人のセックスを笑うな の商品レビュー
難解な独特の詩を読んでいるよう。評価の分かれる作品だと思った。 確かに短く表面上は読みやすいが、全然関係ないと思える1文に色々な仕掛けがあって、じわじわ効いてくるような作品。 読者の、行間をすくい取れる読解力、経験値が問われそう。 解説は…さぞかし書きにくかった事であろう。
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2023.1.12読了 タイトルのインパクトから記憶にずっとありながら未読のままだった。 若者と不惑(40歳)手前の女性との不倫の始まりから終わりまでが描かれているといえばどこにでも転がっていそうな、それこそ凡百のストーリーとも思うが、そこにありがちな嫉妬や悔恨や執着等の情念...
2023.1.12読了 タイトルのインパクトから記憶にずっとありながら未読のままだった。 若者と不惑(40歳)手前の女性との不倫の始まりから終わりまでが描かれているといえばどこにでも転がっていそうな、それこそ凡百のストーリーとも思うが、そこにありがちな嫉妬や悔恨や執着等の情念、どろどろしたマイナスの嫌な感情はほとんど見受けられず、だから修羅場も見苦しく暴れる人物も現れず、ただ初恋のように淡々とさっぱり乾いたまま通り過ぎ、だがざっくり大きな傷跡だけは疼き続けていて、それが切なくもあり甘美でもあって、なにやら新鮮で大きめの感動に包まれた。 平易でシンプルなのに必要な情報が過不足なく全てある文章。 センスがいいという言葉はこういう時に使われるべくしてあるのだろうと思った。
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"オレのファンタジーにぴったりな形があるのではない。そこにある形にオレの心が食い込むのだ。" "電話なんて温度だ" 好きな言葉がたくさんあって素敵だった。
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ナオコーラ氏の代表作であり処女作である本作。 ファンとして読めていないことがずっと気がかりだったので、ようやく読むことが出来てとっても嬉しい。 いくつかナオコーラさんの本を読んできているけれど、初期の作品だからか、いわゆる「らしさ」のようなものは少し薄く感じたけど、良かったな...
ナオコーラ氏の代表作であり処女作である本作。 ファンとして読めていないことがずっと気がかりだったので、ようやく読むことが出来てとっても嬉しい。 いくつかナオコーラさんの本を読んできているけれど、初期の作品だからか、いわゆる「らしさ」のようなものは少し薄く感じたけど、良かったなぁ。 美術系専門学校に通う1主人公磯貝が、20歳上の講師ユリと恋愛をする物語。 話を読んだうえでインパクトのあるこのタイトルを見返すと、なんだか胸にくるものがある。 顔に好みがあると思っていたが、恋をしてみると、形に好みがないことがわかる。好きになると、その形に心が食い込む。 なんて素敵なことば選び。感動してまう。。 肉をあまり食べないユリは、鍋に大容量の肉を入れた磯貝に対して、「ああ、なんてことするの」と叫ぶシーン。 「食べられないでしょ」 「食べられるよ。オレ、若いから」 この「若いから」の部分がまた気に障ったらしく、ユリは、もう、とさらに怒った。怒るとかわいく見えるので、もっといたずらしたくなってしまう。ニノウデの下の肉をつかんでもんでみた。 「なんなの」 ユリは体をよじった。 「煮立ちすぎだから、止めよう」 オレはコンロの火を止めて、それからユリの後ろに座って、ぎゅっと抱きかかえてみた。 お互い意識しないでいようとするんだけど、フツウのカップルのようにバカなことを言い合うだけで最高に楽しくて幸せなんだけど、ふとした時に感じてしまう年齢や立場という些細なようで無視できないものに引っかかる切なさ。 相手を心から愛しく思っているからこそ、抗えないことがあって苦しい。 それから、磯貝がユリの夫である猪熊と食事をするシーン。 猪熊は、ビールがどう出来るかを知っているか尋ねる。 「小麦でしょ?大麦だっけ?」 ユリが聞く。 「何言ってるの。湧いてくるんだよ」 「え?」 「恵比寿の方にね、大きい池があって。きれいだよ。黄金色でね。そこの方から、ふつふつと炭酸が浮き上がってきてるんだ」 真面目な顔で猪熊さんは言う。オレは笑った。(中略) 「魚は棲んでないの?」 「もちろん、いるよ。ビールウオっていうんだよ」 「そのまんまじゃない」 声を立ててユリは笑う。 「いつも酔っ払っているんだ。泣いている魚もいるし、笑っぱなしの魚もいるよ。説教好きの魚もいてね、そいつは嫌われてる」 何気なさを自然と描けるところが大好きだ。 何も起こらなくて良い。 だらだらとリアルに生きている登場人物を眺めてたい。
