街の灯 の商品レビュー
昭和七年、士族のお金…
昭和七年、士族のお金持ちの娘と、その家で車の運転手を務める女性・通称「ベッキーさん」が、不思議な事件を解決してゆくといった・・・短編集。この作者らしい、柔らかく、サラッとした探偵小説。
文庫OFF
傑作です
洗練された文章で描かれる風景から、昭和初期(開戦前)の日本に流れる空気が伝わってくる。花村家のお嬢様・英子と、運転手の別宮(ベッキーさん)が遭遇する謎と、かの時代の雰囲気、両方を味わえる作品。
yoko
昭和初期の情景を豊かな文章で描く、ぜいたくなミステリーです。 このまま読み終えてもよいのですが、本書の時代背景をより詳しく知るために巻末の参考文献を読み、自由研究をしてみました。 ―― 自由研究テーマ「お嬢様の、その後は?」 参考文献: 『ある華族の昭和史』酒井美意子著 『私...
昭和初期の情景を豊かな文章で描く、ぜいたくなミステリーです。 このまま読み終えてもよいのですが、本書の時代背景をより詳しく知るために巻末の参考文献を読み、自由研究をしてみました。 ―― 自由研究テーマ「お嬢様の、その後は?」 参考文献: 『ある華族の昭和史』酒井美意子著 『私の東京物語』朝吹登水子著 『徳川慶喜家の子ども部屋』榊原喜佐子著 ********* 東洋一といわれるお屋敷に住んでいた加賀百万石のお嬢様…。 主人公のモデルとも思われる財閥系実業家のご令嬢…。 そして最後の将軍、あの徳川慶喜家のお姫(ひい)様…。 ********* 『街の灯』で、崖の下の一般庶民を思うシーンの元ネタは、徳川慶喜家のお姫様でした。 ―― しかし、我々はこの後、日本がどうなっていくのかを知っています。 『玻璃の天』、『鷺と雪』と三部作を読み進めるうちに、ある一つの疑問が浮かびます。 お嬢様の〈その後〉はどうなるのか? 答えはこれらの参考文献の中にあります。それは壮絶な物語でした。 【華族の自由研究:1】
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昭和初期、お嬢様の生活が垣間見れて楽しかった。わっと驚く謎解きはなく全体的にほのぼのした感じ。 ベッキーさんがお嬢さまに下界のことをそれとなく諭すあたりは良かった。 ベッキーさんがそこまで活躍しないのは残念だけど、3部作とあるため、なるほど、この1作目はさわりで徐々にベッキーさん...
昭和初期、お嬢様の生活が垣間見れて楽しかった。わっと驚く謎解きはなく全体的にほのぼのした感じ。 ベッキーさんがお嬢さまに下界のことをそれとなく諭すあたりは良かった。 ベッキーさんがそこまで活躍しないのは残念だけど、3部作とあるため、なるほど、この1作目はさわりで徐々にベッキーさんの活躍や正体が明らかになるのかな。 楽しみ。
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北村薫の連作ミステリ作品『街の灯』を読みました。 北村薫の作品は先月に読んだ『玻璃の天』以来ですね。 -----story------------- 昭和七年、〈時代〉という馬が駆け過ぎる 昭和七年、士族出身の上流家庭・花村家にやってきた女性運転手別宮(べっく)みつ子。 令嬢...
