心臓を貫かれて(上) の商品レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
初読。図書館。村上春樹さんの翻訳で、長年気にかかりながらなかなか手に取ることがなかった。ようやく読みはじめた。ファミリーヒストリーが細かく描かれている。ノンフィクションなのに、フィクションの匂いを感じさせるのは、筆力ゆえか。下巻へ。
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著者の兄が殺人を犯すまでの前半生を詳細に記録する。ギルモア一家の特殊な家庭環境に驚く。4兄弟の長男と著者である末っ子は犯罪者ではないのだが、2人の兄は悲劇的な人生を送ることになる。母親の家系は厳格なモルモン教徒であったことが少なからず影響しているのかもしれない。下巻では兄ゲイリ...
著者の兄が殺人を犯すまでの前半生を詳細に記録する。ギルモア一家の特殊な家庭環境に驚く。4兄弟の長男と著者である末っ子は犯罪者ではないのだが、2人の兄は悲劇的な人生を送ることになる。母親の家系は厳格なモルモン教徒であったことが少なからず影響しているのかもしれない。下巻では兄ゲイリーの殺人に至る経緯が知れる。
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それは引き裂かれた心から、憎しみから、懲罰から生まれた殺人である。それらの殺人がどこに端を発しているか、どのように形成され、僕らの行動の中に入ってきたか、どのように僕らの人生を変形させたか、それらの伝承がどのようにして僕らのまわりの世界や歴史の中にこぼれ落ちて行ったか、それを物語...
それは引き裂かれた心から、憎しみから、懲罰から生まれた殺人である。それらの殺人がどこに端を発しているか、どのように形成され、僕らの行動の中に入ってきたか、どのように僕らの人生を変形させたか、それらの伝承がどのようにして僕らのまわりの世界や歴史の中にこぼれ落ちて行ったか、それを物語りたい。 家庭環境が悪いと子供はグレル。
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読みはじめは、登場人物が多すぎて把握するのが大変だった。だから、何度もページを戻ってしまった。 本当にこんな家族が存在するんだ。 結婚と出産は、「覚悟」がもっとも必要であり大切なのかな。変化する中で愛する覚悟、愛して育て抜く覚悟、そういうものが夫・妻あるいは父・母として必要。も...
読みはじめは、登場人物が多すぎて把握するのが大変だった。だから、何度もページを戻ってしまった。 本当にこんな家族が存在するんだ。 結婚と出産は、「覚悟」がもっとも必要であり大切なのかな。変化する中で愛する覚悟、愛して育て抜く覚悟、そういうものが夫・妻あるいは父・母として必要。もちろん「愛」がある上での「覚悟」 フランクとベッシーの間に生まれた4人の子どもは、生まれたときから大荷物をかかえていて、痛々しかった。生きていく上で増えていくはずの荷物をはじめから全て背負っているようだった。ゲイリーとゲイレンはフランクとベッシーの子どもじゃなかったらよかったのに。でも、二人の間に生まれた子どもだから、ゲイリーとゲイレンなんだ… 宗教について、私はどうしても疑問を抱かざるをえなかった。
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一瞬にして呪われた一家が持つ歴史に引き込まれる。モルモンの幽霊、アメリカという国家の国家性。感想は下巻まで読了してから。
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どうして?という感情が最初から最後まで続く。 神というものがいるのなら。 どうしてこんなことになるのだろうかと。 そして思いだすのは自分の家族のこと。 ここまでのものではなかったけれど、言葉の暴力については同じだった。マイケルの兄たちの気持ちが痛いほど分かる。 私は日本人で、...
どうして?という感情が最初から最後まで続く。 神というものがいるのなら。 どうしてこんなことになるのだろうかと。 そして思いだすのは自分の家族のこと。 ここまでのものではなかったけれど、言葉の暴力については同じだった。マイケルの兄たちの気持ちが痛いほど分かる。 私は日本人で、女であったからここまではいかなかったけれど。
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カポーティのように言うと、ノンフィクションノベルということになるのでしょう。伝記でもあります。その対象の人物は著者の兄だったか弟だったかの犯罪者なのですがね。親はどういう人物だったかなど、外国の伝記って、その人物の前の代、その前の代なども掘り下げるのがありますね。前に読んだアント...
