舞姫 の商品レビュー
美しく深い日本語の物語を読みたくなって、この本を手にとった。始めは内容に入りづらい感があったけど、波子と竹原、波子の家族、友子たちが、薄氷の上を歩いるように危ういかと思えば、氷が割れることに目もくれず大胆な行動に出たり、とても目を離せなくなった。 上流階級の方々の言葉使いや振る...
美しく深い日本語の物語を読みたくなって、この本を手にとった。始めは内容に入りづらい感があったけど、波子と竹原、波子の家族、友子たちが、薄氷の上を歩いるように危ういかと思えば、氷が割れることに目もくれず大胆な行動に出たり、とても目を離せなくなった。 上流階級の方々の言葉使いや振る舞い、繊細な物の考え方、虚弱な感じ、などなど、新鮮でした。
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少しずつ少しずつ変わってゆく、歪みが明らかになる、広がっていく家族模様を静かに描いている。 最後の、三島由紀夫の「解説」まで、じっくり丁寧に噛み締めて読めた一冊。
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「結婚はみんな、一つ一つ非凡のようですわ。……平凡な人が二人寄っても、結婚は非凡なものになりますのよ。」 戦後という価値観がひっくり返ったような世の中でも、離婚というのは簡単に許されない。愛情よりも嫌悪で結びつく家族は不気味でもあるけれど、いやにリアルだった。
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本作品のテーマを敢えて見い出せば、家族という緊結する者同士の無気力化や無関心化であり、在る面でこの後の高度経済成長期に迎える核家族化による関係性の変質を予見している。作中でも語られるように、バレエが西洋的な外の動きであるのに対し、日本舞踊が包み込むような内に向けた動作であり、日本...
本作品のテーマを敢えて見い出せば、家族という緊結する者同士の無気力化や無関心化であり、在る面でこの後の高度経済成長期に迎える核家族化による関係性の変質を予見している。作中でも語られるように、バレエが西洋的な外の動きであるのに対し、日本舞踊が包み込むような内に向けた動作であり、日本女性へのバレエの流行は戦前戦後の女性像の変容ともいえよう。プリマドンナを「舞姫」と題した意図に川端康成氏の感性を感じさせる。
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夫がいながらも心は昔の恋人にあり、また息子の魅力的な友人にも一瞬心を奪われる妻。夫への愛は冷めまた夫も密かに自分の富を増やしていた。バレーの先生という恵まれた才能を持ちながら、どこか満たされない心を感じた。一見幸せそうな4人の家族だが実際はいつ壊れてもおかしくないとてももろいもの...
夫がいながらも心は昔の恋人にあり、また息子の魅力的な友人にも一瞬心を奪われる妻。夫への愛は冷めまた夫も密かに自分の富を増やしていた。バレーの先生という恵まれた才能を持ちながら、どこか満たされない心を感じた。一見幸せそうな4人の家族だが実際はいつ壊れてもおかしくないとてももろいものだった。家族とは何だろうと考えさせられる。
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波子は言う。 「結婚はみんな、一つ一つ非凡のようですわ。・・・・平凡な人が二人寄っても、結婚は非凡なものになりますのよ」 気怠く鬱々とした物語だった。 戦争が終わった平和な世界で、一つの家庭がキシキシと音を立てながら崩れてゆく。 波子も、娘の品子も、想う人がありながら踏...
波子は言う。 「結婚はみんな、一つ一つ非凡のようですわ。・・・・平凡な人が二人寄っても、結婚は非凡なものになりますのよ」 気怠く鬱々とした物語だった。 戦争が終わった平和な世界で、一つの家庭がキシキシと音を立てながら崩れてゆく。 波子も、娘の品子も、想う人がありながら踏み出せずにいる。無心に舞うことができない。 矢木は不気味だ。妻のことも娘のことも見下している。プライドだけが無駄に高い生活力のない男。 家族に毛嫌いされている沼田は、それほど嫌な人物だとは思えなかった。 「雪国」や「古都」よりも、現実的で生々しい。 生々しく、それでいて淡々としていて、心の奥底に沈殿していく。 余韻が長引きそうだ。
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「雪国」を読んだ後は川端はもういいかと思ったのだけれど、リサイクル市でもらってきたのが本棚にあったのでちょっと手を出してみた。今度は妖しげな二人の関係にすぐに引き込まれた。舞踊についての記述もなかなかおもしろい。ニジンスキイの話題も興味がわく。もちろん、もっとも気になったのは矢木...
「雪国」を読んだ後は川端はもういいかと思ったのだけれど、リサイクル市でもらってきたのが本棚にあったのでちょっと手を出してみた。今度は妖しげな二人の関係にすぐに引き込まれた。舞踊についての記述もなかなかおもしろい。ニジンスキイの話題も興味がわく。もちろん、もっとも気になったのは矢木と波子-夫妻-の関係。・・・その夜、波子は夫をこばんだ。・・・「さわらないでください。」・・・「この女(妻のこと)は、しっとを知らずに来たろう。」「知ってますわ。」「だれに、しっとをしたの。」今は、竹原(不倫相手)の妻にしっとしているとも、波子は言えないが、「しっとをしない女は、ありませんわ。見えないものにだって、女はしっとしますわ。」だれに感情移入すべきか。矢木に同情する気にはなれないが、竹原は今後の行動しだいというところか。しかし胸がきゅうと痛む。
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※このレビューにはネタバレを含みます
この長編小説は、戦前戦後ある家族を通して、当時の家族と言うのはどういうものなのか、または一個人の人生観が語らっています。 その家族は、舞姫浪子と未来の舞姫品子の母子とその家族の話です。また、この家族の目線で進んでいきます。
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川端作品らしく艶っぽくもあり、むなしさもありという作品で、戦後の社会を実感できると思う。文章は会話が多くて読みやすく、「俳優なら誰かな?」と想定しても楽しめる。三島由紀夫が解説を書いているところもなかなか面白かった。
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