北村薫の連作ミステリ作品『街の灯』を読みました。 北村薫の作品は先月に読んだ『玻璃の天』以来ですね。 -----story------------- 昭和七年、〈時代〉という馬が駆け過ぎる 昭和七年、士族出身の上流家庭・花村家にやってきた女性運転手別宮(べっく)みつ子。 令嬢の英子はサッカレーの『虚栄の市』のヒロインにちなみ、彼女をベッキーさんと呼ぶ。 新聞に載った変死事件の謎を解く「虚栄の市」、英子の兄を悩ませる暗号の謎「銀座八丁」、映写会上映中の同席者の死を推理する「街の灯」の三篇を収録。 解説・貫井徳郎 ----------------------- 2002年(平成14年)に文藝春秋が発行する隔月刊の電子小説誌『別冊文藝春秋』に連載され、2003年(平成15年)に刊行された作品……1933年(昭和8年)の帝都・東京を舞台に、上流家庭の花村家の長女・英子とその運転手・ベッキーさんが活躍するベッキーさんシリーズの第1作です。 ■虚栄の市 ■銀座八丁 ■街の灯 ■解説 貫井徳郎 80周年記念出版、令嬢と女性運転手が活躍する待望の新シリーズ……舞台は昭和初期、上流家庭の花村家に女性運転手がやってくる。令嬢の英子は彼女に興味を持ち、ひそかに<ベッキーさん>と呼ぶが、、、 昭和七年、上流家庭の花村家に若い女性運転手・別宮みつ子がやってきます……花村家の令嬢である〈わたし〉はサッカレーの『虚栄の市』の女主人公にちなんで、彼女を〈ベッキーさん〉と呼び、興味を持つのですが……。 〈ベッキーさん〉を知ったことで、〈わたし〉は今まで風景のように通り過ぎていた物事に「どうしてそうなるのだろう?」という疑問を持つようになっていきます……女子学習院の令嬢たちのひそやかな駆け引き、乱歩ばりの奇妙な事件、暗号解読、北村ワールドの真骨頂をお楽しみください。 上流家庭の花村家の長女で学習院に通い何不自由ない生活を送る令嬢・花村英子によって語られる昭和初期の帝都という時代背景を描いた緻密でリアリティのある描写、そして、英子の運転手で才色兼備で武道にも秀でたスーパーウーマン別宮みつ子(ベッキーさん)の活躍が印象的なシリーズです……先に第2作を読んじゃったんですが、第1作を読んで英子とベッキーさんのことが良く理解できました、、、 士族の出である花村家に新しく雇われることになった運転手は何と女性だった! 花村家の長女・英子は進歩的な父の決定を大いに喜び、サッカレーの「虚栄の市」に因んで彼女にベッキーさんとあだ名を付ける……ベッキーさんの登場作で、早稲田の大学生・権田が自分で掘ったと思しき穴で殺鼠剤が混入していたらしい酒を飲んで死んでおり、その数日前、権田と同じ下宿で暮らしていた男・尾崎が下宿近くで水死体で発見されたという2つの事件の原因を、尾崎の妻を巡るトラブルだと推測した英子が、権田が愛読していたという江戸川乱歩の短編集をベッキーさんから渡され事件の真相に気づく『虚栄の市』、 英子たちの間では、同じ本の何ページ・何行目・何文字目と3つの数字で伝えたいことを暗号化し手紙をやり取りするのが流行っており、それを聞いた英子の兄・雅吉が、銀座を歩きながら友人の大町に同じ話をすると、興味を持った大町は自分もやると言い出し、雅吉に暗号を解いて指定した日時に指定した場所に来るように伝える……同じものではつまらないと考えた大町から、数日おきに雅吉に暗号となる品物(シャツ、眼鏡、ボタン)が届き、英子と雅吉はチンプンカンプンだったが、英子はベッキーさんのある言葉からヒントを得る『銀座八丁』、 夏休みに避暑のために軽井沢の別荘を訪れていた英子は新興財閥の息子・瓜生豹太が主催する映写会に参加することに……のどかな牧場の風景が流れる幕が一変、大群の蛇の画像が映り、銅鑼が鳴り響いた際、部屋の隅で鑑賞していた豹太の妹の家庭教師の女性が座ったまま息絶えており、映像に驚いて心臓発作を起こしたのだと判断されるが、後になって英子は一連の出来事に違和感を覚える『街の灯』、 どの作品も当時の上流社会の生活や風俗が克明に描かれており、雰囲気がムッチャ好きで愉しめました……第3作の『鷺と雪』も読んでみたくなりましたね。
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<再登録>ベッキーさんシリーズ第一作。戦前の上流階級を舞台にした連作ミステリ。 北村作品の世界観と、昭和初期の上流階級という設定が上手くハマっていました。解決に導いているのは自分なのに、さりげなく手柄をご主人の英子に渡してしまうベッキーさんが素敵。
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昭和初期の上流階級お嬢様とその付き人(?)探偵物語。ベッキーさんが探偵かと思ったら、主人公もちゃんと探偵していた。確かにこれは「師と弟子」的な関係だな。ベッキーさんは実は誰かのご落胤…とかいう設定が出てくるかと思った。「虚栄の市」「銀座八丁」「街の灯」の3編。乱歩作品がカギとなる...