カポーティのように言うと、ノンフィクションノベルということになるのでしょう。伝記でもあります。その対象の人物は著者の兄だったか弟だったかの犯罪者なのですがね。親はどういう人物だったかなど、外国の伝記って、その人物の前の代、その前の代なども掘り下げるのがありますね。前に読んだアントニオ・カルロス・ジョビンの伝記もそうでした。人物形成の因果みたいなものを徹底的に客観的に探って、でも決めつけずに提示するというやり方が見受けられます。すごく面白かったです。カポーティの『冷血』に負けません。
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ある殺人犯が死刑になる話。 だが、その背景には激烈な家庭崩壊が、圧倒的な存在感で横たわる。 泥沼中の泥沼。 どこまで沈んでいっても、底の見えない泥沼。 その泥沼を構成する要素たち──多種多様で根が深く、密接に絡み合ったものたち。 家庭内暴力、虐待、離婚、不倫、飲酒、ドラッグ、非行...
ある殺人犯が死刑になる話。 だが、その背景には激烈な家庭崩壊が、圧倒的な存在感で横たわる。 泥沼中の泥沼。 どこまで沈んでいっても、底の見えない泥沼。 その泥沼を構成する要素たち──多種多様で根が深く、密接に絡み合ったものたち。 家庭内暴力、虐待、離婚、不倫、飲酒、ドラッグ、非行、失踪、貧困、犯罪、罪と罰、刑務所と更正、精神病質とその治療、自殺、死刑制度、家族愛、同性愛、父と息子、母と息子、兄弟の絆、宗教、オカルト、アメリカの負の歴史、血族、因果、老い、病と死、事件報道、加害者とその家族。 これら一つだけでもその衝撃を受け止めるのに苦労するのに、これら全てを受け止めなくてはならない。 その破壊力はすさまじく、著者をはじめ関係者への影響は計り知れない。 そしてそれは読者となる我々にも及ぼすものなのだ。 その覚悟がなければ、この本を手にとるべきでない。
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アメリカで死刑復活のきっかけとなった犯罪者の、弟による回想録。 この家庭には子育てにおいてやってはいけないとされることが全てある。 みな傷ついているが、犯罪に走った者と走らなかった者がいる。 その差は何だろう。
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子どもにとって、虐待はもちろんのこと無関心や過干渉は 致命的な心の損ないを生みだす。 心を形成する上で形作られなければならなかったもの -自尊心やこの世界に自分は存在していいんだという安心感- がそれらによって形作られないのだろう。 ある者は、母親しか持ち得ないある...
子どもにとって、虐待はもちろんのこと無関心や過干渉は 致命的な心の損ないを生みだす。 心を形成する上で形作られなければならなかったもの -自尊心やこの世界に自分は存在していいんだという安心感- がそれらによって形作られないのだろう。 ある者は、母親しか持ち得ないある種の愛情を誰かに求め、 またある者は、与えられなかった恨みを社会や他人に投影する。 そしてある者は、逃避するために快楽へ身を染める。 そのようにして、その損ないを埋めるためにさまよい続ける。 その種の人間である、ある一人の殺人者と兄弟らの深い闇を描いた小説。 父親や母親の愛情を与えてもらえなかった人間の悲しい現実の物語。 彼らは心臓を貫かれたほうがまだマシだと感じていたかもしれない。 貫かれたのは心臓ではなく「心」だったのだ。 兄弟一人一人が違った理不尽を与えられ、 それから違う道 -歪んではいるかもしれないが- を歩いたこと。 それに関しては、色々考えさせられる。 同じような仕打ちを受けながら、違う道を歩んだのは、 ちょっとしたことが原因なのか、決定的な差があるのかどうか。 後半を読みきってから考えたいと思う。
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