恋 の商品レビュー
布美子はただ、片瀬夫妻を取り戻したかっただけだった。 3人の関係が特殊な関係だったために、何が正しかったのか、何がいけなかったのか、どうすべきことだったのかというのは読み終わった今でもわからない。普通ではない関係に、世の中の普通を当てはめてもどうしようもないからである。 ただあ...
布美子はただ、片瀬夫妻を取り戻したかっただけだった。 3人の関係が特殊な関係だったために、何が正しかったのか、何がいけなかったのか、どうすべきことだったのかというのは読み終わった今でもわからない。普通ではない関係に、世の中の普通を当てはめてもどうしようもないからである。 ただあの事件の後、片瀬夫妻は兄妹として共に過ごしたのか、それとも夫婦として過ごしたのかがとても気になった。 『ローズサロン』の生原稿のあとがきだけが、読者にだけに教えられた唯一の救いだったのかもしれない。
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読み始めると、続きが気になってしまい一気に読んだ。矢野布美子、片瀬夫妻の3人で過ごした時間の描写が良かった。実際になかなかある話ではないが、登場人物が皆人間らしく、すんなり読めた。
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人生は何が起きるかわからない。運命の出会いとは難何だろう。恋の深みにはまりこみ、悲劇の末路を辿った主人公の激しく、そして静かな悲しみが伝わってきます。物語の状況設定は異常で内容も重かったけれど、面白かったです。
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小池真理子。 直木賞! 学生運動の頃の話みたいなので、面白いかなって思って読んだ。 ある夫婦とある女との愛憎の話・・・。 嫉妬が起こす殺人。 でも、只の嫉妬じゃない。 女が女にする嫉妬じゃ無い。男にする嫉妬かな? 今の状況を変えられたくないっていう嫉妬。 読み終えて、なんだ...
小池真理子。 直木賞! 学生運動の頃の話みたいなので、面白いかなって思って読んだ。 ある夫婦とある女との愛憎の話・・・。 嫉妬が起こす殺人。 でも、只の嫉妬じゃない。 女が女にする嫉妬じゃ無い。男にする嫉妬かな? 今の状況を変えられたくないっていう嫉妬。 読み終えて、なんだか深いモノを感じた。 結局、ハッピーエンドとも取れる終わり方は せめてもの・・・って感じ。 あとがきまで読みたくなるほど、不思議な感覚だった。
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好きな文章を書かれる方がレビューで褒めていらしたので。この作家読んだことないし、図書館で借りてみるか~と借りてみました。 自分あんまり恋愛小説は読まないんですよね。まあ普通の恋愛小説ではありませんが。事件が起きたことが最初に描かれていき、記憶をたどるように段々とその一瞬に時間...
好きな文章を書かれる方がレビューで褒めていらしたので。この作家読んだことないし、図書館で借りてみるか~と借りてみました。 自分あんまり恋愛小説は読まないんですよね。まあ普通の恋愛小説ではありませんが。事件が起きたことが最初に描かれていき、記憶をたどるように段々とその一瞬に時間がさかのぼっていく。その過程には確かに引き込まれます。が。人物的にあまり魅了されない… 片瀬夫妻に魅力を感じないひとはこの小説に魅了されないだろうなあ。秘密、がなあんだ、と言う感じでちょっと気が抜けました。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
寝取られものを読もうという趣旨で読んだので、偏った感想。 布美子、加賀、雛子の3人で仲良くやってた関係が、大久保という男が現れて雛子を掻っ攫ってしまうという構図ではあるんだけど、元の3人というか2人と1人の関係が絶妙かつ表現が見事。寝取られのダメージも、布美子サイドから見るのと加賀サイドから見るのとで違った趣で楽しめる。 とはいえ、メインはやはり主人公である布美子から見た雛子の喪失であって、これがまた見事に響く。布美子は、同性愛者ってわけではないので、本来的には加賀に対して恋愛感情を持ってるわけなんだけど、加賀と雛子の不思議な精神的つながりを見せつけられるうちに、加賀と雛子を分かちがたい存在として惹かれてしまう。その思いはどんどん強まっていって、もはや崇拝に近い状態になっていく。雛子が大久保に心を奪われ、普通の女になってしまうことは、崇拝の対象を汚されることでもあり、加賀とのつながりを失うことでもあるという2重の苦しみがあるわけで、なかなかに重い。しかも加賀と雛子の関係に対する信仰は、大久保から容赦なく「少女趣味的な倒錯」と喝破されてしまうという。なんてむごい…。 小説の起点は事件の20年後なので、生き残った3人がどのようにして想いを消化して生きていったのか、時間が救ってくれたものがあったのか、色々と思いをいたすことが出来るのも良かった。後味はすっきり。
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連合赤軍による浅間山荘事件、日本中がその動向を注視する中、時と場所を同じくするように、軽井沢の山荘で一人の女子大生が猟銃で男を撃ち殺すという事件が起きていた。大きな事件の陰に隠れてほとんど注目されることがなかった事件に興味を持った一人のジャーナリストが、真相を突き止めるために犯...
