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戻り川心中 の商品レビュー

4.1

113件のお客様レビュー

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花にまつわる推理小説…

花にまつわる推理小説短編集。「藤の香」「桔梗の宿」「桐の柩」「白蓮の寺」「戻り川心中」。戻り川心中は、日本推理作家協会受賞、直木賞候補にもノミネートされたらしいが、いまいち良さが分からなかった。

文庫OFF

2024/05/23

【ミステリーレビュー500冊目】自らの命よりも、美しく花を咲かせることの尊さとは… #戻り川心中 ■はじめに レビュー500冊目は、連城三紀彦先生の『戻り川心中』です。ミステリー史上、最も美しいとされている一冊で、どの作品も味わい深く文学的。人間が隠し持っている欲や業、そして愛...

【ミステリーレビュー500冊目】自らの命よりも、美しく花を咲かせることの尊さとは… #戻り川心中 ■はじめに レビュー500冊目は、連城三紀彦先生の『戻り川心中』です。ミステリー史上、最も美しいとされている一冊で、どの作品も味わい深く文学的。人間が隠し持っている欲や業、そして愛情を描いた短編集です。 時は大正・昭和前期、日本独特の文化や風習が作品全体から漂ってくる。各作品ごとに花や植物が違和感なく小道具になっていて、耽美な雰囲気をよりかもし出してくれます。しかし、いつの時代も男と女の物語は美しくも哀しいですね… 謎解きとしても綺麗な論理性でまとめてくれるし、文芸作品としても質が高い。もしミステリー作家になりたいのならお手本になる一冊で、必ず読んでおくべき作品ですね。 ■各短編のレビュー ●藤の香 色街に住む女と呉服屋の主人の出来事、街で発生した殺人事件に隣に住む代書屋が関係しているらしいが… いつの時代も花街には無情さを感じます、いかに人間というのは弱い生き物なんだろう。物語は淡々と語られますが、命の描写があまりにも儚く、まるで夢をみているかのよう。事件の背景に感じた情け深さが耐え難い。美しいラストが必見の作品。 ●桔梗の宿【おすすめ】 川辺で男の死体が発見される、手には桔梗が握られていた。亡くなった男は、ある娼家にいたことがわかり、刑事たちは女性たちに聞き取りを始める。そこの幼い少女が語るには… この物語では誰が一番悪いのか、それは少女を売りつけて未来を摘んでしまった外道たち。この時代、きっと同じように不幸を抱えた子供たちがいっぱいいたと思うと耐えられない。そして彼女の覚悟があまりにも幼稚すぎて、ただ切ない… ●桐の柩【超おすすめ】 極道の世界で、兄貴に拾ってもらった男の物語。日々、舎弟として手足になるも、兄貴からある女を抱いて来いと言われるのだった。どうやらその女と兄貴には、暗い繋がりがあるようなのだが。 人と人の距離感が素晴らしい!これ映画化してほしい!これぞ色恋沙汰の傑作、謎解きの真相もハッとさせられました。 主人公、兄貴、女、ひとりひとりの情念と行動が罪深すぎるだろ、これ… 業にまみれた醜さと可憐さ、さらに生きることに対する誠実さを感じた一作。 ●白蓮の寺 主人公の男は、幼年期の記憶が忘れられずにいた。それは母が血に染まった手で人を殺害している場面であったが… 彼の幼い頃の記憶の真相は。 長い長い幼年期の語りが幻想的で美しい。しかし想像した以上に深い事情で主人公がただ可哀想。後半の展開は見事で、墓場まで秘密にした覚悟が強烈な作品。 ●戻り川心中【超おすすめ】 かつて天才歌人だった苑田岳葉、彼は二度の心中で二人の女性を葬ってしまった。さらにその時の想いを歌に残して自殺をしてしまうのだ。どんな背景があったのか… これも現代の映像技術で映画にしてほしい作品ですね。イケメン俳優と和美人でキャスティングをお願いしたい。 しかしどんなにその人を愛していたとしても、この死生観は理解できない。ただ欲望としてはわからなくもないの。こういった男性が、何故か女性には人気だったりするんですよね。高次元で惹かれ合う、みたいな感じでしょうか。 道づれになった女性たちが憐れすぎるよ。命よりも大切なものはないはずなのに、それよりも美しく花を咲かせることを求めている… 情報化社会の合理性が求められる時代、この狂った恋愛物語を現代人たちはどう思うでしょう。 ■さいごに 我々は何のために生きているんでしょうか? 多くの人は、日常は忙しく哲学的なことを考えている暇はない。ただ何か壁にぶつかった時、ふとこの疑問を思い出し、おそらくは何も結論が出ずに考えるのをやめてしまう。 本作の登場人物たちは、全員何のために生きるのか明確なんです。自らの命に代えても守りたいほど強い意志を持っている。それゆえ潔く美しいのですが、悲しくもありますよね。 これからの人生、誰しもゆっくりと死に向かってゆく。いつか絶望を感じた時、きっとまたこの本を読めば、なにか感じることがあるんだろうなと思いました。