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【2022年79冊目】 するっと読めそうだなと思って手に取り、あっさり読了。表現は確かに多彩で豊かだなぁと思う反面、ストーリー的にはそこまで…と思ったり。衝撃を受ける感じではなかったのと、タイトルが微妙に合ってない気がしました。
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タイトル衝撃的だけど、内容はすごく繊細。 沸点低いけど、ちゃんと好きなんだなあって伝わる、磯貝くんがかわいい。 楽しかった夏が終わって秋が来たせつない感じ。 好きが、恋が冷めてそれすらも大切に思うそんな話
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主人公の秋に対する気持ちや寂しさに対する感情が共感できた 「無理に解消しようとしないで、じっと抱きかかえて過ごしていこう。」って 「花火の火は気まぐれに色を変えながら、違う花火に移り続けていく。」 でも今までの全部があったから今があるわけで 過去の全ては今の全てっすね〜てしみじ...
主人公の秋に対する気持ちや寂しさに対する感情が共感できた 「無理に解消しようとしないで、じっと抱きかかえて過ごしていこう。」って 「花火の火は気まぐれに色を変えながら、違う花火に移り続けていく。」 でも今までの全部があったから今があるわけで 過去の全ては今の全てっすね〜てしみじみ思いましたんこぶ
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何気ない日常だけど、例えが面白くて、文も繊細で すごく読みやすかった。 感じ方や解釈が人それぞれな作品だと思う。 友達や好きな人にどう感じたか聞いてまわりたくなる作品。 p60〜61の文が刺さりすぎて 何度も読んでる。
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題名から受ける衝撃ほどはなく、むしろ美しい文体な印象。 絵画の講師と生徒の恋愛。ただセックスも絵画の上達もない、作り過ぎた鍋に蓋をしたように先の見えない2人の関係性… 危うさを含むリアリティ 読みやすかったです
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秋は好きですか?オレは夏が好きだから、秋は『終わり』のイメージです。楽しいことが終わって、ちょっと切ない。でもその、きゅんとする感じも悪くねえかなって 大事な人と抱き合って新しい年を迎えるということは、陳腐なようでいて、実は奇跡だ。布団の国の王様とお姫さまの気分で眠った。 鍋...
秋は好きですか?オレは夏が好きだから、秋は『終わり』のイメージです。楽しいことが終わって、ちょっと切ない。でもその、きゅんとする感じも悪くねえかなって 大事な人と抱き合って新しい年を迎えるということは、陳腐なようでいて、実は奇跡だ。布団の国の王様とお姫さまの気分で眠った。 鍋に蓋して置いて、知らないふりしているところが、二人の先々の暗示みたいだけどね オレじゃ力にならないかな?家に行って、親子丼作ってあげる。苦しい話だったら、避けてもいいよ。ただ側にいてお茶を飲んでよ オレはユリの顔を思い浮かべた。オレには彼女がおばあちゃんになった時の顔は、わからないんだな。でも、最後に会ったときのユリの笑顔は、残っていくんだな。しばらくしてから答えた。会えなければ終わるなんて、そんなものじゃないだろう 花火の火は気まぐれに色を変えながら、違う花火に移り続けていく。
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