連合赤軍による浅間山荘事件、日本中がその動向を注視する中、時と場所を同じくするように、軽井沢の山荘で一人の女子大生が猟銃で男を撃ち殺すという事件が起きていた。大きな事件の陰に隠れてほとんど注目されることがなかった事件に興味を持った一人のジャーナリストが、真相を突き止めるために犯人に接触した。 犯人の「布美子」は頑なに口を閉ざした。すでに刑期を終え、肉親との接触も避け、ひっそりと暮らしていた布美子にとって、その事件はもう忘れたいものだった。取材は一切受けないと決めていた。しかし、しばらくして、病魔に蝕まれていることが判明し余命幾ばくもないことがわかってことから、彼女の決心は氷解し、ついに真相を語りだした。彼女の口から紡ぎだされる物語は、凄惨な事件現場からは想像もできない「悲恋」だった… むかし読んだ本だが、12月にドラマ化するということなので再読した。 本編はかなり倒錯した恋愛が描かれている。倫理的な禁忌より欲求の赴くままに、奔放な愛が描かれている。しかし全くいやらしさがないのは、心理描写と身体表現を巧みに織り交ぜる著者の筆力のなせる技なのだろう。頽廃的なのに、見事なまでに「純粋」なのだ。 なにより題名がとてもいい。 『恋』 ありふれて、軽薄なイメージすらあるこの一文字に込められた意味は深く濃い。 『愛』だと世界観が違う。『愛』には永続性や広範性が伴う気がする。やっぱりこの作品にふさわしいのは『恋』だ。『恋』という言葉が醸し出す世界観にはどこか刹那的で、悲しい結末が伴う。 この一文字を掲げた作品が直木賞を獲ったということは選考委員が、これが『恋』のかたちだと認めたと思っていい。少なくても「恋」がテーマの文学作品として認められたということは間違いない。 本の表紙に描かれている樹はマルメロの樹だ。 物語の中では、ほんの小道具のように登場するだけなのだが、この樹に込められた心情は切ないが、救いになっている。 小説の出来は直木賞が保証している。でもドラマが大コケしたら原作を読んでないのに批評する人が続出するだろう。それが今から心配だ。杞憂に終わって欲しいと思う。
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「恋」でした。紛れもない「恋」でした。 ディープで、官能的で、救われない作品。 端から見れば片瀬夫妻はおかしい。変だ。でも、この作品は布美子の視点に飛び込んで味わうべき。彼女のする恋はどこまでも透明で、正直で、幸せにあふれている。 なお、序盤から明らかなことではあるが、彼女は救わ...
「恋」でした。紛れもない「恋」でした。 ディープで、官能的で、救われない作品。 端から見れば片瀬夫妻はおかしい。変だ。でも、この作品は布美子の視点に飛び込んで味わうべき。彼女のする恋はどこまでも透明で、正直で、幸せにあふれている。 なお、序盤から明らかなことではあるが、彼女は救われない。しかし、読者に対してだけ、最後に少しだけ救済の事実が明かされる。……マルメロと、"あとがき"に、泣かされます。
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無伴奏に続く恋愛小説。 浅間山荘事件の陰でひっそりと起こった殺人事件。 その真相は、余りにも切なくて悲しい。 でもマルメロに救われた気分になりました。
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15年前のベストセラー。当時一気に読破して 改めて読み始めると、同じように時間を忘れて読破。 舞台は70年代、幼く純粋な主人公と 綺麗事では済まない恋の結末を否定出来ない。 おもしろかった。
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