街の灯 の商品レビュー
昭和七年、士族のお金…
昭和七年、士族のお金持ちの娘と、その家で車の運転手を務める女性・通称「ベッキーさん」が、不思議な事件を解決してゆくといった・・・短編集。この作者らしい、柔らかく、サラッとした探偵小説。
文庫OFF
傑作です
洗練された文章で描かれる風景から、昭和初期(開戦前)の日本に流れる空気が伝わってくる。花村家のお嬢様・英子と、運転手の別宮(ベッキーさん)が遭遇する謎と、かの時代の雰囲気、両方を味わえる作品。
yoko
北村薫の『ベッキーさん』シリーズ第1作め。 再読ではあるけれど読んだのが10年以上前だったため、短編3話とも初読のような新鮮な驚きに溢れていました。 実際には知らない昭和初期の空気感が感じ取れる筆致は読んでいて心地いいものの、 その中に『楽しかった!スッキリした!』とは言えない謎...
北村薫の『ベッキーさん』シリーズ第1作め。 再読ではあるけれど読んだのが10年以上前だったため、短編3話とも初読のような新鮮な驚きに溢れていました。 実際には知らない昭和初期の空気感が感じ取れる筆致は読んでいて心地いいものの、 その中に『楽しかった!スッキリした!』とは言えない謎が入り組んでいて、読後がいいとは言えないけれどそのら後味の悪さこそが昭和初期の不穏な空気を演出しているのかもしれないと思いました。
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以前から著者の名前は知っていたが、作品を読むのは初めて。優しく穏やかな雰囲気でよかったが、個人的に「本格」ミステリは少し苦手。シリーズ3冊の1冊目。 昭和7年の東京。士族出身の上流家庭・花村家に女性運転手の別宮(べつく)がやってきた。中高生の令嬢・英子は、3つの不思議な事件を謎...
以前から著者の名前は知っていたが、作品を読むのは初めて。優しく穏やかな雰囲気でよかったが、個人的に「本格」ミステリは少し苦手。シリーズ3冊の1冊目。 昭和7年の東京。士族出身の上流家庭・花村家に女性運転手の別宮(べつく)がやってきた。中高生の令嬢・英子は、3つの不思議な事件を謎を解く。それを支えているのが、英子がベッキーと呼ぶ別宮。
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昭和7年が舞台。まだ、戦前からの爵位が残り、上流階級という別世界が公然と世間の中に位置していた頃。主人公の花村英子もそういった家庭のお嬢様で、士族に属し社長を勤める父の元で伸び伸びと育っている。 そこに進歩的な父の計らいで女性運転手が採用された。英子の通学の送り迎えや外出の供をす...
昭和7年が舞台。まだ、戦前からの爵位が残り、上流階級という別世界が公然と世間の中に位置していた頃。主人公の花村英子もそういった家庭のお嬢様で、士族に属し社長を勤める父の元で伸び伸びと育っている。 そこに進歩的な父の計らいで女性運転手が採用された。英子の通学の送り迎えや外出の供をする、ほかにお芳さんという付き添いもいる。という生活で、この女性運転手の苗字が別宮(べっく)という。 丁度集まりで「虚栄の市」という言葉が出て、気になって、自宅にあった原本を読んでいたときで、その主人公レベッカ・シャープに因んで、彼女を「ベッキーさん」と呼ぶことにした。それがそもそもの始まり。 ベッキーさんは武芸にも秀で、文学的な素養も深い、そこが読者には謎なのだが、どういう背景を持った人物なのか好奇心をそそられる。 シリーズは三部作なので、これは面白そうだと期待した。 事件は身近に起きることもあるが、英子が日常の会話の中や事件について、ふと疑問を持ってベッキーさんに話すことから始まることが多い。 中篇三編が収められている。 虚栄の市 花村英子は麹町のうちを出て、皇族、華族、貴族の子弟の通う学校に通っている。女子ばかりのおっとりとした気風で、言葉遣いも独特なものが多い。その中で英子は軍人の家系で士族、財閥系の会社を経営している家柄で、帝大に通う兄がいる。まぁ庶民には無縁の育ちで裕福な生活の中にいる。ときにはそういった上流階級だけの季節の集いに、招かれたり招いたりという付き合いをしている。 指折りの資産家である有川伯爵家の「雛の宴」に招かれた。令嬢が英語の達者な英子に興味を持ち近づいてきて親しくなり、誘われたのだ。 華族の集まりには園遊会という名前で折に触れての集まりがある。 