細部に渡る表現で大変、広島や長崎の酷い状況が分かりました。 登場人物の矢須子さんについては、原爆の影響で日常を失われる辛さがあり、どうしても抗うことが出来ない現状に、私自身も悲しくなりました。

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2020/11/29

広島原爆の惨状を描いた作品。現代文で一部を扱った為、ちゃんと読んでみたいと思い手に取った。被爆した主人公重松が自分や姪の被爆体験記を綴っていく体で被爆地の状況と被爆者の状態が淡々と描かれていく…実際の手記を基に書いているからこそ、説得力があり、限りなく忠実に当時の状況が書かれてい...

広島原爆の惨状を描いた作品。現代文で一部を扱った為、ちゃんと読んでみたいと思い手に取った。被爆した主人公重松が自分や姪の被爆体験記を綴っていく体で被爆地の状況と被爆者の状態が淡々と描かれていく…実際の手記を基に書いているからこそ、説得力があり、限りなく忠実に当時の状況が書かれているのだろう。特に被爆者の死傷については読むのも辛いほどリアルに描写していて、原爆の悲惨さを身に沁みて感じた。同時に井伏鱒二の表現力には感服。終戦75年の今、この負の記念碑的な文学を読んで平和を望む気持ちがより強くなった。

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2020/11/21

広島の町に投下された原爆は一瞬で多くのものを奪いましたが、その苦しみは一時的なものではなく長く暗い影を落とすものでした。なにげない日常にあって、ささやかな幸せを願う。その願いが叶うことのなかった人々の叫ぶことのできなかった声が聞こえるような物語です。

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2020/11/09

8月6日の原爆投下直後から15日の敗戦の日まで、酸鼻を極める被爆地広島を歩いた一人の被爆者の日記の形式で生の声を伝える作品。 「戦争はいやだ。勝敗などどちらでもいい。早く終わりさえすればいい。いわゆる正義の戦争より不正義の平和の方がいい。」とは市民の偽らざる声だ。しかし、その当人...

8月6日の原爆投下直後から15日の敗戦の日まで、酸鼻を極める被爆地広島を歩いた一人の被爆者の日記の形式で生の声を伝える作品。 「戦争はいやだ。勝敗などどちらでもいい。早く終わりさえすればいい。いわゆる正義の戦争より不正義の平和の方がいい。」とは市民の偽らざる声だ。しかし、その当人が被爆直後でさえ大本営発表を正しいものとしてより一層の犠牲を工場に布告する矛盾とそれに対する悔悟も正直に示している。 「いつ一億玉砕かとビクビクしているが、人間の意思ががんがらめに縛られて、不平はおろか、不安な気持ちさえも口にするのを押し殺しているだけだ。組織というものがそうさせている。」 私は終戦当時16歳だった父から同じような気持ちを聞いており、偽らざる本音だろう。しかし、一部父と同じ世代ながら戦争中でも反戦の気持ちだったし、日本の間違いを理解していたと主張する人もいる。私はそのような人の言い振りを俄には信じることができない。

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2020/10/08

原爆病って、臭ったんだ…。「私臭いますでしょう」って自分から言う、看護に当たった女の人に、主人公が、「ええ、臭います」と答えるエピソードに、どこかおかしみを感じてしまった。 本に出てくる日本人は、生活に困りながらも思いやって気遣いながら生きてるけれど、このエピソードは直接的な言葉...

原爆病って、臭ったんだ…。「私臭いますでしょう」って自分から言う、看護に当たった女の人に、主人公が、「ええ、臭います」と答えるエピソードに、どこかおかしみを感じてしまった。 本に出てくる日本人は、生活に困りながらも思いやって気遣いながら生きてるけれど、このエピソードは直接的な言葉だったからかな。 全編を通して、悲惨さがすごく伝わってくるけど、個性がところどころ出てくるから、惹きつけられて読んでしまった。 原爆病で骸骨みたいになりながらも生還した人の、意志の強さを失わないことの大事さが印象的だった。

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2020/10/06

2020年8月、「黒い雨」訴訟のニュースを目にした。原爆関連のニュースであることは分かるものの、自分はそれ以上に詳しいことを知らない。 そこで本作、黒い雨を手に取った。 果たして、内容は事前の予想とはやや異なる。広島を、原爆を描いていることは確かなのだけど、徹底的に市民目線だ...

