照柿(上) の商品レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
うーん。 雄一郎があれほど美保子に心奪われる理由がわからない。 そのために達夫を追い詰めようとするのも、腑に落ちない。 ちょっと期待しすぎたかな。 全体的に暗いのはいいのだけれど、とにかく清潔感がなくて、ドロドロとしている。 『マークスの山』や『李歐』では、突出した人物(マークスであり李歐)が、ある種の狂い(人を無邪気に殺傷するという、狂気)を内包しつつも、それは透明であり、純粋であった。それが魅力だっただけに、本作『照柿』にはそういった登場人物がいなくて、誰もが妙に現実的で読むのがしんどい。 いつ下巻を読み終えられるか、いまのところ不明。
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とうとう文庫になった「照柿」上下巻。高村薫は、単行本から文庫への大幅改訂や加筆で知られているけど、これも例外じゃなかった……。なんだよ、初めて小説を書くということを意識して書いた作品なんじゃないのかよ……それでもこれほどの改訂かい……。 ストーリーの流れは変わっていない。だが...
とうとう文庫になった「照柿」上下巻。高村薫は、単行本から文庫への大幅改訂や加筆で知られているけど、これも例外じゃなかった……。なんだよ、初めて小説を書くということを意識して書いた作品なんじゃないのかよ……それでもこれほどの改訂かい……。 ストーリーの流れは変わっていない。だが、登場人物たちの内面や感情、セリフなどは、バッサリ変わっているところが多い。たしかにこれで作品としては締まったかもしれないけど、なんというか……余分な面白みがなくなった感じがする。 主人公の合田は、この作品では34歳なのだが、うーむ、34歳ってこんなに練れているというか、達観してるだろうか? 刑事という職業柄だとこんなもんかしら。 でも、読み応えがあるのは確かで、達雄と合田の心理的な攻防、合田の焦りと投げやり感、熱処理工場の様子などに夏の暑さが重なって、苦しいんだけど読み進めてしまう。 読み進めてしまうから、結局、なんだかんだいって高村薫の作品は読まずにはいられないってことかしらね。ああ…。
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久々の文庫ですね~ って言うか文庫化に12年ですか… この方はいつも文庫化となると大分改稿なさるのでついついハードカバーと文庫両方読みたくなるんですよね… 私が高村薫さんの作品を読み出したのはほんの…4~5年前なのであまり待たされた感はないのですがそれでも本屋で目にしてすぐ購入...
久々の文庫ですね~ って言うか文庫化に12年ですか… この方はいつも文庫化となると大分改稿なさるのでついついハードカバーと文庫両方読みたくなるんですよね… 私が高村薫さんの作品を読み出したのはほんの…4~5年前なのであまり待たされた感はないのですがそれでも本屋で目にしてすぐ購入してしまいました。 照柿は合田刑事の第二弾目らしいです。初めて読んだのは図書館で借りたハードカバーだったのですがうだるような暑さ、溶鉱炉の熱、炎の色、その場で働く人間の汗。その背景すべてがまるで目の前にあるかのような、熱そのもの、手を伸ばせるような状況描写にただひたすら感嘆した覚えがあります。 ヒロイン(だよね?)の美保子の昏い穴のような瞳と白いふくらはぎなど。まるでそのワンシーンを見せれれているような、強制的に小説の主人公の視点で視野で物事を見させられているような、忘れられないシーンが多々ある小説です。 あらすじとか話の筋とかではなくその場その場の状況描写や心理描写があまりに見事でついそちらのほうに心が残ってしまうというか。 好き嫌いは分かれるかもしれませんが私はとても惹かれます。文庫版のほうがより簡潔になったというかより一層ハードな核に近づいた感じがします。 とりあえず読んでみて損はない小説だと思います。
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暑い!とにかく暑苦しい猛暑の描写。事件の方は痴情のもつれ?強殺? ありがちな殺人事件の裏にあるさまざまな人間関係。警察内部のドロドロにページを割かれた『マークスの山』と比べて、こちらは一人の男としての合田刑事が醜く生々しく描かれていて好感。気になる義兄との関係も「あらやっぱり」と...
暑い!とにかく暑苦しい猛暑の描写。事件の方は痴情のもつれ?強殺? ありがちな殺人事件の裏にあるさまざまな人間関係。警察内部のドロドロにページを割かれた『マークスの山』と比べて、こちらは一人の男としての合田刑事が醜く生々しく描かれていて好感。気になる義兄との関係も「あらやっぱり」と腐った視点からも楽しめる作品です。ああ人間てなんて脆くて可愛いんだろ。個人的にはベアリング工場の熱処理現場の描写がものすごく好き。これ、著者は絶対現場で取材してるって。その様子を想像すると萌えるw 下巻も期待
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他の作品と比べ、出来事(事実)よりも内面の描写が多いように感じられました。 高村さんらしい知的な人物描写に魅せられます。
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これもずっと積読だった本…マークスに続いてやっと上巻を読了。髙村薫の本はすごい取っ付きにくい印象だったけど、一度読みだすとこの濃ゆ~い密度がほんと癖になる。他の本読んでても、髙村本に戻ってくると「あ~この感じ」といった具合。笑 しかし、幼馴染への嫉妬にトチ狂った合田刑事はほんとロ...
これもずっと積読だった本…マークスに続いてやっと上巻を読了。髙村薫の本はすごい取っ付きにくい印象だったけど、一度読みだすとこの濃ゆ~い密度がほんと癖になる。他の本読んでても、髙村本に戻ってくると「あ~この感じ」といった具合。笑 しかし、幼馴染への嫉妬にトチ狂った合田刑事はほんとロクでもない…。さ~下巻下巻。
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勢いで合田シリーズ。マークスは山の話だったので、身近に感じたこともありグイグイだったけど、今回は町場の、工場の話だったので・・・根底にあるものだとは思いながらも、工場の仕組みのあれやこれやをこそっと飛ばし読み(笑) 合田、一目惚れをしてものすごく人間ぽいというか、もう、どちらかと...
勢いで合田シリーズ。マークスは山の話だったので、身近に感じたこともありグイグイだったけど、今回は町場の、工場の話だったので・・・根底にあるものだとは思いながらも、工場の仕組みのあれやこれやをこそっと飛ばし読み(笑) 合田、一目惚れをしてものすごく人間ぽいというか、もう、どちらかといえばダメじゃん!な部分もかなり見えるのに、第三者からすると(特に男性の目からすると)なんだか手に入れ難い存在になってしまうという・・・そこらへんに合田の合田たるというか、悲劇みたいのがあるような気がする。
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序盤の工場での描写は緻密過ぎて重く、暗く、なかなか話の展開も読めないので、途中で辞めようかとも思った。 『このミステリーがすごい!』1995年3位。
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「合田君が女に惚れる」話ということで、読むのを躊躇していたんだけど、会社の人2人に別々の場でお勧めされたので、読んでみることに。感想は下巻で。
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高村薫『照柿(上下)』(講談社文庫、2006年)税込680円、650円 「自分が執着するのはただ、初めから手に入らないと分かっているものへの煩悶に過ぎない」(下巻p.92) リアルな社会の中に人間の情念を抉り出して描写できる作家は数少ない。高村薫の凄さが際立つ傑作。
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