「雛の宴」帰り際、有川家の友人八重子姫から「花さん《ヴァニティ・フェア》って何のことかしら」と訊かれた。 ここからサッカレーの「虚栄の市」の話になる。 ここまでで、英子の暮らす上流階級のしきたりや学校生活がうまく紹介されている。 大正からの生き残りのような階級の話なのだろうか、よくある、生活に困らない別世界に住むお嬢様が、庶民の生活を珍しく監察するような物語、そんな暮らしが舞台だと距離がありすぎて面白くないのでは、というのは杞憂だった。 気風のいい美人のベッキーさん、物怖じしない英子さんは、「ベッキーさんと私シリーズ」三冊を十分楽しませてくれた。 銀座八丁 進歩的な父親が就けてくれた運転手のベッキーさんの運転で銀座に出かける。当時の服部時計店にいき、そのころの風景を描き出す。 また華族の桐原邸に招かれる、そこには軍参謀本部付けの大尉である兄がいた。健康的な人物でベッキーさんを認め世情について話したりする。 戦前ではあるが、こういう軍の階級制度には、いつしか不穏な未来を暗示させる部分もある。 ここでのミステリ部分は軽い、学校で流行っている暗号を解くと言うもの。兄にも友人の謎賭けがあって、それが銀座と関わりがあり、ベッキーさんと街の裏道を通り、貧しい庶民の生活を感じる。そういった世界も知っているベッキーさんの話から、英子の世界が広がっていく。 街の灯 表題になった三編目は読み応えがある。 夏になると軽井沢に行き恒例の避暑生活に入る。学校の友人たちも同じようなもので、道でであったりする。 招かれた映画会で人が死ぬ。今回の謎解きのテーマ。 だが、それだけではない、年頃のお嬢様が、将来を選ぶ時、しきたりや生活の安定、家同士のつりあいなど、拘らなければやすやすと手に入れることが出来ることに少しの不満と、大きな安心を感じていることもまたありがち。 検事で作家の叔父がちょっと顔を出しているところも面白い。 「街の灯」はチャップリンの映画から採っているが、そこの部分がとてもいい。話を引き締めている。 英子はどう育つのだろうか。ベッキーさんの目から広い世界が見え始めてくる。 作者の安定した穏やかな筆致を楽しみながら、「即興詩人」を引き「ブッポウソウ」について知る。様々な雑学(博学)が彩る中を読み進めることが出来る味わい深い一冊になっている。 余談だが、私が始めて持ったペンタックスの「アサヒペン」らしい描写がある、普通なら一齣分のフィルムに二枚写せる。時代が違ってもこうしてあのカメラは生まれたのかと嬉しかった。 参考にされた巻末の沢山の文献を見ながら、当時の風景を忠実に織り込みながら出来上がった小説が読めることが嬉しい。
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<目次> 略 <内容> ベッキーさんシリーズの第1巻目。昭和初めの高貴な方々の世界に、花村英子の運転手兼ボデーガード兼家庭教師で配置された」ベッキーさんこと別宮みつ子。初巻は3つの謎に挑むが、最後の一つを除いて、伝聞の話をベッキーさんのアドバイスで英子が解いていくスタイル。高貴な世界を垣間見ながら、のんびりと物語が展開していく。昭和初期の歴史を感じながら、読んでみたい。
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面白かったです。 昭和7年というあまり知らない時代背景が印象的でした。主人公が上流階級のお嬢様ということで、一般の人とは違いますが、こんな生活をしてたんだな~と思いました。 銀座が出てきて、ここって和光じゃないの?と思ったら、参考文献の最後に書いてありました。 ストーリーは主人公の英子が謎を解く話だけど、別宮という女性運転手が出てきて、あー、この人が謎を解くのかー。ホームズ方式だなと思ったら違った。謎解きは英子が行い、別宮は補佐という立場から動かなかった。時代背景も上流階級も謎解きも楽しかったし、中に出てくる本や映画など興味を持ったものも増えた。
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直木賞を受賞した『鷺と雪』が読みたくて シリーズ1作目の本書を手に取った。 タイトルの『街の灯』と表紙の装画が昭和初期のノスタルジックな雰囲気が感じられ物語にぴったり!装画が綺麗だとなぜか読書意欲も湧いてくるから不思議だ。 まず読み終えて感じたのはミステリーでありながら純文学...
