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プラネタリウムのふたご の商品レビュー

4.1

178件のお客様レビュー

  1. 5つ

    73

  2. 4つ

    58

  3. 3つ

    27

  4. 2つ

    8

  5. 1つ

    2

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2019/09/26

2/5はふたごの日 だまされる才覚がひとにないと、この世はかさっかさの世界になってしまう。 拾われたふたごの物語。

Posted byブクログ

2018/10/14

プラネタリウムの解説員である「泣き男」は、村で水死した女があとに残した双子を引き取って育てることになる。 双子には、太陽の周りを三十三年周期で回っているテンペルタットル彗星から、テンペル、タットルと名が付けられる。 勝ち気で活発なテンペルは、村にやってきたサーカスの一座について...

プラネタリウムの解説員である「泣き男」は、村で水死した女があとに残した双子を引き取って育てることになる。 双子には、太陽の周りを三十三年周期で回っているテンペルタットル彗星から、テンペル、タットルと名が付けられる。 勝ち気で活発なテンペルは、村にやってきたサーカスの一座についていき、やがて世界的な手品師として、旅から旅の暮らしを送るようになる。 対する穏やかなタットルは、村に残り、郵便配達員として、また父の仕事を手伝ったりして暮らしている。 中身は対照的でも見かけがそっくりなこの双子は、「熊」に関わってそれぞれの運命を歩んでいく。 いしいさんの作品には、いろいろなものが詰まっている。 身体の苦しみ、心の痛み、思いやりや知恵。 ここで描かれる世界は決して理想的なものではなく、雑駁で残酷なものも含まれているけれど、どこか温かい。 『麦踏みクーツェ』よりも、本作の方が好きかもしれない。

Posted byブクログ

2018/04/12
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

プラネタリウムに置いて行かれたふたご。テンペルタットル彗星の解説中に泣いたことから、テンペルとタットルというなまえで呼ばれるようになる。銀色の髪をした美しいふたご。 紙製品の工場が動き続ける村では、もやや煙で星が見えない。 ふたごは解説員「泣き男」のもとでプラネタリウムや星、神話に親しみながら育つ。 あるとき、魔術師テオ一座が村にやってきたことからふたごは離れ離れになる。タットルは郵便配達をしながら星を語り、テンペルは手品師へと。 「麦ふみクーツェ」以来の、いしいしんじ作品でした。 クーツェを読んだのも思い出せないくらい昔のことで、いしい作品をほぼ知らない状態での読書でした。 優しい文章は気持ちを暖かくさせる。でもその優しさは、シリアスな展開では不思議な感覚にさせました。 登場人物に名前がない(ふたごとテオを除いて)、時代や場所の背景がはっきりと描かれていない分、私の想像が世界を作っていくので楽しかった。 作品の中には、ふたごも村の人も、一座の人も、人を「だます」シーンがある。「だます」というとちょっと聞こえが悪いけれど、悪い意味ではなく、誰かを思っての行動だった。 村に新しい工場ができることになり、それまで村や人々にとって畏怖や畏敬の対象だった北の山が崩されることに。何十年も熊が出ていない山で、毎年狩りの時期に行う儀式。なんのためだったのだろう、と肩を落とす狩人。しかし北の山に熊が出たことによって、再び村は盛り上がる。 でも実はその熊、タットルだった。 山を開かせないようにという思いでした行動なのだと思う。(撃たれないか撃たれないかとハラハラ読んでた。) しかし村の人たちは、熊はタットルが正体だと知っていた。知ったうえで作戦をねり、山へとのぼっていた。 これはお互いにだましあっていたってことなんだろう。 でもそれでいい、と村人は思っていたのだろう。 毎年毎年、儀式的に行ってきた自分たちの行為、村を思ってのタットルの行動。嘘とか、本当とか、そんなことではなくて、誰かを喜ばせたいという気持ちがそうさせたんだろう。 そしてお話の最後には、みんなが大きな「嘘」をつくことになる。それでも一人の男の子を救った。 喜ばせたい、幸せになってほしいという気持ちが生んだことなのだろう。 個人的には、死と星が結びつかなかったことに不思議な安心を感じた。(これは私の個人的な死生観?) 氷山の氷から、ゆっくり解けだして水になる。水になったらすべての海とつながりをもち、雲になってどこかに降りそそぐ。 そうやってもっと広い世界へとつながりを持つのかもしれない。 思えば、プラネタリウムの中でも人をだますことになるのかなぁ、と。 天井に広がっているのはにせものの空で、にせものの星。時間も操作できるので、にせものの時間の中にいる。そのなかで、本物とおなじように見せる。 星座に描かれた神話は、実は出典がごちゃごちゃになっていたりして、生まれてから長い年月と人の営みを経て変化してきたもの。だからはっきりとした正解がない。でもそれを、きちんとお話をする。 小さい地球上ではわからない天体の動きや、その科学的なものを、空間や時間を操作して(にせものの世界のなかで)お話をする。 でもそれは、誰かを喜ばせることのできる。ちょっとした手品なのだ、と教えてもらったような気がした。

Posted byブクログ

2017/08/24

「手品師の舞台は、演芸小屋や劇場にかぎらない。私たち手品師は、この世のどんな場所でも、指先からコインをひねりだし、カードを宙に浮かせ、生首のまま冗談をとなえつづけなければならないのだ。いうなれば私たちはみな、そろいもそろって、目に見えない六本目の指をもっている。手品師たちのその見...

