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グッド・バイ の商品レビュー

4

141件のお客様レビュー

  1. 5つ

    41

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  3. 3つ

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  4. 2つ

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  5. 1つ

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2022/08/28

序盤は敗戦直後の暗く惨めな話。一方表題作の「グッド・バイ」は妙に明るく軽くユーモアに溢れている。この振れ幅がすごい短編集。戯曲も二篇含まれている。 短い作品が多く収録されていて、非常に読み応えがある。

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2022/07/13

すげぇな よくも人間の根底を表す美しくて、醜い文章を書けるな 薄明 苦悩の年鑑 十五年間 たずねびと 男女同権 冬の花火 春の枯葉 メリイクリスマス フォスフォレッセンス 朝 饗応夫人 美男子と煙草 眉山 女類 渡り鳥 グッド・バイ

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2022/07/25

「薄明」 現実主義でポジティブ志向 そういう人であるがゆえに周りからはいつも 「本気か冗談かわからない」 などと言われてしまう それでひそかに傷ついたとしてもポジティブ その明るさが滅びの姿であろうか 「苦悩の年鑑」 軽薄なポーズでくそ真面目 そういう人であるがゆえに周りからは...

「薄明」 現実主義でポジティブ志向 そういう人であるがゆえに周りからはいつも 「本気か冗談かわからない」 などと言われてしまう それでひそかに傷ついたとしてもポジティブ その明るさが滅びの姿であろうか 「苦悩の年鑑」 軽薄なポーズでくそ真面目 そういう人であるがゆえに周りからはいつも 「本気か冗談かわからない」 などと言われてしまうんだろう それで世をひねて、純粋なものに憧れる 実際、本気か冗談かわからない 「十五年間」 彼はサロン文化を軽蔑していた そこでは誰もが空気に敏感であった 異物を探してこれを叩き、連帯感を強めていた 挙句が開戦論である しかしそれはそれとして、彼は戦争に乗った 親を見捨てることのできない子供のような心境だった 子供よりも親が大事 恐ろしいことに、これを読んだあとでは 三島なぞより太宰のほうが ずっとまっとうな愛国者と思えてしまうのだった 「たずねびと」 他人からの好意に対して感じる屈辱は 一種の幼児性であるらしい そんな、居直った乞食みたいな性根丸出しで 純粋な若き乙女を引っかけようとする  「男女同権」 戦争が終わって、男女同権ということになった それはむしろ女性解放の意味合いでそう言われたのだったが 世の中には、女にいじめられてばかりの男というのもいて ここぞとばかりに積年の恨みをぶちまけはじめた その後どうなったかはわからない 「冬の花火」 戦争で夫を失った未亡人のなかには 生きるために貞節を捨てなければならない者もあった そのやりきれなさから逃れるためには 旧時代の偶像を否定しなければならなかった 「春の枯葉」 戦争の終わりにともない、個人主義が復権しつつあった 旧時代にとらわれた人々を傷つけることで 自己確立しようとする者もあった 「メリイクリスマス」 終戦から一年すぎて帰ってきた東京は普通だった しかしふいに、昔の女が疎開先で死んだと聞かされて しんみりしちゃったりした 死んだ女の娘を誘って屋台に入ると 先客のおじさんが通りすがりのアメリカ兵に おのぼりさんみたいな態度をとって 呆れられていた 「フォスフォレッスセンス」 現実の世界と、睡眠中に見る夢の世界は 異なる世界でありながら、確実な繋がりをもっている 彼はそういう信念、あるいは錯覚でもって 夢のなかの願望を現実化させていく こういった考え方はやがて「シュレーディンガーの猫」のように 生と死の区別を曖昧化させるだろう 本気か冗談かわからないけれど 作者の精神バランスが崩れていってるようでもある 「朝」 男と女が舞台に上がったとき 必ず愛し合わなければならないというきまりはないが 舞台が暗転した瞬間、そこでなにが行われるかは わかったもんじゃないんだ 彼はそれを恐れている 永遠の暗闇となれば、真実が露呈することもないけれど 「饗応夫人」 戦争で夫を失くした未亡人が 友人たちにたかられて 屋敷をほとんど占拠されたあげくに 身体を壊してしまうのだけど それでも「饗応」をやめようとしない 戦後、そんなふうに滅びてゆくことを選んだ人も いたのかもしれない 「美男子と煙草」 戦争を生き延びた無責任な文士たちの代表とさせられ 上野の浮浪児を取材する太宰治 浮浪者となりはてた自らの姿を想像して戦慄するも 実際の浮浪児たちには明るいエールを送り また同行した記者たちに対しては どうしてもおどけたポーズをとってしまう 「眉山」 いるときは嫌なやつと思っていても いなくなったら良いやつだったように印象が変わってしまう それを知ってて自殺未遂を繰り返していたふしが 太宰にはあった 「女類」 太宰治が強烈なミソジニーを抱えていたことは 「男女同権」なんか読んでもなんとなく察せられるのだけど 一方ではやはり女好きであり 女の前で良い人ぶりたい気持ちが強くあった この二面性、この二人の太宰が共犯となり 完全犯罪を作り上げたようにも思える 「渡り鳥」 葱しょった鴨を探して夜の街を歩く 羽毛みたいに心は軽いが、空なんて飛べやしない 空虚が重くてゲップも出る 千の嫌悪が己を作り上げるとしても そのなかにひとつ混じった自己嫌悪のおかげで台無しだ つまりそれが平等な世の中なんだろう 「グッド・バイ」 十人近くもの愛人たちと関係を精算すべく 昔なじみの猛烈女を「女房」役にして 街中の巡礼を計画する なぜそんなことをするのかといえば 結局はかっこつけなんだ なりふり構わず降伏勧告を受け入れた日本で まだかっこつける余裕 それが彼の命取りかもしれない 作者が死んで未完に終わった作品である

