ぼくのメジャースプーン の商品レビュー
純粋な悪意に向き合ったとき、それに対抗する特別な力を持ったとき、人はどうするでしょうか? 小学生のぼくは何を想い、考え、誰のために、どう言葉を囁くのか。 賢くて優しい男の子のお話。 前作とリンクする登場人物(秋山先生他)が数人出てくるので、それを気にしながら読むのも一興。
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「子供たちは夜と遊ぶ」の秋山先生,「凍りのくじら」のふみちゃん,その他にもこれら二つの作品に登場した人たちが顔を出してくれて嬉しいです。 「ぼく」の思いが切ない。優しさのある作品です。
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"愛はエゴである"とか"人間誰だって一番可愛いのは自分自身"とか。 そんなフレーズは珍しくもないし、実際私がそれを思った事も何度もある。 そして"あの人"は言う。 「責任を感じるから、その人が悲しいことが嫌だから。...
"愛はエゴである"とか"人間誰だって一番可愛いのは自分自身"とか。 そんなフレーズは珍しくもないし、実際私がそれを思った事も何度もある。 そして"あの人"は言う。 「責任を感じるから、その人が悲しいことが嫌だから。そうやって、『自分のため』の気持ちで結びつき、相手に執着する。その気持ちを、人はそれでも愛と呼ぶんです」 ふみちゃんの為じゃない、結局は自分の為なんだと泣く"ぼく"の涙は、それでもとても温かい。 そこに流れるのが例えエゴだとしても、彼女があんなに傷つかなければ"ぼく"が必死になって"そいつ"と闘う事もきっとなかったのだから。 "彼ら"の明るい様子に思わずじわっと来て、最後でまた号泣。 辻村さんの作品は毎回私の琴線を怖いくらいについていて、しかも前作と比較して想像もつかないストーリーを持ってこられるので新作が出る度に驚かされる。 世界が反転するような衝撃ではなく優しくて温かい何かがゆっくり氷を溶かしていくような、そんなカタルシス。 きっとこれから何度でも読み返してしまう。 そんな極上の物語。
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