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舞姫 の商品レビュー

3.5

44件のお客様レビュー

  1. 5つ

    3

  2. 4つ

    14

  3. 3つ

    11

  4. 2つ

    5

  5. 1つ

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2014/03/01

戦後の雰囲気ゆえか、閉塞感や無力感が感じられる物語だった。 読んでいて楽しくはないが、バレエの話や冷えた夫婦の心理描写がそれなりに興味深かった。 夫婦についての「共倒れ」という表現や現実の捉え方など、登場人物のシニカルな感じがとても印象に残っている。

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2013/10/30

皇居の堀に見る一匹の鯉 狭い浴室での裸踊り 部屋から漏れ出るガスストーブの臭気 本作登場人物はみな無力だと解説されているが、一般的にはその逆 ぼんぼんの坊ちゃん嬢ちゃんですきに

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2013/09/10

「舞姫」とはいえ、波子の浮気がメインテーマのような川端康成らしい作品。同名の作品が別の多くの作家にみられるのは、何か伝統であろうか。 作品全体に、戦後まもない状態の日本が横たわっている。戦争に影響を受けた人々の悲劇でもある。妻の波子に頼って生きてきたらしい夫の矢木(本当にそうな...

「舞姫」とはいえ、波子の浮気がメインテーマのような川端康成らしい作品。同名の作品が別の多くの作家にみられるのは、何か伝統であろうか。 作品全体に、戦後まもない状態の日本が横たわっている。戦争に影響を受けた人々の悲劇でもある。妻の波子に頼って生きてきたらしい夫の矢木(本当にそうなのだろうか?)は、戦前と戦後の暮らしぶりの変化でより一層魔界の住人のようになって波子の魂を喰らう。それは波子や品子の描写の影で間接的に示されるか示されないか程度で忘れるぐらいだろう。波子は浮気相手であり真の愛情を抱く竹原になびくわけだが、それへの矢木の嫉妬も静かに醸成されていて、最後には一家四人である種の修羅場を迎える。その夜に、20数年の夫婦生活ではじめて波子は夫を拒むのだが、矢木はよくもまああそこまで言っておきながら誘えたものである。 川端康成でなければ、普通のドラマなら、波子と引退して廃人のようになった香山とが再び舞台で共演するようなエンディングまで描くだろう。そこには、香山(※男らしい)への品子の淡い憧れがかげって微妙な味わいになるかもしれない。また、そこまで想像してはじめてこの「舞姫」というタイトルの妥当性も感じられるのかもしれない。そうでなければ、ただたまたまバレーをやっている母子のいる浮気のドロドロした物語のようにしかならなそうだ。「舞姫」が完結するのは、かかれなかった結末まで射程に含まなければならない。しかし、川端康成がそこまで書いたとしても、香山と波子が舞台で共演するようにはならないだろう。野津と品子の線を追うかもしれない。あるいは、妻子がいる男のためにストリップ劇場でお金を稼ぐ友子の線を追うのか。 バレー、踊りがメインテーマではないので、それを期待すると、あまりに川端康成的なドロドロした人間関係が描かれているという作品。別にバレーではなくても良かったかもしれない。 ところで、始まりから竹原と波子の会話から始まる。何の説明もないままなので二人がなんのことを言っているのかわからない。何となく想像できるところとできないところがあるが、その隙間は読み進むうちにだんだん埋まっていく。このような会話表現にしてもそれ以外にしても、簡潔でくどくどしていない。重々しいことを描いているのに、質量が感じられない。幽霊なのかもしれないという印象は全作品を貫くらしい。

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2013/01/01
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

やっと読み終わりました。川端康成は本当に人間関係のリアルを描写するのがうまいなと感心いたします。 この「舞姫」はバレリーナである波子とその愛人竹原の逢引シーンから始まりますが、そこで波子がお堀の中でじっとしてる白い鯉を見つめるシーンが危うげでとても象徴的です。そこで竹原は彼女に「およしなさい。あなたはそんなもの、目につくのが、いかん。」と言いますが、この言葉が波子の危うげかつ妖艶さを引き立てているなと感じました。 この「舞姫」は波子とその愛人竹原、娘の品子と息子高男、そして波子の夫である八木を中心に話が展開しますが、決してドロドロした人間模様にはなりません。あくまで人間のリアリズムを川端独特の表現で追求した作品に仕上がっています。 三島由紀夫が巻末の解説にも述べていますが、川端氏の「息切れの早い、ほっと息をつきながら、何度も足をとめるような文体」が波子とそれ以外の登場人物の繊細な心の機微を読者にリアルに伝えます。 この小説は他の川端作品の中でも登場人物がとても多い作品です。中でも私がとても印象的に感じたのは波子の夫八木。妻の心が自分から離れてる事実を実はもっとも客観的に受け止めている人物。そんな彼はとても自虐的で辛辣な言葉を妻はもちろん娘や息子に対してまで放ちます。母と娘のバレエはセンチメンタリズムにすぎない、と言い放つ八木の言葉に人間の悲しさが表現されていると思いました。 「魔界には、感傷がないのなら、僕は魔界をえらぶね」は作品の終盤での八木の言葉。これほどまでに人間の悲哀を表現した言葉があるでしょうか。 それでも人間は感傷的にならざるをえない。それが川端が書き残した人間のリアリズムとはどんなものかという問に対する答えなのではないでしょうか。 川端作品は古典とは思えないほどその表現が色褪せることがなく、現代のトレンディドラマを見ているかのような錯覚に陥りました。とにかくすごい作家だと思います。そして何がすごいのかってせつないストーリーなのに読後感がとても爽やかなんです。

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2012/10/31

前半は退屈に感じたが、波子の中で「恐怖の発作が愛情の発作であると云々」あたりからなにやら我が家と重なる部分があって一気に読んでしまった 八木にしろ高男にしろ、裏表紙のあらすじから想像するものとは異なっていた。特に八木の「夫婦共倒れ理論」は納得した。 八木と高男視点で話を追いかけ...