「手品師の舞台は、演芸小屋や劇場にかぎらない。私たち手品師は、この世のどんな場所でも、指先からコインをひねりだし、カードを宙に浮かせ、生首のまま冗談をとなえつづけなければならないのだ。いうなれば私たちはみな、そろいもそろって、目に見えない六本目の指をもっている。手品師たちのその見えない指は、この世の裏側で、たがいに離れないよう、密かに結ばれあっているものなのだよ」 ファンタジーの名手いしいしんじの傑作長編。 山間の村にただひとつあるプラネタリウム。そこに捨てられた双子のテンペル・タットルを中心に悲喜こもごもの人間模様を綴る。 剣も魔法も出てこないけど、この人の書く本はすべからくファンタジーだと思う。 どこかにありそうでない街。現実離れしてるようで、現実を引き継いだ世界観。よい人もいれば悪い人もいる、正直者もいればずるい人もいる。金持ちも貧乏人も、大人も子供も、強者も弱者も……そして彼の作品の主人公は普通の人より少し不器用で、少しだけ世界からずれたところに存在する者。 プラネタリウムに捨てられた双子は泣き男に拾われ育てられ、銀色の髪の美しい少年に成長する。 毎年工場では父親のわからない子供が産まれ養護施設に預けられる。煙突が吐き出す煙のせいで空は曇り、星は見えない。労働者は皆疲れている。そんな村で唯一、村人の娯楽として偽の星空を映し続けるプラネタリウムでは様々な出来事が起きる。 十四歳になった時、テオ座長率いる手品師一座が村を訪れたことによって、二人はそれぞれ別の道を歩むことになるのだがー…… 優しくて哀しくて痛くて切なくて、いろんな感情で胸が一杯になる。 綺麗で楽しいばかりがファンタジーじゃない。 実際、作中では少なからぬ悲劇がおき、少なからぬ涙が流される。 時に、不幸に打ちのめされた人の心は絶望の闇で塗り潰されそうになる。 けれど 「くらやみなんです」 「もちろん、そこには何も見えません。見えないから、闇というのです。でもだからといって、そこに、なにもないとは、いえませんでしょう。なにかがあると感じるからこそ、われわれはきっと闇にひかれ、そして闇をおそれるのでしょうから」 作中泣き男が語るこの台詞こそ、本作の、ひいてはいしいしんじ作品すべてに通底するテーマを象徴する。 作者は目に見えないことやものを軽んじず、尊重し、あくまで純粋に向き合い、描き出そうとする。 哀しい過去を背負った不器用で真摯な人間達。 彼らが哀しみと折り合いをつけなんとかやっていこうとする姿勢が、自分が辛い時さえどん底の誰かをすくい上げようとする優しく気高い志が、「感動」の一語で括れない深遠な余韻を帯びて胸に迫る。 犬と兄貴のエピソードには思わず泣いた……。

Posted byブクログ

2017/06/17

ある村のプラネタリウムで拾われた双子のお話。 これはファンタジーなのだろうか、それともそうではないのか、と不思議に思う程、摩訶不思議なことだらけなものだったと思います。 泣き男が語る星の話は、普段はあまり興味のない分野なのですが、ひとつひとつ星には物語があるのだなと新たな発見が...

ある村のプラネタリウムで拾われた双子のお話。 これはファンタジーなのだろうか、それともそうではないのか、と不思議に思う程、摩訶不思議なことだらけなものだったと思います。 泣き男が語る星の話は、普段はあまり興味のない分野なのですが、ひとつひとつ星には物語があるのだなと新たな発見が出来たような気がします。また神話についてもっと知りたいとも思いました。 ふたごだからといって双子の括りにせず、分けてよく書かれているのでとても面白かったです。

Posted byブクログ

2017/01/06
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

こころから信じられる、そんな相手が、 "この夜"からいなくなってしまうお話。 本当は"この世"だが、 今作品には夜のほうがぴったりくる。 そばにいると確信するラストだが、 そうではないと私と感じた。 過去に読んだいしいしんじ作品と比較すると 主人公の二人が運命に翻弄されるばかりで、 本当は何がしたいのか動機がよく読み取れない。 残酷さと幸福が入り交じるが、 全体を通すと非常に哀しい。

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2016/06/10

雰囲気は良い。 良作感はあるが、話自体にメリハリがなく、読ませる感がない。 返却期限が来たため挫折。

Posted byブクログ

2015/09/22

二人の少年の成長譚。 目まぐるしく変わる話と世界観にあまり集中力が続きませんでした。 独特の突拍子も無いファンタジーのような世界観と話の構成がいまいち噛み合っていない感じがしました。もっと振り切れば良いのに。

Posted byブクログ

2015/09/22

号泣。 そして、私は星のギリシア神話を買いました。 やっぱりいしいしんじさんの物語はいいです。 「ファンタジー」って言ってしまうとその一言で片付いてしまうんだけど、なんというか、この世の地面から少しだけ足が浮いている感じ、この感じがたまらないのです。

Posted byブクログ

2015/06/17
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

再読。泣き男の感情が出るシーンは読んでて泣けるけどそれより何より安心します。その前があまりに理性的すぎたので...。読者としてはふたごへの愛情は疑わないし、唯一はっきり感情を出す場面が場面なだけによけいに悲しいのだけれど。 自分の仕事を見つけられるというのは幸せなことだなあ。

Posted byブクログ