薔薇盗人 の商品レビュー
浅田次郎の短篇集。まあこれくらいの短篇集はお手のものとしたもので、全体的な密度は薄め。冒頭の「あじさい心中」は傑作だが、このレベルに到達している作品はほかになく、「ひなまつり」はできそこなった「鉄道員」だし、「死に賃」「佳人」はショートショートレベルのちょっと捻ったラストだけの短...
浅田次郎の短篇集。まあこれくらいの短篇集はお手のものとしたもので、全体的な密度は薄め。冒頭の「あじさい心中」は傑作だが、このレベルに到達している作品はほかになく、「ひなまつり」はできそこなった「鉄道員」だし、「死に賃」「佳人」はショートショートレベルのちょっと捻ったラストだけの短編。「薔薇盗人」も表題作にするほどの出来とは思えないなぁ。
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愛と涙の六短編。 私にとってハズレのない浅田次郎さんの、切なさの残るストーリー。 忘れっぽい自分が、この先忘れることはないだろうなと思うのは、最初の「あじさい心中」の二人。 リストラされたカメラマンと、廃れた温泉街で働くストリッパー。初対面の二人が心中を決意する、そんなまさかの展...
愛と涙の六短編。 私にとってハズレのない浅田次郎さんの、切なさの残るストーリー。 忘れっぽい自分が、この先忘れることはないだろうなと思うのは、最初の「あじさい心中」の二人。 リストラされたカメラマンと、廃れた温泉街で働くストリッパー。初対面の二人が心中を決意する、そんなまさかの展開を受け入れる自分がいることに驚く。そうさせる著者の筆力にも脱帽。 哀しみの淵にたどり着いた人の言葉は重く、その決断は強い。 架空の人物だけど、同じような境遇の人がいることに想いを馳せて、その人たちの幸せを、自分のそれとともに願いたくなる、そんなお話でした。読めてよかった。
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浅田次郎の短編集。 比較するのは双方の作者に失礼かもしれないが、弘兼憲史の名作「人間交差点」によく似ていて、大変な境遇に置かれながらも道を外さず懸命に生きていく人間模様を描く。 時代設定は昭和から平成初期頃だろうか、もはや今では目にすることがなくなった情景に懐かしさすら覚える。現...
浅田次郎の短編集。 比較するのは双方の作者に失礼かもしれないが、弘兼憲史の名作「人間交差点」によく似ていて、大変な境遇に置かれながらも道を外さず懸命に生きていく人間模様を描く。 時代設定は昭和から平成初期頃だろうか、もはや今では目にすることがなくなった情景に懐かしさすら覚える。現実逃避に最適な一冊。
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好きな順に、あじさい心中、ひなまつり、死に賃、佳人、薔薇盗人、奈落、です。 あじさい心中もひなまつりも、登場人物は私とは違う暮らしをされて別の苦労や不幸を味わっている心のきれいな善人たち。どちらも生活を変えようと一歩踏み出すが…。 話の運びかたは流石、浅田節です。
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○あじさい心中は、人生何がどうなるか分からないと感じた。また、諦めてしまうと何もかも上手くいかなくなるなと。 ○死に賃は世にも奇妙な物語にありそうな話。笑 ○奈落は結局よく分からなかった。 ○佳人は、人は見かけによらず、また、斜め上の事情があるものだなと感じた。完璧な人でも色々あ...
○あじさい心中は、人生何がどうなるか分からないと感じた。また、諦めてしまうと何もかも上手くいかなくなるなと。 ○死に賃は世にも奇妙な物語にありそうな話。笑 ○奈落は結局よく分からなかった。 ○佳人は、人は見かけによらず、また、斜め上の事情があるものだなと感じた。完璧な人でも色々あるのだと思わされる。 ○ひなまつりは感動的。やっぱり子供が一番よく分かっている。ただ、お父さんが欲しいという純粋な気持ちから、それは至極当然のことでもあるが、凄く勇気がいること。賢い子ほど我慢し自分の気持ちよりも他人の事を考えて行動する。でもやっぱりそこは子供なのである。読後は良かったなと思った。 ○薔薇盗人は、美しい表現で描かれているが、起こっていることは、大人の関係のことばかり。 結局美しかったのは、洋一とヘレンの愛だけ。それも全て大人のせいで奪われてしまうのが、何とも言えない。
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個人的には、「あじさい心中」が一押し。 バブルがはじけた、うらぶれた風景の中で、交錯する2人の姿が哀しく、美しかった。 高度成長時代の前のつつましい生活の中の哀切と対になっているようで、心に残った。
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浅田次郎=エモーショナルという公式が頭に有るのですが、この6編の中では「あじさい心中」と「ひなまつり」が私の公式に当てはまるような作品です。 悪く言えば”泣かせ狙い”の作品なのですが、その姿勢がかなり露骨でも嫌味を感じさせないのがこの人の持ち味でしょう。ただ、思わずウルウルさせ...
