密約 の商品レビュー
国家の裏切り、密会相手の裏切り、正義や真相への追及をおざなりにして俗世間の倫理へと論点をずらしていく公判は、”男女の秘め事” と “国家機密を知る権利” を天秤にかけていく。被告人のプライバシーは見世物として晒してしまって、果たして何が守られていくのか。私たちの生活はそんな権力者...
国家の裏切り、密会相手の裏切り、正義や真相への追及をおざなりにして俗世間の倫理へと論点をずらしていく公判は、”男女の秘め事” と “国家機密を知る権利” を天秤にかけていく。被告人のプライバシーは見世物として晒してしまって、果たして何が守られていくのか。私たちの生活はそんな権力者の暴挙のうえで安住できるはずがない。監視するのは、私たちの日常ではなく、権力の愚挙なのだ。言いなおすと、国家は私たちを守るふりして管理しようとする。そこに安住は無い。 筆者澤地久枝は権力批判に留まらず被告人の真実が万華鏡のように変幻する滑稽さに焦点を当てる。人に対してこうだと決めつけることは無意味、捉えどころの無さがまた人であり、法という規律からでは判断出来ないところに真相がある。そこまで思慮深くさせてしまうのが、この外務省機密漏洩事件なのだ。
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沖縄返還密約にかかる秘密漏洩裁判の傍聴記。何が国家秘密に当たるのかが争点なのかと思いきや、澤地さんも男女問題に多くを費やしている。物足りなさがある。いっそすべて削ぎ取ってしまえばよかったのに。 裁判で、またマスコミで取材手法が大きく取り上げられたのはわかるが、それは枝葉である。
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資料的価値はどうなのだろう? 著者のモノローグが多すぎはしないか。 何より事件の本質よりも検察が誘導した方向に著者自身が絡め取られた感がある。 そして本質には一切踏み込めずに終わった。 この内容なら100ページ前後で良い。
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1971年の沖縄返還協定において、本来であればアメリカが 地権者に対して支払うべき原状回復費400万ドルを日本政府が 肩代わりした。 1971年の沖縄返還協定における日米間の密約。国民の税金を 政府がアメリカにプレゼントする。当然、外務省では外部へ公表 の出来るような...
1971年の沖縄返還協定において、本来であればアメリカが 地権者に対して支払うべき原状回復費400万ドルを日本政府が 肩代わりした。 1971年の沖縄返還協定における日米間の密約。国民の税金を 政府がアメリカにプレゼントする。当然、外務省では外部へ公表 の出来るような経緯ではない。それが漏れた。 持ち出したのは外務省勤務の女性事務官。持ち出させたのは 外務省詰めの新聞記者の男性。ふたりは国家公務員法違反 で起訴される。 その裁判を傍聴し、事件の真相に迫ったのが本書である。今では ベテランのノンフィクション作家となった著者の第2作である。 佐藤政権末期に起こった機密漏洩事件は、「機密はない」と 主張し続けた国が裁かれるべき事件だった。本来であれば 日本版ペンタゴン・ペーパーズとなるはずの事件だった。 しかし、裁判の過程で問題はすり替えられた。女性事務官も 新聞記者の男性も既婚者だった。そんなふたりは特別の関係 にあった。これが「国家のスキャンダル」ではなく、「男女間の スキャンダル」に変質した。 女性事務官は新聞記者の男性の強引な要求に屈しきれず、そその かされたのだと主張する。それは新聞記者の「取材の自由」「報道 の自由」を逸脱する行為であると検察は非難する。 だが、そうだろうかと著者は疑問を呈する。仕事を持った40代の 女性が「好意さえ持っていなかった」男性の要求を突っぱねられ ないものだろうか…と。 彼女は何かを役割を演じていたのではないか。「スクープの為 ならか弱い女性を食い物にする男」の犠牲者としての仮面を かぶっていやしないか…と。 被告人となった女性に温かい視線を向ける著者ではあるが、 証言内容の分析は非常に厳しい。これが後に女性事務官を 知るというX氏との邂逅と彼の告白で、「か弱い女」の仮面が 剥がされて行く章に繋がるのだが。 このX氏の告白の章は秀逸。外務省の臨時雇いだった女性は、 異例ともいえる出世で次官や審議官付の事務官となる。もし やその出世の裏側には…。 まるでカトリーヌ・アルレーの「悪女」シリーズを連想される 妄想が暴走しそうになった。 この女性事務官に関しては「世間が事件のことを忘れ、静か な生活をしたい」と語っていたはずなのに結審後もマスコミに 登場して男性記者を非難する言動を繰り返しているんだよな。 やっぱり、何か変なのだ。 「おんなは被害者意識によって盲い、陰湿な逃げの姿勢に 沈潜しているかぎり、おのれ一人の人生のいわば囚人となる」 もし、女性事務官が男性記者を自分に繋ぎ止める為に貢ぎ物 のように文書を渡していたとしたらどうだろう。「そそのかし」は 該当しなくなるのでは…と考えてしまった。 政権にとってこんなに都合のいい被告人はいなかったのでは ないだろうか。あらかじめ自身の罪を認めているのもあったが、 女の涙は利用できるものね。男女間のスキャンダルに問題を 貶めてしまえば、政権は傷つきさえしない。 「しかし、自力で外務省事務官のポストを得た四十路の女が、 人形のように相手の一方的な意思によって蹂躙されたという のは、あきらかに誇張であり、ためにする嘘がある。そして 仮に、西山氏が「悪意の誘惑者」の一面をもっていたとしても、 哀れな被害者という意識に埋没することを自らに許せない 誇りを、蓮見さんにもってもらいたかったと思う。」 同性としての厳しさと優しさが、この表現から感じられる。 自ら「被害者」を演じることで女性事務官は自分で自分を 貶めてしまったのではないか。 尚、私は一番の被害者は発言の機会もなく、沈黙を通さ ざるを得なかった男性記者の奥様だと思うわ。 骨太のノンフィクションは発行から30年近く経っても色褪せ ない。
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夏にまた沖縄旅行に行くってこともあり、このタイミングで読むことに。そもそもは、佐藤優絡みの書籍のどこかでオススメされていたはず。今に至るまで根本的解決を見ない基地問題に止まらず、沖縄返還には数多の闇があった訳ですね、やっぱり。意図的に表向きの良い顔しか見えないようにされているけど...
