わが悲しき娼婦たちの思い出 の商品レビュー
日本の小説家も世界へ影響を与えていることを考えさせられる。日本の娼婦という幻影的な観念をマルケスが描き切ったところが何ともエロチックで美しい。
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処女と交わることを自らのの誕生日のお祝いに思いついた老境の新聞記者。 なじみの娼館で、薬により眠らされた少女を準備してもらいますが、90の齢にして、はじめて彼は恋心を知ります。 寝ている娘に名前を与え、本を読んで聞かせ、あまつさえ生活をともにする空想を見る…。一方、現実の彼女に...
処女と交わることを自らのの誕生日のお祝いに思いついた老境の新聞記者。 なじみの娼館で、薬により眠らされた少女を準備してもらいますが、90の齢にして、はじめて彼は恋心を知ります。 寝ている娘に名前を与え、本を読んで聞かせ、あまつさえ生活をともにする空想を見る…。一方、現実の彼女については娼館の主の口から伝え聞くばかりで、老人は一人よがりの愛の妄想を発展させます。 少女を買うのは悪徳だし、老人の恋だって一方通行の孤独な想い。世の中にもどこか不穏な雰囲気が漂います。新聞記事を検閲官に揉み消され、軍部が市民に目を光らせ、主人公はほとんど無一文になってしまう…。 それでも、死を目前に控えた年齢で人生の素晴らしさに目覚めた男の、生きる力漲る作品でした。
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「満九十歳の誕生日に、うら若い処女を狂ったように愛して、自分の誕生祝いにしようと考えた」 冒頭でこうこられたら引き込まれずにはいられません。 売れないコラム書きの老人がなじみの女将に見繕ってもらった少女は、老人の前でただただ眠る。その姿に、肉欲を越えて深い情愛をもつ老人の話。 ラ...
「満九十歳の誕生日に、うら若い処女を狂ったように愛して、自分の誕生祝いにしようと考えた」 冒頭でこうこられたら引き込まれずにはいられません。 売れないコラム書きの老人がなじみの女将に見繕ってもらった少女は、老人の前でただただ眠る。その姿に、肉欲を越えて深い情愛をもつ老人の話。 ラテンアメリカ文学の老人のまあなんと元気なことか。この小説の元となった川端康成「眠れる美女」には秘め事の背徳と老いの哀しさが出ていたのですが、そんなもの吹き飛ばすラテンパワー。 カサレスの「豚の戦記」でも老人と若い女が結ばれるし、プイグの「南国に日は落ちて」の姉妹は「だってあの頃は75歳、ほんの小娘だったのよ、でも今は81歳。もう小娘じゃないわ」なんて会話を交わします。 本来なら「眠ったままの少女とそれを見る老人の恋愛」など決して成り立たないものを成り立たせているのが小説家の面目躍如。 またこの主人公の皮肉めいたユーモラスさがくすりと笑えます。
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ガルシア=マルケスを読むといつも同じ感想。 つまらないとは思わないけど、う~ん、やっぱ好みじゃないなあ~、と。 回想録という体裁だからなのか、翻訳のせいなのか、ガルシア=マルケスの特徴なのか、どうも場面の転換にいつも戸惑ってしまう。そこで、あれ?と読む流れが停留して、ちょっと気...
ガルシア=マルケスを読むといつも同じ感想。 つまらないとは思わないけど、う~ん、やっぱ好みじゃないなあ~、と。 回想録という体裁だからなのか、翻訳のせいなのか、ガルシア=マルケスの特徴なのか、どうも場面の転換にいつも戸惑ってしまう。そこで、あれ?と読む流れが停留して、ちょっと気分がそがれる、という繰り返し。これはやはり、私がそもそも翻訳作品が苦手だからなのか??作品に入りこめてないという証拠なのか?? 前半はイマイチだったが、後半なかなか面白かったのになあ~。 川端康成の「眠れる美女」に着想を得たということなので、こちらも読んでみようとは思う。
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(再読済) 川端『眠れる美女』にマルケスがインスパイアされて書かれた本。 2冊セットで読書会の課題本。
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コレラ時代の愛と比べて、非常に読みやすかった。 冒頭に引かれている眠れる美女を読んで、比較してみたい。 (2011.6)
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「愛」を確信する主人公の言動は、どう見ても独りよがりな「妄想」にしか思えない。 これは「愛」を喜ぶ人生賛歌という見せかけの、「愛」の不在を強烈なブラックユーモアで痛烈に描く人生哀歌のように思えてならない。 その真偽が判然としない曖昧さが、この物語を深読み(時に誤読)させる面白...
「愛」を確信する主人公の言動は、どう見ても独りよがりな「妄想」にしか思えない。 これは「愛」を喜ぶ人生賛歌という見せかけの、「愛」の不在を強烈なブラックユーモアで痛烈に描く人生哀歌のように思えてならない。 その真偽が判然としない曖昧さが、この物語を深読み(時に誤読)させる面白さを担保しているが、もしこの主人公のように老境に至る者が、自己満足的な妄執からでしか明日を生きる活力を得ることが出来ないとすれば、随分哀しい話だと思う。 川端康成の『眠れる美女』と併せた感想の詳細→http://takatakataka1210.blog71.fc2.com/blog-entry-26.html#more
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
【概要・粗筋】 90歳の誕生日の夜を処女とセックスして過ごしたいと思った「私」は昔なじみだった娼家の女将に斡旋を依頼する。今まで自らの醜さを理由に恋することを諦めていた「私」は、90歳にして14歳の乙女・ガルガディーナに恋をする。馬面で馬並みの巨根をもつ老記者と眠れる処女との間の奇妙な恋愛小説。ノーベル文学賞作家G・ガルシア=マルケスの21世紀第一作目。 【感想】 この作品は、『百年の孤独』『予告された殺人の記録』のようなマジックリアリズムは影を潜めている。だから、これらより読みやすい。けれど、今度はどんな奇妙な世界を見せてくれるのか?という私の期待は裏切られた。 読んでいて主人公の「私」は到底90歳には思えない。その歳にもなって嫉妬と疑心から娼家の一部屋を滅茶苦茶にぶち壊すなんて普通考えられない。恋の力の凄さは老いをものともしない。「人は自分の内側から老いを感じるのではなくて、外側にいる人たちがそう見なすだけの話(P109)」とあるが、主人公はそれを体現している。 私は老人になっても「ある日突然切迫した性的欲望に襲われ(P17)」たりするものだろうか?
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ガルシア=マルケスの短編小説。乾いたような湿ったような。孤独で幸せで物悲しく、可笑しいような。そんな人生の物語。
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「満九十歳の誕生日に、うら若い処女を狂ったように愛して、自分の誕生祝いにしようと考えた。」というとんでもない一文から始まる物語。 しかし老人は少女を起こせないまま、彼女と添い寝をして一夜を明かす。 その日から、眠ったままの少女とそれを見守る老人の逢瀬が重ねられるようになった。 ...
「満九十歳の誕生日に、うら若い処女を狂ったように愛して、自分の誕生祝いにしようと考えた。」というとんでもない一文から始まる物語。 しかし老人は少女を起こせないまま、彼女と添い寝をして一夜を明かす。 その日から、眠ったままの少女とそれを見守る老人の逢瀬が重ねられるようになった。 意外にも、元気な老人には老獪で嫌らしいところが全くない。 『わが哀しき娼婦たちの思い出』という過去を振り向く寂しげなタイトルだけど、老人は90歳になってもまだまだ元気に前を向いている。 耽美なお話なのかと思っていたけど、明るいまま読み終われた。
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