第三の嘘 の商品レビュー
「悪童日記」の主人公である2人の双子の兄弟の成長した姿を描く3部作の最終作。 3部作とはいっても、3部の間で描かれる兄弟の姿にはかなりの矛盾点があり、いったいどれが本当の話なのか、読み手には全く理解できない。この不思議な感覚は、カズオ・イシグロが得意とするような「信頼できない語...
「悪童日記」の主人公である2人の双子の兄弟の成長した姿を描く3部作の最終作。 3部作とはいっても、3部の間で描かれる兄弟の姿にはかなりの矛盾点があり、いったいどれが本当の話なのか、読み手には全く理解できない。この不思議な感覚は、カズオ・イシグロが得意とするような「信頼できない語り手」の技法に近く、読み手を最後まで混乱させる。 そもそも「第三の嘘」というタイトル自体がそれを暗示しているわけで、そうした緊張感の中で、兄弟が辿った(と思われる)それぞれの人生の悲しみがシャープに伝わってくる。
Posted by
『悪童日記』に始まる三部作目。完結篇。双子がついに再会する。物語が進むにつれて今まであった嘘が明かされていく。 とはいえ自分に理解力がないのか、非常にややこしい。何が嘘でどれが本当なのかなんだかもうよくわからない… 解説もさっと読んでみて、自分のアイデンティティや帰る故郷について...
『悪童日記』に始まる三部作目。完結篇。双子がついに再会する。物語が進むにつれて今まであった嘘が明かされていく。 とはいえ自分に理解力がないのか、非常にややこしい。何が嘘でどれが本当なのかなんだかもうよくわからない… 解説もさっと読んでみて、自分のアイデンティティや帰る故郷について語られていると感じた。それらをなくすことは想像を絶するほどつらいもののようだ。
Posted by
いやあの……前巻までのアレは一体………… これはこれでものすごく悲しく、悲しいんだけど、なんというか『悪童日記』を読んだときの胸の高鳴りに対して、(そりゃこんなクールなのはフィクションだよ)と思った自分を後悔するというか…その通り過ぎて…。 ただ三部作読んで後悔するかというとそ...
いやあの……前巻までのアレは一体………… これはこれでものすごく悲しく、悲しいんだけど、なんというか『悪童日記』を読んだときの胸の高鳴りに対して、(そりゃこんなクールなのはフィクションだよ)と思った自分を後悔するというか…その通り過ぎて…。 ただ三部作読んで後悔するかというとそれはない。 リュカとクラウスが私は好きだ。
Posted by
悪童日記から続く三部作を一気に読み終えた。 最後のこの第三の嘘は、いままでの二作は何だったのか?何が本当で何が嘘なのか?と思わせる内容だ。 頭がちょっと混乱しつつも、とても惹きつけられるストーリー展開だ。 作者が経験した、亡命という悲しい過去がベースにある。戦争や争いによってもた...
悪童日記から続く三部作を一気に読み終えた。 最後のこの第三の嘘は、いままでの二作は何だったのか?何が本当で何が嘘なのか?と思わせる内容だ。 頭がちょっと混乱しつつも、とても惹きつけられるストーリー展開だ。 作者が経験した、亡命という悲しい過去がベースにある。戦争や争いによってもたらされた心の傷は、その後もずっと抱えていくことになるのだと感じた。
Posted by
三部作の種明かしとして成立しているようにみえる。 あまり幸せとはいえない終わり方だが、亡命を余儀なくされアイデンティティの分裂を感じたアゴタ・クリストフの心情を反映しているようで、心に響く。
Posted by
『悪童日記』『ふたりの証拠』に続く第3巻・完結編。続編ですがどれも独立した作品のようにも見えます。 2作目『ふたりの証拠』で積り積もった謎は一旦横に置かれ、冒頭から彼らは50代半ばへと年を重ねています。1作目『悪童日記』であんなにも分かち合い共鳴し合っていたように見えた2人は時...
