細雪(中) の商品レビュー
上巻に続いて、今も蒔岡家の人々は世間とは半ば遊離したような生活を送っている。しかし、この巻の最初では芦屋川、住吉川の氾濫で、妙子が危険な目にあったり、板倉との一連のことがあったりはするのだが。小説の相変わらずの退嬰ムードは、ある意味で心地よくもある。四姉妹のうち、長女の鶴子は東京...
上巻に続いて、今も蒔岡家の人々は世間とは半ば遊離したような生活を送っている。しかし、この巻の最初では芦屋川、住吉川の氾濫で、妙子が危険な目にあったり、板倉との一連のことがあったりはするのだが。小説の相変わらずの退嬰ムードは、ある意味で心地よくもある。四姉妹のうち、長女の鶴子は東京にいて、やや影が薄いが、幸子、雪子、妙子の造型は実に鮮やかだ。読者にもよるだろうが、私はやはり現代的な妙子に魅かれる。もっとも雪子の風情も捨てがたいのだが。ちなみに「こいさん」のイントネーションは、こ(低)―い(高)―さん(低)。
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一言でいうと、関西の上流家庭の風俗を描いた絵巻物だが、見方を変えれば、それ以上の価値をみいだすことができる。 つまり、谷崎文学の陰影の美しさを読み取る読み方だ。この作品には幾重にも陰影がある。光と影が。それゆえに美しい。 まず、総論として『陰翳礼讃』を掲げておこう。 「事実、日本座敷の美は全く陰翳の濃淡によって生まれているので、それ以外には何もない。西洋人が日本座敷を見て、その簡素なのに驚き、ただ灰色の壁があるばかりで何の装飾もないという風に感じるのは、彼らとしては至極もっともであるけれども、それは陰翳の謎を解しないからである。・・・われらはどこまでも、見るからにおぼつかなげな外光が、黄昏の壁の面に取り付いて辛くも余命を保っている、あの繊細な明るさを楽しむ。我らにとってはこの壁の上の明るさあるいは仄暗さが何物の装飾にも優るのであり、しみじみとみアキがしないのである。」 まことその通りである。そしてこれを作品として『細雪』はこれを地でいっている。 そう、戦争にかけて滅びゆく家には、斜陽がある。だんだん消えていく夕陽のような美しさだ。 3人姉妹で、うまく生きていくのは、妙子だろう。その光と、雪子の影。 さらには、谷崎氏の簡潔な筆致。 これらのおりなす、幾重にも重なる灰色の濃淡がこの作品の美しさだ。 参考に掲げておきたいのは、『楡家の人々』。太宰『斜陽』。チェーホフ『桜の園』『三人姉妹』あたりか。 個人的に「ふん」という言い方が気に入らない笑 また、変化が少ないという批判があるが、これはあたらない。いうなれば、フーガのように、同じテーゼを繰り返しながら遁走している。桜の美しさを詠じるように、個性とは逆に、文化の様式に従うことがそのまま美の表現の根拠となっている。四季の巡行に根差した円環的な時間ではあるが、今年の花は去年の再生でありながら、歳月は人間に老いをもたらし、女には若さの喪失をもたらしていく。
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中巻は、こいさん=妙子メインの内容になってますね。雪子さんの見合いもどこへやら…あるにはありますが。 現代の感覚からすると、何故そこまでこいさんが不良娘扱いされなきゃならないの!?と感じますが、そういう時代だったのだなぁと思わずにはいられません。
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暇々に読むので中々進まず、やっと中巻を読み終えました。 妙子の奔放さは平成の私にもうーんと思わされるので、この時代にはものすごく破天荒なことだったのでしょうね。 桜が咲く前にはきちんと読み終えたいと思います(気の長い話)
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文章が美しいので、どこからでも読むことができる。最初から最後まで一通り読んで、「ああ面白かった」で終わるような作品ではありません。小説ではありますが、詩に近いと思います。 日本的な美しさとは何か、この一冊を深く読めば理解できるのではないでしょうか。「年増美」という言葉を見る...
文章が美しいので、どこからでも読むことができる。最初から最後まで一通り読んで、「ああ面白かった」で終わるような作品ではありません。小説ではありますが、詩に近いと思います。 日本的な美しさとは何か、この一冊を深く読めば理解できるのではないでしょうか。「年増美」という言葉を見るにつけ、年をとるのも悪くないなと思ったりします。 新潮文庫の上・中・下まで読んで、終わると寂しくなって、また上から、あるいは気に入ったところから読みはじめる。それを何度繰り返したことか。文学史に残る作品とはこういうものなのかと、しみじみ思う今日このごろ。
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古風でお嬢様気質な雪子がメインだった上巻とは対照的に 現代的で奔放な妙子が中巻では中心となる。 災害・別れ・死など様々な大きな出来事が起きるが 不思議とどこか淡々とした感じ。 姉妹たちはお互いに迷惑をかけたりかけられたりしていて 普通なら女同士のどろどろした感じが表立ってきそ...
古風でお嬢様気質な雪子がメインだった上巻とは対照的に 現代的で奔放な妙子が中巻では中心となる。 災害・別れ・死など様々な大きな出来事が起きるが 不思議とどこか淡々とした感じ。 姉妹たちはお互いに迷惑をかけたりかけられたりしていて 普通なら女同士のどろどろした感じが表立ってきそうなものだけど、 蒔岡家の姉妹は愚痴をこぼす程度で決して不穏な空気になる事はない。 特に雪子が妙子に足の爪を切らせているシーンが印象的。 板倉氏はなんとなく伊勢谷友介のイメージ。 下巻で物語がどのように収まるのか楽しみ。
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11月の1冊目。今年の187冊目。 上巻はずいぶん前に読んだが、中巻を持っておらず、忘れていたが、つい先日中古で購入。うーん、面白かった、と言える。「純文学」とはこういうものだと本を読んでいて思った。どういう風に完結するのか。まぁたいてい、こういうやつは普通な終わり方だと思いま...
11月の1冊目。今年の187冊目。 上巻はずいぶん前に読んだが、中巻を持っておらず、忘れていたが、つい先日中古で購入。うーん、面白かった、と言える。「純文学」とはこういうものだと本を読んでいて思った。どういう風に完結するのか。まぁたいてい、こういうやつは普通な終わり方だと思いますけどね。
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確か、内田樹さんの影響で読み始めた気が 僕は、妙子(4女)かな。雪子ではないわな ほんまに、柔らかい船場の言葉が好きです。 ついつい船場言葉を話してしまう。再帰的関西人です。
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今の感覚でいえば妙子ガンバレー雪子幸子は何なんだよって感じやけど当時はこんなんだったのかしらね。 下巻へ。
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板倉っていうキャラが好き。 なかなかかっこいいと思う。 4姉妹の中だったら、妙子が一番現代的で好きかな。
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