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舞姫 の商品レビュー

3.5

44件のお客様レビュー

  1. 5つ

    3

  2. 4つ

    14

  3. 3つ

    11

  4. 2つ

    5

  5. 1つ

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2022/06/18
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

森鴎外ではない「舞姫」 実は川端康成は「雪国」を読みたかったのだけど、貸し出し中でした。 ふと視線をずらしたら「舞姫」の文字が飛び込み、衝動的に手に取ったものの、「舞姫」は森鴎外じゃないか。と気づいたのはその帰り道でした。 そんなオトボケエピソードから借りた川端氏版「舞姫」なんですが、可も無く不可もない感じでした。 一つの「家族」を主軸にはしているものの、登場人物たちが強固な線で結ばれるでもなく、かと思えば点として孤立しすぎず。 ただただ皆が微かな糸を目の端に追いながら孤独でいるような、そんな話。 敗戦後の日本の、どこか鬱々とした空気を描いてる、って話だったから主題に対してなんら間違っては無い。 自分を「第三者」として置いた時の、妙なリアルさがあったように思えます。 お隣さんちの内部事情を垣間見てるような、淡々とした描写。 全体的に決して明るい雰囲気ではないんだけども、嫌気ささずに読み切れたのはそういった描写の仕方なんだろうか、と思う話でした。 内容自体は「何も解決していない」ので、おすすめはしにくい。

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2022/03/12

森鴎外と間違えて図書館で借りた。 文章や登場する女性たちの言葉が綺麗。 戦後間もなくでバレエが流行していたのかと、時代の描写が印象的。

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2022/03/12

解説が三島由紀夫で、思わず解説に飛びついて一気読みしてしまった。 淡々と現象を書いている小説で、登場人物の心理を推し量ることが必要だが、それが想像力を刺激し魅力となっているのだと思った。 川端康成の美とは、解説まで読んで欲しい。

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2021/02/16
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

何をどう間違えたか雪国と誤って読みました。バレエのお話かと思いきや、崩壊していく家族のお話。 一人一人にほの暗い所があるなか、矢木の陰湿さは異常でした。解説をみるまで、本編に1度も香山が出てこないことに気づかなかったし、松坂の美しさの描写も少ないにも関わず余すことなく伝わってきた。登場人物像を描くのがとても上手だなと思いました。波子や品子の過去にはあまり言及されていないが、それでいて奥行きのある作品でありました。 戦時中の方が家族の絆が固く、敗戦してからはそれは脆くなってしまったというのは、倫理で勉強した自由からの逃走が思い返されました。

Posted byブクログ

2020/11/08

まず舞姫というタイトルが良い。物語は、舞台の夢を諦めた波子とその娘の品子を中心に描かれているが、時に冷たく、時に切なく、様々な苦悩が入り混じった読み応えのある作品だと思う。

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2020/08/09

ワクワク感がなく、ダラダラと読み進めてしまったので、作者のキラキラとした抒情が感じられなかった。家族のわだかまりをよく表している作品だとは分かったが、事実を史実に擬えて表現しているとは飲み込めた。 読者が古典文学や仏教美術史に詳しかったらもっと深く感銘を受けるような内容だったと思...

ワクワク感がなく、ダラダラと読み進めてしまったので、作者のキラキラとした抒情が感じられなかった。家族のわだかまりをよく表している作品だとは分かったが、事実を史実に擬えて表現しているとは飲み込めた。 読者が古典文学や仏教美術史に詳しかったらもっと深く感銘を受けるような内容だったと思う。個人主義的な家族が、離散するとも元に戻るとも言えないどっちつかずの表現が多く、結局はそのようなわだかまりを、どの家庭も持ち続けていると言う家庭内の問題提起、役割家族と言う戦後家庭のあり方を、よく表している。

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2020/07/23

この作品に登場する人達は皆、強い虚無感を感じていて誰一人、幸せそうではない。矢木、妻の波子、娘の品子、息子の高男の一家は今にも崩壊しそうな家族であり、彼等を結び付けているのは嫌悪という情だけ。波子の愛人である竹原も何処か虚ろだ。惰性で繋がっている関係であるのに積極的にそれを断ち切...