浅田次郎=エモーショナルという公式が頭に有るのですが、この6編の中では「あじさい心中」と「ひなまつり」が私の公式に当てはまるような作品です。 悪く言えば”泣かせ狙い”の作品なのですが、その姿勢がかなり露骨でも嫌味を感じさせないのがこの人の持ち味でしょう。ただ、思わずウルウルさせられそうになるので、通勤電車での読書には向かないかも。 あとの作品はどう位置付ければいいのでしょう。無理やりカテゴライズする必要も無いのですが、ミステリーっぽい感じもしますし、純文学的な感じもします。悪く言えば中途半端です。
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浅田次郎好きの会社の先輩に薦められて手にとってみた。 浅田次郎の短編集は、これまでに『鉄道員』(集英社文庫)と『姫椿』(文春文庫)を読んでいるが、それらに比べてこれは結構毒のきいた大人の話が多い。 先輩が絶賛していた「あじさい心中」は、独白内容が想像を絶し、「これは悲しすぎて...
浅田次郎好きの会社の先輩に薦められて手にとってみた。 浅田次郎の短編集は、これまでに『鉄道員』(集英社文庫)と『姫椿』(文春文庫)を読んでいるが、それらに比べてこれは結構毒のきいた大人の話が多い。 先輩が絶賛していた「あじさい心中」は、独白内容が想像を絶し、「これは悲しすぎてダメかも」と思ったが、それでも立ち上がって生きていける強さが人間にはあるのかな、と感じられるラストで持ち直した。 「薔薇盗人」はかなりパンチの効いたブラックユーモアに満ちていて、でも端々ではちょっと笑えて、よくこんな構成でこんな話が書けるなーと感動。タイトルも秀逸だと思う。ラストも素敵。 私が好きなのは「あじさい心中」と「ひなまつり」と「薔薇盗人」だなあと思っていたら、作者自身もこの3話が気に入っていると「解説」にあり、へぇーと思った。(2007.7.5)
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人々の様々な形の愛を描く短編集。 浅田次郎お得意の感動系を期待していたが、シュールな展開に物もあったりと、少し期待はずれ感はあったが、心が洗われる物語が多かった。 特に好きなのは「死に賃」と「ひなまつり」の2つ。 「死に賃」戦後の動乱の時期を勝ち残った社長が同じ時代を生きた級友から莫大な料金を引き換えに自分が死ぬ間際の苦痛を取り払ってくれるサービスがあると話を聞く。 その級友が亡くなり、自身も急な病に倒れたときそのサービスを使おうとするが。。。。 最後の意外な展開に加え、献身的な愛の形が露になったとき思わず泣けた。 「ひなまつり」東京オリンピックが始まる昭和の時代、シングルマザーの家庭に育つ女の子が大人の事情にふりまわされながらも、大好きな母と”おとうさん”のために奔走する物語。 自身の孤独や"おとうさん"に対する好きだけど自分ではどうしようもできない想いが語られ、その心中を察するだけで胸がいっぱいになってしまった。
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※このレビューにはネタバレを含みます
浅田次郎は長編が好きだなあ。 浅田次郎は短編とはいえ、その世界を描きだすのが上手いのだ。 だからすぐに情景が目に浮かんで、「で?」ってなってしまう。 もう一段の上を期待してしまう。 本来なら短い文章でその世界を描き切ること、できれば余韻をもたせることが短編小説に求められる部分なのかもしれないけれど、「蒼穹の昴」や「壬生義士伝」などの、圧倒的な描写の巧。 畳み掛けるように押し寄せる感情のうねり。 または「地下鉄に乗って」のように、視点によって見えているものが違い、事実が必ずしも真実ではないことを突き付ける一瞬。 そのようなものを、短編で期待してはいけないのだけど、期待してしまうのだ。 上手いから。 そういった意味で面白かったのは「奈落」 まだ着いていないエレベーターのドアが開き、一歩踏み出したために命を落とした会社員・片桐。 その事故で露わにされる、彼の半生。 そして彼の死が会社の歯車をも狂わせる!…のか? ドラマ化する際には、ぜひ片桐役を緋田康人さんで。 女手一つで自分を育ててくれる母の苦労がわかるから、いろんなことを我慢して我慢して我慢していた少女が、この先一生わがままを言わないからと母にねだったものとは。「ひなまつり」 やっぱりこういうの書かせると上手いよなあ。 長期不在の父に代わって薔薇と母を守り、父に手紙で近況を報告する少年。 純粋な少年の目を通して描かれる近況から透けるように見える現実。 この透けっぷりが、大抵の大人にはガラス越しのように丸見えで、どこで話しをオトすのだろうと思って読んでいたら、ストレートに終わりました。 ジョン・ラッツの「腐れイモ」くらいのどんでん返しを期待したんだよね。 一方的な手紙だけで構成された小説だったので、つい…。 薄汚れちまった読者ですみません。
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