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2024/04/29

ちょっと胸焼けしてしまった。 一編だけ読む分には楽しいんだけど、並べて読むと疲れる。 全部加害者側に同情的に書かれているから 殺人の言い訳をあの手この手でされているような気分になりました。 加害者の生い立ちによる減刑と似た不条理を感じる。 動機が直接的な恨みとかじゃないから余...

ちょっと胸焼けしてしまった。 一編だけ読む分には楽しいんだけど、並べて読むと疲れる。 全部加害者側に同情的に書かれているから 殺人の言い訳をあの手この手でされているような気分になりました。 加害者の生い立ちによる減刑と似た不条理を感じる。 動機が直接的な恨みとかじゃないから余計に… 一編ずつ読めばエモくて良いミステリーだと思えたんじゃないかと思います。

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2024/04/10

短編にしてはストーリーがそれぞれ濃い、濃すぎて良い。時代小説っぽい雰囲気もあり、米澤さんの羊たちと同じ匂いを感じた(そっちが影響を受けていそう)。表題作は、多重オチは凄いが着地点はあまり好きではないかな...

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2024/03/25

1983年の作品です。 1997年に発売された「本格ミステリ・ベスト100」のベスト10です。 本格ミステリかどうかは判断に迷いますが、どの話もミステリではあります。 どれも、壮絶で哀しい物語ばかりでした。 特に、最後の「戻り川心中」は、どんでん返しがあり、物語に引き込まれました...

1983年の作品です。 1997年に発売された「本格ミステリ・ベスト100」のベスト10です。 本格ミステリかどうかは判断に迷いますが、どの話もミステリではあります。 どれも、壮絶で哀しい物語ばかりでした。 特に、最後の「戻り川心中」は、どんでん返しがあり、物語に引き込まれました。

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2024/03/22

どの短編も静かで流麗な語り口が印象的で、推理小説だけど美しい純文学を読んでる気持ちになった。「桔梗の宿」が全体を通して一番好きかも。読者のミスリードも素晴らしかったし、犯人の動機も切なくてたまらなかった。ほかのお気に入りは「桐の棺」と「白蓮の寺」。「桐の棺」は主人公とヤクザの男の...

どの短編も静かで流麗な語り口が印象的で、推理小説だけど美しい純文学を読んでる気持ちになった。「桔梗の宿」が全体を通して一番好きかも。読者のミスリードも素晴らしかったし、犯人の動機も切なくてたまらなかった。ほかのお気に入りは「桐の棺」と「白蓮の寺」。「桐の棺」は主人公とヤクザの男の関係が良かった……。「白蓮の寺」のどうにも理解し難い夢(この夢がまた不気味かつ美しい雰囲気で良い……)を紐解いていく話の展開が好きだった!

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2024/03/21

ものすごいトリックが!と言うわけではないです。どちらかといえば、動機の方に驚きを持っていったような感じです とても綺麗で品の良いミステリーでありながら純文学を読んだような気持ちでした

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2023/07/21

どのお話もただ美しい純愛としてだけ了解できるものにはなっておらず、濃淡の違いはあれど底の方にエゴの奔流が流れている。いくつかの事実の断片を手がかりに事件の真相を解き明かすにつれ、そのどす黒い流れが垣間見える仕掛けになっている。そして、偽善であろうと自己満足であろうと情は情であり、...

