梅原猛の授業 仏教 の商品レビュー
中学生への授業を書籍化したもののため、とても読みやすかった。 宗教は必要なのか?という問いに対して、著者は、若い頃は無神論者で、魂の不死や、死後の世界なんてない。人間は死んだら終わり。何もない。と思っていたそうだが、それから40年、著者は宗教に対して寛容になった。何か一つの宗教...
中学生への授業を書籍化したもののため、とても読みやすかった。 宗教は必要なのか?という問いに対して、著者は、若い頃は無神論者で、魂の不死や、死後の世界なんてない。人間は死んだら終わり。何もない。と思っていたそうだが、それから40年、著者は宗教に対して寛容になった。何か一つの宗教に傾倒することはないが、ドストエフスキーが言うように、あの世を信じる宗教がなかったら文明というものもなかったであろう。幻想かもしれないあの世を仮想することによって、文明を創造してきた人類の歴史を前より好意的に見ることができるようになったそう。かつて近代西欧では、カント、ヘーゲル、マルクスあたりが、神なしで、道徳、理性だけで人類はいけるという方向性を打ち出したが、なかなかそれだけで人間を統制することは難しく,マルクスによって考えられた社会主義は見事に崩壊した。と言っている。 私も、宗教を信じてはいないが、宗教が果たした文明への役割ということを考えたことがなかったので、そういう考え方もあるのかと思った。 中学生同士のディベート形式での対話も思考のヒントになってよかった。 本書は2006年に文庫化されており、当時は、アメリカの同時多発テロや、イラク戦争が起きていた頃で、その頃、梅原先生が世界をどう見ていたかが書かれているが、今の時代に梅原先生がご存命だったら、世界の右傾化、プーチン、ネタニヤフ、トランプ政権の力による横暴な武力行使についてどう思われるのか聞きたかった。 以下、メモ。 小麦メインの西洋は、人間1人あたりに必要な耕地面積が広く,どんどん森を切り開いていくしかないため、人間中心主義的。稲作メインの東洋は、耕地面積に対する生産高が高く、森と共存することで、灌漑しやすくなったり、降水は森や水田に蓄えられ、十分に利用された後に海に帰るという循環ができていたため、共生的な思想。 ヤスパース 狩猟採集時代に生み出せなかった余剰の富を、農業で生み出せるようになると、5000年前くらいから都市文明が起こってくる。(メソポタミア、エジプト) 豊かになると、悪いやつも現れ、心が卑しくなり、世の中が乱れる。乱れた世の中に精神的原理を与えようとして、世界の四聖が生まれる。(ソクラテス,キリスト、釈迦、孔子) 現代においても、この四聖が支配しているが、工業文明が発達しすぎた今、豊かすぎる現代において、人間は物質的欲望にふけっている。それではいけないんじゃないか。そのような人間をコントロールする新しい精神的原理が必要ではないか、キリスト,仏教だけではいけないんじゃないかというのがヤスパースの考え。
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日本の基礎を作った聖徳太子が重んじたのは、法華経だった。これは平安時代に最澄が天台宗として引き継ぎ、鎌倉時代には日蓮の教えにつながっていく。鎌倉時代は、今の日本で最も栄えている宗派が生まれた時代だと筆者は言う。それが浄土宗、禅宗、それから日蓮宗。やがて禅宗は室町、江戸と幕府の厚い保護を受ける。
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ずっと積読されていた本。20年経ってやっと手に取った感じです。洛南中学校で12回にわたって行われた授業をまとめたものらしく、とても優しく、宗教と仏教全般について語ったもの。個人的には日本に色々ある仏教の宗派と自分の菩提寺の宗派である曹洞宗の位置づけが判ったような気がして良かった。全12回の構成は 1.なぜ宗教が必要なのだろうか 2.すべての文明には宗教がある 3.釈迦の人生と思想を考える 4.大乗仏教は山から町へ下りた 5.生活における仏教の道徳 6.討論:人生に宗教は必要か 7.日本は仏教国家になった 聖徳太子、行基、最澄 8.空海が密教をもたらした 9.鎌倉は新しい仏教の時代(1) 法然と親鸞 10.鎌倉は新しい仏教の時代(2) 日蓮と禅 11.現代の仏教はどうなっているのか 12.今こそ仏教が求められている という構成。道徳を身につけるためには宗教が必要。これからは文明の衝突になること。一神教と多神教、多神教である仏教と多神教の多様性を認める心。後は仏教の考え方、11の現代の仏教はどうなっているのかに書かれていたのは、先日読んだ「国家を超える宗教」と同じコンテクストだったような気がする。とても勉強になりました。
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どこかの中学校で梅原先生が講義したものをまとめたもの…すごいなぁ,というか,すごい内容だよ.なぜ人は宗教が必要かすごくよく分かる内容.
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梅原さん3人のお孫さんも通う洛南中学3年生に行った、2001年実施の前11回の授業と1回の討論会。 討論「人生に宗教は必要か」で宗教がなくても倫理や道徳があれば十分ではないかという意見にわたしもそう思ってるのだが、切り花がすぐ枯れることに例えて宗教という根があるから道徳という花が...
