黒い雨 の商品レビュー
言葉はあれだが、「被害者面」をしないところにこの作品の魅力があるように思う。原爆投下を扱った作品にありがちな「書きすぎ」がしばしば読み手を白けさせるのに対して、本作はあくまで中立的な眼を通してこの大事件を写実する。といって無味乾燥な事実の羅列とも違う。爆撃で大やけどを負った岩竹博...
言葉はあれだが、「被害者面」をしないところにこの作品の魅力があるように思う。原爆投下を扱った作品にありがちな「書きすぎ」がしばしば読み手を白けさせるのに対して、本作はあくまで中立的な眼を通してこの大事件を写実する。といって無味乾燥な事実の羅列とも違う。爆撃で大やけどを負った岩竹博が白桃を食べて命を長らえさせるエピソードの熱っぽい瑞々しさが今も頭から離れない。
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※このレビューにはネタバレを含みます
日常に突然原爆が降ってきたら…こういうものなのかもしれない。とても淡々としていて、悲しい!怖い!とならないところが、ある意味リアル。この正常性バイアスが人の心を麻痺させるのだろうな。良くも悪くも。 人間て簡単に死んじゃうんだな、とか、人間て案外簡単に死ねないんだな、とか、どちらも真実だなとしみじみ思う。
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タイトル*黒い雨 著者*井伏鱒二 出版社*新潮社 一瞬の閃光に街は焼けくずれ、放射能の雨のなかを人々はさまよい歩く。原爆の広島--罪なき市民が負わねばならなかった未曾有の惨事を直視し、一被爆者と”黒い雨”にうたれただけで原爆病に蝕まれてゆく姪との忍苦と不安の日常を、無言のいたわ...
タイトル*黒い雨 著者*井伏鱒二 出版社*新潮社 一瞬の閃光に街は焼けくずれ、放射能の雨のなかを人々はさまよい歩く。原爆の広島--罪なき市民が負わねばならなかった未曾有の惨事を直視し、一被爆者と”黒い雨”にうたれただけで原爆病に蝕まれてゆく姪との忍苦と不安の日常を、無言のいたわりで包みながら、悲劇の実相を人間性の問題として鮮やかに描く。被曝という世紀の体験を日常性の中に文学として定着させた記念碑的名作。 (あらすじより)
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戦時体制ではあるが、市井の人々の日常が、原爆投下という非日常の極致に曝され傷つけられていく様子を小説の形で描いた精緻なルポルタージュ。この作品の優れている所は、原爆投下(8/6)から終戦迄の十日弱の記録の中に、後で解った常識や感覚を織り込まず、何が起きたのかこれからどうなるかの大...
戦時体制ではあるが、市井の人々の日常が、原爆投下という非日常の極致に曝され傷つけられていく様子を小説の形で描いた精緻なルポルタージュ。この作品の優れている所は、原爆投下(8/6)から終戦迄の十日弱の記録の中に、後で解った常識や感覚を織り込まず、何が起きたのかこれからどうなるかの大局を掴めない異常事態における一市民及び家庭人の原爆記録を綴っているところにあると思う。哀しみや怒りの感情、思想や政治的な主張が簡潔なだけに描写は生々しく再現される。悲劇を客観として捉えて、判断は読者に委ねられる。読者は受け止め判断しなければならない。日本人としての義務がある。 作品は重松氏の日誌の他に、岩竹軍医の手記に依っているが、極限状態から夫を救い出し蘇生させた妻の献身に感動させられる。 あと作品への要求としては、被爆状況と重松達の移動状況が分かる地図が欲しい。
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読むのがつらかった。人間の尊厳がこうも蹂躙されていいのか…。途中の、『いわゆる正義の戦争よりも不正義の平和の方がいい。』という言葉が印象に残った。
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戦争の悲惨さを訴えた作品は多い。 その数ある作品の中で、一番印象的だったものが「黒い雨」 中学生の時に初めて読み、その後映画化されて再び物語を 聞くことに。 原爆の恐ろしさと凄惨さは、唯一の被爆国である日本にしかわからないこと。 この作品を通じて、忘れてはいけない日本の歴史を後世に伝えていくことができると思う。
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原爆投下された地に生きる人々は本当に辛かったろうと思う。 同じ女性としてたくさんの苦労があったと思う。 ナイチンゲールと呼ばれていた一般女性を尊敬する。 来年は広島を訪ねたいと思う。
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今更ながら戦争は悲しい終末にしかならない、何人がこの本を読んできたのだろうか、積み重ねてきた人数が平和につながると思う
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主人公の閑間(しげま)重松が、被爆した時を思い返し、その時の自信の経験と見聞を清書するという形式で語られる被爆体験の物語。原爆投下とその後しばらくの混乱も去ることながら、今の閑間を取り巻く状況、つまり原爆の後遺症に悩まされる自信や姪、それによって差別されるその状況、という意味で...
主人公の閑間(しげま)重松が、被爆した時を思い返し、その時の自信の経験と見聞を清書するという形式で語られる被爆体験の物語。原爆投下とその後しばらくの混乱も去ることながら、今の閑間を取り巻く状況、つまり原爆の後遺症に悩まされる自信や姪、それによって差別されるその状況、という意味での怖さや悲しさのようなものがあった。 キノコ雲の色とか動きとか、死体の匂いとか、熱線の凄まじさといったことが、映像だけでは感じられないことが描写されていることが印象的だった。(2017/10/08)
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丁寧で克明な描写で“日常性のうちに原爆の雨を降らせた(p397)”原爆小説です。原爆により死傷した人たちの状況など、残虐で痛くて目をおおいたくなる描写も多く、読むのがつらかったです。 物語中で牛罐を食べる場面があるのですが、牛肉の描写を読んでいると私まで唾液が出てきそうでした。...
丁寧で克明な描写で“日常性のうちに原爆の雨を降らせた(p397)”原爆小説です。原爆により死傷した人たちの状況など、残虐で痛くて目をおおいたくなる描写も多く、読むのがつらかったです。 物語中で牛罐を食べる場面があるのですが、牛肉の描写を読んでいると私まで唾液が出てきそうでした。罐詰の牛肉を食べているその一瞬だけは、恐ろしい被爆体験の中でも幸せを感じるようでした。 原爆体験が冷静に淡々と綴られていますが、実際の状況を頭の中で想像すると、恐ろしくなります。戦争の悲惨さを感じ、平和を望む気持ちが強くなりました。
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