直木賞を受賞した『鷺と雪』が読みたくて シリーズ1作目の本書を手に取った。 タイトルの『街の灯』と表紙の装画が昭和初期のノスタルジックな雰囲気が感じられ物語にぴったり!装画が綺麗だとなぜか読書意欲も湧いてくるから不思議だ。 まず読み終えて感じたのはミステリーでありながら純文学のような余韻が残った。 これは何だろうと考えるとミステリーの真相が明かされた後も何となく切なさが残ったから。 昭和初期のノスタルジックな雰囲気と犯人の動機や事件に巻き込まれた人々のどこかもの悲しい感じが余韻を残した一つの要因だろう。 舞台は昭和7年の東京、まだ華族士族の身分制度があった頃。 士族の令嬢で主人公の英子と専属運転手のベッキーさんのコンビが穏やかな日常のなかに潜む謎をじんわり解いていく物語。 本書の魅力は時代設定とそれに絡めた謎解き、ベッキーさんのキャラ。 昭和モダンの雰囲気が色濃く描かれていて当時の文化や風俗、街並、古き良き昭和の様子が良く分かる。 特に2篇目の『銀座八丁』では英子がベッキーさんと銀座を散策するシーンがあり一緒に「銀ぶら」しているような気分にさせてくれる。 華族士族の上流階級の独特な言い回しや優雅な生活を垣間見る事ができるのもこの時代ならではで新鮮で面白かった。 謎解きも当時流行っていた江戸川乱歩 やチャップリン、森鴎外の作品をモチーフにした事件や謎解きで作品の内容を知っていればもっと楽しめたかも。 ベッキーさんのキャラもまだ謎が多いが、今の時点でも知性や教養に溢れ武術の腕前も相当なもの。これはまだ氷山の一角、いつ馬脚を露すか楽しみだ。 印象に残ったのは表題にもなっている「街の灯」。ベッキーさんが英子に言った台詞 「《あのような家に住む者に幸福はない》と思うのも、失礼ながら、傲慢だと思います。」 チャップリンの作品とこの物語を照らし合わせるととても奥深く感じた。 タイトルの『街の灯』はチャップリンの作品をモチーフにしているが、この物語のなかではどんな灯だろう? 本書は五・一五事件の年の世相を背景にしていて、今後、軍国主義へと傾いていく不穏な空気感を伺わせいる。 今は華やかな東京の街の灯も次第に薄暗くなっていくのではないか、そんな風に思うと何となくもの悲しく感じました。
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普段とらぬような類の著者だが、訳あって購入。 事前情報は一切なしで読んだがなかなか面白いミステリー小説だった。 時代による背景の違いや言葉遣いはあれど、慣れてしまえば結構面白く読める。 昭和初期、まだ華族や皇族といった身分がものをいう世で士族の娘である花村英子と時代柄、非常に珍しい女性の運転手・別宮みつ子、通称ベッキーさんのコンビによるミステリー。 中学生(おそらく?)ながらもつ鋭い洞察力と、身分こそ持たぬが万能感のある運転手のコンビが読んでいて清々しい。 タイトルはチャップリンの名作からとっているとあり、そちらも気になる。
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時代設定のせいか、馴染みの少ない言葉や文体で少し読むのに時間がかかった 構成としては、覆面作家シリーズと似ているのかな 北村さんの描く女性はスッキリさっぱり、嫌味がなくて素敵です。
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