夏にまた沖縄旅行に行くってこともあり、このタイミングで読むことに。そもそもは、佐藤優絡みの書籍のどこかでオススメされていたはず。今に至るまで根本的解決を見ない基地問題に止まらず、沖縄返還には数多の闇があった訳ですね、やっぱり。意図的に表向きの良い顔しか見えないようにされているけど、そんな優等生的退去をする訳がないですよね、トランプを戴くことを是とするようなかの国が。でもそれが本題のはずなのに、どこかで男女のスキャンダルへと論点がずれていくという、未だに同じようなことが繰り返し行われているこの国の得意技が、本作でも存分に描かれています。当時の国民が味わったようなごまかしを、上手く追体験できるように構成されている本書。読み終わった後、自分自身もつい本筋を見失いそうになっていました。そういう意味でも貴重な読書体験になりました。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
2006年(底本1978年)刊行。ようやく事実の一端が垣間見えるようになりつつある沖縄返還に絡む日米間の密約。その密約を暴こうとするジャーナリストと情報提供者となった女性外務事務官との不適切な交際。一見すると下半身スキャンダルと目されるが、著者は「『情を通じたこと』と国民を欺いた政治責任が同じ秤にのるのなら、正義を愛する無頼漢になるしかない」との姿勢を貫き、一貫して佐藤栄作の政治責任を糾弾する。この観点から見た、国家公務員法違反事件の裁判傍聴録が本書。個人的には、保秘の重要性は十分理解しているつもり。
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熱い、本である。沖縄返還を巡る「密約」の存在に憤り、取材を進めていく。公判の様子はもちろん、当時の報道、雑誌特集などを丹念に拾い集めている。密約問題がいつの間にか「一組の男女の情事」という下卑た事件に収斂していく過程、その中で密約問題の真相究明を求める声がかき消されていく様子、そ...
熱い、本である。沖縄返還を巡る「密約」の存在に憤り、取材を進めていく。公判の様子はもちろん、当時の報道、雑誌特集などを丹念に拾い集めている。密約問題がいつの間にか「一組の男女の情事」という下卑た事件に収斂していく過程、その中で密約問題の真相究明を求める声がかき消されていく様子、その趨勢に抵抗できない無力感をありありと描く。 そして熱さの一方で、驚くほどの冷静さを兼ね備えている。国家権力批判は通底するものの、事務官や記者に無闇にべったり、もしくは批判一辺倒に陥るのでなく、分析・記述しているのである。単なる問題意識の吐露でないところが、この本の魅力でもあると思う。 そもそも密約ができたのがアメリカ議会対策であり、密約の存在を最初に公式に明らかにしたのもアメリカの情報公開制度である。外交に秘密は付き物であり、グレーなものも多々あろう。しかし、この件が本当に国家機密足るものだったか、その検証は必要であり、情報公開制度の充実は図られるべきである。 最後に、この本を読んで記者有罪には疑問を持ったが、それでもやはり「正当な取材」には当たらないと考える。
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[ 内容 ] 沖縄返還交渉で、アメリカが支払うはずの四百万ドルを日本が肩代わりするとした裏取引―。 時の内閣の命取りともなる「密約」の存在は国会でも大問題となるが、やがて、その証拠をつかんだ新聞記者と、それをもたらした外務省女性事務官との男女問題へと、巧妙に焦点がずらされていく。...
[ 内容 ] 沖縄返還交渉で、アメリカが支払うはずの四百万ドルを日本が肩代わりするとした裏取引―。 時の内閣の命取りともなる「密約」の存在は国会でも大問題となるが、やがて、その証拠をつかんだ新聞記者と、それをもたらした外務省女性事務官との男女問題へと、巧妙に焦点がずらされていく。 政府は何を隠蔽し、国民は何を追究しきれなかったのか。 現在に続く沖縄問題の原点の記録。 [ 目次 ] 発端 封印された会話 不発弾 自白→起訴 出廷 雷雨の法廷 相被告人 検察の論理 最終弁論 ひとつの幕切れ 告白1 告白2 新たな出発 [ 問題提起 ] [ 結論 ] [ コメント ] [ 読了した日 ]
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これを今読まなくてどうする!国民を欺き続けた政府。平然とウソをつく外務省。この国に民主主義はあるのか?この問題をライフワークとしている澤地さんの御健闘を祈りつつ。
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ドラマ「運命の人」で興味を持ち読んでみた。権力が時に手段を選ばないことを感じる。一方で最高裁判決にあったように、表現の自由や知る権利の名の下で、取材で何をしても良い訳ではない。現代でいえば、g不正アクセスで官庁のサーバーから極秘文書を盗み取って、新聞で発表したらどうなるか、とか色...
ドラマ「運命の人」で興味を持ち読んでみた。権力が時に手段を選ばないことを感じる。一方で最高裁判決にあったように、表現の自由や知る権利の名の下で、取材で何をしても良い訳ではない。現代でいえば、g不正アクセスで官庁のサーバーから極秘文書を盗み取って、新聞で発表したらどうなるか、とか色々なことを考えさせられた。
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