密約 の商品レビュー
「密約」をめぐる二人の女流作家の闘い【赤松正雄の読書録ブログ】 山崎豊子さんが今年の毎日出版文化賞特別賞を受賞され、病を患っておられるのに授賞式に出られたとの記事に先日出会った。日航機墜落事故に題材をとった彼女の『沈まぬ太陽』が映画化され、外務省機密漏洩事件の小説化で今話題の...
「密約」をめぐる二人の女流作家の闘い【赤松正雄の読書録ブログ】 山崎豊子さんが今年の毎日出版文化賞特別賞を受賞され、病を患っておられるのに授賞式に出られたとの記事に先日出会った。日航機墜落事故に題材をとった彼女の『沈まぬ太陽』が映画化され、外務省機密漏洩事件の小説化で今話題の『運命の人』を読むにつけ、この人の底知れぬ取材力と構想力に改めて感服しているところだ。ただし、前者を読んだ際にも感じていたが、やはり往年の凄みが徐々に薄れてきているのではないかとの思いは捨て難い。西山記者の人物像がいまいち実在感を持って結ばれないし、沖縄に身を置かせるといった創造的アイデアもどこか浮き上がっているように思える。前三巻と四巻の主人公が同一人物とはどこか思えず、ちょっぴり割り切れぬ思いを持ってしまったのは私だけだろうか。 比較する思いも多少あって、澤地久枝『密約 外務省機密漏洩事件』―約30年前に出版された著者の実質的な処女作と言えるこの本を、まことに遅ればせながら読んでみた。心底から圧倒された。ジャーナリストに憧れ、その真似事をしてきた(昭和44年から18年間)人間として、また政治家の端くれ(平成5年から16年間)として沖縄をめぐる「密約」問題に強い関心を持つ私として、二重、三重の意味で深く考えさせられた。 時あたかも、この裁判にあって徹して「密約」を否定してきた吉野文六外務省アメリカ局長(当時)が一転、それを認める発言を法廷で行ったとの報道に接して、感慨はいやがうえにも高まる。この本で澤地さんは「政府の対米『密約』と男女関係との比重の倒錯、本質のすりかえを初心者らしいしつこさで追求した」と述べている。なるほどしつこさは並みではない。 核の存在を「必要悪」と認め、「核抑止論」を擁護し、日米同盟のありようを現実的国際政治観から肯定してきた立場からは、澤地さんの『密約』後の論述はまことに手厳しい。三年前に書かれた「沈黙をとく」と題するあとがきの冒頭でも、自衛隊のイラク出動を憲法違反といい、自衛隊法改正により海外任務を認めることや、防衛庁の省格上げを否定的にとらえられている。このあたり山崎さんの本と似て非なるものだが、僅かながら違和感を持つ。国際政治における理想主義と現実主義と。「密約」という名のもとでの政府の公然たる嘘には怒りを覚えつつ、若き日から切り結んできたテーマが改めて胸を去来する。
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最近、ようやく、メディア等で取り上げられ始めた、沖縄返還に伴う、日米の密約。 山崎豊子氏の新刊のテーマでもありますが、本作の先見性、さすがと思います。 密約をスクープした、新聞記者、訴訟を起こしましたが、結局は最高裁で敗訴。 しかし…・
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