影武者徳川家康(下) の商品レビュー
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著者の作で最初に読んだのが、本作。歴史、時代小説家と言えば、司馬遼太郎をあげる人は多い、自分もそう思うが、この本を読んで放心した。その後、著者の殆どの作品を読んだ。 著者は元々、脚本家。師事していた寺田寅彦がなくなった後、小説を書き始め、急逝したために作家になってからの実働は僅か5年。ある意味、このジャンルで言えば司馬氏より、凄い本を書いた人なのかもしれない。 著者の作品の根底に流れるテーマ、重要は登場人物には、封建時代の階級社会の外の人々がある。道々の者、傀儡子、山の民。そして吉原の人々。関ヶ原の戦いの中で、家康は命を落とし、影武者だった者が、江戸時代の礎をつくるという物語、その話の壮大さに驚くが、著者が追っていったのは、何だったのだろうか。 以前、著者が通ったお店に行ったことがあるが、とても自由で、和やかな、居心地の良いお店だった。
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読み切った! うっかり終盤の酒宴のくだりを通勤途中の電車内で読んでしまって、ハンカチを目に当てつつ…となってしまいました。。 下巻ではついに家康(二郎三郎)が避けたいと思っていた大阪の陣が起こってしまい、顛末とその後が描かれています。 正直なところ、もう少し陰惨な展開を予想して...
読み切った! うっかり終盤の酒宴のくだりを通勤途中の電車内で読んでしまって、ハンカチを目に当てつつ…となってしまいました。。 下巻ではついに家康(二郎三郎)が避けたいと思っていた大阪の陣が起こってしまい、顛末とその後が描かれています。 正直なところ、もう少し陰惨な展開を予想していたので、結末が思いのほか優しいもので虚を突かれたようになりました。でも、良かった。 手元に置いて、折々読み返していきたい本です。 こういう本に出会うために、数をこなしているので。
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関ヶ原後の豊臣家問題。何故に15年間も攻め滅ぼさなかったのは子供の頃からの謎であった。滅ぼす気があるなら1611年の二条城会見は無駄でしかないし、豊臣家に見方しそうなのは加藤清正、福島正則ぐらいだから力押しで十分ぐらいにしか思っていなかったが、滅ぼしたくない二郎三郎と滅ぼしたい秀忠と言う仮説でみていくと妙な説得感があった。 平和を守るギリギリの攻防、しかし最後は豊臣家側の暴発で滅亡。フィクションとわかっていても最後まで迫力がありのめり込んでしまった。本当に面白かった。
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評価は5. 内容(BOOKデーターベース) いまや二郎三郎は、秀忠を自在に操る家康なみの智将であった。彼の壮大な夢は、江戸・大坂の和平を実現し、独立王国=駿府の城を中心に自由な「公界」を築くことだった。キリシタン勢力を結集した倒幕の叛乱を未然に防ぎ束の間の平安を得るが、秀忠の謀略から遂に大坂の陣の火の手が上がる。自由平和な世を願い、15年間を家康として颯爽と生き抜いた影武者の苦闘を描く渾身の時代長編。
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現実社会の中では、うまくいく筈がないとか、こんなことをやっている場合ではないとわかっていても、仕事としてやらなければならないという状況はいつでもある。 先が見えない人々の中で、将来このままではダメになるとわかっていながら、自分のできる範囲内で、最大限努力し、事態の変化を待つとい...
現実社会の中では、うまくいく筈がないとか、こんなことをやっている場合ではないとわかっていても、仕事としてやらなければならないという状況はいつでもある。 先が見えない人々の中で、将来このままではダメになるとわかっていながら、自分のできる範囲内で、最大限努力し、事態の変化を待つということはいくらでもある。いや、そういう場合の方が大部分だろう。 本書の主人公である徳川家康の影武者、世良田二郎三郎は、権力の頂点に立っているといえども、その点ではわれわれと同じである。 豊臣家の滅亡と二郎三郎からの権力奪取を狙う二代目秀忠と、豊臣家復興の機をうかがう大坂方の間に立って、ひたすら平和と共存を図ろうとするその努力は、三巻目に入って、時代の勢いに押し流されるかのように次第に後退を余儀なくされていく。 こうした苦さは、この社会の真実である。六十歳を過ぎて作家になったという隆慶一郎が描くその苦さは、作者が大人であるゆえんであり、そこがこの作品に重みを与えている。 そして最後の場面。 そのような人生が直ちに絶望に終わるわけではなく、そこにも人間の夢と幸福があるのだということも、作者の語る通りだと思う。
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全3巻完結編。面白かった。執着を持ち続けられなくなった二郎三郎。未だ執着(妄執かもしれないが)から逃れられない秀忠。老いと若さといういつの時代にも繰り返された相克が、下巻で描かれている。心を残しながら何もなすことができない老境にある人の諦念について、これまでにも様々書かれてきたが、本書はその中でも特筆に値し、滅びの中の美が丁寧に描写されている。風魔対柳生の忍者戦の描写もうまい。
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ボリューム満点だったけど、最後まで面白かったです。戦国時代を生き抜いた英雄たちが、老いて益々盛んな活躍ぶりは格好良かった。長く続く江戸の泰平の礎を築き上げた、っていう家康の偉業も、一般市民だからこそ、って考えれば結構すんなり腑に落ちるかも。とんだろくでなしと思わせられ続けた秀忠も...
