お縫い子テルミー の商品レビュー
栗田有起月間3冊目。 表題作「お縫い子テルミー」と「ABARE・DAICO」の2つの中篇。 どちらも背景は『卵町』や『オテルモル』と異なり、ごく普通の現代の風景です。 ただ「お縫い子・・」については、主人公の職業が流しのお縫い子(客の部屋に居候しながら服をしたてる)というのが変...
栗田有起月間3冊目。 表題作「お縫い子テルミー」と「ABARE・DAICO」の2つの中篇。 どちらも背景は『卵町』や『オテルモル』と異なり、ごく普通の現代の風景です。 ただ「お縫い子・・」については、主人公の職業が流しのお縫い子(客の部屋に居候しながら服をしたてる)というのが変わっています。一方 「ABARE」の方は小学5年生の少年を主人公にした物語で、これはごく普通の現代小説と言って差し支えないと思います。 どちらの主人公もキッパリしていて、でも毅然というほどでもなく。なんだか共感できます。 しかし、この心地よさは何なんでしょうね。 ===================== 11-123 2011/11/23 ☆☆☆☆☆ 前回とちょっと感想が変わりました。「お縫い子テルミー」の方が良い。 「ABARE・DAICO」は現実に在りそうな話ですが「テルミー」は不思議な世界です。 何処からこんな発想を湧くのか、「オテル モル」もそうですが、栗田さんは現実と少しズレた不思議な世界を作り出します。その中で、何かを声高に語ろうとしている訳でも無さそうです。ただ純粋にちょっと不思議な世界を生み出して、その中に浸ることで楽しんでいる。そういう意味では梨木さんの「家守奇譚」に近い気もします。 素直に物語を読む喜びを感じさせてくれる本です。 ===================== 07-044 2007/05/18 ☆☆☆☆ 何処から生まれるものなのか良く判りませんが、何か独自の雰囲気を持った作家さんですね。ひょっとしたら主人公の潔さみたいなものかもしれませんが。 「お縫い子テルミー」も良いのですが、個人的には「ABARE・DAICO」の方が好きです。主人公が生き生きとしていて、ユーモアも有って。まあ、主人公が少年のせいで感情移入しやすいというところもあるのでしょうが。 目立つ作品ではないかもしれませんが、力のある作家さんだと思います。
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それは自分の枕でないと寝られないことにくらべれば、自由であるような気がする。でも自由とは、自分を縛る鎖を選ぶことだと、聞いたこともある。 残った布はハンカチくらいの大きさにして四辺をまつる。折りたたんで、胸元にしまう。ここにはいつも、気に入りの布が何枚も入っ...
それは自分の枕でないと寝られないことにくらべれば、自由であるような気がする。でも自由とは、自分を縛る鎖を選ぶことだと、聞いたこともある。 残った布はハンカチくらいの大きさにして四辺をまつる。折りたたんで、胸元にしまう。ここにはいつも、気に入りの布が何枚も入っていた。つねづね、人はだれしも、せめて一枚は美しい布を持ち歩くべきだと考えている。 つくづく、もう若くはないのだと悟ったわ。いろんなもの犠牲にしてきたことにようやく気づいたの。好き勝手やってきたけど、だれかがそのために犠牲になってくれてたんだって、やっとわかったの。そのときどきでやれることをやるって大事よ。でもそれは、だれかがやらせてくれるからこそやれるのよね。私知らなかった。人にはそれぞれの役割があるんだから仕方ないでしょって、ごうまんだった」 針の先が布を突きやぶるぽちっという音 *・*・*・ お縫い子として歌舞伎町で生きてくテルミーの話と、夏休みにお留守番バイトをする小学生の話。 栗田さんの本はマルコ以来二冊目なんだけど、相変わらずあのよくわからないもやもやしたものがずっと覆いかぶさっているのに文章はぱきっと明快で、本当に不思議な気分で読んでた。 うちのままはわたしが好き勝手やるために、ぎせいになってるのかもな、ってあの一文を読んでハッとする。それが親の役目であり、子を産んだ責任でしょとも思うけど、はたちをすぎた娘がなに言ってるんだか、だよね。 シューカツだって、やらせてもらっているのである。
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キリッとしている。 なんとも潔い。 甘くヌクヌクと育ってきたわけではない16歳。 けれど、そこに湿っぽく寄りかかったりはしない。 かといって荒々しく肩を怒らせてるわけでもない。 このテルミーももう1作「ABARE・DAICO」の小学生小松君も、 自分で決断する、あるいはそうしよ...
キリッとしている。 なんとも潔い。 甘くヌクヌクと育ってきたわけではない16歳。 けれど、そこに湿っぽく寄りかかったりはしない。 かといって荒々しく肩を怒らせてるわけでもない。 このテルミーももう1作「ABARE・DAICO」の小学生小松君も、 自分で決断する、あるいはそうしようとするその「姿勢」が実にカッコいい! どちらもすがすがしかった。 表題作、★5でもよかったかな。 また気になる作家さんが増えた。
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流しの縫い子として生きるテルミーのお話。 舞台は新宿歌舞伎町。現代の話なのにどこかが不思議な雰囲気。そういうのを描くのがこの人はうまいと思う。 テルミーとシナイちゃんの会話の部分が切なくて良い。 アンニュイな感じというか、ほの暗い雰囲気というか、そんな感じを醸し出すこ...
流しの縫い子として生きるテルミーのお話。 舞台は新宿歌舞伎町。現代の話なのにどこかが不思議な雰囲気。そういうのを描くのがこの人はうまいと思う。 テルミーとシナイちゃんの会話の部分が切なくて良い。 アンニュイな感じというか、ほの暗い雰囲気というか、そんな感じを醸し出すこの作家さんが私はとても好きだ。
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表題作より、もう一編のほうがヨカッタな 小学生の夏休みもイロイロ大変だよなー 自分はぼんやりしてただけだけど… 自転車とかプールとか体操服とか 今、大人になってきくとそこはかとなくノスタルジー 星はフツーの3つ
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なんと気持ちのいい小説か。人は強いとか弱いとか、そんなことはまったく重要ではなくて、いることだけがすべてなのだと感じた作品。
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栗田有起、初読み。「流しのお縫い子」という言葉に惹かれ、珍しく衝動買い・・・で、長らく積読山に埋もれてましたw そうか、こういう感じなのか、他の作品も読んでみよっと♪
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3冊目だけど いつも変わったタイトルだ。 そして変わった設定なのに すごく読みやすい。
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一芸を持っているなら、それを大事に磨いていかなければ。お縫い子のテルミーを見てそう思った。 面白くなってきた頃に突然終わってしまったのが残念。 そういえば2篇入っていたのを忘れていました。 もう一つのお話も主人公の少年がかわいくて好きです。
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テルミー、シナイちゃん。 いい。 昭和の感じ、 テルミーの持つ諦めと強さとポジティブさの気持ちいいバランス、 会話、 シナイちゃんの突き抜け感、 嫌なヤツが出て来ないところが好き。 これからのテルミーも知りたい。 読んでいて楽しかった。
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