『悪童日記』『ふたりの証拠』に続く第3巻・完結編。続編ですがどれも独立した作品のようにも見えます。 2作目『ふたりの証拠』で積り積もった謎は一旦横に置かれ、冒頭から彼らは50代半ばへと年を重ねています。1作目『悪童日記』であんなにも分かち合い共鳴し合っていたように見えた2人は時代と年月に揉まれ関係性に大きな変化が生じます。 時代という大きな波に翻弄されることで心の大切な部分を押し殺しながら生きなければならない状況。母国ハンガリーから致し方なく亡命せざるを得なかった著者の半生とどことなく重なり、心が締め付けられるようです。 相手を想うからこそ嘘が重なり、リュカもクラウスも心に反して拒絶し合います。 3作を通して全く異なる文体や様相を見せる小説は初体験だったように思います。読者もどこまでこの作品の、彼らの“嘘”に巻き込まれているかあやふやに。 真実は個々人の胸に秘めたまま――そんな無常さを感じるラストでした。 クラウスは言う。 「いや、嘘が書いてあるんです」 「嘘?」 「そうです。作り話です。事実ではないけれど、事実で有り得るような話です」(130p)
Posted by
悪童日記にはじまる三部作の完結編。 50歳を超えたリュカは故郷に戻りクラウスを探す。 クラウスは精神障害となった母と再会し一緒に暮らす。 ここでも二人の恐れが見え隠れしている。 激しく求めながら、それを得られない苦しみ。 お互いの存在を疑わないのに、かみ合わないジレンマ。 クラウ...
悪童日記にはじまる三部作の完結編。 50歳を超えたリュカは故郷に戻りクラウスを探す。 クラウスは精神障害となった母と再会し一緒に暮らす。 ここでも二人の恐れが見え隠れしている。 激しく求めながら、それを得られない苦しみ。 お互いの存在を疑わないのに、かみ合わないジレンマ。 クラウスは一度リュカの姿を見ているのに気づかない歯がゆさ。 やっと再会できたのに、待っていたのは拒絶。 一緒にあるべきものが、1つであるべきものが引き裂かれる悲劇。 切ないながらも、でもクラウスの一言で、ちょっとだけ安心しました。 なんかすごいもの読んだなぁ~
Posted by
「悪童日記」「ふたりの証拠」に続く完結作。成熟期に入った彼らを通して明かされる嘘と真実。発達心理学者エリクソンによれば成熟期の心理的課題は自己統合vs絶望で、それは本書で見事に描かれている。「悪童日記」で執着した、生、の結末。私は虚しさを覚えた。嘘でさえ隠し切れない真実の悲哀があ...
「悪童日記」「ふたりの証拠」に続く完結作。成熟期に入った彼らを通して明かされる嘘と真実。発達心理学者エリクソンによれば成熟期の心理的課題は自己統合vs絶望で、それは本書で見事に描かれている。「悪童日記」で執着した、生、の結末。私は虚しさを覚えた。嘘でさえ隠し切れない真実の悲哀があった。
Posted by
あまりにも面白くて一気に3作読んでしまいました。もうどんどん世界に引き込まれてしまう。 シリーズ通してタイトルが素晴らしいですよね。 こうなってくるともう何が嘘で何が真実なのかわからなくなってしまう。結局あの双子は存在したの?っていう気持ちにすらなってしまう。 好き嫌い分かれそう...
あまりにも面白くて一気に3作読んでしまいました。もうどんどん世界に引き込まれてしまう。 シリーズ通してタイトルが素晴らしいですよね。 こうなってくるともう何が嘘で何が真実なのかわからなくなってしまう。結局あの双子は存在したの?っていう気持ちにすらなってしまう。 好き嫌い分かれそうな作品だとは思いますが、この矛盾に浸れると楽しめます。 最後のセリフも秀逸でした。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
もう何がなんだかわからない、この本が真実だとすると全2作が全て嘘になる。が、この本自身も嘘? それぞれ独立して読むとすれば、やはり悪童日記のインパクトが強い。
Posted by
