ステップファザー・ステップ の商品レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
『ステップファザー・ステップ』 宮部みゆき (講談社文庫) 1993年の作品。 蔵書を見てみると1996年の文庫の初版だった。 7つの物語から成る連作短編集。 主人公の「俺」はプロの泥棒である。 ある日、仕事(泥棒)中に屋根から落ち、気を失っていたところを隣家の双子・哲と直(13歳、中一)に助けられ、成り行きで彼らの継父(ステップファザー)になることになってしまう。 なんと双子の両親は、同時にそれぞれの愛人と駆け落ちをして家を出て行ってしまったのだった。 親に置き去りにされた子供たちのために「俺」は生活費を稼ぎ、必要な時に“父親”の役をする。 そんな疑似親子生活が始まった。 しかし、このお子さんたちがなかなかのツワモノで…… もうね、悲壮感ゼロ。 彼らは実に楽しげに自由気ままに、二人暮らしを謳歌しているのだ。 一話完結のストーリーは軽い謎解きとウイットに富んだ会話がメインで、現実にはあり得ない状況を、ホンマかー、マジかー、と笑いながら楽しめる。 でもその中にちょっぴり入っている親子の絆のエッセンスに、時折ぐっときたりしてしまう。 それは「俺」と双子たち疑似親子の、血のつながりがないからこその温かみとほろ苦さ。 この「俺」が、泥棒のくせに結構いい奴なのだ。 一人称でずっと話が進んでいくせいもあるんだけど、素直で単純で心の中が丸見えで。 双子の本当の親が帰ってきたときの自分の身の振り方に思い悩んだり。 子供たちと別れるのが寂しくてたまらない。自分が実の親の代用品であることに辛くなってしまう。 そんな感情を隠そうともせず、子供たちとぶつかり、自分を持て余し、反省をし。 「親はなくても子は育つが、子供がいないと親は育たねぇ」 という、柳瀬の親父の言葉は至言ですね。 湖から白骨死体が見つかったり、美術館の絵画がすり替えられたり、果ては双子が一人ずつ別々の犯人に誘拐されたりと、様々な事件を経て、「俺」と双子の絆は深まっていくのだが、本物の親子以上に親子になりました、めでたしめでたし。で終わらないところは、さすが宮部みゆきと言うべきか。 誘拐事件が無事解決して三人が帰宅すると、留守電に双子の実の父親からのメッセージが入っていた。 「そのうち一度帰りたい」と。 三人はその場に立ち尽くす。 このシーンってすごいな。 おとぎ話のままで終わらないのね。 「やがておずおずと、哲が言った。 『お父さんは』 同じようにおずおずと、直が続けた。 『父さんの声を』 『初めて』 『聞いたんだね』 俺はうなずいた。『うん、そうだ』」 うーん。ここいいなぁ。 「俺」は彼らの実の親の写真も見たことがなかった。 双子が見せなかったのだ。 この子たちはこの子たちで、表向きは飄々としていながらも、ステップファザーを引き受けてくれた「俺」の気持ちをきちんと受け止めていたんだろう。 その最終章のタイトルは「ミルキー・ウエイ」。 天の川が流れる夜空の下、三人で庭でバーベキューをする。 「天の川の流れつくところがどこかなんて誰にもわからない。 明日のことを思い煩うことなかれ。 それで充分俺たちは幸せなのだから。」 そんな言葉で物語は締めくくられる。 運命の巡り合わせ。 出会いの妙。 コメディーとして読むもよし。 でも、しんと心を澄ませてみると、意外や人の心の機微をじっくり味わえる。 楽しかったな。 素敵な物語でした。
Posted by
宮部みゆきの初期の作品。 ライトでウィットに富んでいながら、様々な心理をえぐるようなストーリー。 杉村三郎シリーズに通底するというのは個人的な印象か。 巻末の「メイキング・オブ宮部みゆき」も読み応えあり。
Posted by
仕事中に屋根から落ち、大ケガした泥棒の俺を 助けてくれたのは、その家に住む中学生の双子の 兄弟。ところがふたりに弱みを握られた俺は、 家出中の両親に代わって父親となるハメに。 家庭生活を始めた俺らを7つの事件が襲い…。
Posted by
双子の中学生と、父親代わりの男との話。初めは嫌々付き合っていた男が、二人に対して次第に心開いていく様子は心温まります。 男は、双子の親より断然「父親」だなあと思いました。
Posted by
子ども用に購入したけど自分が先に読んじゃった。サクッとよめる爽やかミステリー。小学高学年から読めると思います。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
とってもライトなミステリ。 泥棒さんが中学生の双子の兄弟が住む家に落っこちてしまう。現場をおさえられ、弱みを握られた泥棒さんは、兄弟の求めに応じて一緒に暮らし始める、というお話。カバーの荒川弘の絵がマッチしていて、読んでいるあいだ中、この絵が頭の中に浮かびます。もっというと、双子ちゃんがホムンクルスにしか思えなくなります。 双子が何故ふたりだけで生きていけるのか。泥棒さんが「お父さん」のふりをして、何故ご近所でだれも気づかないのか。つっこみどころは満載ですが、なにも考えずに気楽に読むには楽しいです。
Posted by
軽いミステリーがたくさん詰まったお話 どこかに連載していたものなのか? 章の最初にいちいち状況説明があるのが 少しうっとうしかったけどw ちょっとの時間でちょっとずつ読めるのが良かったな 双子達と過ごす内に、父性のようなものが目覚めていく感じが じんわり心を暖めてくれました
Posted by
3人のやりとりがとても好きで 家族のカタチはそれぞれで カタチ上の家族よりよっぽど絆が深いと思った
Posted by
宮部みゆきの小説なのに、明るいコメディータッチの短編集。両親が互いに駆け落ちしてしまった双子の兄弟と、その家の侵入に失敗した泥棒が仮の父親としてすごすうちに、色々な事件に遭遇する。さらりと読めるなかにじんわりと温かさがあるお話です。2012年ドラマ化。 https://opac...
宮部みゆきの小説なのに、明るいコメディータッチの短編集。両親が互いに駆け落ちしてしまった双子の兄弟と、その家の侵入に失敗した泥棒が仮の父親としてすごすうちに、色々な事件に遭遇する。さらりと読めるなかにじんわりと温かさがあるお話です。2012年ドラマ化。 https://opac.shodai.ac.jp/opac/search?q=%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%83%E3%83%97%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%BC%E3%82%B6%E3%83%BC
Posted by
主人公の名前が出てこないせいか、読み進める内に自分ごとのように主人公に感情移入してしまい、双子が愛しくなってくる。 心がささくれだってる人、ぜひ読んでほっこりしてほしい。
Posted by