2020年8月、「黒い雨」訴訟のニュースを目にした。原爆関連のニュースであることは分かるものの、自分はそれ以上に詳しいことを知らない。 そこで本作、黒い雨を手に取った。 果たして、内容は事前の予想とはやや異なる。広島を、原爆を描いていることは確かなのだけど、徹底的に市民目線だ。 大きな爆撃が起こった。今回の爆弾は何かが違う。不安感が止まない。 そのような観察や心理描写が続く。 それはとてもクリアな追体験だった。道端に打ち捨てられた死体の、その臭気が音を伴って匂い立つような、とても深い読書体験。 また、これらの描写は「被爆日記」の清書という形で為される。戦後の視点から過去を振り返るという手法は、ある種ユニークだった。 総評。とても重たくディープな一冊。けれど、恣意性を排しているので、誰もがあの時代のあの場所に降り立つことができる。 本書の紹介文はこのようにある。 原爆の広島――罪なき市民が負わねばならなかった未曾有の惨事を直視し、“黒い雨"にうたれただけで原爆病に蝕まれてゆく姪との忍苦と不安の日常を、無言のいたわりで包みながら、悲劇の実相を人間性の問題として鮮やかに描く。 なるほど。「無言のいたわりで包みながら」というのは非常にしっくりくる形容。 (書評ブログもよろしくお願いします) https://www.everyday-book-reviews.com/entry/%E3%81%84%E3%81%BE%E8%A2%AB%E7%88%86%E6%97%A5%E8%A8%98%E3%82%92%E8%AA%AD%E3%82%80_%E9%BB%92%E3%81%84%E9%9B%A8_%E4%BA%95%E4%BC%8F%E9%B1%92%E4%BA%8C

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2020/09/23

2020年36作品目。 原爆投下から数年後、当時の凄惨な状況が、主人公の閑間重松、重松の姪の矢須子、そして広島被爆軍医予備員の岩竹博の手記によってつづられている。 そのどれも、感情が排されていて、淡々と事実をあぶり出している。 心を殺さねば生きてはゆけない。

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2020/09/14

残酷な、悲惨な描写はあるのに、そこに作者の感情・感傷は入り込まず、1日1日が続いていく。そのことが原爆投下の結果をまざまざと見せつけてきて、なによりも苦しい思いを感じさせる。 何が起きても、とにかく毎日を生き切るしかないのだと、きっと原爆や戦争だけでない世の中の不条理への人の在り...

残酷な、悲惨な描写はあるのに、そこに作者の感情・感傷は入り込まず、1日1日が続いていく。そのことが原爆投下の結果をまざまざと見せつけてきて、なによりも苦しい思いを感じさせる。 何が起きても、とにかく毎日を生き切るしかないのだと、きっと原爆や戦争だけでない世の中の不条理への人の在り方を痛感させられた思い。

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2020/09/10

日本に生きている以上避けては通れない原爆、中学の頃読み通せなかったものをようやく最後まで辿り着けました。石炭会社や軍部との関係などが少しわかりづらく、黒い雨にうたれた矢須子さんについてもう少し踏み込んで欲しかった。全滅、という言葉が出るたびに胃がぎゅっとなった

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2020/08/18

積読でありながら、今まで避けてきてしまった作品。高校の教科書で習った時から、原爆被害の描写が衝撃的で、読まなきゃいけないけど、どうしても手が出なかった。しかし今年、戦後75年の節目ということもあり、勇気を出して読んだ。 この作品は、ありがちな戦争小説、原爆小説のように、被害の生々...

積読でありながら、今まで避けてきてしまった作品。高校の教科書で習った時から、原爆被害の描写が衝撃的で、読まなきゃいけないけど、どうしても手が出なかった。しかし今年、戦後75年の節目ということもあり、勇気を出して読んだ。 この作品は、ありがちな戦争小説、原爆小説のように、被害の生々しい描写で恐怖を与えて、NoWarを訴えるものとは違った。原爆投下の日から終戦までの数日間を、回想日記の形で示している。日常の中の原爆、あくまで日常の中での大きな被害が描かれていて、尚更胸が締められる思いもするが、「生き残ったから生きなきゃのらない」その生活が一番の主題となる。だから、恐怖ばかりが強調されるわけでなかったから、より深く原爆について考えることができた。

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