恥辱 の商品レビュー
性欲ってなんつーか…ほんとに無様だし申し訳ないもんだよな… どれだけ綺麗ごと重ねてもそういう部分もあってだな…ああ…
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奔放な性生活を送り、自分の学生にも手を出してしまった大学教授。自ら辞職し、ひたすら落ちていく生活。イライラしながら読む話かと思ったら意外と読めてしまった。南アフリカの社会が分からないので内容面を十分には理解できなかったかもしれない。
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元文学部の教授が学生と関係をもったために大学を追われるも妙な開きなおりさえ見せる序盤、あまりにも現実での見おぼえがありなんともいえない気分になる。とまあそれはさておき、まだ訴えられる前の主人公の勤めるさきがコミュニケーション学部というのが最高で、この全体のかろやかな皮肉の調子はな...
元文学部の教授が学生と関係をもったために大学を追われるも妙な開きなおりさえ見せる序盤、あまりにも現実での見おぼえがありなんともいえない気分になる。とまあそれはさておき、まだ訴えられる前の主人公の勤めるさきがコミュニケーション学部というのが最高で、この全体のかろやかな皮肉の調子はなによりも文体に滲み出て、絶望的な惨状や嘆きをとことん悲壮にさせない。いわゆるインテリ側の人間が、そういうもののまるで通じない土地に身を置いたときの無力さは、しばしば描かれる題材ではあるかもしれないがやはり痛切。自身のもたらした害には一向に想像力を働かせないで、自身と、そのまわりがうけた屈辱だけを嘆く滑稽な男が、最終的には殺処分される動物らに愛を見いだす結末には、この物語に対する安易な形容を寄せつけないすさまじさがある。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
とても面白い。結末については、当時のその土地の政治情勢を理解しないと何が書いてあるのか分からないと思う。 かなりの問題作だったのだろうと思う。少なくともあらすじを読んだ時に想像するような小説ではなかった。 「無一文で。それどころか丸裸で。持てるものもなく。持ち札も、武器も、土地も、権利も、尊厳もなくして」 「犬のように」 「ええ、犬のように」
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肉欲に溺れて道を外れた男。 職を追われ、縋った娘との暮らしを突如襲う厄災。 あらゆるものを破壊され、なんら救いのない生の中で男が見出すものは。
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重い、これは告発小説なのだろうか? 圧倒的な力の不均衡のもとにループしてゆく暴力、暴力。 男と女、白人と黒人、若者と老人、人間と動物。 欲望と憎悪と復讐心と。 これはアフリカーナーの懺悔録なのだろうか。帝国主義のもたらした残滓としての「恥辱」が重層的に描かれる。52才にして未だ枯...
重い、これは告発小説なのだろうか? 圧倒的な力の不均衡のもとにループしてゆく暴力、暴力。 男と女、白人と黒人、若者と老人、人間と動物。 欲望と憎悪と復讐心と。 これはアフリカーナーの懺悔録なのだろうか。帝国主義のもたらした残滓としての「恥辱」が重層的に描かれる。52才にして未だ枯れやらぬ男であるが故に社会的に抹殺されるデヴィッドと、要らない生き物として殺処分される犬の運命が重ね書きされているところに、この作品の救いのなさがある。色好みの中年男性が年下の女性に入れあげて失敗し、都落ちして現地の女性と関係する、というストーリー自体は、一種の英雄流離譚とも読めなくも無くて、日本なら『伊勢物語』『源氏物語』あたりがよく知られている。そのプロットをアパルトヘイト後の南アフリカに置換えた結果、英雄流離譚が暗黒変換されたものとも読める。 では、英雄を駄犬に変えてしまうものとは何なのか? 移民、ではなく、主人、として植民地に乗り込んだ人々の後ろ暗い思いと戸惑い、なのだろうか?現代社会が説く「平等」や「博愛」、「自由」を思う様蹂躙した先祖たちの過去を、謂れもなく精算させられる側の。とするならば、これは、日本人の物語でもあるのではないのか?朝鮮の、中国の、台湾の、南洋諸島の人々の視線を無邪気にかわし、無知に遊ぶ日本人の恥辱を暴く小説ではないのか? 『今ここに在ることの恥』という辺見庸さんの著作を思い出す。 私たちは知らない間に、あるいは意図的に、いつも誰かの足を踏んでいる。
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教師と生徒…父と娘…そして何より性暴力への反応がどうしても納得できず。思うに日本で生まれ日本に住む読者の物差しでもってこの『恥辱』を図ることはおそらく出来ないのだろう。またその物差しを構えている限り何一つこの世界の本質を知れないのだろう。アフリカという地… 理解に苦しむ点も多々...
