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こんな夜更けにバナナかよ の商品レビュー

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87件のお客様レビュー

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2009/10/04

筋ジストロフィーという難病を抱え、24時間介護を必要とする鹿野靖明さんという障害者と、その介護ボランティアの学生との日々を書いたノンフィクション。この本に書かれている人と人との関わり方は非常に豊かで重く、自分自身が障害者の介護に携わっているせいか本当に熱心に読んでしまった。 読...

筋ジストロフィーという難病を抱え、24時間介護を必要とする鹿野靖明さんという障害者と、その介護ボランティアの学生との日々を書いたノンフィクション。この本に書かれている人と人との関わり方は非常に豊かで重く、自分自身が障害者の介護に携わっているせいか本当に熱心に読んでしまった。 読むとわかるが、この鹿野さんという人の放つエネルギーは凄まじいものがある。それは「生きるため」というところから発しているものとは言えるが、それはわがままさや貪欲さ、ふてぶてしさや葛藤などを思い切り含んだものである。そんな鹿野さんを中心とした集まりが生易しいもので終わるはずはなく、そのやり取りのあまりの濃さや真剣さには、壮絶さを感じて圧倒される事もしばしばだった。 本書には鹿野家の時間の移り変わりや空気までもが濃く渦を巻いているようで、きれいな枠に整然とおさめようとするはしからはみ出ていくようなパワーに溢れている。人とのふれあい、と言うとそれさえすれば無条件でなにものかが得られるというようなあたたかい響きがあるか、或いは偽善的だという反発を呼ぶか、反応はさまざまだろうが、どちらにしても抽象的な言葉に聞える。しかし人との関係というのは障害者を相手にしたからといって特別なものが発生するほどでもなく、実際には目の前の未知の相手と関わるというもっと生々しいもので、煮詰まったような感情や血の通った濃い思いがつめこまれていたりするものなのだという事がひしひしと感じられた。 そんな人と関わるなら当たり前の事が、障害者をいつも肯定するべき存在として無理に思いつめていた所が私にあったために、とても新鮮に映ったのだ。 読んでいくうちに、人の手を借りる事を当然の権利として考え、相手の気持ちを考えないようなふしがあるように感じ、この人には最後まで賛同できないのではないかという思いがよぎった。だが読み進めていき、その自己主張の強さの裏には、障害者は自分の人生を全て周囲の人に先回りして決定されてきたという苦い現実があり、鹿野さんの主張は単純にわがままだと切り捨てられないような、まさに自分が自分の人生を引き受けているという実感を取り戻すための切迫した行為であり、24時間プライベートのない中でぎりぎりの思いで自分自身を維持しているのだと知り、物凄くはっとする思いがした。 また賛同できない事が気にかかったというのは、相手の意見に賛同できない時に、その相手が障害者の場合には何故かこちらが間違っているような気がわけもなくしていたためである。だがそれも思い込みであり、結局は性格や考え方の合う合わないにいくらかは帰結させてもいいのだな、と思った。 「一人の不幸な人間は、もう一人の不幸な人間を見つけて幸せになる」という介護者自身の言葉が登場するのが印象に残った。そこまで踏み込んで指摘していいものかどうか迷うような所までが包み隠さず語られていたのが衝撃的だった。この言葉は本書の内容をいくらか象徴しているだろう。もちろんそれが全てというわけでは決してない。しかしそういう側面がある事を切り捨てる事で、人との関係をめぐる感情の動きを美化するのは嘘だと思う。これはいわゆる美談ではなく、命の大切さを屈託なく感じさせてくれる本ではないから毎日忙しく暮らしている人には面倒くさく手に取る事もないのかもしれないが、単純な一枚岩的な「いい話」よりは物凄く考えさせられ学ぶところも多かったと思う。 著者の渡辺さんの筆力によるところも大きい。都合の良い美しい結論に容易に流れていきたい気持ちを食い止めるようにして、最後まで色んな答えの間を揺れながら真摯に書かれているのが、とても良いなと思った。 障害者像だけでなく、介護者像に対する強迫的なイメージ(過剰に優しさを演出しないといけないような)の偏りを取り払ってくれた一冊。