どのお話もただ美しい純愛としてだけ了解できるものにはなっておらず、濃淡の違いはあれど底の方にエゴの奔流が流れている。いくつかの事実の断片を手がかりに事件の真相を解き明かすにつれ、そのどす黒い流れが垣間見える仕掛けになっている。そして、偽善であろうと自己満足であろうと情は情であり、純粋なエゴイズムであるがゆえに美しく見えることもある。 個々のエピソードについて話すなら、2つ目の「桔梗の宿」が1番よかった。この話も広義には恋愛をテーマにした短編ではあるが、それらは自由恋愛ではなく、他にすべもなくただ生存本能として選びとらざるをえない恋愛だ。他の恋愛小説のように華々しくなく、重苦しく切実なものだ。花が、そこがどんな荒れた土地であっても自分では咲く場所を選ぶことができずただ種の落とされた地に根を張り芽を出すことしかできないように、花町という土地に、しいてはその時代の日本に生まれついてしまったがゆえの美しさなのだ。愛は美しいが、この物語を美しいと感じてしまう読み手の私のうちにもエゴイズムがある。荒れ野の花はそこが荒れ野であるが故に際立ち人の目には美しく見えるが、初めからそんなところに咲くべきではない。

Posted byブクログ

2023/05/19
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

面白かった。米澤穂信が薦めていたのと評判が良かったので読んでみた。 「藤の香」 代筆屋という伏線。故郷への文と目の前の少女の行く末を考えて、さらに己の寿命まで考えると成敗したくなるのもわかるな。お縫の心情を推し量ろうとするまなざしが良かった。 「桔梗の宿」 二階の窓から花を散らすという仕草になんともいじさらしを感じてしまう。言葉にして直接伝えられない感情を感じる。福村も人形を操ることで何かを伝えていたとしたらそこが二人の共通点になるのかな。 「桐の柩」 主人公がなんか百合の間に挟まる男というか、二人の愛の渦中にいるというか、面白い立ち位置。 主人公のありようがあまりにも希薄なのが良い。 桐の棺というダイナミックな小道具、大道具?の使い方が良い。画面映えしそう。 「白蓮の寺」 花を埋めるという動作について考えたことも無かったので、そんな場面を見たら忘れられないし怖さも覚えるだろうなと思った。 前半の夢の部分はどうにも退屈だった。他人の夢ほどどうでもいいというがほんとそれ。映像化したら美しいだろうが。 なんとも奇妙な出来事を聞いたり覚えていたりで、じゃあ真実は?と探求していくのが面白かった。 母親が目の当たりにした春のあぜ道で女が突然死んだのは、母親の面影に誰か(女の夫か知りあい)を感じたからでは、という考察を見たが、なるほどと思った。それなら、母親も自分の子供が宗田に似てくるかも、似ていると感じるのもわかる。 「戻り川心中」 丹念に過去の場所を訪れて振り返るのが現場百篇って感じで面白かった。また、苑田の在り方が、とんでもすぎて西尾維新を思い出した。己の才のために人生を賭ける。そのまんますぎてすごい。すごいから常人ではないんだろうけど。それに付き合わされての心中はむごいな。トリックのために人を殺す麻耶雄嵩にも通ずるな。 全体的に花をモチーフにしてるが、説明てきではなくさりげなく小道具として、背景や形、匂い、色として登場しているので品があって面白かった。文体も読みやすい。大正時代も感じられて面白かった。

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2023/05/12

東西ミステリ第12位。人間の"想い"や"痴情"を物語のベースに据えた佳作です。あっと驚くようなトリックと言うよりも、あっと驚く動機、真実に重きが置かれています。 この時代(大正〜昭和初期)の暗い世相を背景に"心中"や&...

東西ミステリ第12位。人間の"想い"や"痴情"を物語のベースに据えた佳作です。あっと驚くようなトリックと言うよりも、あっと驚く動機、真実に重きが置かれています。 この時代(大正〜昭和初期)の暗い世相を背景に"心中"や"自殺"が描かれます。今の自由な時代からすると縁遠い価値観ですが、不自由な時代の人の想いが情緒たっぷりに描かれます。 本のタイトルの戻り川心中は少し独りよがりな気がしたけど、全部良いです。500ページ位の小説を読んでいる気分になりました。 ☆×3.8

Posted byブクログ