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2022/06/25

「グッド・バイ」が未完なのが悲しい 「メリイクリスマス」が自分は一番好き 死が近くにある時は 生きる事を選び 死が遠のいていったら 死にたくなったのだろうか 妙興寺ブックオフにて購入

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2022/06/02

面白かった。僕は戦争を体験していないので、その当時の感じがどのような風だったかは全く分からないが、太宰治の所謂市井作家としての一面から、当時に人がどのように生きて、どのようにものを考えたか、想像できた。戦争という太宰治が生きた時代、どうしても考えの基底に田舎云々、絶望云々がつきま...

面白かった。僕は戦争を体験していないので、その当時の感じがどのような風だったかは全く分からないが、太宰治の所謂市井作家としての一面から、当時に人がどのように生きて、どのようにものを考えたか、想像できた。戦争という太宰治が生きた時代、どうしても考えの基底に田舎云々、絶望云々がつきまとう。また、エッセイらしくない普通の小説も入っていた。表題作の『グッド・バイ』のように、軽快なストーリーの短編。もし太宰治が今を生きていて、その空想を自由に描けるのなら、いったいどんな風な作品を書いていたんだろう。

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2022/04/17

表題のグッド・バイ目当てで読みました。 男が情けないのは想定どおりですが、こんなに楽しい話だとは思ってませんでした。

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2022/03/17

人間失格などに見られる太宰治の自己否定がまた垣間見える作品だった。自分を俯瞰的に分析できているにも関わらず、どうしても悪い方向に進んでしまう、、人間の欲がまざまざと表現されていてとても共感できる作品であった。未完なのが悔やまれる。

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2022/01/25

グッドバイが完成していたら切っても切り離せないくらい読んでいただろうと思いました。 今の作家も意外な組み合わせで小説を書くだろうけどあの時代の太宰が書く意外性を完結して読みたかったです。

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2022/11/08

太宰が現代でツイッターやってたらめっちゃいいね押してただろうなって空想した 自己否定と下降指向か。しんどかったんだな。

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2021/12/09

初太宰治著作!文章巧みだなあ。 サカナクションのグッドバイから入りました。 どの短編も、爽快!でなくても、だからこそぐっと心に残るような作品でした。 今回は短編集だったので、『斜陽』『人間失格』などの長編も挑戦したいし、後期に書かれた作品だったので、初期中期の作品も読みたくなりま...

初太宰治著作!文章巧みだなあ。 サカナクションのグッドバイから入りました。 どの短編も、爽快!でなくても、だからこそぐっと心に残るような作品でした。 今回は短編集だったので、『斜陽』『人間失格』などの長編も挑戦したいし、後期に書かれた作品だったので、初期中期の作品も読みたくなりました。 戦争と混乱と自己と善と。 偽善者という言葉を使っていた友達、その子は太宰のことが凄く好きだったので、自己と破壊と他者の評価、少しは理解できたかな?

Posted byブクログ