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2009/10/04

自分ができないことを認識すること、伝えること。すごく難しいことだが、とても重要なこと。「求めよされば与えられん」、それは同時に与えるほうも与えられているのだろう。

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2009/10/04

筋ジスの鹿野さんとボランティアの介護ノートを中心に作られた本。本当の意味でのボランティアって何なんだろう。深いです。

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2009/10/04

重度身体障害者のシカノと介助ボランティアの「自立生活」を描いたノンフィクションの佳作。美談を美談の枠に収めず、障害者とはなんなのか、共に生きるとはなにか、を突き詰めた姿勢に好感。よいこと、悪いこと、いろんなことにショックを受けました。一番印象に残ったのは、自立とは誰にも迷惑をかけ...

重度身体障害者のシカノと介助ボランティアの「自立生活」を描いたノンフィクションの佳作。美談を美談の枠に収めず、障害者とはなんなのか、共に生きるとはなにか、を突き詰めた姿勢に好感。よいこと、悪いこと、いろんなことにショックを受けました。一番印象に残ったのは、自立とは誰にも迷惑をかけず生きることではなく、自分がどうしたいのか自分で決めるということだというところ。荒削りな部分もあるけど、ずっと忘れられない作品になると思う。

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2009/10/04

題名だけ読んで勘違いしてはいけません!Hな話じゃありません!「セックスボランティア」という本が有名になっていますが、私はまずこの本を読んで欲しいです。筋ジストロフィーという病気の鹿野さんと彼のボランティア達の物語です(ノンフィクション!!!!)昨夏に自転車で旅をして泊まったユース...

題名だけ読んで勘違いしてはいけません!Hな話じゃありません!「セックスボランティア」という本が有名になっていますが、私はまずこの本を読んで欲しいです。筋ジストロフィーという病気の鹿野さんと彼のボランティア達の物語です(ノンフィクション!!!!)昨夏に自転車で旅をして泊まったユースホステルで実際に鹿野さんのボランティアをしていた男性と会ってお話を伺いました。鹿野さんのボランティアのためだけに彼の家に行くわけじゃない、ボランティアする側も鹿野さんにボランティアされているという事に気付かされました。特に医療・福祉系の仕事に進みたい方、読んで下さい。そして考えてほしいです。障害者って一体誰のことなのか、自分の生・他人の生について。みんなでタブーを乗り越えろ!!

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2009/10/04

障害者観をがらりと変えられた。鹿野氏の「生きる意思」には圧倒される。これが、自分だったら?家族だったら?恋人だったら?考えさせられる。

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2009/10/04

重度の肢体不自由な青年・鹿野さんとボランティアのルポ。ワガママで感謝を知らない寝たきり老人と、それを介護する家族の愚痴のような、暗くも明るくもなれるような絆を感じた。筋ジストロフィーの鹿野さんを、クソミソに言っている人もいれば、ボランティアさんに当り散らしては罵倒する鹿野さんの本...

重度の肢体不自由な青年・鹿野さんとボランティアのルポ。ワガママで感謝を知らない寝たきり老人と、それを介護する家族の愚痴のような、暗くも明るくもなれるような絆を感じた。筋ジストロフィーの鹿野さんを、クソミソに言っている人もいれば、ボランティアさんに当り散らしては罵倒する鹿野さんの本音があったり。タイトルの由来は、1日中つきっきりの介護をしていたボランティアさんが夜中に寝ているとき「バナナが食べたい」と鹿野さんに起こされ、眠い目をこすりながらバナナを食べさせ、再び寝ようとしたところ「もう1本」と言われムカー!っとしたというもの。介護も子育ても、より関わってるほうからは愚痴も出る、怒りもするという理屈だと痛感。うちの寝たきりのばあちゃんは、鹿野さんよりマシで可愛げがあったなあと介護経験の立場から素直に感じた自分を「汚れているのか?」と自問自答してみたり、我侭と偽善と福祉の限界を思い、読んだあとで凹みまくったっけ。

Posted byブクログ