この作品に登場する人達は皆、強い虚無感を感じていて誰一人、幸せそうではない。矢木、妻の波子、娘の品子、息子の高男の一家は今にも崩壊しそうな家族であり、彼等を結び付けているのは嫌悪という情だけ。波子の愛人である竹原も何処か虚ろだ。惰性で繋がっている関係であるのに積極的にそれを断ち切れない悲しさや弱さが人間らしいとも言える。全体的に陰鬱な、索漠とした作品。川端康成の骨董趣味が垣間見得るのも面白い。三島由紀夫の解説も良かった。

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2019/10/12
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

後期作品でたびたび描かれる「魔界」をはじめてモティーフにした川端作品。そのタイトルが示すとおり、過去にプリマ・ドンナだった波子と、その夢を託された品子の母娘を中心に物語が進行するが、登場人物のなかで印象的な存在は、なんといっても波子の夫にして品子の父である矢木元男。いまの言葉でいう「モラハラ」を地で行く性格で、重松清『疾走』のように、DVなどによってわかりやすく家庭が崩壊する様子は描かれていないが、静かに家族がバラバラになってしまう。あるいは「サイコパス」とまでいってしまって良いかもしれない。とにかく矢木が憎らしく、不倫を肯定するわけではないけれども、竹原と密会を繰り返す波子よりも、どうしてどうして矢木のほうがよほど鼻についてしまう。そのような人物像を的確に描いているあたりは、ノーベル文学賞作家の面目躍如といったところ。ただ、本作の結末はあまりスッキリしない。2人が離婚するかといえばそこまでは行っていないし、なんだか途中でブツ切りになったような感じがある。それでも消化不良、未完結といった印象を与えないあたりもさすがで、そのことも含めて著者も読者も含めて「魔界」の一員であるのかもしれない。

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2019/09/12

戦後の日本では貴族(華族)制度が撤廃されたため かつての貴族たちは、世襲財産保護の特権を失うことになった 中でも、芸術などに夢を見て まともな生活能力を身につけなかった者たちは 贅沢に慣れた身ゆえ、浪費をあらためることもできず とりあえずは家財道具を売り払って食っていくしかなかっ...

戦後の日本では貴族(華族)制度が撤廃されたため かつての貴族たちは、世襲財産保護の特権を失うことになった 中でも、芸術などに夢を見て まともな生活能力を身につけなかった者たちは 贅沢に慣れた身ゆえ、浪費をあらためることもできず とりあえずは家財道具を売り払って食っていくしかなかった こういう没落貴族を題材にした小説には 太宰治の「斜陽」や、三島由紀夫の初期作品のほかに この、川端康成の「舞姫」などがあげられるだろう 芸術評論家の矢木元夫と、舞踏家の矢木波子は夫婦である しかし戦争が終わってからというもの、その関係は冷え込む一方だった 上流家庭に生まれ、贅沢が当たり前になってる妻と もともと書生あがりの入り婿で、ケチな性格をしてる夫では まあ合わないのも当然なんだけど それであんがい、日本が戦争に負けるまで 黙ってさえいれば家庭内のバランスは上手くとれていた 戦後、家計が苦しくなるにつれ 互いに抱えた夫婦の不満も、徐々に噴出してくるのだが そこでまず明らかになったのは、家族観の違いである たとえバラバラになっても、家族は家族だという夫に対して 妻は嫌悪感をつのらせることしかできなかった そこに露呈されたのは 自由平等を建前とする社会に隠蔽されてなお存在する階級意識であり また、異なる階級の考え方をけして認めない人間というものの ひとつの原理であった そういう現実にひざまづき、受け入れることを仏の道と呼ぶならば それに逆らうことはたしかに魔道と呼べるわけだ

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2019/07/06

昭和二十五~二十六年、朝日新聞に連載された小説である由。 実は『雪国』さえ読んだことがないのに、なぜか代表作とは言い難い本作を読んでしまった。 資産家の娘で、バレエ教師でもある波子と、今バレリーナとして売り出し中の娘、品子。 親から譲り受けた家を売って、バレエスタジオを作ろうか...

昭和二十五~二十六年、朝日新聞に連載された小説である由。 実は『雪国』さえ読んだことがないのに、なぜか代表作とは言い難い本作を読んでしまった。 資産家の娘で、バレエ教師でもある波子と、今バレリーナとして売り出し中の娘、品子。 親から譲り受けた家を売って、バレエスタジオを作ろうかと思案する。 これが妙になまめかしい中年女性。 結婚前から恋仲だった竹原と相談するが、肝心の夫とはなかなか相談できないでいる。 夫で大学教員の矢木は、もとは妻の家庭教師だったが、どこか彼女へのコンプレックスを抱き続けていて、波子の財産で養ってもらっていながら、自分は給料を家族に秘密の通帳にため込んでいる。 息子高男は、父を崇拝していたが、父のへそくりの一件を知って、父から離反していく。 こころがバラバラになっていく家族の話。 戦争中は大変だったけれど、家族が一つに寄り集まっていたのに…という嘆きに、少しハッとする。 家族離散の物語は、今に至るまでいやと言うほど生み出されてきた。 そのはしりの頃の作品、なのか?

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