教師と生徒…父と娘…そして何より性暴力への反応がどうしても納得できず。思うに日本で生まれ日本に住む読者の物差しでもってこの『恥辱』を図ることはおそらく出来ないのだろう。またその物差しを構えている限り何一つこの世界の本質を知れないのだろう。アフリカという地… 理解に苦しむ点も多々あったが久々に翻訳文学らしい文学に出会えた気分。純粋に物語だけに着目すれば面白かった(「娯楽」としての性質を大いに含むこの日本語は適切か…?)。かと言って「アフリカや家族や暴力性について深く考えさせられる」みたいな抽象的な浅い感想も書きたくないというか。とにかく読了後は全ての人物の全ての背景において只々陰鬱な気分になるとだけ言っておく。
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先が読めない、と思ったあと、人の気持ちは分からないのだから当たり前と思い直した。語り手である彼は、同僚にいたら避けたくなる人物だが、そうした人間になって世の中を見る感覚が面白かった。
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読み終わるとニック・ホーンビィの『ハイ・フィデリティ』を唐突に思い出した。ポップソングの代わりにバイロン。もっとも細部の類似点ならジョナサン・フランゼンの『コレクションズ』かもしれないけれど。物語の進行に首を傾げる場面はいくつかあれども、男というのはこんなものかもしれないと腑に落...
読み終わるとニック・ホーンビィの『ハイ・フィデリティ』を唐突に思い出した。ポップソングの代わりにバイロン。もっとも細部の類似点ならジョナサン・フランゼンの『コレクションズ』かもしれないけれど。物語の進行に首を傾げる場面はいくつかあれども、男というのはこんなものかもしれないと腑に落ちる。最後の一文は秀逸。
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読みやすくはあるが、扱う主題は難しい。 都会で教授をしている二度の離婚経験のあるおじさんが、性欲を抑えきれず教え子に手を出して、職を追われ、田舎の娘のところに行き着き、そこから展開していくストーリー。 南アフリカの白人と黒人の間のわだかまり、治安の悪さ、強姦などといった時代背景が...
読みやすくはあるが、扱う主題は難しい。 都会で教授をしている二度の離婚経験のあるおじさんが、性欲を抑えきれず教え子に手を出して、職を追われ、田舎の娘のところに行き着き、そこから展開していくストーリー。 南アフリカの白人と黒人の間のわだかまり、治安の悪さ、強姦などといった時代背景がある中、娘とは事件後でも仲良くはあるが、意見は全く食い違う。 相手の意見を聞かずに、自分の意見を通し、辞職に追い込まれ、その後娘に自分の意見を通そうとする。かつて物を教える立場であったように。 一度だけでは本の一部分しか理解には及ばない自分の読解力の無さを嘆きたくなるが、ブッカー賞受賞作なだけあり、読み応えはある。 男たちに強姦され、妊娠までさせられるのに、警察などには一切言わず、その土地に溶け込もうとする娘。覚悟の上で、生き抜こうとする様は、か弱い人私にとってこの父親のように、理解に苦しむ。 人生何が起こるかわからない。そして何を起こすかわからない。ただ、現実を受け止め、何を教訓としていくか。難しい……。
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