昭和初期の上流階級お嬢様とその付き人(?)探偵物語。ベッキーさんが探偵かと思ったら、主人公もちゃんと探偵していた。確かにこれは「師と弟子」的な関係だな。ベッキーさんは実は誰かのご落胤…とかいう設定が出てくるかと思った。「虚栄の市」「銀座八丁」「街の灯」の3編。乱歩作品がカギとなる虚栄の市、暗号解読の銀座八丁、地味だと思ったお嬢さんが(精神的に)強くて怖いじゃん…となった街の灯。これから不穏な時代が始まるがどうなるのか…。
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前半読みにくくて結構挫折したのですが時間が取れたので読み直し。時代背景と人物の相関関係がすっきりしたらスラスラと読めました。
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昭和初期。つかの間の平和な時期、雅な暮らしを楽しむ華族たちの間で起こるちょっとした不思議を解き明かす、ベッキーさんシリーズその1。 「鷺と雪」から巻き戻って読んでみました。やっぱりこっちから読むべきだった。 ベッキーさんの登場と、その生い立ちや過去は謎のままに物語が進みます。ざ...
昭和初期。つかの間の平和な時期、雅な暮らしを楽しむ華族たちの間で起こるちょっとした不思議を解き明かす、ベッキーさんシリーズその1。 「鷺と雪」から巻き戻って読んでみました。やっぱりこっちから読むべきだった。 ベッキーさんの登場と、その生い立ちや過去は謎のままに物語が進みます。ざっくりといえばミステリー仕立ての謎解きものなのですが、ベッキーさんという名前の理由とかブッポウソウとか、拾っておくべき伏線がたくさんあるので、やっぱりこっちから読むべきだったのです。 しみじみと思ったのは、北村さんの文章の達者さで、現代の小説でこれほど文章そのものを楽しめる作品も少ないのではないかと思います。情緒的だったり雅だったり、その中にユーモアがあったり。物語も楽しいのですが、文章を楽しむ愉悦を久しぶりに感じた本でした。あとは、北村さんは実は結構な鳥好き(もしかしたら昆虫も)なのかな、と思ってきました。 シリーズその2の「玻璃の天」も楽しみです。「鷺と雪」をつなぐお話になっているのでしょうから。
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第一次世界大戦の好景気から一転して、アメリカの不況により不景気となり、戦争の足音が近づく日本。 大財閥の社長を父親に持つ花村英子のもとにやってきた女性運転手の別宮。英子は、親愛を込めてベッキーさんと呼ぶ。 ベッキーさんの力を借りながら、英子は謎を解いていくことになる。最後の「街...
第一次世界大戦の好景気から一転して、アメリカの不況により不景気となり、戦争の足音が近づく日本。 大財閥の社長を父親に持つ花村英子のもとにやってきた女性運転手の別宮。英子は、親愛を込めてベッキーさんと呼ぶ。 ベッキーさんの力を借りながら、英子は謎を解いていくことになる。最後の「街の灯」については、戦前の身分制度のために引き起こされた殺人事件。英子は、世界を知ることで、世の中の理不尽を知ることになる。 「〘あのような家に住む者に幸福はない〙と思うのも、ひとつの傲慢たと思います」というベッキーさんの言葉。 幸福の形に絶対はないのですね。 英子とベッキーさんの関係を見ていると、主従関係を越えた信頼関係にあるのだなと感じました。
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