梅原さん3人のお孫さんも通う洛南中学3年生に行った、2001年実施の前11回の授業と1回の討論会。 討論「人生に宗教は必要か」で宗教がなくても倫理や道徳があれば十分ではないかという意見にわたしもそう思ってるのだが、切り花がすぐ枯れることに例えて宗教という根があるから道徳という花が咲き続けるなどの例をもって両者の密接関係を説明してくれた。この疑問はまだ解けていないのでこれからことあるごとに振り返ろうと思う。 「現代は思想ではなく文明の対立時代になっており、その観点でみると世界の諸問題が少し見えてくる」も確かに。
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小学生中学生で、もっとも重要なことが教えられていない。 道徳。人の道。 してはいけないこと、すべきこと、そういうことがちゃんと教えられていないのが、今の日本の教育の大きな欠陥です。……… そんなところから、始まる授業の記録です。 中学校3年生に向けて、半年間に渡って続けられたそうで、 読みながら、本当にうらやましくなりました。 …もうひとつ大事な徳があります。それは忍辱(にんにく)です。忍辱は忍耐とはちょっと違う。忍辱とは辱(はずかし)めを耐えろということ。皆さん、侮辱されたり、軽蔑されることがあるだろう。それに耐える。これは大変です。そういう忍辱が足りないために、電車のなかで席を詰めてと言われたのに腹を立てて人を殺したということが最近あった。これは忍辱がゼロなんだ。 人生には、失敗して死にたいと思うことが必ずあるよ。そのときに暴発して犯罪を犯したり自殺をしたりするのは忍がたりない。じっと耐え忍ばなくちゃならない。そういうときが人生には何回かある。そのときには忍んで、辱めに耐える。これが大事です。 こんな言葉を14歳でもらえたら、人生違ったものになるよね。 授業は聴けずとも、本は読める。 何歳からでも 人生は立て直せる。 中学生向けの授業がベースなので、 とても平易な言葉で、例えも豊富で分かりやすいです。 なにより、子どもたちに伝えたいんだ!という愛情を感じる言葉がいっぱいです。
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梅原先生が2001年に中学生に行った全12回の「宗教」の授業。仏教を中心としてキリスト教やユダヤ教、イスラム教などの宗教。そして「宗教のない文明はない」ということでハンチントンの『文明の衝突』や直後に起こった9.11を引用しながら「世界は多を含むことによってすばらしい」と諭してい...
梅原先生が2001年に中学生に行った全12回の「宗教」の授業。仏教を中心としてキリスト教やユダヤ教、イスラム教などの宗教。そして「宗教のない文明はない」ということでハンチントンの『文明の衝突』や直後に起こった9.11を引用しながら「世界は多を含むことによってすばらしい」と諭している。仏教のみならず人類の「いちばん大切なこと」かもしれない。
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仏教について、お釈迦様から日本における仏教の広がりについて、とても分かりやすくまとめられている。 宗教が必要かは分からないが、道徳の観点から必要というよりは、現世を生きる人間の心の拠り所、あるいは軸となる思想は必要だと思う。その点、仏教の考え方はまっとうだし、本質をついている気がして、それなりに好きなのだが、本を読んでいると、やはりこれからの21世紀以降の社会には、もはやそぐわない点も多く、もっと別の考えが必要なのではないかと実感する。キリスト教も仏教も現存の宗教が機能するのは2000年までと聞いたことがあったが、その通りだと思いだされた。
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哲学者の梅原猛が、中学生に向けておこなった授業をまとめた本。 単なる仏教概論ではなく、現代という時代に生きる知恵を仏教から取り出そうという意図で書かれています。 第6回の授業では、「人生に宗教は必要か」というテーマで討論がおこなわれています。そのなかで、一人の中学生が、宗教によ...
哲学者の梅原猛が、中学生に向けておこなった授業をまとめた本。 単なる仏教概論ではなく、現代という時代に生きる知恵を仏教から取り出そうという意図で書かれています。 第6回の授業では、「人生に宗教は必要か」というテーマで討論がおこなわれています。そのなかで、一人の中学生が、宗教によって戦争が引き起こされているという問題を提起しています。また第12回の授業の直前にアメリカで同時多発テロが起こったことを受けて、最後の授業でも異なる宗教どうしの共存の問題に触れられています。 宗教的多元主義はいうまでもなく重要な問題ですが、著者はイスラム教とユダヤ教、キリスト教の対立が一神教どうしの対立だと主張し、正義よりも寛容の徳を尊重する仏教の慈悲の精神は、今後ますます重要になると論じています。仏教が「慈悲の宗教」だということはわかるのですが、キリスト教などの一神教を「怒りの宗教」と規定して仏教と対比させることには首をかしげたくなります。そもそも、そうした仏教の言上げが宗教的多元主義の精神とは相容れないのではないかという疑問を感じます。
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空海が建てた最古の私立学校「綜藝種智院」の流れをくむ京都・洛南中学校にて、2001年に行われた、梅原猛氏による宗教講義録。 仏教の歴史的流れを知るのに最適。 主だった宗派の教義の特徴も知ることができ、自分の考えていたことが、知らず知らずどの仏教の影響を受けて出来上がったものかがわかって、自分も歴史の流れの上にいるのだな〜と感じた。 それぞれの宗派ごとに本山やお寺も紹介されていて、京都にいた頃あまり知識なく訪れていた寺院が急に鮮やかに思い出されたのが個人的に楽しかった。 ただ、ドストエフスキーのカラマーゾフの兄弟を持ち出して、「道徳に宗教は欠かせない」というのは、中学生にわかりやすく端的に示すためだったとは思うけれど、飛躍しすぎかな、と。 また、「寛容と慈悲、自利利他の精神をもつ多神教が、排他的一神教の争いが絶えない世界に今こそ必要。」というのは結局「どの宗教が優秀か」という問いから発せられてるという点で、梅原氏のいう「排他的一神教」と変わらないんじゃないかな、と思う。
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