前半は退屈に感じたが、波子の中で「恐怖の発作が愛情の発作であると云々」あたりからなにやら我が家と重なる部分があって一気に読んでしまった 八木にしろ高男にしろ、裏表紙のあらすじから想像するものとは異なっていた。特に八木の「夫婦共倒れ理論」は納得した。 八木と高男視点で話を追いかけるとまた違う印象を受けるのだろう

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2012/03/02

なんとなく引き込まれるストーリーではある。 けど、ただそれだけ、な、感じ。 無気力、倦怠感が全編にわたって支配していて、 読んでいてげんなりする。 登場人物に共感できないのは時代のせいだけではないと思う。 美しいといわれる文章だけど、読んでいてイライラした。 単にスキ、キライの問...

なんとなく引き込まれるストーリーではある。 けど、ただそれだけ、な、感じ。 無気力、倦怠感が全編にわたって支配していて、 読んでいてげんなりする。 登場人物に共感できないのは時代のせいだけではないと思う。 美しいといわれる文章だけど、読んでいてイライラした。 単にスキ、キライの問題だと思うんだけど。

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2011/10/04

「舞姫」は、プリマドンナを目指す品子、もとバレエをやっていた波子を題材にした家庭の不協和音を川端節で描いた物語。 物語の最初から不倫など、家庭の歪みで始まり、波子の夫である矢木の甲斐性なさを物語ながら、じりじりと深みに陥っていく。そんな作品。 文章の壮麗は、さすがとしか言えません...

「舞姫」は、プリマドンナを目指す品子、もとバレエをやっていた波子を題材にした家庭の不協和音を川端節で描いた物語。 物語の最初から不倫など、家庭の歪みで始まり、波子の夫である矢木の甲斐性なさを物語ながら、じりじりと深みに陥っていく。そんな作品。 文章の壮麗は、さすがとしか言えません。 無力、虚脱、諦念などを、女目線で描きながら、それを否定し美を求める。 解説では、みずうみとおなじく三島由紀夫ですので、二度楽しめるような作品です。

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2011/03/27
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

ゆっくりと物語が進んでいく。 夫の狂気に包まれて少しづつ身動きが取れなくなってしまう様子が真綿で首を絞められてるようだった。 川端康成が描く女性は、気高いけれども弱い存在で、今の時代からじゃとても考えられない。 結局は最初と最後で外からみた状況は何も変わっていない。けれども、登場人物一人ひとりの信念や考えを、本当にその人がいるかのように描写して、一般的には曲がっているかもしれない考え方を、一本の筋としてまとめ上げるところは、時代を超えても受け入れられる文章力なんだろうな。繊細すぎて大好きです。

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2023/08/18

個人的には、「雪国」よりこの作品が好きです。(「伊豆の踊り子」は別格) なぜなら、太宰の「斜陽」に似た、静かな崩壊系が大好きなテーマだからです。 この作品は、静かに壊れていく様子を冷静につづっているのです。 ストーリーは、戦後、お嬢様バレリーナだったお母さんと、バレリーナ...

個人的には、「雪国」よりこの作品が好きです。(「伊豆の踊り子」は別格) なぜなら、太宰の「斜陽」に似た、静かな崩壊系が大好きなテーマだからです。 この作品は、静かに壊れていく様子を冷静につづっているのです。 ストーリーは、戦後、お嬢様バレリーナだったお母さんと、バレリーナの夢を託される娘、お金ないダメな大学教授のだんなさん、間に挟まれる息子。 お母さんは、つまり、精神的に浮気しております。 でもそれは決定的でない。プラトニックだからね。 だけど、周囲はだんだん気がつき始めます。 でも別に、お母さんの恋が原因で、家族のなんとなーくの不協和がはじまったんでもないの。 何が理由かみんなわからないのだけれど、違和感があるんですよ。 どうしてかしらねえ、、、、、 で、お話終わり、みたいな。 恋愛も結婚生活の終わりも、なんだって、終わりは、なんとなくやってくると思うのです。 そこに、理由なんて無い。 ただ、崩壊に向かうだけ。 淋しくも悲しくも無い。 そんな感じ。「斜陽」よりもあっさりと、崩壊を描いていて、好きです。

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2011/04/26

雪国より、伊豆の踊子より、好き。 登場する女性に、しずしずと文章が寄り添っている感じ。 「抒情歌」に通じる幻想的なところがあって、 ひやりとする冷たさもあって、 ひりひりと引き込まれた。

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