八月の路上に捨てる の商品レビュー
きっと敦は離婚後の自分がどうなるかがホントのところはまだわかっていない。それを知ってる水城さんは敦から離婚の経緯の話を引っ張り出すけど、自分が辿ったホントのところは教えてあげず、うまくはぐらかす。敦と知恵子はもはや相手の何が気に入らないのかわからずに、不愉快さを持ち寄る。敦が水城...
きっと敦は離婚後の自分がどうなるかがホントのところはまだわかっていない。それを知ってる水城さんは敦から離婚の経緯の話を引っ張り出すけど、自分が辿ったホントのところは教えてあげず、うまくはぐらかす。敦と知恵子はもはや相手の何が気に入らないのかわからずに、不愉快さを持ち寄る。敦が水城さんではない他の誰かに相談をしていたらこの物語はきっと成立しないのだろう。敦が水城さんには浮気や離婚のことを話せたのはなぜなんだろう。実は好きだったのかな。そこまでオープンに話してもらって水城さんが相手にするわけないよなぁ。でも、水城さんみたいな人がいたらいいなぁ、と思う。 淳一と鮎子の何でも話し合える普通に楽しい関係を懐かしいなと思いながら読んだ。ずっとそのままなら幸せなんだけど……。オイラは気が付いたら臭い生ゴミみたいな扱いになってたけど。しまっていこうっ!
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自動販売機の補充の仕事で同じトラックで決められたルートを廻る水城さんと敦。水城さんが配置転換でトラックを降りることになった八月最後の一日を描いた作品。水城さんはバツイチ。敦は結婚しているが明日には離婚届を出すタイミングとの設定。水城さんと敦との仕事中の会話を中心に話しは進む。淡々...
自動販売機の補充の仕事で同じトラックで決められたルートを廻る水城さんと敦。水城さんが配置転換でトラックを降りることになった八月最後の一日を描いた作品。水城さんはバツイチ。敦は結婚しているが明日には離婚届を出すタイミングとの設定。水城さんと敦との仕事中の会話を中心に話しは進む。淡々としてテンポも心地よい。水城さんの言葉は常に微妙な雰囲気で、はっきりした癒しも慰めも励ましないのだが、強さと優しさが感じられて素敵だ。
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「八月の路上に捨てる」と「貝からみる風景」の二本。 八月〜の方は自販機の管理会社かなんかの社員二人の話。男の方が離婚間近で、妻とのやりとり、経緯を回想として挟みながらトラックであちこち回ってる。 赤塚図書館
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暑い夏の一日。 僕は30歳の誕生日を目前に離婚しようとしていた。 愛していながらなぜずれてしまったのか。 現代の若者の生活を覆う社会のひずみに目を向けながらその生態を明るく軽やかに描く。
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うまくいかない人生。 自分では一生懸命生きてるつもりでも至らなさには気づけないまま取り残される。 孤独の悲しみと、もう一つの話、貝からみる風景の二人だけの切りとられた世界との対比。 生きるって難しい。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
図書館にて。 タイトル、美しいですね。 初めて伊藤たかみの本を読みました。 女性かと思ったら男性作家でした。 (有川浩を初めて手に取ったときもヒロシと読んで男だと思ってた) 「八月の路上に捨てる」と「貝から見る風景」の2編収録。 「フィクションの本を読んだ」って感じではなくて、「ひとりの人生を見せられた」という感覚で、ものすごくリアリティを感じました。 まず、八月の~から。 自動販売機の補充の仕事をしている「明日誕生日で、明日離婚届を出す」敦と、バツイチで二人の子持ちの「今日で自動販売機の補充の仕事を辞める」水城さんが、仕事をしながら、お互いの結婚、男と女について語り合う形で展開する。 敦と別居中の妻の智恵子との生活はジュクジュクとした傷口を見ているようで痛かった。 お互いに夢を抱き、一緒になり、敦は映画の脚本家、智恵子は雑誌の編集者を目指す。 その夢に向って進んでいたが、それがうまく行かなくなったとき、お互いに苛立ちはじめる。なのに話し合うこともせず、2人は本題を避けてしまう。そして歯車がかみ合わなくなり、最終的に傷つけあう。 敦は浮気に走り智恵子とは別居することになる。 別居の始まる前日に、敦と智恵子はデートをする。かつてのデートコースを周り、思い出を捨ててまわるための行脚のようなデート。 別れを決意した途端に、こんなにも笑え、平和だとも感じてしまう。でももう戻れない。そんなことがリアルな感情として伝わってきました。 最終的には別居後、浮気相手とも破局し、敦はひとり。 そういうのもよくあるよね。 ジュースのケースを運ぶ際に使う荷車を「ネコ」と呼び、お金を詰める袋のことを「ドンゴロス」という名前だということを初めて知った。 貝の~の方は、八月~とは対照的な夫婦で、同じ方向を向き、同じものを欲する。 ベッドサイドのレースのカーテンが夜風にふかれ膨らむ。その中にすっぽり包まれるように入ることを、貝の中にいるようだという。なんて素敵な表現なのだろう。 そして、私も子供の頃、その中に入って寝るのが好きだったなぁと思いだした。顔をなでるカーテンの裾の感触を覚えている。 2作とも人生の一部分を切り取ったリアルな人生を感じられる作品でした。 2016 29冊目
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第135回芥川賞 夫婦もの。離婚する。 自販機の缶ジュースを補充するバイト。 朝から、1日でストーリーは終わる。 同掲の作品「貝からみる風景」は、この作品とは対照的な話し。 お互いに、30歳の主人公(夫) 何気ない日常を繰返して来たはずだが、何かがずれると、「離婚」という事に...
第135回芥川賞 夫婦もの。離婚する。 自販機の缶ジュースを補充するバイト。 朝から、1日でストーリーは終わる。 同掲の作品「貝からみる風景」は、この作品とは対照的な話し。 お互いに、30歳の主人公(夫) 何気ない日常を繰返して来たはずだが、何かがずれると、「離婚」という事になってしまうのか? 無花果カレーライス 133E(2005) 候補 ボギー、愛しているか 134L(2005) 候補
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2組の対照的な夫婦の2つの短編。 表題作は、離婚を決めた主人公が、仕事中に、離婚へ至るまでの経緯を話すというストーリー。 夫婦が壊れて行くのには、理由があるようでないようで、そんな様子が良く表現されていたなと思いました。 貝から見た風景の主人公の心理描写が好きでした。父を思い...
2組の対照的な夫婦の2つの短編。 表題作は、離婚を決めた主人公が、仕事中に、離婚へ至るまでの経緯を話すというストーリー。 夫婦が壊れて行くのには、理由があるようでないようで、そんな様子が良く表現されていたなと思いました。 貝から見た風景の主人公の心理描写が好きでした。父を思い、先の自分をそこに重ねてか寂しくなる様など、うーんという感じ。これは、男性的なのかなと思います。女性はもっと現実的かも。 初読みの作家さんでしたが、すごく好きな作家さんを見つけた気分。他の作品も読んでみようと思います。
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カーテンが風でふわっと膨らんで、その中に頭がすっぽり入った状態を、「貝の中にいるみたいだ」というのは、素敵な例えだなと思う。何かの中にいる感覚って安心する。
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