ボリューム満点だったけど、最後まで面白かったです。戦国時代を生き抜いた英雄たちが、老いて益々盛んな活躍ぶりは格好良かった。長く続く江戸の泰平の礎を築き上げた、っていう家康の偉業も、一般市民だからこそ、って考えれば結構すんなり腑に落ちるかも。とんだろくでなしと思わせられ続けた秀忠も、結果的に家康から英才教育を受けたことになると考えれば納得。そんな諸々を考えながら、最後の酒盛り場面の美しさに胸を打たれつつ、読了させて頂きました。素晴らしかったです。連載時、リアルタイムで知っていながら手には取らなかった漫画版がちょっと気になります。でも「花の慶治」に比べて人気が劣るところを見ると、そっちはイマイチなのかもしれないですね。
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徳川家康が「関ヶ原の戦い」時に暗殺され、それ以降影武者が成り代わって天下を収める物語。歴史の流れに則り、話が構築されており、物語が目に浮かび楽しい。私の歴史観に膨らみをもたらしてくれた一冊。 風魔(家康方)、柳生(秀忠方)、猿飛佐助(真田方)など忍の活躍も楽しく、男子心をくすぐら...
徳川家康が「関ヶ原の戦い」時に暗殺され、それ以降影武者が成り代わって天下を収める物語。歴史の流れに則り、話が構築されており、物語が目に浮かび楽しい。私の歴史観に膨らみをもたらしてくれた一冊。 風魔(家康方)、柳生(秀忠方)、猿飛佐助(真田方)など忍の活躍も楽しく、男子心をくすぐられる。 【学】 思えば応仁の乱以降、世の中は長い長い戦乱の直中にあった。下克上思考、天下は回り持ちという武士の思考がこの長い戦乱を生んだのである。 魚を焼いて絞って油をとり、火の灯りの元にした。 秀吉は朝廷の権威を借りて天下を治めようと下ので朝廷にもつくしたし、京の町にふんだんに金銀をばらまいた。大阪に至ってはほとんど秀吉が作った町だ。ゆえ、大阪人の太閤贔屓、徳川、江戸嫌いは少しのことでは変わらない。
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関ヶ原の戦いの合戦中に、徳川家康が、西軍石田三成の配下の忍者に殺されたため、その影武者がその後15年に渡って徳川家康に成り代わって生きていくという、設定で書かれた歴史物語です。 関ヶ原の戦いを前後して、徳川家康の趣向が変わっている等、この本の中には、影武者に変わっていただろうと...
関ヶ原の戦いの合戦中に、徳川家康が、西軍石田三成の配下の忍者に殺されたため、その影武者がその後15年に渡って徳川家康に成り代わって生きていくという、設定で書かれた歴史物語です。 関ヶ原の戦いを前後して、徳川家康の趣向が変わっている等、この本の中には、影武者に変わっていただろうと思われる証拠が多く散りばめられています。 上中下の3巻、合計二千頁にも及ぶ大作を、あしかけ数か月、主に出張中の飛行機の中で楽しみながら読みました。楽しかった数か月でした! 以下は気になったポイントです。 ・慶長14年には、第九子義直と紀伊37万石浅野幸長の娘、第10子頼宜と肥後52万石加藤清正の娘と婚約させている(p9) ・二郎三郎の目からみると、キリシタンは驚くほど一向一揆の門徒衆に似ていた(p177) ・吉原が元和3年(1617)にできる前の遊里は、麹町、鎌倉河岸、元誓願寺前の3か所(p182) ・フランシスコ会は、神への奉仕だけに身を捧げる教団、伝道のためには戦争も辞さない戦闘的な布教集団イエズス会とは対照的(p329) ・関ヶ原でとりつぶされた大名は90家、438万石、 厳封4家、221万石、他の理由で除封されたものが35家、317万石で、合計一千万石が除封となり、牢人が乗じた。その上にキリシタン武士がいた(p343) ・軍役表によれば、一万石で235人、騎馬は10騎(p379) ・本来、豊臣方がやるはずであった工事(三の丸と二の丸の掘と柵を破却)だけでなく、堀まで埋めてしまった(p402) ・大阪夏の陣において、大野道犬率いる一隊は、堺の町を残らず焼き払って、堺滅亡の原因を作った(p451) ・小判200万両の重量は約一万貫、運ぶには370頭の馬が必要になる(p561) ・家康は駿府を東西に対して難攻不落の地にした。年貢は江戸経由でなく、直接駿府に来るようにした。清水港を南蛮船の来る港にした。朱印状は駿府でのみ発行し、自由独立都市にしようとした(p605) 2015年10月31日作成
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関が原の戦いで家康は死に それ以降史実の「家康」は影武者だった、というお話。 ものの見方でストーリーはまったく異なって捉えられるものだと改めて感じた。 生まれたときから戦国時代の武将となるべく生きてきた家康ではなく、その日暮らしで厳しい世界を生き延び 影武者となった次郎三郎だから...
関が原の戦いで家康は死に それ以降史実の「家康」は影武者だった、というお話。 ものの見方でストーリーはまったく異なって捉えられるものだと改めて感じた。 生まれたときから戦国時代の武将となるべく生きてきた家康ではなく、その日暮らしで厳しい世界を生き延び 影武者となった次郎三郎だからこそ平和を願い そのために争い、太平の世を残したいと思ったのかもしれない。 平和のために争う。今の時代もどこかで紛争が起きているのもそれぞれの平穏な生活を求めているからなのを 忘れないようにしたい。 7月から読み始めたのに今までかかってしまったのは読み始め当初はイスラエルとガザの紛争があり、関が原の戦いの生々しい表現に拒否反応があったから。 読み終えた今日も日本人として苦しい出来事があった日であり、その地も傍から見たら平穏には映っていない。 この悲しい出来事がいつか報われますように。
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